はじめに
客先での打ち合わせや対面の会議。Teamsのオンライン会議ならトランスクリプト(文字起こし)が残せますが、対面会議は手元のメモだけが頼りです。
「とりあえずスマホで録音しておいた」
ここまでは多くの方がやっています。問題はそのあと。録音を聞き直しながらの文字起こしは、再生と巻き戻しを繰り返すため、実際の会議時間の2〜3倍かかることも珍しくありません。1時間の会議なら、文字起こしだけで2時間。そこからさらに議事録の体裁に整える作業が待っています。最近のスマホのボイスメモは文字起こしの機能があるものもありますが、それでも大変な作業です。
「会議が終わった瞬間から、議事録という宿題が始まり気が重い」そんな経験はありませんか。
実はこの作業、追加費用ゼロ、いつものMicrosoft 365だけで完結できます。
今回は、iPhoneで録音した音声をWordの「トランスクリプト」機能で文字起こしし、Copilot Chatで議事録に仕上げる流れを紹介します。
なぜ議事録づくりは大変なのか
対面会議の議事録が負担になる理由を整理すると、次の3つに集約されます。
1つめは、聞き直しに時間がかかること。前述のとおり、手作業の文字起こしは会議時間の数倍かかります。やる気の無くすレベルです
2つめは、メモが断片的なこと。会議中は議論に集中したいので、メモは要点の走り書きになりがちです。後から見返すと「これ、誰の発言だっけ?」となることも。
3つめは、外部の文字起こしサービスが会社で使いにくいこと。便利なAI文字起こしサービスは増えましたが、有料だったり、業務の録音データを外部サービスにアップロードすることへのセキュリティ審査が必要だったりと、気軽には使えない職場が多いのではないでしょうか。
3つめの理由こそ、Microsoft 365の標準機能で完結させる価値です。すでに会社が契約しているM365の枠内なら、新たなサービス契約も審査も不要です。
やり方:3ステップで議事録に
全体の流れはシンプルです。
iPhoneで録音 → Wordで文字起こし → Copilot Chatで議事録化
順に見ていきましょう。
Step 1:iPhoneで録音し、OneDriveへ送る
会議の録音には、iPhone標準の「ボイスメモ」アプリを使います。

録音の前に、参加者への確認を。会議の録音には事前に参加者の同意を得るのがマナーです。社内ルールで録音の取り扱いが定められている場合は、そちらにも従ってください。
録音のコツを2つ。
(1)スマホは机の中央に置くと全員の声を拾いやすくなります。また、録音の冒頭に「◯月◯日、◯◯の打ち合わせ、参加者は……」と吹き込んでおくと、後で整理するときに役立ちます。
(2)録音が終わったら、ファイルをPCへ送ります。ここでWindowsユーザーがつまずきがちなのが転送方法です。AirDropはWindowsでは使えません。おすすめはOneDriveアプリ経由です。
M365を使っている方なら全員OneDriveを持っているので、追加の準備はアプリのインストールだけ。PCのOneDriveフォルダーに、録音ファイル(.m4a形式)が自動的に同期されます。
Step 2:Wordのトランスクリプト機能で文字起こし
ここからはPCのWordの出番です。Wordには「トランスクリプト」という文字起こし機能があり、音声ファイルをアップロードするだけで、話者を区別したテキストに変換してくれます。

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Wordを開き、[ホーム]タブ → [ディクテーション]の右の▼ → [トランスクリプト]を選択
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[音声をアップロード]をクリックし、OneDriveに保存した.m4aファイルを選択
対応形式は .wav、.mp4、.m4a、.mp3 の4つ。
iPhoneのボイスメモは.m4a形式なので、変換不要でそのままアップロードできます。
処理中はトランスクリプトウィンドウを開いたままにしておく必要がありますが、他の作業をしながら待てます。
できあがったトランスクリプトは、話者ごとに「話者 1」「話者 2」と自動で区別され、タイムスタンプ付きで表示されます。[すべてをドキュメントに追加]を選ぶと、Word文書に全文を貼り付けられます。
筆者の実感では、日本語の認識精度は【検証後に所感を記載:固有名詞の誤変換の傾向、修正にかかった時間など】。
