この文書では、Windows11上で構造解析ツールOpenRadiossを活用する方法を紹介します。
「OpenRadioss」は、Altairが開発した商用有限要素解析ツールで、以下の通り2022年9月にオープンソースで公開されました。
https://altairjp.co.jp/newsroom/news-releases/open-radioss
公式サイトはこちらです。
https://openradioss.org/
【01:導入方法と動作確認】はこちら
OpenRadiossを活用するために
【01:導入方法と動作確認】においては、公開されている入力ファイルを持ちいて、コマンドやGUIツールで解析実行を行い、VTKファイル変換により可視化ツールParaViewで解析結果を確認しました。
OpenRadiossは動的構造解析ソルバーのみが提供されており、ポスト処理はVTK変換によりParaViewが利用できますが、入力データを作成するプリ処理については組み込まれていません。
商用版Radiossでは、プリポストツールHyperMeshを用いて、入力データを作成し解析結果を可視化します。しかし、オープンソースのみで対応する場合には、このツールは使えません。
「Radioss インクルードファイルを HyperMesh で作る方法と、インクルードファイルの使い道」
ちなみにオープンソースツールを用いて、OpenRadiossの入力データを準備する方法として、解析モデルのメッシュはGmshを用いて作り、解析設定はファイルをエディタで作成する方法が紹介されていますが、複雑な手順が必要となります。
そこで本記事では、オープンソースの並列有限要素法構造解析プログラムFrontISTR用に作られた「解析支援ツールEasyISTR」を用いて、OpenRadiossを活用する手順を説明します。
解析支援ツールEasyISTRの導入手順
ここでは、OpenRadiossを活用するためのみに、EasyISTRを活用するための、最小限の手順を説明します。
▶まずEasyISTRを公開している以下のウエブに接続します。
https://opencae-dalab.org/pukiwiki/?SoftEasyIstr
▶このページにある、以下2つのリンクから、入手してください。
最新版のEasyISTR: Ver.3.54 easyistr_3.54.250926
Windows用Python環境(Ver.2503:WindowsでEasyIstrを利用する場合に必要): easyIstrPython_2503
▶これより、Windowsのダウンロードフォルダに、以下の2つのファイルが保存されます。
all_easyistr_3.54.250926.zip easyIstrPython_2503.zip
▶それぞれのファイルを、右クリックメニュー「すべて展開」で「展開」します。これで以下の2つのフォルダができます。
all_easyistr_3.54.250926 easyIstrPython_2503
▶OpenRadissを導入したフォルダ「C:\DEXCS」の中に、easyIstrPython_2503の中にあるフォルダ「easyIstrPython」を移動します。この中にある以前のフォルダ「easyIstr」は削除しておきます。
▶ダウンロードフォルダのall_easyistr_3.54.250926のなかにある、「easyIstr-3.54-250926.zip」をすべて展開します。できたフォルダeasyIstr-3.54-250926内にある「easyIstr」を、フォルダ「C:\DEXCS\easyIstrPython」に移動します。
▶解説文書が必要なので、フォルダall_easyistr_3.54.250926のなかにある「EasyISTR5-manual-3.54-250926.pdf」を、フォルダ「C:\DEXCS\easyIstrPython」に移動します。これでファイルの移動ができたので、ダウンロードフォルダにある残ったフォルダなどは削除してください。
▶EasyISTRの実行は、フォルダ「C:\DEXCS\easyIstrPython\easyIstr」のバッチファイル「easyistr.bat」から起動します。ダブルクリックすると、ログ用の黒い端末とEasyISTRのウインドウが表示されます。なお、セキュリティの警告が出ても、問題ないので「実行」してください。
なお状況によっては、最初に起動したときのEasyISTRのウインドウの表示が出なかったり、とても時間がかかる場合があり、その場合には何度か試してください。起動を確認した、右下「閉じる」ボタンで終了します。
