はじめに
2024年8月から10月まで、経済産業省主催の"2024年度マナビDXQuest"に初めて参加しました。10月まではケーススタディ教育プログラムを通じて、主にプレゼン課題に取り組み、無事修了することができました。
12月5日現在、地域企業協働プログラムに参加しています。半ば実務としてDXのご相談に対応するのは単なる技術や知識だけではなく、対企業様、対チームメンバーへのコミュニケーションスキルも必要になる印象を受けています。難しさが一気に上昇したイメージでハードだなと思いながらも日々を過ごしています。
今回は、マナビDX Questで得たもの Advent Calendar 2024にエントリーさせていただくことになりました。拙い経験ですがこの機会に実体験を言語化し、後続の方のご参考になればと思い投稿させていただくことにしました。
想定読者
Qiita本筋の技術要素というよりは、振り返り要素が強い内容となっています。下記を想定読者として考え、記述しました。
1.マナビDXQuestへの参加を検討中で、プログラムの実態や参加者の体験談を知りたい方
2.AIツールを業務や学習に取り入れる際の具体的なアプローチや注意点を探している方
3.技術的な詳細よりも、AIやDXに関する実用的な知見や個人の成長過程に興味がある方
謝辞
この貴重な機会をくださった企画者の@kotmyn0812 さんに感謝申し上げます!
マナビDXQuestとは?
マナビDX Questは、経済産業省が主催するデジタル人材育成プログラムで、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのスキルを身につけることを目的としています。このプログラムは、実践的なケーススタディ教育プログラムと、地域の中小企業との協働による課題解決型プログラムの2つの主要なコンポーネントから構成されています。
ケーススタディ教育プログラムでは、企業データに基づいた実践的な学習を通じて、DX推進に必要なスキルを磨きます。参加者はプロジェクト型学習(PBL)形式で、実際のビジネス課題をテーマにした複数のケーススタディ教材を使用し、デジタル技術を活用した課題解決方法を学びます。このプログラムはオンラインで提供され、個人が自分のペースで参加できる柔軟性があります。
地域企業協働プログラムでは、ケーススタディ教育プログラムを修了した参加者が、地域の中小企業と協力して実際の課題に取り組みます。このプログラムでは、現場でのDX推進における実践的な経験を積むことができ、企業担当者と協働しながら成果を目指します。これにより、理論だけでなく実務での応用力も養うことができます。
マナビDX Questは、デジタル技術やデータサイエンスに関する基礎的な理解があれば専門性やバックグラウンドは問わず参加可能であり、多様なバックグラウンドを持つ参加者が集まり、お互いに学び合う場となっています。これにより、幅広いデジタル人材とのネットワーク構築も可能です。
マナビDXQuestで得たもの
まず、何を得たのかを記述します。
1. 優秀賞受賞の経験
下記したAIも駆使しつつ、コツコツ努力を続け(そしてレビュワーの方々にも恵まれ)プレゼン相互レビュー2回の平均順位で上位にランクインすることができました。いただいたオープンバッジに「優秀賞」と表記をいただけました。
2. 最新のAI技術に関する知識
コミュニティの影響が大きいのですが、最新の生成AIに関する知識が増えました。あくまでユーザー側として、様々な製品やその機能を知るレベルですが、ChatGPTしか知らなかった私には大きな進歩です。
3. プレゼンテーションスキル(資料作成能力)の向上
見せる方の属性、職位にあった資料を作成するという意識が身についたと考えています。3ヶ月という短期間でテーマを替えながら5回ほど資料作成を行えたことはスキルアップに貢献したと考えています。
4. 多様な参加者からのフィードバック
著者は今年41歳ですが、社会人になってから、プレゼンテーションのフィードバックをされたことはありません。フォントの使い方一つにしても「わかりやすい」「わかりにくい」というコメントがつき、普段何気なく作っている資料の客観的評価が理解できました。また、総合で優秀賞をいただけたことに対してはとても自信がつきました。
取組時間
