0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

More than 1 year has passed since last update.

ADX for UEで、プレイヤーの聴覚の変化を演出する

Last updated at Posted at 2023-03-27

はじめに

アンリアルエンジンとサウンドミドルウェア「ADX for UE」を連携させ、プレイヤーキャラクターの聴覚の変化を演出する実装例です。
ミリタリー系のFPSによくある、「近くで起きた大きな爆発により一時的に耳鳴りが聞こえ、他の音が聞こえづらくなる」といった表現や、「キャラクターの聴覚が研ぎ澄まされ、小さな音が聞こえやすくなる」といったゲームメカニクスに影響するギミックにも使えそうです。

この記事では「カテゴリ」機能と「Aisacコントロール」機能を使い、効果音に高音をカットするフィルタをかける(耳鳴りなどのシステム音にはフィルタをかけない)手法で実装していきます。

前提

当記事ではUE5.0を使用しています。基本的にブループリントのみでの実装を想定します。
ADXはインディー向けの「LE版」であれば、無料で使用できます。
https://game.criware.jp/products/adx-le/

なお、ADX2は「ADX」へ名称が変更になりましたが、ツール構成は変更ありません(2がないから古いほう、というわけではありません)。

記事執筆時点のADX for UEのSDKバージョンはADX LE UE SDK(1.31.00.01)です。

ADX for UEの導入や基本的な使い方は以下の記事にあります。必要に応じて参照してください。
ADX for UEの導入で、一歩上のサウンド表現を(導入編)

ADX for UEの導入で、一歩上のサウンド表現を(実践編)

実装

AtomCraftでサウンドを構成する

まずはサウンドオーサリングツール「AtomCraft」にて必要なサウンドを構成します。

マテリアルのインポート

必要となる効果音素材(マテリアル)をインポートします。
A01.png
今回はサンプルとして、銃撃音となる「SE_BulletLoop.wav」と耳鳴りの音である「SE_Tinnitus.wav」をインポートしました。
「SE_BulletLoop.wav」を選択し、ループ再生されるようインスペクターにて設定します。
ループ情報の上書きを「True」、ループタイプを「ループ」とします。
A02.png

キューの作成

キューを作成します。
キューシートを右クリックし、「新規オブジェクト」→「キュー『ポリフォニック』の作成」を選択。
A03.png
ふたつのキューを作っておきます。
A04.png
それぞれのキューにマテリアルをドラッグアンドドロップして配置します。
A05.png
A06.png

カテゴリの設定

効果音のみにフィルタがかかり、BGMやシステム音にはフィルタがかからないよう「カテゴリ」を設定します。
プロジェクトツリーの「カテゴリ」内、「CategoryGroup_0」(任意のカテゴリグループでもかまいません)を右クリックし「新規オブジェクト」→「カテゴリの作成」を選択します。
A07.png
それぞれに「SE」「System」と名前をつけます。
A08.png
キューを選択し、インスペクターの「カテゴリー」にある「編集」ボタンをクリックします。
A09.png
「カテゴリの編集」ウィンドウが開くので、該当するカテゴリのみにチェックをつけます。
「Cue_BulletLoop」なら「SE」、
A10.png
「Cue_Tinnitus」なら「System」です。
A11.png

グローバルAisacの設定

フィルタをかけるためのAisacコントロールを作成します。
今回は対象となる効果音すべてに対してフィルタを適用したいので、「グローバルAisac」機能を使用します。

プロジェクトツリーの「グローバルAISAC」を右クリックし、「新規オブジェクト」→「AISACの作成」を選択。
A12.png
AISACコントロール名を控えておきましょう。
AISACグラフタイプは「バンドパスフィルター」→「バンドパス - Cof高域」を選択します。
A13.png
作成したAisacコントロールをダブルクリックし、次の画像のような簡単なグラフを作ります。
カーブや遷移具合などはUE側で調整するので、単純なグラフで大丈夫です。
A14.png
フィルタのかかり方をテストしてみましょう。
作成したAisacコントロールを、任意のキューにドラッグアンドドロップします。
A15.png
「LinkAisac」が作られ、このキューにグローバルAisacが適用された際の挙動を確認できるようになりました。
A15b.png
再生して、スライダーを動かし挙動を確認します。
A16.png

