本記事の対象:
🔰 初心者: Skillsってそもそも何?フォルダ1つで何が変わるの?
🔧 中級者: SKILL.mdの書き方・設置場所・自動発動の仕組み
🚀 上級者: Claude Opus 4.7×Claude Code 2.1.108の連携と、チーム・医療応用への展開
1次情報:
はじめに:なぜ「育てる」という表現なのか
Claude Code Skillsを説明したXポストにこんな言葉がありました。
プロンプトを書く時代じゃない。"育てる"時代。
同じClaudeでも30日後には別物になる。
これは「ツール」じゃない。"もう1人の自分"だ。
この言葉はかなり的確です。Skillsは「毎回プロンプトで指示する」のではなく、「自分の仕事の知識・思考・手順をフォルダに入れておくと、Claudeが必要なときに自動で読み込む」という仕組みです。
Anthropicは2025年12月にAgent Skillsを正式発表し、仕様をオープンスタンダードとして公開しました。現在はClaude Code・Claude.ai・APIで使えます。
🔰 初心者向け:Skillsとは何か、3つの比喩で理解する
比喩①:「社内マニュアル」が自動で開く
新入社員が入ってきたとき、毎回ゼロから仕事を教えるのは大変です。だからマニュアルを作ります。SkillsはそのマニュアルをClaudeが必要なタイミングで自動的に読む仕組みです。
従来のやり方:
「今日はQiitaの記事を書きます。スタイルはこれで、
構成はこうで、著者名はこう書いて、出典の書き方は…」
→ 毎回同じことを書く
Skillsを使うと:
一度フォルダにまとめておけば
「Qiitaの記事を書いて」だけでOK
→ Claudeが自動でスタイルを読み込む
比喩②:「レシピ集」を持ち歩くシェフ
料理人がどのキッチンに行っても自分の味を出せるのは、技術と共にレシピを持っているからです。Skillsは「あなたの仕事のレシピ集」をClaudeに持たせることです。
比喩③:「医療機器のプリセット設定」
臨床現場では、機器の設定を患者ごとに毎回ゼロから入力するのではなく、「このプロトコルを呼び出す」という使い方をします。Skillsはそれと同じ発想です。
一言でまとめると
Skills = 自分の専門知識・業務手順・スタイルを
SKILL.mdというファイルに書いてフォルダに入れると、Claudeが関連する仕事のときに自動で読み込む仕組み
🔰 実際にどう動くのか
Skillsが動く流れはシンプルです。
1. あなたが ~/.claude/skills/blog-writer/ フォルダを作る
2. その中にSKILL.mdを書く(後述)
3. 「記事を書いて」と頼む
4. Claudeが「これはblog-writerスキルが関係しそう」と判断
5. SKILL.mdを自動で読み込む
6. あなたのスタイルで記事が出てくる
手動でも呼び出せます:/blog-writer とタイプするだけです。
🔧 中級者向け:SKILL.mdの書き方
最小構成
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name: blog-writer
description: Qiitaやnoteの技術記事を書くときに使う。
医療AI・臨床工学・開発ツールについての記事作成に自動で使用する。
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## 記事スタイル
著者バイライン:「臨床工学技士 × AIエンジニア」
構成:🔰初心者 / 🔧中級者 / 🚀上級者の三層構造
1次情報のDOIリンクや公式URLを必ず含める
これだけです。YAMLフロントマターの description が「いつ自動発動するか」を決める鍵です。
設置場所と優先順位
Skillsは ~/.claude/skills/(個人用・全プロジェクト共通)または .claude/skills/(プロジェクト個別)に設置できます。
| 場所 | 用途 |
|---|---|
~/.claude/skills/スキル名/ |
全プロジェクトで使いたい個人スキル |
.claude/skills/スキル名/ |
そのプロジェクト専用のスキル |
claude.ai設定 > Skills |
ブラウザ版claudeで使う場合 |
フロントマターの主要オプション
---
name: blog-writer
description: Qiita・noteの医療AI記事を書くときに使う。必ず自動発動する。
disable-model-invocation: false # trueにするとユーザーだけが呼び出せる
user-invocable: true # falseにするとClaudeだけが使う(背景知識系)
---