平日に1日1時間から多くて2時間程度、土日は合わせて4時間~8時間程度を学びに充てていました。週に10時間弱が基本時間です。課題の提出が迫ってきて時間が不足していると感じた際には20時間~25時間程度の実施でした。特に土日の作業時間が非常に多かった気がします。更に、課題提出締め切り直前は、当日の2:00まで作業をし、提出してから眠るという、学生時代に戻ったような体験をさせていただきました。振り返ってみると良い体験をしたと考えています。普段、そこまで根を詰めることがなくなっていたためですね。3ヶ月でトータル100時間は超過していると考えます。それなりの資格なら取れちゃうレベルの学習量です。
使用したAI
1. 生成AI:Perplexity
コミュニティマスターの方の案内投稿を拝見し、お試しで登録。たまたまソフトバンクユーザーであれば1年間無料のキャンペーン中でした(利用料月20ドル)。ありがたく使用させていただいています。
2. スライド生成AI:イルシル
文字入力をしていくだけで、1000種類以上のテンプレートから最適なものを選び出し、候補をいくつも表示してくれるサービスです。もちろん、AIに本文を書いてもらうことも可能です。私は、「デザインセンス」という言葉が世の中で一番似合わないと言い切れるほどデザインが苦手です(並べ方、余白の大きさ…)。他にもcanvaやGammaを知っていましたが、「なんか使えないなあ」が正直な印象でした。その点、イルシルは日本産のサービスだけあって、本当に文字を打つだけでデザインが出てくる!すごい!と衝撃を受けました。私の優秀賞への貢献度No.1のAIサービスだと思っています。
3. 図解AI:NapkinAIを使用
課題では使用しませんでした。コミュニティーで様々なAIサービスを教えてもらうものから、自分の課題にあったものを片っ端から試すという方法で使用したAIを増やしていったのですが、こちらは「文章からそれなり以上にイケてる図が出てくる」という意味で衝撃を受けました。
今では、社外の研修報告書や自身の1ヶ月作業報告書に使用しています。やはり絵や図が文書に貼付されていると視認性が向上し、読んでもらいやすくなります。
私のAI活用方法
1.✕デジタル回答者 ◯AI思考パートナー
効果の出ない使い方
(課題がわからない)
1.資料を投げ入れる
2.答えを出してもらう
3.そのまま出す
効果が出た使い方
(課題がわからない)
1.資料を投げ入れる
2.まず自らの仮説や課題解決策をノートやPCに文章、図示し、苦しんで考える。
3.回答を説明する口調でAIに投げる。
(1)なぜこの解決策や資料に至ったのかの背景や思考過程を詳しく言語化する。
(2)背景、思考過程、回答の質と分解して100点/100点で妥当性を検証してくださいと定量的指標への変換を行う。
(3)良かった点、悪かった点、改善点、資料を読む側の視点で出てきそうな質問事項という様に、実際のプレゼンで評価されるトピックを立てて自分の強み・弱み・ヌケモレを余す所なく指摘してもらう。
(4)(2)(3)を繰り返して全項目で95点以上/100点が取れるように詰めていく。
(5)(4)が基準点を超過したら、AIにこの問を解く際の思考プロセスを記述して説明する。
(6)思考プロセスの無駄や改善点をAIに解説してもらい、ノートにメモする。
・演習が5つほどあったため、実施のたびに思考プロセスがブラッシュアップされ、資料作成精度が向上しました。
(7)他に類似の問題にぶち当たったとき、(6)の思考プロセスで考え、応用可能にする。
2.AIに私のスキルを拡大してもらう。
こちらは、「自分の苦手分野に対応するAIを遠慮なく使う=生産性を向上させる」という意味合いです。
課題に取り組む際、「これはAIを上手く利用しないと太刀打ちできないな」と早い段階でAIの活用に踏み切ったのが良かったと考えています。
以前、ChatGPTに課金していたことがありました。しかし、使い方がぼんやりしていたため、課金しても効果を見いだせませんでした(数ヶ月で課金停止)。その点、1つの例として、プレゼン課題という明確な目的があったことで例えば「スライドのデザイン時間を削減する」という明確な利用目的が出来、サービス選定→使用の間に明確な目的ができたと考えました。
今後の展望または気づき
1.スライドを作成する際は、「ストーリー」「ターゲット」「何を決裁してほしいのか」という骨子作成の方が大切
マナビDXQuestを終えた今は、BUSINESS STORYTELLING、思考のすすめ、資料作成・プレゼンのプロセス(ロジカルな資料作成・プレゼンテーションの教科書①)をコツコツ読み進めて、ストーリーの作り方を学んでいます。
