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MBTIの数理モデル:タイプダイナミクスの対称性

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TL; DR

  • MBTI各タイプのタイプダイナミクス(心的機能と内向、外向の組み合わせ)を行列で記述
  • タイプ同士の位置関係を知るために、タイプから別のタイプへの変換を導入
  • 上記の関係性を表す変換の合成は可換群となり、16タイプの位置関係は対称性を持つ

はじめに

自己分析のツールとして根強い人気を持つMBTI、SNSの自己紹介欄にタイプの4文字が並んでいることも珍しくありません1

これらの4文字で表されるタイプによって、そのタイプの人が直感、感覚、感情、思考をどのような優先順位で使うかが決まります(後述、MBTI各タイプのタイプダイナミクス の表参照)。
この表は複雑怪奇なので、ポケモンの相性表のように丸暗記している方もいるかもしれません。しかし、実際には、各機能がかなり規則的に並んでいます。

本記事では、MBTIの構造の規則性を見るため、心的機能を数理モデルとして捉えなおしてみます。

おことわり

本記事のMBTIに関しての説明は、「MBTIへのいざない」をもとに記載しています2
読みかけ+セッション未受講のため記事の説明に間違っている箇所があるかもしれません。その場合はコメント等でご指摘いただけますとありがたいです。

また、具体的なタイプ同士の位置関係についてのみ知りたい方は、位置関係の具体例 まで飛ばしてください。

本記事ではMBTIそのものについての学術的な取り扱いや、各タイプの特徴については立ち入りません。あくまで、MBTIが掲げるタイプの定義がどのような数理モデルになっているか整理したものとしてご覧ください。

本記事では、タイプそれぞれが持つ機能、態度の違いを知るため2つのタイプの位置関係を見ていきますが、これは タイプ同士の相性や優劣の比較ではありません! 機能が近いかどうかと人間関係には関係が無く、またタイプによって人間関係を決める、敵視する行為はMBTIの理念にも反する行為です3

MBTIとは?

本題に入る前に、改めてMBTIの仕組みについて軽く見ていきます。
ご存知の方は読み飛ばしてください。

4文字の意味

MBTIでは、4文字のアルファベットでタイプを表現します。各文字は2種類ずつあるため、全部で $2^4 = 16$ 通りあります。

  • 1文字目: 主機能(後述)の向き
    • E: 外向(外界に対してはたらきかける)
    • I: 内向(受け取り内省する)
  • 2文字目: 知覚機能(どのような情報を知覚し、引き付けられるか)
    • N: 直観 (比喩的なものや、アイデアや可能性を関連付けていくこと)
    • S: 感覚(具体的で実際的なこと)
  • 3文字目: 判断機能(収集した情報からどのように結論を導いたり判断したりするか)
    • F: 感情(個人の価値観や人間関係の調和を重視し判断)
    • T: 思考(分析し、因果関係から判断)
  • 4文字目: 外界への態度(判断機能と知覚機能、どちらを外界に対して使うか)
    • J: 判断機能
    • P: 知覚機能

上記から1文字ずつ選ばれ、例えば ENFJISTP 等でタイプを表現します。

MBTIと16Personalitiesは別物で、理論自体が異なります!ネット上で無料で診断できるのは16Personalitiesの方です。
「主人公(=ENFJ)」「巨匠(=ISTP)」のような二つ名は16Personalities特有の概念のため、本記事ではあえて使用しません4JavaとJavaScriptを間違えたらどれほど大量のマサカリが飛んでくるか想像してください
同様に、-A. -T も16Personalitiesの要素なので本記事には登場しません。

よく使う知覚機能、判断機能

MBTIでは、知覚機能(N or S)、判断機能(F or T)をいずれも「同時には使えないもの」とみなします。また、利き手のように、生得的に使いやすい方の機能が存在すると考えます。
さらに、知覚機能と判断機能は組み合わさって機能することから以下を仮定しました5