▶起動を用意にするために、このバッチファイルを右クリックしてメニューから「その他のオプションを確認 → 送る → デスクトップ(ショートカットを作成)」で作成します。このアイコンを変更するために、右クリックしてメニューから「プロパティ → アイコンの変更 → OK → 参照 → C:\DEXCS\easyIstrPython\easyIstr\icons」 の「easyIstrW.ico」を選択します。
動的解析の例題設定
OpenRadiossは動的陽解法の構造解析ツールですので、落下衝突解析の例題を、EasyISTRで設定して解析を検証します。なおこの設定の手順は、EasyISTRの手順で進めるので、解説文書をよく確認して進めてください。
先の手順で用意した解説文書フォルダall_easyistr_3.54.250926のなかにある「EasyISTR5-manual-3.54-250926.pdf」を利用します。この中のP.168「4-9-2. 陽解法による塑性変形の衝突解析」の手順で設定し、P.173「4-9-3. OpenRadiossを使った陽解法による塑性変形の衝突解析」の手順で変換して、OpenRadiossの解析を行います。
基本的には、この解説文書の通り、以下の手順で進めて行きます。具体的な操作は、文書を参考にしてください。
・OpenRadiossの作業フォルダ「C:\DEXCS\OpenRadioss_win64\Work」に、この例題用のフォルダ「fallContactPlastic」を作る。
・EasyISTRのインストールフォルダ「C:\DEXCS\easyIstrPython\easyIstr\unvFiles」の「fallingPart3.unv」を、例題用フォルダにコピーする。
・【手順4-9-2-1】 EasyISTRを起動して、例題フォルダ「fallContactPlastic」を指定して、この中のunv形式のメッシュファイルを読み込む。
・メッシュファイルがmm単位なので、解析をSI単位系のm単位に変換(0.001)すること。また境界条件設定で用いるGROUP設定は、メッシュ作成で対応してある。
・【手順4-9-2-2】 「動解析」を設定してから、「非線形(接触解析)」として「陽解法」を選択する。なお、時間増分は、1e-7sとし、30000step(3ms)まで計算する。
・【手順4-9-2-3】 材料物性値として、「base・nearPart」の2つを定義対象のgroupとしてから、baseは弾性のSteelを選択し、nearPartは弾塑性としてAluminiumを設定する。
・弾塑性特性の設定は、P.118【手順4-2-2-3】の「材料物性値の設定」を参考に行う。塑性の材料特性は、P.170の数値を用いる
・【手順4-9-2-4】 境界条件として、base:固定条件、nearPart:初期条件、CP0:接触条件を、P.170の図に示すように設定する。
次にステップ解析として、STEP0を図に示すように設定する。
最後にsolver設定として、結果出力頻度を300に設定する。さらに線形solverのMETHODは、接触解析のためMUMPSを設定する。
以上で、動的解析の設定が完了したので、これをOpenRadiossで解析するための、ファイルに変換します。
・【手順4-9-3-1】 P.173「OpenRadiossへの変換」の手順で行う。これはEasyISTRがFrontISTR用に作った解析設定ファイルを、EasyISTR組み込みの変換ツール「fistr2rad.py」を用いて行う。
手順は解説文書の通り、EasyISTRのメニュー「ファイル」>「export」>「MshCnt: OpenRadioss (*.rad)」を選択すると、ルーツパネルが表示されます。
この画面上で、exportするファイルのheader名を入力するのですが、最初にあるFirstModelのままで良いので、「変換開始」で進めます。
これで例題フォルダ「fallContactPlastic」に、以下の3つのファイルが作られます。
FistrModel_0000.inc: メッシュデータ
FistrModel_0000.rad: STARTER ファイル
FistrModel_0001.rad: ENGINE ファイル
なお解説資料にもある通り、この変換はコマンド「fistr2rad.py」を、直接に端末で実行することも可能です。
・【手順4-9-3-2】 準備ができたので、OpenRadiossのGUIツールでの解析実行、ParaViewでの結果の確認を、解説資料のように行います。