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その仕事に詳しい人ほど、AIに任せられる? Claude Code約40万セッションから見る人間とAIの役割分担

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Last updated at Posted at 2026-09-26

記事の全体像

はじめに

「生成AIが進化すると、専門知識はそれほど必要なくなるのでは?」

AIを使っていると、そんなことを考えることがあります。

プログラムを書けなくてもコードを生成できる。
知らない技術についてもAIに質問できる。
これまで専門家に頼んでいた作業の一部を、自分でできるようになる。

実際、生成AIにはそうした側面があります。

一方で、Anthropicが2026年6月16日に公開したClaude Codeの利用実態に関する調査を見ると、少し違った構図も見えてきます。

Anthropicは、2025年10月から2026年4月までの約40万件のClaude Codeセッション、約23.5万人の利用者を、プライバシーに配慮した方法で分析しました。

そこで見えてきたのが、

人間が「What(何をするか)」を多く決め、Claudeが「How(どう実行するか)」を多く担う

という役割分担です。

さらに興味深いのが、そのタスクについて専門知識を持つ人ほど、1回の指示からClaudeにより多くの作業をさせていたという結果でした。

この記事では、この調査から「AI時代に人間側には何が残るのか」を考えてみます。

本記事中の図解は、公開情報をもとに筆者が独自に作成したものであり、Anthropic公式の資料ではありません。数値は2026-09-26時点で確認したものです。


約40万件のClaude Codeセッションを分析

調査の対象と分析の観点

Anthropicのレポート「Agentic coding and persistent returns to expertise」は、Claude Codeが実際の仕事でどのように使われているのかを分析したものです。

対象となったのは、

  • 期間:2025年10月〜2026年4月
  • 約40万件のインタラクティブなClaude Codeセッション
  • 約23.5万人の利用者

です。

重要なのは、単に「どんなプロンプトを書いているか」だけではなく、

  • 誰が計画を決めたのか
  • 誰が実行方法を決めたのか
  • 1回の指示からClaudeがどれだけ動いたのか
  • ユーザーがそのタスクについてどの程度詳しいのか
  • セッションが成功したのか

といった観点まで分析しているところです。


人間は「What」、Claudeは「How」を決めている

人間はPlanning、ClaudeはExecution

Anthropicは、セッション中の意思決定を大きく2種類に分けています。

Planning

「何をするか」に近い意思決定です。

たとえば、

  • 何を作るか
  • どのアプローチを採用するか
  • どこまでできれば完了なのか

といった判断です。

Execution

こちらは「どう実行するか」に近い意思決定です。

たとえば、

  • どのファイルを変更するか
  • どんなコードを書くか
  • どの言語を使うか
  • どのコマンドを実行するか

といった判断です。

分析結果では、典型的なセッションにおいて、

  • 人間:約70%のPlanningを担当
  • Claude:約80%のExecutionを担当

という役割分担になっていました。

つまり、人間が

「これを実現したい」

と方向を決め、

Claudeが

「では、このファイルを調べ、このコードを修正し、テストを実行します」

という具体的な実行を担当する。

現在のAgentic Codingでは、そんな構図が典型的になっているようです。


1回の指示からClaudeはかなり動いている

1プロンプトから平均約10アクション

Claude Codeでは、人間が指示したあと、Claudeがファイルを読んだり、コードを書いたり、コマンドを実行したりします。

Anthropicの分析では、2025年10月から2026年4月のデータで、人間からの1つのプロンプトに対してClaudeは平均約10アクションを実行し、約2,400語を出力していました。

さらに、一部のセッションでは1プロンプトから100を超えるアクションが発生しており、約2%のセッションでは1プロンプトあたり平均100アクションを超えていたとされています。

イメージとしては、次のような形です。

人間
  ↓
目的・条件を指示
  ↓
Claude
  ├─ ファイルを調査
  ├─ コードを変更
  ├─ コマンドを実行
  ├─ テスト
  └─ 必要なら修正

1回の指示から、複数の作業をまとめて実行する使い方が広がっているわけです。

ここまでは、「AIエージェントが自律的に仕事をするようになった」という話として、それほど意外ではないかもしれません。

個人的に面白いと思ったのは、ここからです。


その仕事に詳しい人ほど、Claudeに多くを任せていた

専門性はタスク単位で判定される

Anthropicは、各セッションについてユーザーのそのタスクに対する専門性も、初心者から専門家までの5段階で推定しています。

推定に使われているのは、会話内容に現れる次のようなシグナルです。

  • 指示をどれだけ具体的に組み立てているか
  • Claudeに何を検証させているか
  • ユーザーがClaudeを訂正する側か、Claudeがユーザーを訂正する側か