  • 知覚機能と判断機能のうち、いずれかをより頻繁に使用する
    • よく使う方:主機能
    • もう1つの方:補助機能
  • 主機能が外向(内向)の場合、補助機能はそれを補い内向(外向)になる

以下簡便のため、判断、知覚機能と内向、外向の組み合わせをアルファベット2文字で表現します6

機能 向き アルファベット
直観 外向 Ne
直観 内向 Ni
感覚 外向 Se
感覚 内向 Si
感情 外向 Fe
感情 内向 Fi
思考 外向 Te
思考 内向 Ti

MBTI各タイプのタイプダイナミクス

MBTIの肝は、タイプのアルファベットから実際に何の機能をどのような優先順位で使うのか整理した点です。
知覚機能(2文字目)と判断機能(3文字目)だけでは、

  • どちらが主機能か
  • どちらが外向か

は決定できません。そこで

  • 1文字目: 主機能が外向か内向か
  • 4文字目: 外向に使うのは知覚、判断のどちらか

を導入することで一意に定めます。
例えば NF (知覚に N, 判断に F を使用)のうち ENFJ は、

  • E: 主機能が外向
  • J: 外向に判断を使用(=内向に知覚を使用)

なので、主機能は外向判断 Fe、補助機能は内向直観 Ni となります。

同じ NFINFP

  • I: 主機能が内向
  • P: 外向に知覚を使用(=内向に判断を使用)

なので、主機能は内向判断 Fi、補助機能は外向直観 Ne となり区別できます。

16タイプそれぞれの主機能、補助機能は以下の通りです。

タイプ
ENFJ Fe Ni
INFJ Ni Fe
ENFP Ne Fi
INFP Fi Ne
ENTJ Te Ni
INTJ Ni Te
ENTP Ne Ti
INTP Ti Ne
ESFJ Fe Si
ISFJ Si Fe
ESFP Se Fi
ISFP Fi Se
ESTJ Te Si
ISTJ Si Te
ESTP Se Ti
ISTP Ti Se

また、主機能、補助機能で使われなかった残りの知覚、判断が使われる場合もあるため、これらもタイプダイナミクスで記述されます7

  • 第三機能:3番目に優先される機能。補助機能と対になり、内向、外向も逆転
  • 劣等機能:4番目に優先される(普段は使われない)機能。主機能と対になり、内向、外向も逆転

なお、N, F, S, Tに対し内向、外向が反転した残りの4つについては無意識化でしか使われないため扱わないとしています。

改めて全タイプのタイプダイナミクスを記載します8

タイプ
ENFJ Fe Ni Se Ti
INFJ Ni Fe Ti Se
ENFP Ne Fi Te Si
INFP Fi Ne Si Te
ENTJ Te Ni Se Fi
INTJ Ni Te Fi Se
ENTP Ne Ti Fe Si
INTP Ti Ne Si Fe
ESFJ Fe Si Ne Ti
ISFJ Si Fe Ti Ne
ESFP Se Fi Te Ni
ISFP Fi Se Ni Te
ESTJ Te Si Ne Fi
ISTJ Si Te Fi Ne
ESTP Se Ti Fe Ni
ISTP Ti Se Ni Fe

タイプダイナミクスを4次元空間上へ記述する

ここからが本題です。
MBTIのタイプダイナミクスを扱いやすい形式で書き直し、数理モデルとして考えていきます。

心的機能のベクトル表現

まずは心的機能+外向、内向の組み合わせをベクトルで表現します。知覚、判断それぞれの機能N, S, F, Tを独立した次元とし、外向、内向を成分の符号で表します。軸の順番と符号の取り方をどのようにとってもこの先の議論には影響しないため、ここではF, N, S, Tの順にし外向を1, 内向を-1で表します9

このとき、各機能のベクトルは以下のように表されます。

$$
Fe = \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}
$$

$$
Ne = \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}
$$

$$
Se = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix}
$$

$$
Te = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}
$$

$$
Fi = \begin{pmatrix} -1 \\ 0 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}
$$

$$
Ni = \begin{pmatrix} 0 \\ -1 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}
$$

$$
Si = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ -1 \\ 0 \end{pmatrix}
$$

$$
Ti = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 0 \\ -1 \end{pmatrix}
$$

