はじめに:よくある業務シーン
研修、勉強会、イベント、終わったあとには必ず アンケート結果 が手元に残ります。
Formsで集めたので、回答状況はリアルタイムで確認できる。集計画面に行けば棒グラフも円グラフも自動で出る。満足度の平均も出ている。ここまではFormsが何でもやってくれます。
問題はそのあとです。
「『役立った内容』『改善希望』の自由記述、50件全部に目を通さなきゃ」
「似たような意見が多いはずだけど、分類していくと止まらない」
「満足度の低い人が何に不満を持っているのか、ちゃんと拾いたい」
数値は1分で終わるのに、自由記述の整理で時間が消える。これは多くの職種に共通する困りごとです。
この業務、なぜ大変なのか
自由記述の分析が時間を食う理由はいくつかあります。
「読む」しか手段がない
数値は「合計」や「平均」で一瞬ですが、自由記述は人間が一件ずつ読まないと中身が分からない。50件、100件と積み上がると、読むだけで疲れてしまいます。
似た意見の統合が手作業
「実務でどう使うか分からなかった」「業務での応用例が欲しい」「具体的なシーンが知りたい」。書き方は違うのに、伝えたいことはほぼ同じ。これらを「実務応用が見えない」というカテゴリに束ねる作業が、地味に面倒。
数値と自由記述を組み合わせると複雑さが跳ね上がる
「満足度が低かった人は、自由記述で何を書いているか」を見たい場合、フィルタをかけて、対象行を絞って、また読み直して。やればやるほど時間が溶けていきます。
示唆の抽出が一番難しい
分類が終わっても、「次回どう改善するか」という示唆を出すには、また別の頭の使い方が必要です。気がつくと、報告書を書く時間が残っていません。
Copilot Chatをこう使う(無償版前提)
ここで活躍するのが、Copilot Chatのファイル添付機能です。
https://m365.cloud.microsoft/
ExcelファイルもPDFも、添付して質問することが可能です(無償版で利用可)。
手順1:FormsからExcelを取り出す
Formsの「応答」タブから「Excelで開く」または「コピーをダウンロード」を選びます。

ダウンロードしたExcelは、こんな構成になっています。
| ID | 開始時刻 | 完了時刻 | 氏名 | 満足度 | 役立ち度 | 役立った内容 | 改善希望 | 推奨意向 |
|---|
このまま添付しても動きますが、氏名やメールが必要なければ削除してから渡すのがおすすめです(後述の「コツ」参照)。
手順2:Copilot Chatに添付して質問する
Copilot Chat入力欄の「+」ボタンからファイルを選び、続けて質問を書きます。

最初のプロンプト例:
添付は社内研修「生成AI入門」の事後アンケート結果(50回答)です。
列構成は次の通りです。
・E列:満足度(5段階)
・F列:役立ち度(5段階)
・G列:自由記述「特に役立った内容は」
・H列:自由記述「改善希望/もっと知りたかったこと」
・I列:推奨意向(0〜10点)
以下を整理してください。
1. 満足度・役立ち度・推奨意向の平均
2. G列(役立った内容)を3〜5つのカテゴリに分類し、それぞれの件数を示す
3. H列(改善希望)を3〜5つのカテゴリに分類し、それぞれの件数を示す
ポイントは、列の意味を最初に伝えることです。自動で推測させるより、明示した方が分類精度が安定します。
手順3:数値×自由記述の交差を聞く
ここからが、手作業ではとても辛かった部分です。
満足度4以上の回答群と、満足度3以下の回答群で、
H列(改善希望)に書かれている内容に違いはありますか?