disable-model-invocation: true は副作用のあるワークフロー(デプロイ・Slack送信等)に使い、user-invocable: false はClaudeが文脈から自動判断すべき背景知識(例:レガシーシステムの仕様書)に使います。
descriptionが最重要な理由
Claudeは description フィールドを読んで、あなたのリクエストと一致するスキルを選びます。曖昧な説明はスキルが発動しない原因になります。説明は「あなたがClaudeにいつ使ってほしいか」をそのまま書く感覚で。
悪い例:
description: ドキュメント作成を助ける
良い例:
description: Qiitaやnoteの技術記事を書くとき、医療AI・臨床工学・
開発ツールについて記事を書くときに自動で使用する。
ユーザーが「記事」「投稿」「ブログ」と言ったら必ず呼び出す。
複数ファイルで構成する(応用)
SKILL.mdは500行以内に収めることが推奨されています。詳細な参考資料は別ファイルに切り出して参照できます。
~/.claude/skills/blog-writer/
├── SKILL.md ← メインの指示(500行以内)
├── STYLE_GUIDE.md ← 詳細なスタイル規則
├── TEMPLATE.md ← 記事テンプレート
└── EXAMPLES/
└── sample_article.md
🔧 Claude Code 2.1.108との組み合わせ
2026年4月にリリースされたClaude Code 2.1.108では、Skillsと組み合わせて使うと特に効果的な機能が追加されています。
1時間プロンプトキャッシュで「スキルの再読み込みコスト」がゼロに
以前のClaude Codeはキャッシュの有効期限が5分で、少し席を外すだけでセッション全体を再読み込みしていました。バージョン2.1.108で1時間キャッシュが導入されました。
# 環境変数を設定するだけ
export ENABLE_PROMPT_CACHING_1H=1
Skillsを使う場合、SKILL.mdの内容もキャッシュされるため、長い記事作成や複数ファイルの編集でもトークンの無駄な消費が抑えられます。
/effort コマンドで思考の深さを調整する
/effort low # 素早い返答が欲しいとき
/effort medium # 通常作業
/effort high # 複雑なリファクタリング・設計レビュー
ルーティン作業(記事のフォーマット整え等)は low、新しい概念の設計は high という使い分けが推奨されています。
/ultrareview で並列マルチエージェントレビュー
大規模なコード変更やドキュメントの品質チェックに使えます。Skillsと組み合わせると「このプロジェクトの規約に沿っているか」まで含めたレビューが可能になります。
🚀 上級者向け:Skillsの設計哲学とClaude Opus 4.7との連携
Claude Opus 4.7がSkillsを最大限活かせる理由
2026年4月16日にリリースされたClaude Opus 4.7は、Skillsとの相性が特に高いモデルです。
Opus 4.7は「暗黙的ニーズテスト(implicit-need tests)」に合格した最初のモデルです。これはClaudeが明示的な指示を待つのではなく、タスクの文脈から何が必要かを推論する能力です。
これはSkillsの自動発動と完全にかみ合います。
あなた:「今日のClaude Codeのアップデートについて書きたい」
Opus 4.7の思考(自動):
1. 「書きたい」→ blog-writerスキルが関連しそう
2. 「Claude Code」→ tech-writerスキルも関連するかも
3. 両方読み込んでタスクを実行
以前のモデルなら「どのスキルを使いますか?」と聞いていた場面で、Opus 4.7は黙って適切に判断します。
「懐疑的なメモリ」という設計思想
流出したClaude Codeのソースコードから明らかになった設計思想があります——「AIの記憶は常に疑わしい」という前提です。
Skillsがこの思想とどう関係するか:
❌ 悪い設計:
「前回Claudeがこのスタイルを覚えているはずだから、
また同じようにやってくれるだろう」
✅ 良い設計(Skills的):
「スタイルはSKILL.mdに書いてある。
Claudeは毎回ファイルから正しく読む。記憶に頼らない」
SkillsはAIの「記憶の不確実性」を設計で解決するアプローチです。
Kairos(未リリース):Skillsの先にある未来
流出したソースコードで発見された次世代機能「Kairos」は、常駐型エージェントモードです。ユーザーがコマンドを打つのを待つのではなく、バックグラウンドで環境を監視して自律的にタスクを実行します。