タイプダイナミクスの行列表現

続いて、各タイプのタイプダイナミクスを考えます。
各タイプは機能を4つ(主機能、補助機能、第三機能、劣等機能)持っているため、各機能のベクトルを主機能から順番に並べた4×4行列で表現することができます。

$$
\rm{ENFJ} = \begin{pmatrix} Fe & Ni & Se & Ti \end{pmatrix}
$$

具体的な値で書くとこうなります。

$$
\rm{ENFJ} = \begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & -1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & -1
\end{pmatrix}
$$

タイプ同士の位置関係を知る

タイプ同士の位置関係を表す変換(タイプ変換)の導入

タイプを行列形式で記述できるようになったので、いよいよタイプ同士の位置関係について考えていきます。単に行列を16個並べて眺めても法則性は分からないので、位置関係を知るためタイプXから別のタイプYへの変換を考えてみます。

具体的には、タイプX、Yに対し、

$$
Y = C_1 X C_2
$$

となるような行列 $C_1$, $C_2$ によって変換を定義します。以下、これをタイプ変換と呼びます。

一人の人間のタイプが変わった場合のシミュレーションではありません!
この後でタイプの位置関係を抽象的に扱いたいため、タイプ間の変換という概念を導入しています。

また、XとYのうちアルファベットが入れ替わった場所を 、そのままの場所を としてタイプ変換を表記します。
Xが ENFJ, YがENFP なら4文字目だけ入れ替わっているためタイプ変換は ◇◇◇◆ となります。
XもYも ENFJ なら、タイプ変換は ◇◇◇◇ です。

読者の中には、このような変換はタイプごとに異なるのでは(例えば、◇◇◇◆ を考えたときENFJをENFPにする変換はISTPをISTJにする変換と同じなのか?)と考えている方もいると思います。しかし、この変換はタイプダイナミクスの定義からX, Yによらず同じ行列で表現可能 です。

以下でまず基本的なタイプ変換がXによらないことを見ていきます。

1文字目: ◆◇◇◇

1文字目は外向E or 内向Iを表します。これは外向、内向どちらが主機能かを表し、選ばれなかった方は補助機能になります。
2文字目、3文字目が同じなので、XとYの主機能と補助機能の組み合わせ(NF, SF, NT, ST)は同じです。
また、4文字目も同じなので、外向(eを持つ)が判断(N or S)、知覚(F or T)のどちらになるかも同じです。
すなわち、◆◇◇◇主機能と補助機能を入れ替える 操作です。

行方向、NとF, SとTは入れ替わらないため

$$
C_1 = I
$$
(Iは単位行列)です。

列方向は主機能と補助機能が入れ替わり、あわせて第三機能と劣等機能も入れ替わるため

$$
C_2= \begin{pmatrix}
0 & 1 & 0 & 0 \\
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1 \\
0 & 0 & 1 & 0
\end{pmatrix}
$$

となります。

例:X=ENFJ (Fe Ni Se Ti), Y=INFJ (Ni Fe Ti Se)の場合

$$
\rm{ENFJ} = \begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & -1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & -1
\end{pmatrix}
$$

$$
\rm{INFJ} = \begin{pmatrix}
0 & 1 & 0 & 0 \\
-1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1 \\
0 & 0 & -1 & 0
\end{pmatrix}
$$

$$
C_1 \; \rm{ENFJ} \; C_2 = \begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & -1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & -1
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
0 & 1 & 0 & 0 \\
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1 \\
0 & 0 & 1 & 0
\end{pmatrix}
= \begin{pmatrix}
0 & 1 & 0 & 0 \\
-1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1 \\
0 & 0 & -1 & 0
\end{pmatrix}
$$

2文字目: ◇◆◇◇

2文字目は知覚機能なので、直観Nと感覚Sが入れ替わります。

行方向はN成分とS成分が入れ替わり

$$
C_1= \begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1
\end{pmatrix}
$$

