はじめに
水産と申します。地方国立大学歯学部に在籍する3年生です。
SecHack365('25)思索駆動コースを修了しました。
この記事は、応募を迷っている人がHPにはない情報に辿り着けるようにするためと、
実際にSecHack365がどんな雰囲気なのかを少しでも知れるようにするために書きます。
今年度のコース概要はまだ発表されていません。
2026年度、思索駆動コースの募集はありません。
SecHack365の公式サイトを見れば開催概要やイベントレポート、作品紹介までは辿り着けます。
ですが実際に参加してみると、それだけでは見えないことがかなり多いです。
周囲のレベルの高さにどう向き合うか。途中で作品の方向性が揺れたときにどう立て直すか。イベントとイベントの間の数か月をどう過ごすか。
当たり前のことですが、そういう赤裸々な部分は入る前にはかなり見えにくいです。
結論から言うと間違いなく参加して良かったです。
ただし、SecHack365はセキュリティを体系的に教えてもらえる場ではありません。
知識を受け取る場というより、自分の問いを持ち込み、揺さぶられ、考え直し、形にしていく場でした。特に思索駆動コースは、その傾向がかなり強かったと思います。
なのでこの記事も、「1年を通してずっと順調でした」という話ではありません。
迷ったり、止まったり、SecHack365が嫌になった時期のことも正直に書きます。
警告
今回の記事では私の作品詳細についてはスコープ外とします。
第5回イベントのくだりでちょっとだけ触れるに留めます。
感情や行動に主体を置いて書いてみようと思います。
この記事の見取り図
イベント回基準で1年を振り返ります。
2026年度もおおむね同じ感じっぽいのでスケジュールをここに貼っておきます。
自分の感覚としてはイベント回ごとに景色が切り替わる感じでした。
SecHack365の1年はそんな進み方でした。
| 区切り | その時期に起きていたこと |
|---|---|
| 応募〜第1回イベント | 周囲に気圧されつつ、自分が何を作りたいのかを探っていた |
| 第2回イベント | オフラインで顔合わせができてかなりやる気が上がった |
| 第3回イベント | 手応えの割に厳しいフィードバックを受け、作品を変える決断をした |
| 第4回イベント | 方向性を見失って、かなり苦しかった(イベント自体は不参加) |
| 第5回イベント | 作品と発表をようやくある程度形にできた |
| 第6回イベント | ポスター発表の難しさと自分の未熟さを痛感した |
第4回イベントは参加できませんでした。
自分が申し込んだきっかけ
セキュリティに興味があった、というのは大前提としてありました。
ただ、興味はあっても何をすればいいのかは全然わかりませんでした。
学生同士の繋がりも欲しかったです。
自分は医療系キャンパスにいたので、本学のプログラミングサークルに頻繁に行けるわけでもありません。地方在住なので、興味のあるカンファレンスなどにもあまり気軽には行けません。かなり八方塞がりでした。
その中でSecHack365を知りました。1年の冬ぐらいのことだったと思います。
交通費とか宿泊費が出るというのもかなりありがたかったですし、
セキュリティに関心がある参加者が1年かけてプロダクトを考え、作り、仲間と出会える場は非常に魅力的に映りました。
当時の自分の属性
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| 学年 | 6年制学部の2年生(応募当時) |
| 開発経験 | ほとんどない |
| 技術面の感覚 | やりたい気持ちだけはあるが、何をすればいいかはイマイチ分からない |
| 応募時の気持ち | 実習もまだ少ない今年が最初で最後のチャンスだと思った |
正直に言えば思索駆動コースを選んだ理由には、技術力がなくても思索を頑張れば許されるのではないかという気持ちもありました。今振り返るとかなり甘い見立てだったと思います。
でも一方で、技術力が低くてもアイデアと熱意が伝われば何とかなる部分はあると今でも思っています。
当時やりたいと思っていたこと
応募当時は、ヘルステックやメドテックの分野×セキュリティといった方向性で踏み込みたいと思っていました。