利用枠について(無償版・有償版の違い)
Wordのトランスクリプト機能は、標準のMicrosoft 365ライセンスで月300分まで利用できます(音声アップロードの合計時間。WordとOneNoteで合算)。週1時間の会議を毎週文字起こししても収まる計算です。
なお、Microsoft Copilotの有償ライセンスがあると、この枠は月30,000分まで拡大します。
トランスクリプトのボタンが見つからない場合
次のいずれかが原因のことが多いです。
- デスクトップ版Wordのバージョンが古い(バージョン2302以降で段階的に展開されています。[ファイル]→[アカウント]で確認できます)
- 組織の設定で「オプションの接続エクスペリエンス」が無効になっている
- Microsoft 365アカウントでサインインしていない
デスクトップ版で見つからない場合は、Web版Word(Microsoft EdgeまたはChromeでアクセス)でも同じ機能が使えます。
Step 3:Copilot Chatで議事録に仕上げる
文字起こしWordファイルができたら保存し、いよいよCopilot Chat( https://m365.cloud.microsoft/ )の出番です。トランスクリプトのテキスト、またはWordファイルを渡して、議事録の形に整理してもらいます。
まずは基本の型から。
以下は会議の文字起こしです。次の3項目で議事録にまとめてください。
1. 決定事項
2. ToDo(担当者と期限がわかる場合は明記)
3. 継続検討事項
(ここに文字起こしテキストを貼り付け)
話者名を整理したい場合は、先にこう伝えます。
以下の文字起こしで、話者 1は鈴木、話者 2は田中です。
発言者名を置き換えた上で、会議の要点を時系列でまとめてください。
(ここに文字起こしテキストを貼り付け)
仕上げの確認も、Copilot Chatに手伝ってもらえます。
この議事録の中で、決定事項なのか継続検討なのか読み取りが曖昧な箇所があれば指摘してください。
最後の確認プロンプトがポイントです。文字起こしには聞き取りの誤りが含まれることがありますし、「決まったこと」と「検討中のこと」の線引きは、会議に出ていた人間にしか判断できない場面があります。Copilot Chatに曖昧な箇所を洗い出してもらい、最終判断は自分で行う。この分担が、安心して使うコツです。
Before / After
この流れを使うと、議事録づくりの時間はどう変わるでしょうか。1時間の対面会議を例にします。
Before(すべて手作業)
録音を聞き直しながら文字起こし:約120分。議事録の体裁に整理:約30分。合計:約150分
After(Word+Copilot Chat)
ファイル転送とアップロード:約5分。文字起こしの処理待ち:約5分(他の作業が可能)。Copilot Chatで議事録化と内容の確認・修正:約【5】分。手を動かす時間:約【15】分
文字起こしという「一番の力仕事」を機械に任せられるので、人間は内容の確認と判断に集中できます。議事録の質を落とさずに、かかる時間だけを減らせるのがこの方法の良いところです。
何がラクになるか・応用のヒント
この型は会議の議事録以外にも応用できます。
- インタビューや商談の記録:話者識別があるので、相手の発言と自分の発言を区別して整理できます
- セミナーや研修の受講メモ:録音をテキスト化しておけば、Copilot Chatに「要点を5つに整理して」と頼めます
- 自分の口頭メモ:移動中に思いついたことをボイスメモに吹き込んでおき、後でテキスト化して整理する、という使い方も
どの場合も、流れは同じです。録音して、OneDriveに送って、Wordで文字起こしして、Copilot Chatで整理する。一度この導線を作ってしまえば、「録音はしたけど聞き直す時間がない」というお蔵入り音声がなくなります。
おわりに
今回の型をまとめます。
録音(iPhone) → OneDriveへ共有 → Wordのトランスクリプトで文字起こし → Copilot Chatで構造化 → 人間が確認して仕上げ
対面会議の議事録は「録音までは簡単、そこから先が大変」な業務の代表格でした。Wordのトランスクリプト機能とCopilot Chatを組み合わせれば、追加費用なしで「そこから先」を大幅に整理しやすくなります。
次回は、Teamsのオンライン会議のトランスクリプトを使った議事録づくりを紹介する予定です。対面とオンライン、両方の型が揃えば、どんな会議でも同じ流れで議事録が作れるようになります。