列方向は並び替えがないので

$$
C_2 = I
$$

となります。

例:X=ENFJ (Fe Ni Se Ti), Y=ESFJ(Fe Si Ne Ti)の場合

$$
\rm{ENFJ} = \begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & -1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & -1
\end{pmatrix}
$$

$$
\rm{ESFJ} = \begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & -1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & -1
\end{pmatrix}
$$

$$
C_1 \; \rm{ENFJ} \; C_2 =
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & -1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & -1
\end{pmatrix}
= \begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & -1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & -1
\end{pmatrix}
$$

3文字目: ◇◇◆◇

3文字目は判断機能なので、感情Fと思考Tが入れ替わります。

行方向はF成分とT成分が入れ替わり

$$
C_1= \begin{pmatrix}
0 & 0 & 0 & 1 \\
0 & 1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
1 & 0 & 0 & 0
\end{pmatrix}
$$

列方向は並び替えがないので

$$
C_2 = I
$$

となります。

例:X=ENFJ (Fe Ni Se Ti), Y=ESTJ(Te Si Ne Fi)の場合

$$
\rm{ENFJ} = \begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & -1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & -1
\end{pmatrix}
$$

$$
\rm{ESTJ} = \begin{pmatrix}
0 & 0 & 0 & -1 \\
0 & -1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
1 & 0 & 0 & 0
\end{pmatrix}
$$

$$
C_1 \; \rm{ENFJ} \; C_2 =
\begin{pmatrix}
0 & 0 & 0 & 1 \\
0 & 1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
1 & 0 & 0 & 0
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & -1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & -1
\end{pmatrix}
= \begin{pmatrix}
0 & 0 & 0 & -1 \\
0 & -1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
1 & 0 & 0 & 0
\end{pmatrix}
$$

4文字目: ◇◇◇◆

ここだけ少しややこしいです。結論から言うと

$$
C_1 = I
$$

$$
C_2= \begin{pmatrix}
0 & -1 & 0 & 0 \\
-1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & -1 \\
0 & 0 & -1 & 0
\end{pmatrix}
$$

となります。
4文字目が逆ということは、外向が知覚か判断かが逆になります。言い換えると知覚、判断の外向、内向が逆転します。
2文字目、3文字目は同じなので、知覚、判断の組み合わせ(NF, SF, NT, ST)は同じです。
1文字目も同じなので、主機能の内向、外向は同じです。
すなわち、

  • 内向、外向を入れ替える
  • 主機能の内向、外向が反転してしまったので、元に戻すよう主機能と補助機能をさらに入れ替える

という操作になります。

結果、◆◇◇◇ の符号を反転したものになります。

例:X=ENFJ (Fe Ni Se Ti), Y=ENFP (Ne Fi Te Si)の場合

$$
\rm{ENFJ} = \begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & -1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & -1
\end{pmatrix}
$$

$$
\rm{ENFP} = \begin{pmatrix}
0 & -1 & 0 & 0 \\
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & -1 \\
0 & 0 & 1 & 0
\end{pmatrix}
$$

$$
C_1 \; \rm{ENFJ} \; C_2 = \begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & -1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & -1
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
0 & -1 & 0 & 0 \\
-1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & -1 \\
0 & 0 & -1 & 0
\end{pmatrix}
= \begin{pmatrix}
0 & -1 & 0 & 0 \\
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & -1 \\
0 & 0 & 1 & 0
\end{pmatrix}
$$