これはあとで自分の中で「ちょっと違ったな」と思うようになるのですが、医療系の学生で、広い意味でのエンジニアリングに興味があるのであればそういう分野に貢献することは半ば使命なのではないかと思っていました。デモのことも考えていて、「パッと見て伝わる作品にしよう」という気持ちもありました。
僻地の病院実習にて患者情報が入ったパソコンがログイン状態のまま放置されていたり、動かないパソコンを叩いて直そうとしていたりする光景を見たことがあります。(しかもマジで直っていてそれはそれですごいと思った)そのときに抱いた感覚をもとに、マイコンを活用した安価に実現可能な医療情報セキュリティのプロダクト作りをやりたいこととして挙げました。
ただ、これをやらなかったのは自分の中で「思索的には浅いな」と思ったからです。
(思索には浅いも深いもない警察が来そうですが、自分としてはあると思っています)
あとはこのプロダクトは「実」しか取れていなくて、ワクワクはないな、お金を出せば技術としては手に入るわけだし…という感覚がありました。
応募からキックオフまで
課題提出はかなり粘って頑張りました。
Xの投稿だけを見るとそんなに自信がなさそうに見えるかもしれませんが、この言葉とは裏腹にあまり落ちる気はしていませんでした。
※余談
実装力が全然ないことへの焦りから大学サークル内のハッカソンに参加しました。
この反省と同じ日にSecHack365に行けることを知ったようです。
改めて…って書いてるけど多分そうだと思う。
あとはプレゼン力がないことも気にしていたのでビジコンにも出てみました。
第1回イベント:まず周囲の強さに気圧された
キックオフでまず感じたのは、みんなの実績がとにかく強いということでした。
特に他コース、なかでも低レイヤ志向の人の話は、技術的な面でほとんど理解できませんでした。
自分はここで何ができるのだろうとかなり不安になりました。
この頃から、応募時点で自分が作りたいと思っていた作品に対する疑問も浮かび始めていました。
※余談
個人でプログラミングコンテストに申し込んでみました。
SecHack365で作るプロダクトへの考えを深めつつ、今すぐに完成するわけではないからとりあえずこっちに注力してみるという動きでした。
今振り返ると、実装力がないことへの焦りは悪いことばかりではなかったです。あと、すごい人たちを目の当たりにして早い段階で「自分はセキュリティのど真ん中の人材にはなれない」と思えたことは、ある意味ではよかったとも思います。張り合う必要はありませんし、分かるふりをする必要もありません。凄さはちゃんと認めるべきですし、自分が見えている問いを誠実に育てるしかないです。
ポストしていないようですが、7/25にトレーナーにご紹介頂いて医療情報業界に携わる方とオンラインでお話しさせて頂く機会をいただきました。
誕生日だったので日付まで覚えています。
自分の知識が浅すぎた、下準備も足りず後悔したのを妙に覚えています。
ここから面談や面接の前には相応の準備をする習慣が身に付きました。
第2回イベント:はじめての対面回
第2回イベントは東京での対面回でした。
再試に引っかかって広島を出られず、1日目の到着が夜になってしまいました。
かなりもったいないスタートをしてしまったのですが、それでも初めての対面回でたくさんの人と関わることができてやる気が湧いてきました。
集合イベントは単なる進捗報告の場ではなく、「自分はこういう環境に身を置いているのだ」と身体感覚で理解する場でもあるのだと思います。
※余談
この頃、プログラミングコンテストの本選にも進みました。
ただ、結果としてはうまく行きませんでした。
それでも良い経験だったと思いますし、この失敗があとからSecHack365の活動に結構生きてくることになります。
第3回イベント:手応えとフィードバックにズレがあった
第3回イベントは、「見せて、見られて」がテーマになっていた回でした。
2025年度は東京開催でしたが、2026年度の第3回は大阪開催のようです。
自分にとってもまさにそういう回でした。
プログラミングコンテストが終わった後から準備を始めて、結構いい感じで発表ができたと思っていました。少なくともその場ではかなり満足感を抱いていました。
他のトレーニーの発表を見るのもすごく刺激になりました。意見交換も色々できました。
ただ、のちにもらったフィードバックはそれなりに厳しいものでした。
