大企業のAI・デジタル化推進に関わる立場から、Copilot StudioとPower Automateを組み合わせる際の設計について書いておきたい。
役割分担の基本的な考え方
Copilot StudioとPower Automateは同じPower Platformファミリーに属しているため、連携自体は比較的容易だ。ただし「どちらが何を担うか」を設計初期に明確にしておかないと、後から機能が重複したフローが乱立し、保守コストが跳ね上がる。
実務上の整理としては次のように分けると設計しやすい。
- Copilot Studio:ユーザーとの対話窓口。トピック設計、会話フロー管理、エンティティ抽出
- Power Automate:バックエンドの処理エンジン。承認ルーティング、データ操作、外部API呼び出し
たとえば休暇申請のシナリオなら、Copilot Studio側で申請内容をヒアリングし、確定した時点でPower Automateのフローを呼び出して承認ルートに流す設計にすると、対話部分と業務処理部分を独立してメンテナンスできる。
よくある落とし穴①:トピックとフローの対応関係がブラックボックス化する
Copilot Studio側のトピックが増えてくると、どのトピックがどのPower Automateフローを呼んでいるか、作った本人以外が追えなくなるケースが出てくる。
[トピック設計の例]
- 休暇申請トピック → Power Automate: vacation-approval-flow
- IT機器申請トピック → Power Automate: equipment-request-flow
- 経費申請トピック → Power Automate: expense-approval-flow
対策としては、トピックとフローの対応関係を一覧化したドキュメントを別途用意しておくことが有効だ。「トピック名・呼び出すフロー名・渡すパラメータ・戻り値」を共有スプレッドシートで管理するだけでも、担当者が異動した際のブラックボックス化をかなり防げる。
よくある落とし穴②:体感応答速度の劣化
Power Automateで複数の処理を直列実行していると、Copilot Studio側の応答が遅く感じられ、ユーザーが離脱する原因になる。
対処としては、時間のかかる処理を非同期で実行しつつ「確認しています」といった中間応答を先に返す設計にすることで、体感的な待ち時間のストレスを大きく軽減できる。
[非同期処理パターン]
1. Copilot Studioが申請内容を受け取る
2. 「承認ルートに流しました。完了次第ご連絡します」と即座に返答
3. バックグラウンドでPower Automateが承認処理を実行
4. 完了後にTeamsやメールで通知
スモールスタートで始める意義
こうした組み合わせ型システムは、一度に完璧な設計を作ろうとするより、限定的な業務でスモールスタートしてから利用者の反応を見ながら拡張する進め方の方が定着率が高い。
最初から全業務をカバーしようとすると、要件定義段階から複雑化し、結果として誰も使わないシステムができあがる。まず一つの業務で動かし、現場の声を集めてから拡張するという方針が、長く使われる仕組みを作る上で重要だと感じている。
まとめ
- Copilot Studio(対話窓口)とPower Automate(処理エンジン)の役割を設計初期に明確化する
- トピックとフローの対応表を別途ドキュメント化しておく
- 時間のかかる処理は非同期化して体感速度を改善する
- スモールスタートで始め、現場の声を聞きながら拡張する
本業でCopilot Studioの導入に関わっている立場から、こうした設計上の判断が現場の定着率に大きく影響することを実感している。技術的な実装より前に、役割分担の設計を丁寧に議論することが、結果的に近道になる。
このトピックについて、さらに詳しい判断基準・設計パターンをnoteにまとめています:
https://note.com/light_tern636/n/nda657fd2fa97