両者の傾向を比較してください。
満足度の低い層が何で詰まっているのかが、一発で見えてきます。
手順4:原文を抜粋して裏取りする
カテゴリ分けの結果を鵜呑みにせず、必ず原文に戻って確認します。
カテゴリ「実務応用が見えない」に分類された回答の原文を、
代表的なものから3件、そのまま抜粋してください。
「あ、これは確かに同じことを言ってる」と納得できれば信頼でき、ズレていればカテゴリを見直します。
手順5:次のアクションへの示唆を引き出す
今回の傾向から、次回の研修内容や運営方法について、
検討すべき改善点を3つ挙げてください。
あくまで仮説として、根拠となるカテゴリも添えてください。
「仮説として」「根拠も添えて」と指定するのがコツです。AIの示唆を判断材料にしつつ、最終的に採用するかは自分で決められる形にします。
Before / After
Before:Excelとにらめっこ
- 自由記述100件(50回答×2問)を1件ずつ読む
- 自分でタグ列を作って分類、件数を数える
- 満足度別の傾向を見たい場合、フィルタをかけ直して読み直す
- 報告書をゼロから書き起こす
- 所要時間:2〜3時間
After:Excelを添付して整理を依頼
- 列構成を伝えてファイル添付、カテゴリ分けと件数を受け取る
- 納得感のないカテゴリは原文を見ながら修正指示
- 数値×自由記述の交差や、層別の比較を質問
- 示唆を仮説として受け取り、自分で取捨選択して報告書にまとめる
- 所要時間:30〜45分
何が楽になったか
「読み続ける作業」と「分類する作業」が大幅に減り、判断と示唆出しに頭を使えるようになります。報告書の質も、急いで書いたときより上がりやすい印象です。
活用のコツ(他のExcel分析にも使える)
列の意味を必ず伝える
「C列が満足度、D列が自由記述」と明示するだけで、的外れな解釈が一気に減ります。ヘッダー行があっても、列名が省略形だったり日本語と英語が混ざっていたりすると誤解されることがあります。
カテゴリ数を指定する
「カテゴリ分けして」と言うと、12個に細分化されたりします。「3〜5カテゴリで」と数を指定するとブレません。
原文の抜粋を必ず求める
AIのカテゴリ分けは「もっともらしい分類」を作るのが上手です。本当にそのカテゴリに当たる回答が3件以上あるか、原文で確認する習慣が安全です。
数値の単純集計はExcelでも検算する
平均、件数、最大最小のような数値計算は、Excelの関数で出した値と突き合わせて確認します。Copilot Chatに任せきりにしない部分です。
個人情報は持ち込まない
回答者名やメールアドレスの列が分析に不要なら、添付前に削除します。職場アカウントでのEDP(Enterprise Data Protection)が効くとはいえ、「そもそも渡さない」が一番安全です。
グラフは別の手段で作る
視覚化はExcel側の機能やFormsの集計画面が確実です。Copilot Chatには「テキストでの傾向整理」を任せ、見た目はExcelに任せる、という分担が無理なく動きます。
他のシナリオへの転用
この「Excelの列を説明する → 分類を依頼する → 原文で裏取る → 数値と組み合わせて聞く → 示唆を仮説で引き出す」の流れは、アンケート以外にも使えます。
- 顧客からの問い合わせログの傾向分析
- 営業案件リストの優先度仕分け
- 在庫リストや進捗リストの異常検知
- 利用ログから利用パターンを抽出
「Excelに溜まっているけど読みきれない」場面なら、応用範囲は広いです。
まとめ:この業務の「型」
Formsアンケート結果の分析は、次の型で考えられます。
FormsからExcelを出す → 列構成を伝えて添付 → 分類と集計を整理してもらう → 原文で裏を取る → 数値と自由記述の交差を聞く → 示唆は仮説として受け取り、自分で判断する
この中で、Copilot Chatが役立つ部分は:
- 自由記述の分類と件数整理
- 数値層別と自由記述の交差確認
- 改善点の仮説出し
一方、人がやるべき判断・責任の部分は:
- カテゴリが業務文脈に合っているかの判断
- 数値の最終的な検算
- 改善仮説を実際に採用するかの決定
- 報告書としての言葉選びと結論
数値はFormsとExcelが、自由記述の整理はCopilot Chatが、示唆と判断は自分が——。それぞれの得意分野で役割を分けると、午後が消えていたアンケート整理が、コーヒー1杯分の時間に収まります。
次に自由記述の山を前にしたら、まず列構成を1行ずつ書き出してから添付してみてください。
参考情報
-
Microsoft 365 Copilot Chat
https://m365.cloud.microsoft/ -
Microsoft Learn「Frequently asked questions about Microsoft 365 Copilot Chat」(ファイル添付・データ分析の機能説明)
https://learn.microsoft.com/en-us/copilot/faq -
Microsoft Learn「Controls to manage file uploads in Microsoft 365 Copilot and Copilot Chat」(管理者向け制御)
https://learn.microsoft.com/en-us/copilot/microsoft-365/microsoft-365-copilot-file-upload-control