これを通して、自己認識と周囲から受ける評価のずれを認識して、今のプロダクトを一旦諦めることを決意しました。
一番印象に残っているのは、作品を変えるとゼミで言ったときに、コースマスターから「正直に言えば今まで作っていたプロダクトはつまらなかった」と言われたことです。第3回イベントのアンケート結果などから薄々わかってはいたのですが、やはりかなり食らいました。意気揚々と作って発表していたのが少し恥ずかしくなったのも事実です。
でも、こういうことを正直に言ってもらえるのは本当に大事だと思います。
曖昧に褒められていたらそのまま進んでいた可能性が高いです。
厳しくても正直に言ってもらえたから、方向転換する覚悟が持てました。
この頃、東京>>>>地方、みたいな良くない価値観を抱いていました。
今はそんなことないです。
SecHack365以外でも東京に行く機会が増えるようになってから謎コンプを発症していました。
第4回イベント(不参加):かなり苦しかった10月から12月
作品の方向性を変えようとは思ったものの、いざ何をやりたいかと言われたらあんまり思い浮かばなくて、めちゃくちゃ嫌になっていた時期でした。
絶望的に予定が合わなかったのもありますが、ゼミに出るのが少し億劫になっていました。
億劫というより、話せることがないような気がしてしまっていた、のほうが近いです。
その反動から、開発インターンやアルバイトに異常に力を入れるようになっていました。
第4回イベントの大阪回は、身内に不幸があって参加できませんでした。
(※2026年度の第4回イベントは東京開催です)
でも一方で、10月を無為に過ごしてしまった以上、仮に参加できていたとしても何を話そうと思っていたのだろうという気持ちもあります。全体的にちょっと準備が悪かったなと思っています。
対面回ブーストが効かなかったこともあってSecHack365にあまりコミットしない傾向が継続しました。流石にまずいと思い始めていました、
ネットワークへの興味も高まっていたのですが、それを作品に入れたいなと思っても、アイデアがあんまり浮かんできませんでした。
12月に入ると、改めてサイバーセキュリティに向き合おうという機運は高まりました。
しかしそれもそう長く続きませんでした。
10月、11月と過ごして、罪悪感だけが募っているのにどうも前進していない。
ただ、ようやく次のアイデアは見つかって実装をスタートしました。
10月から12月は正直かなり苦しかったです。
SecHack365は、1年ずっと右肩上がりにいられるわけではありません。
イベント回の熱量、イベント回の前の異常な頑張り(締切駆動…)の反動でイベント後は一旦失速する人が多かった印象があります。
そこで「自分はダメな人間だ」と思いすぎないほうがいいです。みんなそんなもんです。
第5回イベント:ちゃんと準備して挑むことができた
第5回イベントはオンライン回でした。
この回に向けては、それなりに時間を割いて発表の準備を行いました。
思索ゼミで厳しい評価を頂いてもそれは愛情であると前向きに受け止めて、試行錯誤を繰り返しつつ動画提出と発表をすることができました。
他のトレーニーの成果を見るのもめちゃくちゃ楽しかったです。
対面回で関わったときから大幅に変わっている人も、春から一途に1つのプロダクトを作り続けている人も、どちらも最終的にはどえらいものができていました。
ありがたいことに、公式レポートの中で自分の発表を取り上げてもらっていました。
第5回イベントレポート: https://sechack365.nict.go.jp/report/2025/report_week05.html
プレゼンをしたらやたらと声に評価が集まります。
私の声がどんなものなのか気になる方はぜひお会いしましょう。
※余談
ネットワーク・セキュリティへの興味がかなり高まっていて、JANOG57に若者支援プログラムで参加しました。
かなりネットワークに浮気している様子が伺えます。
第6回イベント:最後の最後にガチで納得がいかなかった
第5回イベントとは打って変わってかなり納得がいきませんでした。
ポスター発表を行ったのですが、自分の力量のなさをとにかく実感しました。
というのも、第2回イベントでは遅刻したことで発表参加ができず、第3回イベントではデモを中心に見せたかったのでポスターを作らず、ポスター発表が課された第4回イベントは忌引で行けませんでした。