Skillsは「呼ばれたら動く」ですが、Kairosは「必要なときに自分から動く」です。Skillsで積み上げた「自分の仕事の定義」が、将来の自律型エージェントの基盤になると考えられます。
実践:医療AI開発者のための Skills構成例
Tさんのような「臨床工学技士×AIエンジニア」が使うとしたら、以下のような構成が考えられます。
~/.claude/skills/
├── blog-writer/
│ ├── SKILL.md ← Qiita/note記事スタイル
│ └── STYLE_GUIDE.md ← 三層構造・DOIリンク・著者名規則
├── medical-ai-researcher/
│ ├── SKILL.md ← PubMed検索・論文要約の規則
│ └── CITATION_FORMAT.md ← DOI引用フォーマット
├── python-dev/
│ ├── SKILL.md ← プロジェクト規約・コーディングスタイル
│ └── ARCHITECTURE.md ← システム構成の説明
└── consulting-doc/
└── SKILL.md ← 提案書・ドキュメントのフォーマット規則
これだけ設定しておけば:
- 「記事を書いて」→ blog-writerが自動発動
- 「この論文を調べて」→ medical-ai-researcherが自動発動
- 「コードをレビューして」→ python-devが自動発動
毎回プロンプトで指示する必要がなくなります。
Skills作成のスタートガイド
Step 1:スキルフォルダを作る
mkdir -p ~/.claude/skills/my-first-skill
Step 2:SKILL.mdを書く
---
name: my-first-skill
description: [いつ使ってほしいかを具体的に書く]
---
# [スキル名]
## いつ使うか
[具体的なシナリオを書く]
## 従うべきルール
- [ルール1]
- [ルール2]
## 出力の形式
[どんな形で出力してほしいか]
Step 3:動作確認
# Claude Codeで確認
claude "利用できるスキルは何ですか?"
# 直接呼び出し
/my-first-skill
Step 4:descriptionを磨く
スキルが発動しない場合は description を書き直します。Anthropicの公式ドキュメントでは、descriptionは少し「強引な」くらい明示的に書くことを推奨しています。「〜のとき使う」ではなく「〜のとき必ず使う」という表現が効果的です。
⚠️ 医療現場でSkillsを活用する際の重要な注意点
Skillsは業務効率化の強力なツールですが、医療現場での活用には守らなければならない原則があります。
絶対にSkillsのデータに含めてはいけないもの
患者の個人情報・診療情報は、いかなる形でもSkillsのファイルに入れないでください。
SKILL.mdやその参照ファイルは、Claude Codeが動くローカル環境またはクラウドサービスに保存・送信されます。以下の情報は絶対に含めてはいけません。
❌ 絶対NG(個人情報保護法の対象)
- 患者氏名・生年月日・住所
- 患者ID・保険証番号
- 病名・検査値・処方内容
- 入院日・手術記録
- 画像データのファイルパス(特定につながるもの)
- 「〇〇病院の〇〇さん」のような具体的な症例
❌ 要注意(準個人情報になりうるもの)
- 「60代・男性・透析患者・○○市在住」のような組み合わせ
- 匿名化したつもりでも特定できる情報
Skillsに入れてよいもの(情報の種類):
✅ OK:業務知識・手順・スタイル(個人を特定しない情報)
- ガイドラインの要約・解釈
- 記録フォーマットのテンプレート(値は空欄)
- アセスメントの観点リスト
- 文書作成のルール・スタイル
- 一般的な医療用語の定義
なぜこれが重要か——データが「どこに行くか」を理解する
連載「AI実装が不可欠な医療機器の未来図」第14回(note)でも書きましたが、重要なことなので改めて強調します。
ChatGPTに質問する、クラウドAIにファイルを送る——これらの行為のたびに、情報は海外のサーバーに送信されます。医療データも例外ではありません。
Skillsを使うとき、その内容はClaudeが読み込むためにシステムに渡されます。クラウド版(claude.ai・API)の場合はAnthropicのサーバーに送信されます。患者に関する情報が一行でも含まれていれば、個人情報保護法・医療情報安全管理ガイドライン(厚労省v6.0)の違反になりえます。
医療現場での安全な活用の原則
| 使い方 | 安全 | 理由 |
|---|---|---|
