
無償のCopilot Chatには、Microsoftが用意した標準エージェントがいくつか並んでいます。その中でも、追加費用なしで使えることが実機でも確認できているのが Prompt Coach(プロンプトコーチ) です。
このエージェント編では、1記事につき1つのエージェントを取り上げ、「どんな業務を楽にしてくれるのか」を具体的に紹介していきます。
はじめに:よくある業務シーン
「この件、取引先にメールで一報入れておいて」
「〇〇部長にスケジュール相談のメール、先に送っておいて」
上司や同僚から、こんな依頼が飛んできます。
「よし、Copilotに頼もう」と思って、プロンプトを書きます。
〇〇社に打ち合わせの日程調整メール書いて
返ってきた答えが、なんだか違う。「平素より大変お世話になっております」で始まる テンプレ通りの堅い文面 で、普段のやり取りのトーンと合っていない。
書き直してみます。
もう少しカジュアルに、親しい取引先向けに書いて
今度はカジュアルすぎて、ビジネスメールとしてはちょっと違和感がある。そもそも候補日時も入っていないし、何の打ち合わせなのかも反映されていない。
「来週の△日、△日、△日の午後で候補を」「先方の田中部長宛で」「前回の打ち合わせから少し間が空いた件にも触れて」——追加指示を重ねているうちに、気づけば 5分で終わるはずが20分経っている。結局、「自分で書いた方が早かったかも」という気分になる。
こんな経験、ありませんか?
この業務、なぜ大変なのか
プロンプトを書くのが大変な理由は、いくつかあります。
何を書けばいいのか分からない
「AIに指示を出せばいい」と言われても、具体的に何を、どれくらい詳しく書けばいいのか、手掛かりがありません。結果、短すぎるプロンプトで期待外れの答えが返ってきます。
試行錯誤に時間がかかる
書いてみて、違う答えが返ってきて、書き直して……を繰り返すうちに、時間だけが過ぎていきます。「結局、自分で書いた方が早い」と諦めてしまう瞬間が、誰にでもあります。
「急いでいるとき」ほどうまくいかない
焦っているときほど、プロンプトが雑になり、返ってくる答えも雑になります。時間がないときに限ってAIがうまく動かない、という体感を持っている方も多いはずです。
ベストプラクティスを学ぶ機会がない
プロンプトの書き方は、誰かが体系的に教えてくれるわけではありません。社内にくわしい人がいれば別ですが、多くの人は「なんとなく」で書いています。結果、「AIを使いこなせる人」と「使いこなせない人」の差が、日を追うごとに広がっていきます。
Copilot Chatをこう使う(無償版前提)
ここで、Copilot Chat(無償版)の標準エージェント Prompt Coach の出番です。
Prompt Coachは、プロンプトを書く力を鍛える「コーチ役」 になってくれます。
アクセス方法
- ブラウザで https://m365.cloud.microsoft/ にアクセス
- 左ナビから 「エージェント」 を選択
- 表示されていなければ、「すべてのエージェント」 から Prompt Coach を追加
- Prompt Coachを選択して、会話を開始
使い方はシンプル
いちばん手軽なのは、うまくいかなかったプロンプトを、そのまま投げて添削してもらう使い方です。
次のプロンプトを、より良いものに改善してください。
「〇〇社に打ち合わせの日程調整メール書いて」
Prompt Coachは、どこが曖昧でどう書けば伝わりやすくなるかを指摘しつつ、改善版のプロンプトを返します。
たとえば、こんな改善例が返ってきます。
- 宛先の具体情報(会社名、部署、役職、氏名)を明示する
- 相手との関係性(初対面か、長年の取引先か、普段のトーン)を伝える
- 打ち合わせの目的と所要時間を含める
- 候補日時(複数)を指定する
- 追加で盛り込みたい文脈(前回の打ち合わせからの間隔、先方への気遣いなど)を伝える
改善版をそのままCopilot Chat本体に投げれば、1発で欲しい答えが返ってくる確率がぐっと上がります。試行錯誤の20分が、添削の2分+本番の1回で終わります。
もう一歩進めるなら
Prompt Coachは、単なる添削だけでなく、プロンプトの「型」 も教えてくれます。Microsoft公式が推奨している考え方のひとつに、GCES(Goal / Context / Expectations / Sources) という構造があります。
プロンプトを書くときに使える「型」を、
具体例と一緒に教えてください。
と聞けば、ゴール、文脈、期待する出力、参照する情報源の4つを意識する書き方を、例つきで教えてくれます。
