はじめに
Bedrock AgentCore Web Searchでいろいろ確かめていた時に、クエリを工夫しないと欲しい情報が得られなさそうと思ったので、簡単に確かめてみることにしました。
今回は、日清食品株式会社について調べてみたときにどんな結果が得られるか確かめてみました。
クエリに使用したワードは以下です。
- 日清
- ニッシン
- NISSIN
- 日清食品
- 日清食品株式会社
- 日清食品(株)
- NISSIN FOODS
「日清」という言葉は日清食品だけを指すものではありません。
日清医療食品、日清オイリオ、日清製粉など、名称に「日清グループ」の別企業があります。
企業以外にも、日清戦争や日清修好条規といった歴史用語があります。
そこで今回は、会社名入力欄に「日清」やその表記違いが入力された場合に、Amazon Bedrock AgentCore Web Searchがユーザーの意図した日清食品株式会社の情報を取得できるか検証しました。
検証したかったこと
今回確認したかったのは、次の3点です。
- 略称や表記の違いがあっても、日清食品に関連する情報を取得できるか
- 別企業や日清戦争など、意図しない情報が混在しないか
- アプリ側で「会社情報」「会社概要」という固定語を追加すると、検索結果が改善するか
AgentCore Web Search自体の検索精度を網羅的に評価するものではなく、会社名だけを入力するアプリを想定したケーススタディです。
検証環境
- 検証時期:2026年8月
- AWSリージョン:米国東部(バージニア北部)
us-east-1 - Amazon Bedrock AgentCore Gateway
- Web Search Tool
- 検索結果:各クエリの上位5件
今回は、Web Search Toolが返したタイトル、URL、概要を直接確認しています。LLMによる検索結果の要約や、対象企業の再判定は行っていません。
Web Search Toolの構築方法や呼び出し方は、AWS公式ドキュメントを参照してください。
正解として扱う企業とページ
今回の対象企業は、即席麺などを製造・販売している「日清食品株式会社」です。
検索結果の評価では、日清食品公式サイトの次の会社概要ページを正解ページとして扱いました。
日清食品株式会社と日清食品ホールディングス株式会社は別法人です。両社の情報が混ざっていないかも確認します。
検証クエリ
会社名の入力候補として、次の7種類を用意しました。
company_names = [
"日清",
"ニッシン",
"NISSIN",
"日清食品",
"日清食品株式会社",
"日清食品(株)",
"NISSIN FOODS",
]
それぞれについて、次の3パターンを比較しました。
パターン1:入力値をそのまま検索
日清
ユーザーの入力を加工せず、そのままWeb Search Toolへ渡すパターンです。以降、本記事では「バニラ」と表記します。
パターン2:末尾に「会社情報」を追加
日清 会社情報
アプリ側で、会社について調べているという文脈を補足することを想定しています。
パターン3:末尾に「会社概要」を追加
日清 会社概要
企業の公式な会社概要ページに近づくことを期待したパターンです。
検証結果
検索結果1位を比較すると、次のようになりました。
| 入力 | 検索ワードのみ | +会社情報 | +会社概要 |
|---|---|---|---|
| 日清 | Wikipediaの曖昧さ回避 | 日清オイリオグループ | 日清住宅サービス |
| ニッシン | Wikipediaの曖昧さ回避 | 歯科材料メーカーのニッシン | プラズマ装置メーカーのニッシン |
| NISSIN | 米国のNissin Foods | 歯科材料メーカーのニッシン | 日新電機商事 |
| 日清食品 | 日清食品グループ オンラインストア | 日清医療食品の就活情報 | 日清医療食品の就活情報 |
| 日清食品株式会社 | 日清食品パックス | 日清食品のマイナビ掲載ページ | 日清食品のマイナビ掲載ページ |
| 日清食品(株) | 日清医療食品 | 日清食品のマイナビ掲載ページ | 日清食品のマイナビ掲載ページ |
| NISSIN FOODS | 米国のNissin Foods | 日清食品ビジネスサポートプラス | 日清食品グループ関連ページ |
7表記×3パターンの合計21クエリについて、上位5件、合計105件を確認しました。しかし、正解として設定した日清食品株式会社の公式会社概要ページは一度も表示されませんでした。
ワードのみで検索
日清では、1位がWikipediaの曖昧さ回避ページでした。一方、2位には日清食品グループのオンラインストア、3位には日清食品グループの公式サイトが表示されました。
日清食品を自動確定できる結果ではありませんが、候補の一つとして日清食品に到達することはできています。
NISSINとNISSIN FOODSでは、米国のNissin Foodsが1位になりました。食品ブランドとしての関連性は高いものの、日本の日清食品株式会社の会社情報を取得するという目的には一致していません。
日清食品では、日清食品グループのオンラインストアが1位、公式サイトのトップページが2位でした。対象ブランドには到達していますが、目的の会社概要ページではありませんでした。
一方、より明確に見える日清食品株式会社では日清食品パックスが1位、日清食品(株)では日清医療食品が1位になりました。
正式社名に近づければ必ず対象企業が上位になるわけではない、という結果です。
「会社情報」を追加した場合
会社について検索していることを明確にするため、末尾に会社情報を追加しました。
しかし、検索結果には次のようなサイトが増えました。
- 就活サイト
- 企業口コミサイト
- 法人情報サイト
- IR情報サイト
- 別企業の「会社情報」ページ
特に日清食品 会社情報では、日清医療食品株式会社の就活情報が1位になりました。
日清食品株式会社 会社情報と日清食品(株) 会社情報では、日清食品のマイナビ掲載ページが1位になっています。対象企業に関係するページではありますが、公式サイトではありません。