検証スクリプト

まだ疑わしいと思っている方のために numpyで検証スクリプトを作成しました。16タイプすべてで成り立っていることを確認できます10

検証スクリプト
import numpy as np


# function vectors
# [F, N, S, T]
fe = np.array([1, 0, 0, 0])
ne = np.array([0, 1, 0, 0])
se = np.array([0, 0, 1, 0])
te = np.array([0, 0, 0, 1])

fi = -fe
ni = -ne
si = -se
ti = -te


# type matrix
enfj = np.array([fe, ni, se, ti]).T
esfj = np.array([fe, si, ne, ti]).T
enfp = np.array([ne, fi, te, si]).T
entp = np.array([ne, ti, fe, si]).T

esfp = np.array([se, fi, te, ni]).T
estp = np.array([se, ti, fe, ni]).T
entj = np.array([te, ni, se, fi]).T
estj = np.array([te, si, ne, fi]).T

infp = np.array([fi, ne, si, te]).T
isfp = np.array([fi, se, ni, te]).T
infj = np.array([ni, fe, ti, se]).T
intj = np.array([ni, te, fi, se]).T

isfj = np.array([si, fe, ti, ne]).T
istj = np.array([si, te, fi, ne]).T
intp = np.array([ti, ne, si, fe]).T
istp = np.array([ti, se, ni, fe]).T


# type conversion matrix
conv_id = np.array([[1, 0, 0, 0], [0, 1, 0, 0], [0, 0, 1, 0], [0, 0, 0, 1]])
# ◆◇◇◇: E <-> I ([col[1], col[0], col[3], col[2]])
conv1 = np.array([[0, 1, 0, 0], [1, 0, 0, 0], [0, 0, 0, 1], [0, 0, 1, 0]])
# ◇◆◇◇: N <-> S (swap N and S)
conv2 = np.array([[1, 0, 0, 0], [0, 0, 1, 0], [0, 1, 0, 0], [0, 0, 0, 1]])
# ◇◇◆◇: F <-> T (swap F and T)
conv3 = np.array([[0, 0, 0, 1], [0, 1, 0, 0], [0, 0, 1, 0], [1, 0, 0, 0]])
# ◇◇◇◆: J <-> P (-[col[1], col[0], col[3], col[2]])
conv4 = -conv1


if __name__ == '__main__':
    # ◆◇◇◇
    assert np.all(enfj @ conv1 == infj)
    assert np.all(esfj @ conv1 == isfj)
    assert np.all(enfp @ conv1 == infp)
    assert np.all(entp @ conv1 == intp)
    assert np.all(esfp @ conv1 == isfp)
    assert np.all(estp @ conv1 == istp)
    assert np.all(entj @ conv1 == intj)
    assert np.all(estj @ conv1 == istj)
    assert np.all(infj @ conv1 == enfj)
    assert np.all(isfj @ conv1 == esfj)
    assert np.all(infp @ conv1 == enfp)
    assert np.all(intp @ conv1 == entp)
    assert np.all(isfp @ conv1 == esfp)
    assert np.all(istp @ conv1 == estp)
    assert np.all(intj @ conv1 == entj)
    assert np.all(istj @ conv1 == estj)

    # ◇◆◇◇
    assert np.all(conv2 @ enfj == esfj)
    assert np.all(conv2 @ esfj == enfj)
    assert np.all(conv2 @ enfp == esfp)
    assert np.all(conv2 @ entp == estp)
    assert np.all(conv2 @ esfp == enfp)
    assert np.all(conv2 @ estp == entp)
    assert np.all(conv2 @ entj == estj)
    assert np.all(conv2 @ estj == entj)
    assert np.all(conv2 @ infj == isfj)
    assert np.all(conv2 @ isfj == infj)
    assert np.all(conv2 @ infp == isfp)
    assert np.all(conv2 @ intp == istp)
    assert np.all(conv2 @ isfp == infp)
    assert np.all(conv2 @ istp == intp)
    assert np.all(conv2 @ intj == istj)
    assert np.all(conv2 @ istj == intj)