2.AIも使い方次第で、私自身の賢さへの寄与度が変わる
上述した使い方や、新機能をコミュニティで教えてもらうことを通じて、自らのマナビや成長・生産性への寄与度が高い使い方をする必要があると考えました。
3.情報量が多く、課題をクリアするだけで精一杯になってしまった。
プレゼン資料を作成している時間>>コミュニティーに参加する時間となりました。次年度以降、参加するのであればせめてイコールレベルに持っていきたいなと考えました。
余談:日本と海外のAI使用状況について
2024年7月5日に出た情報通信白書に因ると、日本のAI活用は他国と比較し群を抜いて消極的です。
日本で生成AI(人工知能)を利用したことがある人は9%にとどまった。米国(46%)や中国(56%)と比べ利用が進んでいないようだ。総務省がドイツと英国を含めた5カ国に調査を実施し、日本は最も利用率が低かった。使っていない理由として「使い方がわからない」、「自分の生活には必要ない」といった回答が多かった。同省は各国の企業にも調査を実施、生成AIを積極的に活用する方針であるとの回答は、日本が16%だった。中国は71%、米国は46%、ドイツは30%だった。
上記引用サイト:生成AI利用経験は9%、中国や米国と大きな開き-情報通信白書
白書の中には、下記も含まれています。
・生成AIを使わない理由
・生成AIの利用意向
・業務における生成AIの活用状況
他にも様々な調査が成されていますが、
日本がいかにAIに対して消極的なのかがよく分かる内容となっています。
私自身はAIを使用することが面白いなと考えているし、業界の動向や最新のツールをチェックすることで生産性や思考力の改善に繋がると信じています。今後も使い続けますし、知らない方がいればその方に使い方を教えてあげたいです。今回、マナビDXQuestを通じて得た知見は、AIの利活用に対する周辺諸国と日本との意識の違い、という意味でも有意義なマナビになりました。
参加を迷っている方へ
迷っているより飛び込んだほうが得られるものが多いです。申し込んでください。3ヶ月抜けると違う景色が見えると考えます。加えて、3ヶ月を抜けたあとは、知り合いの数も増えますし、更に別世界の入口に立てると考えます。
結論
マナビDXQuestは、AIと共に成長する貴重な機会となりました。技術の進化に伴い、私たちの学び方も進化していくことを実感しています。
参考サイト・記事内記載の文献
マナビDXQuestとは?
マナビDX(公式サイト)
概要: デジタルに関する知識・能力を身につけるための講座を紹介するポータルサイト。デジタルリテラシー講座やデジタル実践講座を探すことができます。
経済産業省プレスリリース
概要: マナビDXの開設に関する公式発表。背景や趣旨、サイトの概要、今後の予定などが詳しく説明されています。
DX東北マガジン(マナビDXの紹介記事)
概要: マナビDXの概要、レベルや目的に合った講座の探し方、デジタル人材・DX人材育成への活用方法などが解説されています。
リンプレス社ブログ(DX関連サイト紹介)
概要: DX推進担当者向けのお役立ちサイトを紹介する記事。マナビDXを含む5つのサイトが紹介されており、各サイトの特徴や活用ポイントが解説されています。
パコラ社ブログ(マナビDX Questの紹介)
概要: マナビDXの新プログラム「マナビDX Quest」の詳細を解説。ケーススタディ教材の内容や教育的意義について説明しています。
使用したAI
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概要: Perplexity AIの特徴、料金体系、他のAIツールとの比較、注意点について詳しく解説しています。
今後の展望または気づき
『BUSINESS STORYTELLING』
概要: ビジネスシーンで効果的なストーリーテリングを実践するための手法を詳解。説得力のあるプレゼンや印象に残るコミュニケーションのコツを学べる実践的ガイド。
『思考のすすめ』
概要: 論理的思考力を磨き、複雑な問題を効率的に解決する能力を向上させるための実践的アプローチを提供。ビジネスや日常生活での意思決定に役立つ思考法を学べる。
『資料作成・プレゼンのプロセス(ロジカルな資料作成・プレゼンテーションの教科書①)』
概要: 論理的で説得力のある資料作成とプレゼンテーションのプロセスを詳細に解説。効果的な情報伝達と聴衆の心を掴むテクニックを、ステップバイステップで学べる実践的教科書。