会社情報という言葉は、企業公式サイトだけでなく、就活サイトや口コミサイトでも広く使われています。そのため、今回の結果では対象企業の特定精度を上げるより、「会社情報」という言葉を持つページへ検索結果を寄せる方向に働きました。
「会社概要」を追加した場合
次に、末尾へ会社概要を追加しました。
公式サイトの会社概要ページに近づくことを期待しましたが、結果は会社情報と大きく変わりませんでした。
日清食品 会社概要では日清医療食品の就活情報、日清食品株式会社 会社概要ではマイナビの会社概要ページが1位です。
また、曖昧な入力である日清 会社概要では日清住宅サービス、NISSIN 会社概要では日新電機商事が1位になりました。
会社概要も多くの企業や就活サイトで使われる一般的な言葉です。企業名が曖昧な状態では、別企業の会社概要ページを検索対象から除外できませんでした。
歴史用語との混同も確認した
「日清」という表記から、日清戦争などの歴史情報が取得されるかも確認しました。
日清 歴史
日清 沿革
日清 歴史では、1位がチキンラーメン、2位が日清戦争に関するページでした。企業と歴史の両方が検索結果に含まれています。
日清 沿革では、1位が日清修好条規、2位が日清食品でした。
「沿革」は企業情報でよく使われる言葉ですが、日清だけでは「企業の沿革」という文脈に限定されず、日本と清国に関する歴史用語としても解釈されることが分かりました。
Web検索と企業の一意な特定は別の処理
今回利用したWeb Search Toolは、入力に関連するWebページを検索する機能です。
例えば日清という入力だけでは、次のどの企業を指しているか確定できません。
- 日清食品株式会社
- 日清医療食品株式会社
- 日清オイリオグループ株式会社
- 日清製粉グループ本社
- その他の「日清」「ニッシン」を含む企業
Web検索に企業の特定まで任せるのではなく、企業候補を特定する処理と、特定済み企業の情報を検索する処理を分ける必要があると考えました。
正式社名でも完全一致検索になるとは限らない
日清食品株式会社で日清食品パックスが、日清食品(株)で日清医療食品が上位に表示されました。
検索結果を見る限り、会社名全体の一致だけでなく、共通する言葉やページ内の記載も関連度に影響しているように見えます。
ただし、AgentCore Web Search内部の検索処理を確認したわけではないため、具体的な単語分割やランキング方法については断定できません。
第三者サイトではグループ会社の情報が混在する
検索結果に表示された就活サイトには、日清食品株式会社だけでなく、日清食品ホールディングス株式会社や関連会社の情報も掲載されていました。
例えば、現在の日清食品株式会社と日清食品ホールディングス株式会社では、設立年月や資本金が異なります。
| 項目 | 日清食品株式会社 | 日清食品ホールディングス株式会社 |
|---|---|---|
| 設立年月 | 2008年10月1日 | 1948年9月4日 |
| 資本金 | 50億円 | 251億2,200万円 |
| 主な役割 | 即席麺などの製造・販売 | グループ経営・管理 |
複数法人の情報を含む検索結果をそのままLLMに渡すと、対象企業に親会社の設立年や資本金を付けて回答する可能性があります。
検索結果に対象企業名が含まれているかだけでなく、どの法人について記載された数値かを確認する必要があります。
アプリに組み込む場合の対応案
もしアプリに組み込むなら、Web Search Toolの検索結果だけで企業を自動確定するのではなく、次のような構成が必要だと考えました。
- ユーザーに会社名を入力してもらう
- 入力内容から候補企業を検索する
- 曖昧な場合は、候補企業をユーザーに選択してもらう
- 正式社名、法人番号、公式ドメインなどで企業を確定する
- 確定した企業についてWeb検索を行う
- 公式ドメインの情報を優先する
- 親会社・子会社など、別法人の情報が混在していないか確認する
例えば、日清という入力に対して、アプリ側で次のような候補を表示します。
どの企業について調べますか?
- 日清食品株式会社
- 日清医療食品株式会社
- 日清オイリオグループ株式会社
- 日清製粉グループ本社
- その他
対象企業を確定した後で、正式社名と公式ドメインを検索に利用する方が安全です。
今回の検証の限界
今回の検証には、次の制約があります。
- 日清食品周辺のみを対象としている
- 各クエリの実行回数が少ない
- Webの検索結果は時間によって変わる可能性がある
- 検索結果をLLMで再評価する処理は検証していない
- 公式ドメインを指定した検索は検証していない
- 他の検索サービスとの比較は行っていない
そのため、今回の結果だけでAgentCore Web Search全体の精度を評価することはできません。
今回確認できたのは、日清食品を対象とした条件では、会社情報や会社概要のような一般的な言葉を追加するだけでは、目的の企業を一意に特定できなかったという点です。
まとめ
会社名だけを入力するアプリを想定し、Amazon Bedrock AgentCore Web Searchで日清食品株式会社の情報を取得できるか検証しました。
今回の結果は次のとおりです。
-
日清では日清食品関連のページに到達したが、一つの企業には確定できなかった -
ニッシンやNISSINでは別企業や海外サイトが表示された - 正式社名に近い
日清食品株式会社でも、類似名称の別企業が上位になった -
会社情報を追加すると、就活・口コミサイトが増えた -
会社概要を追加しても、別企業の会社概要を除外できなかった - 21クエリの上位5件に、目的の公式会社概要ページは表示されなかった
Web Search Toolは関連するWebページを取得できますが、会社名から対象企業を一意に特定する処理は別途必要になりそうです。
アプリへ組み込む場合は、企業候補の選択、正式社名や法人番号による確定、公式ドメインの優先といった処理を組み合わせる必要があると考えています。