    # ◇◇◆◇
    assert np.all(conv3 @ enfj == entj)
    assert np.all(conv3 @ esfj == estj)
    assert np.all(conv3 @ enfp == entp)
    assert np.all(conv3 @ entp == enfp)
    assert np.all(conv3 @ esfp == estp)
    assert np.all(conv3 @ estp == esfp)
    assert np.all(conv3 @ entj == enfj)
    assert np.all(conv3 @ estj == esfj)
    assert np.all(conv3 @ infj == intj)
    assert np.all(conv3 @ isfj == istj)
    assert np.all(conv3 @ infp == intp)
    assert np.all(conv3 @ intp == infp)
    assert np.all(conv3 @ isfp == istp)
    assert np.all(conv3 @ istp == isfp)
    assert np.all(conv3 @ intj == infj)
    assert np.all(conv3 @ istj == isfj)

    # ◇◇◇◆
    assert np.all(enfj @ conv4 == enfp)
    assert np.all(esfj @ conv4 == esfp)
    assert np.all(enfp @ conv4 == enfj)
    assert np.all(entp @ conv4 == entj)
    assert np.all(esfp @ conv4 == esfj)
    assert np.all(estp @ conv4 == estj)
    assert np.all(entj @ conv4 == entp)
    assert np.all(estj @ conv4 == estp)
    assert np.all(infj @ conv4 == infp)
    assert np.all(isfj @ conv4 == isfp)
    assert np.all(infp @ conv4 == infj)
    assert np.all(intp @ conv4 == intj)
    assert np.all(isfp @ conv4 == isfj)
    assert np.all(istp @ conv4 == istj)
    assert np.all(intj @ conv4 == intp)
    assert np.all(istj @ conv4 == istp)

タイプ変換の合成は可換群になる

より複雑なタイプ変換、◇◆◇◆◆◆◆◇ といったものも一般化できるのでしょうか?実は任意のタイプ変換がタイプによらず定まります。
任意のタイプ変換は、1文字違いのタイプ変換(◆◇◇◇、◇◆◇◇、◇◇◆◇、◇◇◇◆)の合成で表現できるためです。
以下、タイプXからYのタイプ変換TC1

$$
Y = C_{11} \; X \; C_{12}
$$

タイプYからZのタイプ変換TC2

$$
Z = C_{21} \; Y \; C_{22}
$$

に対し、タイプXからZへのタイプ変換 TC1 * TC2 (タイプ変換の合成)を

$$
Z = C_{21} \; C_{11} \; X \; C_{12} \; C_{22}
$$

と定義します。

このとき、任意のタイプ変換は
(◆◇◇◇)^k1 * (◇◆◇◇)^k2 * (◇◇◆◇)^k3 * (◇◇◇◆)^k4 (kiは0または1)

の形で表される(ただしTC^k = TC * TC * ...(k回)... * TCTC^0 = ◇◇◇◇)ため、タイプ変換はタイプXによらず同じものになります。

また、このときタイプ変換の集合と演算 * は群となります。

  • 結合法則: (TC1 * TC2) * TC3 = TC1 * (TC2 * TC3)
    • 行列積の結合性より
  • 単位元: 任意のTC に対し TC * e = e * TC = TC となる e が存在する
    • e = ◇◇◇◇
  • 逆元: 任意の TC に対し TC^(-1) * TC = TC * TC^(-1) = e となる TC^(-1) が存在する
    • TC自身が逆元 TC^(-1) = TC

また、可換性も持っています11

(ざっくり証明)

(i) ◆◇◇◇、◇◆◇◇、◇◇◆◇、◇◇◇◆の間の可換性

  • ◆◇◇◇、◇◇◇◆と◇◆◇◇、◇◇◆◇の間の可換性:前者は$C_1 = I$, 後者は $C_2 = I$のため可換
  • ◆◇◇◇と◇◇◇◆の間の可換性: ◇◇◇◆の$C_2$は◆◇◇◇の$C_2$の-1倍、$C_1$はいずれも$I$なので可換
  • ◇◆◇◇と◇◇◆◇の間の可換性: (合成が同じ行列になる。計算略)

(ii) 任意のタイプ変換TC1, TC2の間の可換性
TC1=(◆◇◇◇)^k1 * (◇◆◇◇)^k2 * (◇◇◆◇)^k3 * (◇◇◇◆)^k4TC2=(◆◇◇◇)^l1 * (◇◆◇◇)^l2 * (◇◇◆◇)^l3 * (◇◇◇◆)^l4 の形で書けるため可換