ここでいう「専門家」は、AIに詳しい人という意味ではありません。

そのタスクについて、どれだけ知識を持っているかです。

たとえば、経験豊富なエンジニアでも、初めてRustについて質問しているのであれば、そのRustタスクについては初心者として扱われます。

逆に、Pythonを書いたことがない会計担当者でも、

  • どんな照合ルールが必要なのか
  • どんな例外ケースが存在するのか
  • 結果のどこを確認すべきなのか

を理解していれば、そのタスクについては専門家として扱われます。

この2つは、レポート自身が挙げている例です。

この定義はかなり重要です。


初心者は約5アクション、専門家は約12アクション

専門性別のアクション数と出力量

分析すると、専門性によってClaudeの動き方にかなり違いがありました。

典型的なセッションでは、

ユーザーの専門性 1プロンプトあたりのClaudeのアクション Claudeの出力量
初心者 約5アクション 約600語
専門家 約12アクション 約3,200語

という差がありました。

専門家側では、1回の指示から発生するアクションが2倍以上、出力量は約5倍になっています。

Anthropicは、仕事の進め方、タスク価値、月、職種、モデル系統を統制した回帰分析でも、この傾向が残ることを報告しています。専門性が1段階上がるごとにアクション数は約9%、出力量は約13%増え、いずれも統計的に有意(p < 0.001)だったとされています。

ここから見えてくるのは、

専門家はAIを細かく操作しているのではなく、むしろAIに大きな単位で仕事を任せている

という構図です。


なぜ専門家の方が「任せられる」のか

知識があるほど任せられる範囲が広がる

この結果を見て、個人的には仕事で誰かに何かをお願いするときにも少し似ていると感じました。

自分が何をしたいのか分からなければ、

いい感じにしてください

という指示になりがちです。

逆に、その仕事を理解していれば、

ここを変更したい。

この仕様は維持する。
既存APIとの互換性は壊さない。
このケースまでテストする。
既存実装を確認して、必要な変更を入れてテストまで実行してほしい。

のように、目的・制約・完了条件を渡したうえで、具体的な実行方法はAIに任せることができます。

つまり、

知識がある
    ↓
重要な条件が分かる
    ↓
何を確認すべきか分かる
    ↓
AIに渡せる範囲が広がる
    ↓
実行方法をAIに任せられる

という関係があるのかもしれません。

「全部自分でやれるから専門家」ではなく、

どこを自分で決め、どこから先を任せてよいか判断できるから専門家

という見方もできそうです。


専門性が高いセッションほど成功率も高い傾向

専門性とセッション成功率

もう一つ興味深い結果があります。

Anthropicは、セッション全体から「目的を達成した」と判断されたうえで、テスト成功、作業内容に対応するcommitやPull Request、ユーザーによる明示的な肯定など、検証可能な成功の証拠が確認できたものを「Verified success」としています。

