はじめに
前回までに、MicrosoftのAIアーキテクチャを以下の観点で整理しました。
- Work IQ → 文脈
- Foundry IQ → 知識
そして今回扱うのが、
👉 Fabric IQ(データ)
です。
MicrosoftはFabricを単なるデータ基盤ではなく、
Data PlatformからIntelligence Platformへ進化させる方向に舵を切っています。
その中核にあるのがFabric IQです。
本記事は、Fabric IQの役割と構造を理解するための備忘録です。
※本記事は公開情報をもとにした個人の整理です。
※2026年4月時点の情報です(Fabric IQはプレビュー機能を含みます)。
Microsoft Fabricとは(前提)
Microsoft Fabricは、データの取り込み・加工・保存・分析・可視化・AIを1つのSaaSプラットフォームに統合したデータ基盤です。
共通のストレージ(OneLake)の上に、Data Factory、Data Engineering、Data Warehouse、Data Science、Real-Time Intelligence、Power BIなど複数のワークロードが乗っています。
Fabric IQは、このFabricの上にインテリジェンスレイヤとして加わった新しいワークロードです。
※本記事ではFabric全体の解説は割愛し、Fabric IQに絞って整理します。
Fabric IQとは何か
Fabric IQは、
OneLake上に分散したデータをビジネスの言語で統合・組織化し、
分析・AIエージェント・アプリケーションに一貫したセマンティクスとコンテキストで提供するワークロードです。
👉 データを「意味のある形」に変換し、AIが扱えるようにするレイヤです。
なぜFabric IQが必要なのか
The next frontier is not more data. It is shared understanding over that data.
AIエージェントはデータが足りないから失敗するのではなく、
意味が足りないから失敗する ― これがFabric IQの出発点です。
■ 生データの問題
- 数値だけでは意味がわからない
- テーブルだけでは関係性が不明
■ SQL依存の問題
- 人間が理解してクエリを書く前提
- AIが直接扱いにくい
■ エージェント時代の課題
AIエージェントはデータを持っていても、
意味がなければ判断できないという問題があります。
👉 データを"意味付き"に変換する必要がある
Fabric IQの構成要素
※一部のアイテムはReal-Time IntelligenceやData Scienceなど、
他のFabricワークロードとも共有されています。
Fabric IQは以下の6つの要素で構成されます。
※公式ブログ(Ignite 2025)では5つとして紹介されましたが、
現在のドキュメントではPlanを含む6つが記載されています。
■ Ontology(中核)
Fabric IQの基盤となる要素です。
- ビジネスの意味モデル(エンティティ・プロパティ・関係性)
- 制約とルール(Fabric Activator連携による条件トリガー)
- アクション定義(エンティティに対する操作:リルート、修理スケジュール等)
- データバインディング(OneLake上の実データとの接続)
- ノーコードのビジュアルツールで構築可能(Power BIモデルからの生成にも対応)
👉 すべての基盤となる中核レイヤ
■ Plan
Fabric内蔵のエンタープライズ計画ソリューション(EPM/CPM)です。
- 予算・予測・シナリオモデリング(Planning Sheets)
- 大規模な次元計画(PowerTable Sheets)
- 差異分析・インサイト(Intelligence Sheets)
- データ連携(InfoBridge)
- セマンティックモデルとの統合による一貫した計画基盤
👉 分析から意思決定・計画立案へつなげるレイヤ
■ Graph
エンティティ間の関係性を格納・走査するグラフエンジンです。
- Ontologyと統合された関係性の可視化
- パス探索・依存分析・グラフアルゴリズム
- GQL(ISO標準グラフクエリ言語)によるパターンマッチング
👉 データのつながりを計算可能にする
■ Semantic Model(Power BI)
- BI向けの分析モデル(KPI・メジャー・階層)
- Ontologyから生成可能
👉 分析用途に最適化された表現
■ Data Agent
自然言語でデータに質問できる対話型分析エージェントです。
- 自然言語 → SQL/DAX/KQL の自動変換(NL2SQL, NL2DAX, NL2KQL)
- Ontologyをデータソースとして接続可能
- Microsoft 365 Copilotとの統合
- 最大5つのデータソースを組み合わせ可能
- Microsoft Graph(組織データ)への接続にも対応
👉 技術者でなくてもデータに直接アクセスできる
■ Operations Agent
リアルタイムデータを監視し、アクションを推奨するAIエージェントです。
- KQLデータベース(Eventhouse)のリアルタイム監視
- 条件に基づくアクション推奨
- Teamsを通じた承認フロー(human-in-the-loop)
- Fabric Activatorとの連携による実行
👉 監視 → 判断 → 承認付き実行まで行う
■ まとめ
👉 Ontologyを中心に他の5要素が連携する構造
Fabric IQはどう価値を出すのか
Fabric IQの価値は、単なる分析にとどまりません。
■ 従来
- 分析 → レポート
■ Fabric IQ
- 分析
- 推論
- 👉 アクション(承認付き)
■ 例
「売上が落ちている」
↓
- 原因分析(Data Agent)
- 影響範囲の特定(Graph)
- 対応施策の提案(Operations Agent)
- 👉 Teams承認後に実行
👉 分析から意思決定・実行へ進化
Foundry IQとの違い
| 観点 | Foundry IQ | Fabric IQ |
|---|---|---|
| 対象 | ナレッジ(文書・非構造化) | データ(構造化・リアルタイム) |
| 主役 | Knowledge Bases | Ontology |
| 処理 | 検索・取得・生成 | 分析・推論・アクション |
| 技術 | RAG + AI Search | Ontology + Graph + Agents |
| 出力 | 回答・知識提供 | 意思決定・承認付きアクション |
👉 検索 vs 意思決定
Work IQとの関係
- Work IQ → 文脈
- Foundry IQ → 知識
- Fabric IQ → データ
👉 3つが組み合わさることでAIの判断が成立する
Fabric IQの位置づけ
Fabric IQは、
👉 Intelligence Platform化の中核
です。
- Fabric → データ基盤
- Fabric IQ → インテリジェンスレイヤ
■ 最新動向(MCP)
FabCon Atlanta 2026では、OntologyのMCPエンドポイント(Coming Soon)が示されています。
MCP(Model Context Protocol)経由で外部エージェントと接続可能になる方向で進化しています。
👉 Fabric内に閉じないエコシステムへ拡張
まとめ
- Fabric IQはデータインテリジェンス基盤
- Ontologyが中核
- Planで意思決定・計画立案
- Data Agentで対話型分析
- Operations Agentで承認付き実行
- 分析からアクションへ進化
👉 Fabric IQは「データを分析する仕組み」ではなく、
データを理解し、判断し、行動につなげる仕組み
として捉えると理解しやすいです。
参考(公式情報)
※本記事は個人の整理メモです。正確な情報や最新仕様については、公式ドキュメントをご確認ください。
具体的なユースケースや操作画面については、上記リンク先をご参照ください。なお、時間の経過によりリンク先が変更・削除される可能性があります。