また、書いたプロンプトがResponsible AI(責任あるAI)のガイドラインに沿っているかもチェックしてくれます。業務で使うなら、ここも地味にありがたい機能です。
一度に複数の質問を詰め込まず、1プロンプト1質問で会話を重ねるのがコツです(Microsoft公式にもベストプラクティスとして書かれています)。
Before / After
Before:プロンプトを自己流で書いていた場合
- 短すぎるプロンプトで、期待外れの答えが返る
- 書き直しを何度も繰り返す
- 「結局自分で書いた方が早い」と諦めてしまう
- 所要時間:1つのタスクに20〜30分
After:Prompt Coachで添削してから使う場合
- 下書きをPrompt Coachに投げて、改善版を受け取る
- 改善版を本体のCopilot Chatに投げると、ほぼ1発で欲しい答えが出る
- 「型」を学ぶうちに、自分で書けるプロンプトの質も上がっていく
- 所要時間:1つのタスクに5〜10分
何が楽になったか
プロンプトの試行錯誤をPrompt Coachに肩代わりしてもらうことで、自分は 「結果を確認して、本来の業務に使う」 ことに集中できるようになります。
どこに時間を使えるようになったか
プロンプトを練り直す時間が減った分、Copilotから返ってきた内容を自分で読んで判断する時間、そして本来の業務そのものに時間を使えるようになります。
さらに副次的な効果として、Prompt Coachとのやりとりを繰り返すうちに、自分でも良いプロンプトが書けるようになっていくという教育効果があります。これはPrompt Coachが「添削ツール」ではなく「コーチ」である所以です。
活用のコツ(他の業務にも使える視点)
指示の出し方の考え方
「うまくいかないプロンプトを、そのまま投げる」——これだけで十分です。最初から「きれいな質問」をしようとしなくて大丈夫。失敗したプロンプトこそ、Prompt Coachにとっての素材になります。
学びの定着
添削結果を見るときは、「どこを直されたか」ではなく、「なぜそう直されたか」 に注目すると、次から自分で書けるようになります。ここは人間側の意識の問題です。
他のエージェントへの転用ヒント
Prompt Coachで身につけた「ゴール、文脈、期待する出力、情報源を明示する」という型は、他のどのエージェントを使うときにも効いてきます。エージェントが変わっても、使う側の腕が上がれば、返ってくる答えの質も上がります。
つまり、Prompt Coachを最初に使いこなすことが、他のエージェントを活かす近道でもあります。
まとめ:この業務の「型」
プロンプトを書く業務は、次の型で考えられます。
下書きを書く → Prompt Coachに添削してもらう → 改善版を本体のCopilot Chatに投げる → 結果を確認して業務に活かす
この中で、Prompt Coachが役立つ部分は:
- 曖昧な下書きを、具体的なプロンプトに書き換える
- なぜその改善が効くのかを説明する
- プロンプトの「型」を例つきで教える
一方で、人がやるべき判断の部分は:
- 最終的に、どんな出力が欲しいのかを決めること
- 返ってきた内容が業務要件を満たしているか確認すること
- AIの出力を業務でどう使うか、責任を持って判断すること
Prompt Coachは、プロンプトを代わりに書いてくれるわけではありません。あくまで、あなたがプロンプトを書けるようになるのを助けてくれるコーチです。
次にCopilot Chatで「なんかうまく動かない」と感じたとき。その失敗したプロンプトを、そのままPrompt Coachに投げてみてください。20分の試行錯誤が、数分で終わります。
参考(Microsoft公式)
- Microsoft Learn「Agents admin guide for Microsoft 365」
https://learn.microsoft.com/en-us/copilot/microsoft-365/agent-essentials/m365-agents-admin-guide - Microsoft Learn「Use the Prompt Coach template to build an agent」
https://learn.microsoft.com/en-us/microsoft-365/copilot/extensibility/agent-template-prompt-coach - Microsoft Support「Agents built by Microsoft」
https://support.microsoft.com/en-us/topic/agents-built-by-microsoft-9cc7cccf-b1ed-4b17-b416-2c15e5e13d5a