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ADX+UE5で、オブジェクトごとに様々な状況の効果音を手軽に設定する

Last updated at Posted at 2023-07-13

はじめに

ADXアンバサダーのSigと申します。
アンリアルエンジンとサウンドミドルウェア「ADX for UE」を連携させ、「オブジェクトごとに『スポーン時』『衝突時』などに個別の効果音を手軽に設定する」実装を行います。

前提

当記事ではUE5.0を使用しています。基本的にブループリントのみでの実装を想定します。
ADXはインディー向けの「LE版」であれば、無料で使用できます。
https://game.criware.jp/products/adx-le/

なお、ADX2は「ADX」へ名称が変更になりましたが、ツール構成は変更ありません(2がないから古いほう、というわけではありません)。

記事執筆時点のADX for UEのSDKバージョンはADX LE UE SDK(1.31.00.01)です。

ADX for UEの導入や基本的な使い方は以下の記事にあります。必要に応じて参照してください。
ADX for UEの導入で、一歩上のサウンド表現を(導入編)

ADX for UEの導入で、一歩上のサウンド表現を(実践編)

実装

AtomCraftで様々な効果音を用意する

AtomCraftを使い、UEに持っていくためのサウンドを構成します。

マテリアルの用意

まずは素材となるサウンドを用意し、マテリアルとしてAtomCraftにインポートします。
音源ファイルをマテリアルツリーにドラッグ&ドロップしましょう。
A01.png
今回はオブジェクトの「スポーン時」「破壊時」「衝突時」「被ダメージ時」それぞれに効果音を用意します。
オブジェクトA,B,Cにおいて、3タイプの効果音を一通り準備しました。
また、それぞれのオブジェクトごとにフォルダ分けをしています。

キューの作成

効果音ごとにキューを作成します。
「新規オブジェクト」→「キュー『ポリフォニック』の作成」を選択してキューを新規に作成します。
A02.png
キューに名前をつけます。
A03.png

……という流れでもいいのですが……!
効果音単体のキューを作る場合、マテリアルツリーからドラッグ&ドロップするだけでキューが完成します。
A04.png
シンプルなキューができました。
A05.png
複数選択してドラッグ&ドロップすることで、一気にキューを作っていくことができます。
A06.png
お手軽にキューを量産できました。
A07.png
距離減衰をUE内で実現するため、キュー内の「パンタイプ」を「3Dポジショニング」に設定します。
A08.png

キューシートのビルド

キューが用意できたら、キューシートをビルドします。
A09.png
A10.png

UEで効果音を設定・再生する

キューシートのインポート

ビルドしたacbファイル、acfファイルをUEのコンテンツブラウザの任意の場所にドラッグ&ドロップしインポートします。
B01.png
すべてのキューが正しくインポートされていることを確認します。
B02.png

ツールバーの「Edit」→「Project Settings」からプロジェクト設定を開き、
B03.png
「CriWare」タブ、Atom Configの項目に今回インポートしたacfファイルを指定します。
B04.png

構造体を作成・設定する

オブジェクトごとに手軽に効果音を設定するために、「どの状況でどの効果音を鳴らすか」というテンプレートが欲しいところです。そこで、規格となる構造体(Structure)を作成しましょう。
コンテンツブラウザの任意の場所で右クリックし、「Blueprints」→「Structure」を選択。
B05.png
構造体(Structure)が作成されました。
B06.png
ダブルクリックして開きます。
B07.png
変数に名前をつけ、型を「Sound Atom Cue」→「Object Reference」に設定します。
B08.png
「+Add Variable」ボタンを押し、変数を追加します。
B09.png
新たな変数に名前をつけます。型が「Sound Atom Cue」になっていることを確認しておきましょう。
B10.png
「SpawnSound」「DamageSound」「HitSound」「DestroySound」を追加します。
B11.png
これで、この構造体は4つの変数を内包するようになりました。
あとはこの構造体をBPアクター側から分解し、取得して再生するだけです。

構造体のパラメータを参照して再生する

オブジェクト側の処理を書いていきます。
コンテンツブラウザの任意の場所でアクターを作成します。

「Blueprint Class」を選んで作成します。
C01.png
親クラスは「Actor」とします。
C02.png
作成されたアクターに名前をつけます。このアクターをベースとして、様々な見た目や効果音にカスタマイズします。
C03.png
ダブルクリックして開きます。
「StaticMesh」コンポーネントを作成します。
C04.png
「StaticMesh」コンポーネントには、仮のモデルとマテリアルを指定しておきます。
C05.png

イベントグラフに移動します。
変数を新規に追加します。
C06.png
変数に名前をつけます。
C07.png
Variable Typeには先ほど作って設定した「Str_ObjectSound」を選択します。
C08.png
コンパイルすると、Atom Cueが設定できるようになります。
C09.png
仮として、デフォルトのサウンドを設定します。
C10.png
「Instance Editable」にチェックを入れ、外部から編集可能にしておきます。
レベル上でビューポートから個別にサウンドを指定できるようになります。
C11.png

イベントグラフに処理を書いていきましょう。
構造体からの値は、Get (構造体名)ノードから線を伸ばし、Break (構造体名)ノードで取得できます。
C12.png
サウンドの再生はSpawn Atom Sound at Locationで行います。
これだけで、スポーン時のサウンドが再生できます。
C13.png
衝突時のサウンドを再生するため、StaticMeshコンポーネントの「Simulate Physics」にチェックを入れ、物理挙動をONにしておきます。
C14.png
StaticMeshアクターの「Add Event」から、「Add On ComponentHit」を選択。
C15.png
衝突時のイベントが作られるので、そこからサウンドの再生を行います。
Break Str_ObjectSoundノードからの参照は「HitSound」です。
C16.png
また、Event AnyDamageイベントから「DamageSound」を再生し、
C17.png
Event Destroyedイベントから「DestroySound」を再生すればOKです。
C18.png
これで、スポーン時や衝突時、被ダメージ時やデストロイ時にサウンドが再生されるようになりました。
C19.png
サウンドの再生を確認するには、コンソールコマンド「cri.ShowSoundLocation 1」で視覚化できます。
C20.png

レベル上のアクターを複製し、Detailsパネルから「ObjectSoundList」を編集すれば、再生するサウンドを変更できます。
C21.png
また、Detailsパネルの「StaticMesh」コンポーネントを選択すると、メッシュの見た目やマテリアル、各種物理パラメータなどが個別に設定できます。
C22.png
こちらも再生して、挙動が正しいことを確認してみましょう。
C23.png
こうして、シンプルなオブジェクトとその物理挙動、またその際のサウンド再生が手軽に再生できるようになります。
ゲームのステージ上に配置し、世界観を盛り上げる小道具として役立ちそうです。

今回作成したアクターはごくごくシンプルな構造をしていますので、カスタマイズの余地が大幅にあります。
このクラスを継承して新たな機能を持つアクターを作ってもいいですし、また構造体をデータテーブルに登録して外部のスプレッドシートから音源を取得することも可能です。

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