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k8sにおけるトラブルシューティング実例2: br_netfilterの有効化

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k8sにおけるトラブルシューティング実例2: br_netfilterの有効化

Kubernetesの深淵で見つけたミステリアスなネットワーク問題を解決する旅にようこそ。今回のトピックは、特にネットワークに精通していない方々にとっては、非常に挑戦的なトラブルシュートの話です。

問題の発生

Kubernetesクラスター内で、Pod間の名前解決がうまくいかないという珍しい現象に遭遇しました。digコマンドを使用してDNSクエリを実行したところ、予期せぬソースからのレスポンスが返ってきていました。具体的には、;; reply from unexpected source: 10.200.2.177#53, expected 10.32.0.10#53というエラーです。なぜ期待していたCoreDNSのサービスIPではなく、PodをホストするノードのIPアドレスから応答があるのでしょうか?

原因の追求

この問題を解明するために、我々はGitHubのIssueやコミュニティフォーラムを調査しました。結論から言うと、問題の核心はネットワークパケットのルーティングとフィルタリングに関連するものでした。Kubernetesでは、ネットワークトラフィックは通常、特定のルールと経路に従ってルーティングされます。しかし、特定の条件下では、これらのパケットが予期しないルートを取ることがあります。

br_netfilterとは?

それでは、br_netfilterモジュールの役割について解説しましょう。このモジュールは、Linuxのカーネルスペースで動作し、ネットワークブリッジ経由のトラフィックにNetfilterのルール(iptablesのルールなど)を適用する機能を提供します。これにより、Pod間や異なるネットワークセグメント間の通信においても、トラフィックの制御とフィルタリングが可能になります。

仮想環境でのレイヤー2のネットワーキング

物理的なネットワーク環境では、データリンク層(レイヤー2)は、MACアドレスを使用してデバイス間の通信を行います。しかし、仮想環境では、これらの物理的な概念がソフトウェアによってエミュレートされます。つまり、実際の物理的接続がないにも関わらず、MACアドレスに基づいた通信や、ブリッジ接続を通じたパケットの転送などが行われます。

解決策

この問題の解決策として、br_netfilterモジュールを有効にすることが推奨されています。この操作により、ネットワークトラフィックに対する適切なフィルタリングとルーティングルールが適用され、結果としてPod間の通信が期待通りに機能するようになります。

# br_netfilterを有効にする
sudo modprobe br_netfilter

さらに、永続的な解決策として、システムの起動設定にこのモジュールを追加することもできます。

理想のトラフィックのフィルタリングとトラブル

このケースにおいて、Kubernetesクラスタ内でのトラフィックの問題が発生している状況を具体的に考えてみましょう。以下に、期待されるトラフィックの流れと、問題が発生した際のトラフィックの流れの例を示します。

本来期待されるトラフィックの流れ:

  1. DNS クエリの開始: Pod(例:Pod A)から、サービス名(例:service.kubernetes)に対するDNSクエリが発行されます。
  2. リクエストの転送: このクエリは、設定されたDNSサービス(このケースではCoreDNSが動作するサービスのCluster IP、例:10.32.0.10)に転送されます。
  3. 名前解決とレスポンス: CoreDNSはクエリを受信し、要求されたサービス名を対応するIPアドレス(サービスのCluster IP)に解決します。そして、解決結果をPod Aに返します。

このプロセス中、トラフィックは明確なルートをたどり、レスポンスは期待されるソース(CoreDNSサービスのIP)から返されます。

問題が発生するケースのトラフィックの流れ:

  1. DNS クエリの開始: 同様に、Pod AからDNSクエリが発行されます。
  2. リクエストの転送: クエリはCoreDNSに転送されますが、ここで問題が発生します。
  3. ルーティングの不具合: 応答がPod Aに返されるべきですが、ネットワークの設定が不適切なために、応答パケットのソースIPが書き換えられます(NAT/Masqueradingの問題)。結果として、Pod Aは応答をCoreDNSのIP(10.32.0.10)ではなく、別の予期しないアドレス(例えば、ノードのIP 10.200.2.177)から受信してしまいます。
  4. エラー発生: Pod Aは、応答が期待されるソースから来ていないため、応答を無視またはエラーとして扱います。これが「reply from unexpected source」のエラーの原因です。

br_netfilterの役割と影響:

br_netfilterモジュールは、ブリッジ接続されたトラフィック(Pod間の通信など)に対して、Linuxカーネルのネットワークフィルタリング機能を適用します。これは、トラフィックが物理ネットワークインターフェースを介していなくても、IPテーブル(iptables)ルールがトラフィックに適用されることを意味します。

  1. 期待される動作の強制: br_netfilterが有効になっている場合、正しいiptablesルールが適用され、特にパケットのソースIPアドレスのマスカレードが適切に行われます。これにより、DNS応答が正しいソースIPアドレス(CoreDNSのCluster IP)を保持し、Pod Aが応答を受け入れることができるようになります。
  2. 予期しないルーティングの修正: 不適切なソースアドレスによる応答が、正しいルーティングとマスカレードルールの適用によって修正されます。これにより、パケットは期待されるソースからのものとしてPod Aに届けられ、通信が正常に完了します。

結論として、br_netfilterの有効化は、Kubernetesのようなコンテナオーケストレーションシステムにおけるネットワーク通信の整合性を保つ上で不可欠です。それにより、サービス間での適切な通信ルートが保証され、予期しないネットワークトラフィックの問題が解消されます。

結論

Kubernetes(k8s)は、内部のネットワーキングが適切に機能するために、br_netfilterモジュールまたはその同等の機能を前提としています。このモジュール(または同様の機能を持つ他のメカニズム)が存在することにより、KubernetesはPod間の通信と他の重要なネットワーク操作を正確に制御できます。

br_netfilterの重要性は、次の点で特に明らかです:

  1. Pod間通信: Kubernetes環境における異なるPod間でのトラフィックは、しばしばLinuxブリッジを使用してルーティングされます。br_netfilterがないと、このトラフィックはiptablesのルールを回避してしまい、ネットワークポリシーの適用、NAT、その他のネットワーク機能が正しく動作しなくなります。

  2. ネットワークポリシーの適用: Kubernetesは、ネットワークポリシーを使用して、Podレベルでのトラフィックフローを制御します。br_netfilterは、これらのポリシーが実際のトラフィックに適用されるためのルーティングを提供することで、必要なセキュリティと分離を保証します。

  3. サービスのルーティングと負荷分散: Kubernetesのサービス(特にClusterIPタイプ)は、内部的にiptables/NATルールを使用してトラフィックをPodにルーティングします。これらのルールは、br_netfilterモジュールがブリッジ接続されたトラフィックに適用されることで機能します。

従って、br_netfilterは、これらの操作を正しくサポートし、Kubernetesネットワーキングの一貫性と信頼性を保つために不可欠です。このモジュールがロードされていない、または適切に構成されていない場合、予期しないネットワークの問題、パフォーマンスの低下、またはセキュリティ違反が発生する可能性があります。

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