Linuxカーネル: プロセスのライフサイクルとリソースの確保
Linuxはオープンソースのオペレーティングシステムで、その中核となる部分はLinuxカーネルです。この記事では、Linuxカーネルにおけるプロセスのライフサイクルと、プロセスに対するリソースの確保・解放のメカニズムについて解説します。
1. プロセスのライフサイクル
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生成:
fork()システムコールにより、親プロセスから子プロセスが生成されます。このとき、子プロセスは親プロセスのメモリ空間のコピーを持ちます。 - 実行: スケジューラーによってプロセスはCPU上で実行されます。
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終了: プロセスがタスクを完了すると、
exit()システムコールを使用して終了します。 -
待機: 親プロセスは
wait()システムコールを使用して、子プロセスの終了を待つことができます。
fork()の戻り値とその使用方法に関連するコード部分を再度示します。
#include <stdio.h>
#include <sys/types.h>
#include <unistd.h>
int main() {
pid_t pid;
pid = fork(); // fork()が呼び出される部分
if (pid < 0) {
// エラーハンドリング: fork()に失敗
perror("fork failed");
return 1;
}
if (pid == 0) {
// このブロックは子プロセスで実行されます
printf("I am the child process, my PID is %d\n", getpid());
} else {
// このブロックは親プロセスで実行されます
printf("I am the parent process, my PID is %d and my child's PID is %d\n", getpid(), pid);
}
return 0;
}
上のコードでは、pid = fork();の部分でfork()が呼び出されます。この直後、pidの値に基づいて処理が分岐します:
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if (pid < 0)-fork()が失敗した場合。これはエラーを示します。 -
if (pid == 0)- これは子プロセスのブロックです。fork()が子プロセスで0を返すため、この条件が真となります。 -
else- これは親プロセスのブロックです。親プロセスにおいて、fork()は子プロセスのPIDを返すため、このブロックが実行されます。
このように、コードは一度だけfork()を呼び出していますが、その結果として2つのプロセスが生成され、それぞれのプロセスがfork()の戻り値を異なる値として受け取り、それに応じた処理を行います。
2. リソースの確保と解放
プロセスのライフサイクルは、オペレーティングシステムとともに、そのプロセスに必要なリソースを確保・使用・解放する一連のステップから成り立っています。以下に、Linux環境でのプロセスのライフサイクルを、リソース管理の観点から詳しく解説します。
1. プロセスの生成:
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CPU時間の割り当て: 新しいプロセスが生成されると、スケジューラによってCPUの実行キューに追加されます。スケジューラは、プロセスの優先度や他のメトリクスに基づいて、それにCPU時間を割り当てるタイミングを決定します。
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メモリの割り当て: プロセスが開始されると、その実行に必要なメモリ領域が確保されます。これには、プログラムコード、静的データ、ヒープ、スタックなど、いくつかのセグメントが含まれます。
2. プロセスの実行:
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CPU使用: プロセスはスケジューラによって選択され、CPU上で実行されます。そのプロセスが完了するか、あるいは他の高優先度のプロセスに切り替わるまで、CPUを使用し続けます。
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メモリの動的確保: プロセスが実行中に、動的にメモリを必要とする場合、ヒープ領域を利用してメモリを確保します。C言語では
mallocやcalloc関数、C++ではnewを使用して行います。
3. プロセスの終了:
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CPU時間の解放: プロセスが終了すると、それ以上CPU時間は必要とされず、スケジューラは次のプロセスを実行キューから選択します。
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メモリの解放: プロセスが終了すると、そのプロセスの使用していたメモリ領域はOSによって解放されます。動的に確保したメモリも、プロセス終了時には解放されるべきですが、明示的に解放しない場合、メモリリークが発生する可能性があります。C言語では
free関数、C++ではdeleteを使用して明示的にメモリを解放します。
4. プロセスの待機:
- リソースの待機: プロセスがI/O操作や他のプロセスの完了など、何らかのイベントを待機している間、CPU時間を消費せずに待機状態になります。この間も、そのプロセスに割り当てられたメモリは保持され続けます。
このように、プロセスのライフサイクルは、リソースの確保、使用、解放の一連のステップから成り立っています。オペレーティングシステムはこれらのステップを効率的に管理し、複数のプロセスを同時に実行することを可能にしています。
3. スケジューリングと仮想的なランタイム
LinuxカーネルのCFSは「vruntime」という値を使用して、各プロセスのCPU使用時間を追跡します。これにより、全てのプロセスが公平にCPUリソースを共有することを保証します。
LinuxのCFS (Completely Fair Scheduler) では以下のような動作が行われます。
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vruntime の計算: 各タスクは「vruntime」という値を持っており、これはタスクがこれまでにCPUを使用した「仮想的な」時間を示します。タスクがCPUを使っている間、この値は増加します。
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最大連続使用時間 (time slice): あるタスクがCPUを継続して使用できる最大の時間を示します。この時間を超えると、他のタスクにCPU使用が切り替えられる可能性が高まります。
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I/O待機や他のイベント: タスクがI/O待機や他のイベントのために実行を停止する場合、そのタスクは待機状態となり、別のタスクがCPUを使用します。
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タスクの選択: CPUを次に使用するタスクの選択は、各タスクのvruntimeの値に基づいて行われます。vruntimeが最も小さいタスク(つまり、最も少ない時間しかCPUを使用していないタスク)が、次にCPUを使用するタスクとして選択されます。
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コンテキストスイッチ: 現在のタスクから次のタスクへの切り替えが行われることを指します。これには、現在のタスクの状態の保存や次のタスクの状態の復元などのオーバーヘッドが発生します。
このような振る舞いは、CFSが目指す「公平性」を保つためのものです。すなわち、すべてのタスクが公平にCPUのリソースを共有し、使用することを目指しています。