Aisacを選択し、「デフォルトコントロール値」にチェックを入れておきます。
デフォルト値を使用しない状態でUE側でタイムラインノード等を使用しサウンドを変化させた際、実際のAisacコントロール値との間にギャップが生じる可能性があるためです。
E01.png

キューシートのビルド

ここまでできたらキューシートをビルドし、UEに持っていきます。
A17.png
A18.png

UEで演出を実装する

ここからはUE5で実装をしていきます。

キューシートのインポート、サウンドの配置

ビルドしたacb、acfファイルをコンテンツブラウザの任意の場所にドラッグアンドドロップしてインポートします。
B01.png
B02.png
プロジェクト設定を開き、
B03.png
「CriWare」タブにて「Atom Config」にビルドしたacfファイルを指定します。
B04.png
レベルにループ音を配置し、正常に再生されるか確認しておきましょう。
B05.png

Aisacコントロールでエフェクトをかける

レベルブループリントを開きます。
B06.png
1,2キーで起動するイベント Input Key 1Input Key 2を作成します。
B07.png
カテゴリに対してAisacコントロールをかけるには、Set Aisac Control by Nameノードを使用します。
B08.png
1,2キーを押すとそれぞれ、「SE」カテゴリに対して「バンドパス - Cof高域」の効果が「0.2」「0.9」かかるよう入力してみます。
B09.png

ゲームを再生し、1,2キーを押して聞こえ方を確認してみましょう!
2キーを押してAisacコントロールの値が「0.9」の状態では、よりこもって音が聞こえるはずです。

タイムラインを使用して遷移を作る

現状では突然音がこもって聞こえる状態なので、聞こえ具合がなめらかに変化するようタイムラインを使って遷移を管理します。
イベントグラフの空いている場所で右クリックし、「Add Timeline」を検索して配置します。
C01.png
タイムラインには任意で名前をつけられます。
ダブルクリックしてタイムラインを編集しましょう。
C02.png
「+Track」のボタンを押し、「Add Float Track」を選択します。
C03.png
Floatが扱えるグラフが作成されました。
C04.png
グラフの線を右クリックし、「Add key to CurveFloat」でコントロールポイントを追加します。
C05.png
0.5秒かけて値が「0.0」から「0.8」まで遷移するグラフを作りました。
C06.png
「Length」を「0.05」にし、グラフの長さを遷移時間と一致させましょう
これらが一致しない場合、タイムラインの逆再生をする際うまく処理されない場合があります。
C07.png
コントロールポイントを右クリックすればカーブタイプも設定できます。
C08.png
イベントグラフに戻り、次の画像のようにつなげます。
1キーを押すとグラフが再生され音が徐々にくぐもり、2キーを押すとグラフが逆再生され音が徐々にクリアに聞こえるようになります。
タイムライン内で数値が変動した際、Set Aisac Control by NameノードによりAiscコントロールが行われます。
C09.png

演出に影響されないサウンドの再生

さて、仕上げとして耳鳴りの音を「バンドパス - Cof高域」の効果を受けずに再生したいところです。
既にAtomCraftでカテゴリの設定をしており、Set Aisac Control by Nameノードでは対象となるカテゴリを「SE」に指定しているので、「System」カテゴリに属する耳鳴り音はこのまま再生しても影響を受けなくなっています。

つまり、単純に耳鳴り音のキューを再生するだけで処理は完成です。
D01.png

補足

タイムラインの再生処理を連続で行ってしまうと、「Play from Start」「Reverse from End」のインプットピンを使っているため遷移が最初から行われてしまいます。
現在の値を保ったままにしたい場合、「Play」「Reverse」ピンを使えばOKです。
D02.png

0
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?