合成が可換群であることが分かったので、* に対して気軽に複数繋げたり入れ替えたりしても構いません。

位置関係の具体例

抽象的な話が続いたので、次はタイプ同士の具体的な位置関係を見ていきます。

(読み飛ばした方へ。2つのタイプのうちアルファベットが入れ替わった場所を 、そのままの場所を としてタイプ同士の関係を表記しています)

1文字違い

1文字目(外向、内向)

◆◇◇◇は主機能と補助機能を入れ替えます。

$$
C_1 = I
$$

$$
C_2= \begin{pmatrix}
0 & 1 & 0 & 0 \\
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1 \\
0 & 0 & 1 & 0
\end{pmatrix}
$$

4種類の機能の組み合わせは変わりません。

2文字目(知覚機能)

◇◆◇◇はNとSのみ入れ替えます。

$$
C_2= \begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1
\end{pmatrix}
$$

$$
C_2 = I
$$

モデル上は変換はタイプによりませんが、実際の心理的な影響としては主機能が知覚か補助機能が知覚かで違いの大きさが変わると思われます。
(例えば判断機能が主機能のENFJ Fe Ni Se Ti と ESFJ Fe Si Ne Ti では補助機能と第三機能が変化しますが、知覚機能が主機能のINFJ Ni Fe Ti Se とISFJ Si Fe Ti Ne では主機能と劣等機能が変化します)

また、4つの機能を見るとNとSの内向、外向が入れ替わっています。
(N, Sは片方が内向、もう片方が外向であったことを思い出してください)

3文字目(判断機能)

◇◇◆◇はFとTのみ入れ替えます。性質としては◇◆◇◇同様です。

4文字目(態度)

◇◇◇◆は◆◇◇◇の符号を反転したものです。

$$
C_1 = I
$$

$$
C_2= \begin{pmatrix}
0 & -1 & 0 & 0 \\
-1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & -1 \\
0 & 0 & -1 & 0
\end{pmatrix}
$$

すべて符号が反転するため一致する機能はありません。さらに、主機能と補助機能も入れ替わっています。一文字違いの中ではもっとも離れた位置にあるといえるかもしれません。

また、◆◇◇◆ = ◇◇◇◆ * ◆◇◇◇ なので ◆◇◇◆

$$
C_1 = I
$$

$$
C_2= -I
$$

すなわち内向、外向だけ反転させたものになります。
例えばENFJは Fe, Ni, Se, Te で INFPは Fi, Ne, Si, Ti となります。

同じ機能を持ち、優先順位のみ異なる組み合わせ

同じ4つの機能を持つのは

  • ◇◇◇◇
  • ◆◇◇◇
  • ◇◆◆◆
  • ◆◆◆◆

に限られます。◇◇◇◇は同一、◆◇◇◇は主機能と補助機能の入れ替えです。他は自明ではないのでなぜ同じ機能になるのか見ていきましょう。

まずは ◆◆◆◆ です。

◆◆◆◆ = ◆◇◇◆ * ◇◆◇◇ * ◇◇◆◇ なので、

  • ◆◇◇◆: すべての内向、外向入れ替え
  • ◇◆◇◇: N, Sの内向、外向入れ替え
  • ◇◇◆◇: T, Fの内向、外向入れ替え

で内向、外向の変化が帳消しになります。また、優先順位はNとS, TとFが入れ替わるのでもとのタイプの逆順になります。
実際、計算すると

$$
C_1= \begin{pmatrix}
0 & 0 & 0 & -1 \\
0 & 0 & -1 & 0 \\
0 & -1 & 0 & 0 \\
-1 & 0 & 0 & 0
\end{pmatrix}
$$

