はじめに
最近、AIエージェントの発展が著しく進んでいますが、異なるベンダーやプラットフォーム間でのエージェントの連携については、まだ多くの課題が残されています。SalesforceとGoogleを含む50以上のテクノロジーベンダーが協力して推進している「Agent-to-Agent (A2A)」プロトコルは、この課題に対する重要な取り組みです。
この記事では、Salesforceの公式ブログ記事「When Agents Speak the Same Language: The Rise of Agentic Interoperability」の内容を参考に、AIエージェント間の相互運用性の意義と実装について考察します。
引用元
この記事は以下のSalesforce公式ブログ記事を参考にしています:
When Agents Speak the Same Language: The Rise of Agentic Interoperability - 2025年4月28日公開
引用元のブログ記事にアーキテクチャの構成図、動画などあるので、興味あるかたは参照ください。
エージェント相互運用性の重要性
AIエージェントは企業活動の様々な側面で活用されつつありますが、真の価値を発揮するためには単一のベンダーやプラットフォームを超えた連携が不可欠です。Salesforceが提唱する「Agentforce」のようなエージェント構築プラットフォームだけでなく、Langgraph、AutoGen、OpenAIのAssistant API、CrewAI、LlamaIndexなど様々なフレームワークで構築されたエージェントが共存しています。
エージェント間相互運用性プロトコルが提供するメリットは以下の点にあります:
- ベンダーサイロの解消 - 営業、マーケティング、ITなど異なる部門のエージェントが、使用しているプラットフォームに関係なくコンテキストを共有できる
- 価値実現の加速 - 既存のエージェントを再利用でき、プラットフォームごとに再構築する必要がない
- 統合コストの削減 - 単一のオープンプロトコルは、多数のカスタムアダプターや複雑なAPIよりも効率的
- ガバナンスの強化 - すべてのエージェント間やりとりを統一的に監視し、ポリシーを適用できる
エージェント相互運用性の10の基盤要素
Salesforceは、エージェント間の相互運用性を実現するための10の基盤要素を提案しています:
- AIエージェントの名刺機能 - JSON形式でAIの得意分野や技術的な特徴を記述し、相互に「自己紹介」できる仕組み
- 権限管理システム - AIエージェントが適切な情報やツールにだけアクセスできるよう制御する機能
- エージェント検索システム - 必要なAIエージェントを自動的に見つけ出す「AIディレクトリ」のような仕組み
- 会話プロトコル - AIどうしが効率よく情報交換するための共通言語とルール
- AIの信頼性評価 - 倫理的な動作やデータ処理の安全性を数値化して判断する基準
- 会話履歴の管理 - 複数のAIが関わる会話の流れを「会話ID」で追跡し、文脈を維持する仕組み
- 多様なメディア対応 - テキストだけでなく、音声・画像・動画などを扱える機能
- 動作の可視化と検証 - AIエージェントの活動を監視し、過去の動作を確認できる仕組み
- 安全対策と法令遵守 - 強固な暗号化と脅威検出で安全性を確保する機能
- 拡張性と処理能力 - 利用量の急増にも対応できる柔軟なシステム構成
実際の活用シナリオ
エージェント間相互運用性は、以下のような実際のビジネスシナリオで効果を発揮します:
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カスタマーサービス: 小売業者のAgentforceサービスエージェントが、製造元の返品専門エージェントやロジスティクスパートナーのポリシーエージェントと連携して、返品プロセスを効率化
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営業: B2B環境で、小売業者の営業エージェントが見込み客のパートナーシップ機会を特定し、提案書作成や会議スケジューリングを自動化
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マーケティング: 卸売業者のマーケティングエージェントがCRMデータから購入準備ができた見込み客を特定し、GoogleのAdエージェントと連携してパーソナライズされた広告を配信
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金融サービス: 資産運用会社の金融エージェントが、コンプライアンスエージェントと協力してパーソナライズされた投資アドバイスの規制遵守を確認
考察:個人の技術調査におけるAIエージェント連携の可能性
この記事を調査する中で、私自身の技術検証環境でもAIエージェント間連携の実験ができるのではないかと考えるようになりました。特に以下のような点で、個人レベルでも検証できる余地があると思います:
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異なるAIモデル間の連携実験 - 例えば、OpenAIのGPT-4とAnthropicのClaudeといった異なるLLMをそれぞれエージェント化し、Agent Cards形式でそれらの特性を定義した上で、得意分野に応じたタスク分担をさせる実験
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AIとシステムの連携 - 既存の業務システムやツールとAIエージェントをつなぐインターフェースの設計と実装。例えば、GitHubのIssue管理やJIRAのタスク管理とAIエージェントを連携させる小規模な実験
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エージェント間会話の状態管理 - 10の基盤要素の中でも「状態と会話管理」は比較的小規模でも検証しやすい領域。複数のエージェントが関わる会話をどのように追跡し、コンテキストを維持するかの実験
SalesforceとGoogleが主導するような大規模な取り組みを待つだけでなく、オープンソースツールを活用した小規模な検証から始めることで、AIエージェント間連携の可能性と課題を自分なりに理解できるようになるのではないかと考えています。こうした実践的な経験は、将来的に企業レベルでA2Aのような標準が普及した際にも、その価値を最大限に活用するための基礎知識になるでしょう。
まとめ
AIエージェント間の相互運用性は、企業がAIの潜在能力を最大限に引き出すための重要な要素です。SalesforceとGoogleが主導するA2Aプロトコルは、エージェント間の連携を標準化し、異なるプラットフォーム間での統合を容易にすることで、より効率的で柔軟なAIエコシステムの構築を目指しています。
今後は、こうした標準化の取り組みが実際のビジネス環境でどのように採用され、進化していくか注視してこうと思います・・・。
免責事項
- 本記事の作成にあたり、文章や図解の生成に生成AIを活用しました。最終的な編集と確認は筆者が行っています。
- この記事は、Salesforceの公式ブログ記事を参考に作成しました。詳細な情報や最新の動向については、原文や公式発表を参照してください。