0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

objdump

Posted at

objdumpは、バイナリ解析に特化したGNU Binutilsパッケージの一部で、リバースエンジニアリングおよび脆弱性診断ツールである。objdumpは特にELF(Executable and Linkable Format)ファイルの内部構造解析に優れ、マルウェアの解析、動的ライブラリの関係性解析、バイナリのセキュリティ評価など、多岐にわたる分野で活用される。

  1. セクション情報の表示 (-h / --headers)
    objdumpのセクションヘッダー表示機能は、各セクション(テキスト、データ、BSS、RODATAなど)のメモリ配置やアクセス権限を確認するために使用する。この情報から、コード実行の可否やスタックの書き換え可能性、読み取り専用領域の存在を把握できるため、コードインジェクション攻撃の脆弱性を調査する上で重要である。また、特にASLR(Address Space Layout Randomization)無効のバイナリや権限設定ミスを発見することで、リスクの評価に役立つ。

  2. アセンブリコードの逆アセンブル (-d / --disassemble)
    objdumpの逆アセンブル機能は、バイナリ内部の機械語を人が読みやすいアセンブリコードに変換するもので、ファイルのエントリーポイントや関数ごとの動作を詳細に解析できる。これにより、システムコールや特定の操作をフックしているコード、さらにオーバーフローの可能性がある関数呼び出しなどを明らかにできる。例えば、未チェックのstrcpyやgets関数を確認することで、バッファオーバーフローのリスクを素早く見つけることが可能である。

  3. シンボルテーブルの表示 (-t / --syms)
    シンボルテーブルには、関数名や変数名とそのアドレスが記載され、シンボル解決が可能なバイナリではコードの読み解きに役立つ。商業ソフトウェアの多くはシンボル情報をストリップするが、もしシンボル情報が残っていれば、バイナリの挙動や特定の関数の役割を効率的に把握できる。特に、CWE(Common Weakness Enumeration)に該当する関数やコードセクションが特定しやすくなり、攻撃ベクトルを評価する手がかりとなる。

  4. デバッグ情報の解析 (-g / --debugging)
    objdumpはデバッグ情報を含むバイナリから変数や関数のソースコード対応を表示することが可能である。特に、未削除のデバッグ情報が含まれる場合、リバースエンジニアリングでの関数や変数の役割解析が容易になり、マルウェアの内部構造の特定に役立つ。また、商業ソフトウェアでデバッグ情報が残っていることは稀だが、検証用のバイナリや一部のオープンソースバイナリであれば、コードの振る舞い解析が効率化される。

  5. リロケーション情報 (-r / --reloc)
    リロケーション情報は、バイナリのロード時にメモリアドレスを正しく解決するために使用される。特に、PIE(Position Independent Executable)やASLR(Address Space Layout Randomization)の有効化状態を確認するために重要である。リロケーション情報が多いバイナリはメモリ保護機能に対応している可能性が高く、逆に、固定アドレスでロードされるセクションを持つバイナリは、脆弱なバイナリである可能性が高い。

  6. 動的シンボルの表示 (-T / --dynamic-syms)
    objdumpは動的リンクされている外部シンボルも表示でき、これにより外部ライブラリの関係性を把握できる。マルウェアの解析や悪意のあるコードの調査では、外部ライブラリが不正な操作やバックドア機能を果たすことがあるため、特に有用である。バイナリに依存する外部ライブラリのリストからは、アプリケーションが外部とのデータ転送を行うかを調べる手がかりが得られる。

  7. バイトダンプの取得 (-s / --full-contents)
    セクションごとの生バイトデータのダンプを取得できる機能は、バイナリの各セクションの詳細を直接解析する際に重要である。特に、暗号化されたデータセクションや難読化されたコードを含むバイナリを解析する際に役立つ。これにより、ステルス性の高い攻撃コードを含むバイナリの断片やパターンを特定でき、ゼロデイ脆弱性や未知のエクスプロイトコードの解析に応用できる。

活用事例と利便性
objdumpはコマンドラインツールであり、スクリプトによる自動化や他の解析ツールとの連携が容易である。シェルスクリプトやPythonと組み合わせることで、自動解析パイプラインを構築し、効率的なバイナリ解析を行うことが可能である。これにより、セキュリティ評価や脆弱性の迅速な発見、さらにフォレンジック調査においてobjdumpは不可欠なツールであり、セキュリティ業務の効率を向上させる。

0
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?