$$
C_2 = -I
$$

となります。

また、◇◆◆◆ = ◆◆◆◆ * ◆◇◇◇ なので ◇◆◆◆◆◆◆◆ の主機能と補助機能を入れ替えたものとなり、同様に機能が元のタイプと同じになります。

整理すると以下のようになります。

タイプ変換 入れ替え方
◇◇◇◇ なし
◆◇◇◇ 主機能と補助機能
◇◆◆◆ 主機能と第三機能
◆◆◆◆ 主機能と劣等機能

すべての機能が異なる組み合わせ

◆◇◇◆ ですべての機能の内向、外向が入れ替わるため、◆◇◇◆と同じ機能を持つ

  • ◆◇◇◆ (= ◆◇◇◆ * ◇◇◇◇)
  • ◇◇◇◆ (= ◆◇◇◆ * ◆◇◇◇)
  • ◆◆◆◇ (= ◆◇◇◆ * ◇◆◆◆)
  • ◇◆◆◇ (= ◆◇◇◆ * ◆◆◆◆)

はいずれも1つも同じ機能を持ちません。

優先順位もすべて入れ替わるのが ◇◆◆◇ なので、直観的には一番「遠い」と思われる、すべての文字が入れ替わる ◆◆◆◆ よりもさらに「遠い」組み合わせといえるかもしれません。

おわりに

以上、MBTIを数理モデルとして整理してみた紹介でした。

想像以上にタイプの対称性が見えた(かつ、その対象性に例外が無かった)ことに驚きました。
各人の「普通」を等価なものとして扱いたいという理念を強く感じます。

また、ユングの理論を拡張してMBTI独自で導入された4文字目(態度)が一番複雑な位置関係になることも興味深かったです。
(「主機能が知覚、判断のどちらか」という定義だった場合、もう少しシンプルな位置関係になったかもしれません)

本記事では数式での紹介にとどまりましたが、4次元空間上に図示することでより位置関係が直感的になるのではと考えています。飽きていなければ 別の記事でグラフ上のプロットにも挑戦してみたいと思います。

  1. MBTIではなく16Personalitiesの場合も多いです(本記事では16Personalitiesは扱いませんのでご了承ください)

  2. MBTI公式セッションを行っているJPPが出版した本です。

  3. 「普通」と「逸脱」という二項対立ではなく、個々人の「普通」を等価なものとして配置し自己理解、他者理解を促すために作られたという意図が見えます。

  4. MBTIは各タイプをカテゴリととらえ N - S, F - Tを同時には使用できないものとしているのに対し、16PersonalitiesではN - S, F - Tをグラデーションとしてその間の割合で表現するのも大きな違いです。

  5. これが、MBTIが16タイプで記述可能な理由です。主機能は機能4通り×向き2通り=8通り取れますが、補助機能は知覚、判断のうち主機能で選んでいないほう(2通り)×主機能と逆の向き(1通り)=2通りしか取れません。

  6. 「MBTIへのいざない」では EF, IT のように書かれますが、読みやすさのためネット上で広く使用される書き方に揃えました。

  7. 「MBTIへのいざない」には、主機能と機能、態度が対極のものが劣等機能になると考えるのが自然と書かれていました。劣等機能が主機能の対をなすのはモデルの定義と考えてよさそうです。一方、第三機能が補助機能と対をなすのが定義なのか性質なのか分かりませんでした...

  8. 第三機能と劣等機能の導入によりあらたなタイプが必要になると考えた方もいるかもしれませんが、それぞれ主機能、補助機能と一対一対応するためタイプのバリエーションは増えません。

  9. しつこいようですが、内向を「マイナス」なものとして扱っているわけではありません!決めないと計算ができないのでさしあたり決めているだけです。符号を逆にしても構いません。

  10. 元が有限個だとしらみつぶしに確かめればよいので楽ですね :innocent:

  11. タイプ変換の合成に順序があると困る(◆◇◇◇ * ◇◆◇◇◇◆◇◇ * ◆◇◇◇ と同じでないと ◆◆◇◇ が満足に定義できない)ので当然ではあるのですが、行列積が可換になるのは自明ではないので記載しました。

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