結果として、最初で最後のポスター発表になってしまったのです。
自分は学部低学年ということもあって、それまで全くポスター発表の経験がありませんでした。それもあって酷い出来栄えのポスターを提出し、見に来てくれた人に対して効果的に自分の作品を説明することができなかったと思います。これは今後に向けてはかなり痛い勉強になりました。
SecHack365修了!! みたいな明るいポストではないし、
一日置いて投稿しているのがかなりリアルです。自分は切り替えが下手な人間です。
振り返ってみて思うこと
やっぱり、トレーナー、アシスタント、トレーニー、どの属性もレベルが高いです。
そんな人たちと話す、関わる機会はなかなか無いと思うのでそれだけでもかなり良い経験になりました。
中学生でも高い技術力を持っていますし、これまでたくさんの経験を積んできたトレーナーでも柔軟な思考を持っています。
それゆえ自分の知識不足や技量のなさを感じる部分はたくさんありましたし、最後まで埋まり切らなかったなとも感じています。でも分からないなりに考え続け、自分なりの問いを育ててプロダクトとして差し出すことには意味があったと思っています。
勝手にQ &A
| 観点 | 自分の答え |
|---|---|
| 技術力が足りないと無理か | 必ずしもそんなことはない。ただし何を考えたいのか、なぜそれをやりたいのかはある程度欲しい |
| 参加すると何が得られるか | すごい人たちと出会える。あとは自分の身の振り方や抱いている問いをかなり本気で考える経験が得られる |
| 注意したいこと | モチベ続かなかったらどうしよう…みたいな考えは不要かも。イベント回ごとにやる気上げていく感じ。中弛みは全然ある |
応募する前から「自分の信念」をしっかり持っておくことはかなり大事だと思います。自分も持っていなかったわけではありませんが、思索の深い浅いなどを気にするあまり、途中でかなりぶれてしまったところがあります。
他のコースでも、そのコミュニティの価値観のようなものがあって、それに良くも悪くも左右される場面があると思います。周りがすごくて気圧される場面もあるはずです。だからこそ、柔軟性と自分の信念を貫くバランスをしっかり大事にしたいです。
こんなのもある
SecHack365では「習慣化」の大切さをすごく説かれます。
具体的にはマンダラートの作成を行います。
自分はその考え方にすごくマッチして、1年を通してマンダラートの達成項目に色を付けていく取り組みが続きました。
あまりにハマりすぎて、現在めっちゃ使いやすいマンダラートのiOSアプリを鋭意開発中です。
謝辞
この一年を振り返るにあたって、まずSecHack365の運営に携わってくださっている事務局、トレーナー、アシスタントのみなさまに感謝したいです。
一年間の長いプログラムを支えていただき、加えて地方在住の学生でも参加し続けられる環境を整えていただけたことは本当にありがたかったです。
コース内外のトレーニーのみなさまにもありがとうを言いたいです。
レベルの高さに圧倒されることは何度もありましたが、それ以上に刺激を受けたり、考えを広げてもらったり、支えてもらったりした場面のほうがずっと多かったです。
そして何より思索駆動コースのトレーナー、アシスタントのみなさまには頭が上がりません。
厳しいフィードバックもありましたが、それを曖昧にせず正直に言ってもらえたからこそ自分の問いや作品を見直すことができました。自分ひとりでは辿り着けなかった視点を何度も頂きました。
このような環境があったからこそ、波はありつつも溺れてしまうことなく1年を最後まで走り切れたと思います。
おわりに
SecHack365の1年は、順調に成長した1年ではありません。
作品を変えたことも、苦しい時期が長かったことも、最終発表で納得がいかない部分が残ったことも含めて、きれいな成功体験になったとは流石に言えません。
優秀修了にもほど遠かったと思います。
でも応募・参加したことに全く後悔していません。
得られたものが大きすぎるからです。
あとSecHack365のネームバリューをこの1年ですごく実感しました。
短期インターンや長期インターン、カンファレンスなどどこに行っても「なんそれ笑」とは全然ならなかったです。
これは修了生のみなさんが各所で大活躍されているからこそです。
自分もこれから頑張ろうと思います。