| 業務手順書のスタイルガイドをSkillsに入れる | ✅ | 個人情報を含まない |
| 「患者Aさんのデータで記録を作って」とClaudeに指示する | ❌ | 患者情報の院外送信 |
| アセスメント項目のリストをSkillsに入れる | ✅ | 一般的な知識 |
| 実際の検査値を入れたテンプレートをSkillsに含める | ❌ | 特定につながる可能性 |
| ローカルLLM(Ollamaなど)でSkillsを使う | ✅ | データが院外に出ない |
ローカルLLM環境でのSkills活用が医療現場の理想形
患者データを扱う業務でAIを活用したい場合の理想的な構成は、Skillsをローカル環境(院内完結型LLM)と組み合わせることです。
理想的な医療現場でのSkills活用:
院内サーバー(Ollama + Qwen2.5等)
└── SKILL.md(業務知識)を読み込む
└── 患者データも院内で処理
└── 情報が院外に出ない
↑
これなら安全に活用できる
患者データを「扱わない段階」——アイデア出し・プロトコルの設計・文書のフォーマット整備——であれば、クラウド版のSkillsでも安全に使えます。「患者データを扱う前の段階」から始めることが、医療現場でのAI活用の正しい入口です。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Skillsとは | 知識・手順・スタイルをフォルダに入れるとClaudeが自動で読む仕組み |
| 核心ファイル |
SKILL.md(YAML + マークダウン) |
| 設置場所 |
~/.claude/skills/(個人)または .claude/skills/(プロジェクト) |
| 自動発動のカギ |
descriptionフィールドの書き方 |
| Claude Opus 4.7との相性 | 暗黙的ニーズの推論能力で自動発動が高精度に |
| 2.1.108との組み合わせ | 1時間キャッシュでSkillsの再読み込みコストがほぼゼロに |
| 設計思想 | 「記憶に頼らず、ファイルから読む」→ 安定・再現性が高い |
| 医療現場での大原則 | 患者の個人情報・診療情報はSkillsに絶対に入れない |
「プロンプトを毎回書く」のではなく、「一度育てたら自動で動く」——Skillsはその転換点です。ただし医療現場では、Skillsに何を入れるかの判断が安全性の要になります。
1次情報まとめ
| 情報源 | URL |
|---|---|
| Introducing Agent Skills(Anthropic公式) | https://www.anthropic.com/news/skills |
| Extend Claude with Skills(Claude Code Docs) | https://code.claude.com/docs/en/skills |
| Agent Skills Overview(Claude API Docs) | https://platform.claude.com/docs/en/agents-and-tools/agent-skills/overview |
| anthropics/skills(GitHub公式リポジトリ) | https://github.com/anthropics/skills |
| Use Skills in Claude(サポートページ) | https://support.claude.com/en/articles/12512180-use-skills-in-claude |
| Introducing Claude Opus 4.7(Anthropic公式) | https://www.anthropic.com/news/claude-opus-4-7 |
| Claude Code Changelog | https://code.claude.com/docs/en/changelog |
| 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版(厚労省) | https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275_00006.html |
| 一緒に医療の未来を開発しましょう(連載第14回・note) | https://note.com/taichi_endoh/n/nc271a938bfb7 |
本記事はAnthropicの公式発表・ドキュメント・GitHubリポジトリを1次情報として作成しています。Claude Code 2.1.108の一部仕様(Kairos等)は流出したソースコードを参照した二次情報を含みます。公式ドキュメントとの差異がある場合は公式情報を優先してください。