その割合は、

  • 初心者と判定されたセッション:約15%
  • 中級以上:約28〜33%

でした。

少なくとも部分的に成功した割合でも、

  • 初心者:約77%
  • 中級以上:約91〜92%

となっています。

また、セッションがつまずいた場合の立て直し方にも差がありました。初心者はそこでセッションを諦めてしまう割合が、他の層に比べて数倍高かったと報告されています。

ただし、ここで面白いのは、専門性が上がり続けるほど同じ勢いで成功率が伸びるわけではないことです。

大きな差があるのは初心者から中級者になるところで、中級者と専門家との差は比較的小さくなっています。

つまり、

超一流の専門家でなければAIを使いこなせない

という話でもありません。

深い専門性だけではなく、まずはその領域について実用的な理解を持っていることが重要なのかもしれません。


「コードを書けるか」と「仕事を理解しているか」は別

ソフトウェア職とそれ以外の職種の比較

さらにAnthropicは、ソフトウェア関連職と、それ以外の職種も比較しています。

コードを追加・変更したセッションでは、厳しい基準でのVerified successは、

  • ソフトウェア関連職:約34%
  • その他の職種:約29%

でした。

一方、部分的成功まで含めると、

  • ソフトウェア関連職:約89%
  • その他の職種:約88%

とかなり近くなっています。

Anthropicは、主要な10の職種グループはいずれも、ソフトウェア/数学系職種との成功率の差が7ポイント以内に収まっていたとも報告しています。

これも興味深い結果です。

AIエージェントによって、

「コードを書く能力」と「何を作るべきか判断する能力」が少しずつ分離してきている

と見ることもできます。

たとえば会計、営業、製造、医療、研究など、それぞれの領域について詳しい人が、

業務知識
   +
AIエージェント
   ↓
これまで自分では作れなかった
ツール・分析・自動化

を実現する場面は、これから増えていくのかもしれません。


AI時代に残るのは「Whatを決める力」なのかもしれない

人間のWhatとAIのHow

この調査を見ていると、

「AIに仕事を奪われるか」

という議論だけでは少し足りないように感じます。

もう一つ重要なのは、

人間とAIの間で、仕事のどの部分が移動しているのか

という視点です。

今回のClaude Codeの分析では、

人間
What
・目的
・方向性
・制約
・完了条件
・結果の評価

        ↓ 委譲

AI
How
・調査
・実装
・コマンド実行
・テスト
・修正

という分担が見えてきます。

AIが進化すると、Howの部分はさらに広がっていく可能性があります。

そのとき、人間側で重要になるのは、

  • 何を実現したいのか
  • 何が正しい結果なのか
  • どんな制約があるのか
  • 何を確認すべきなのか
  • AIの結果を採用してよいのか

を判断するための知識なのかもしれません。


「専門家が不要になる」とは限らない

ハードルは下がるが、任せるにも知識がいる

生成AIについては、

AIが知識を持っているなら、人間は詳しくなくてもよい

と考えることもできます。

もちろん、AIによってこれまで専門知識が必要だった作業のハードルが下がることはあると思います。

実際、今回の調査でも、ソフトウェア職以外の人がClaude Codeでコードを書くことに成功しています。

ただし同時に、

専門知識がある人ほど、AIにより大きな仕事を任せている

という傾向も観測されています。

これは一見すると逆説的です。

しかし考えてみれば、

AIに任せるためにも、何を任せればよいのか判断する知識が必要

なのかもしれません。


注意点

この調査を読むときの4つの注意点

今回の結果については、いくつか注意も必要です。

まず、この調査はClaude Codeの利用データを対象にしています。

そのため、

すべての生成AI利用で、専門家ほどAIに仕事を任せる

と一般化することはできません。

また、専門性は資格や職歴ではなく、会話内容からモデルが推定しています。職種についても同様に、セッションの内容から推定したうえで、米国労働統計局のSOC分類にマッピングしたものです。

Anthropic自身も、この分類方法には限界があると説明しています。

さらに、

専門性が高いことが、AIへの委譲を直接引き起こしている

という因果関係が完全に証明されたわけでもありません。

実際の成果物がその後使われたのか、経済的な価値を生んだのかまでは、この分析では分かりません。

そのため今回は、

「専門家ほどAIに任せられる」と断定する

というより、

実際のClaude Code利用では、そのタスクに詳しい人ほど1回の指示からClaudeに多くの仕事をさせる傾向が観測された

と捉えるのがよさそうです。


まとめ

まとめ:数字で見る人間とAIの役割分担

image.png

Anthropicによる約40万件のClaude Codeセッションの分析から、興味深い人間とAIの役割分担が見えてきました。

  • 人間はPlanning、つまり「What」を多く決める
  • ClaudeはExecution、つまり「How」を多く決める
  • 典型的なセッションで、人間は約70%のPlanningを担当
  • 同じく、Claudeは約80%のExecutionを担当
  • そのタスクに詳しい人ほど、1回の指示からClaudeが多くの作業を行う
  • 初心者では約5アクション、専門家では約12アクション
  • 専門性とセッション成功率にも関連が見られる
  • 大きな差は初心者から中級者になるところにある

AIを使えるようになることと、自分の専門性を高めることは、どちらか一方を選ぶ話ではないのかもしれません。

むしろ、

専門知識があるからこそ、AIに任せる範囲を広げられる。

AIエージェントがHowを担う範囲が広がるほど、人間側ではWhatを考え、結果を判断するための知識が重要になる。

今回の調査は、そんなAIとの付き合い方を考える材料として面白いと感じました。

参考

  • Zoe Hitzig, Maxim Massenkoff, Eva Lyubich, Shaoyi Zhang, Ryan Heller, Peter McCrory,
    "Agentic coding and persistent returns to expertise", Anthropic, 2026-06-16
  • 掲載ページ: How Claude Code is used in practice
    (ページのタイトルはレポート本体のタイトルと異なります。レポートPDFと付録は、このページからリンクされています)
  • 本記事は上記の公開情報をもとに、筆者が内容を整理・解釈したものです。数値は2026-09-17時点で確認しました。
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