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AI倫理学習のための学際的学習ロードマップ

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はじめに:AI倫理は「半期2単位」では終わらない

AIが社会、経済、個人の意思決定に与える影響は、もはや技術者倫理やリテラシーといった形式的な知識だけでは対応できません。本ロードマップは、哲学を土台に行動科学、経済学、国際関係へと知識を広げ、AIの「外部影響」を深く理解するための段階的なカリキュラムを提供します。

🎓 ステップ 1:倫理の基礎と人間の理解(哲学と行動科学)

この段階は、AIが作用する「人間とは何か?」という普遍的な問いと、個人の意思決定の仕組みを理解することに焦点を当てます。

 1. 普遍的な正義と公正な分配
  ・目的: AIの利益とリスクを公正に分配するための、
      社会設計の土台となる考え方を学びます。

  ・重要な学者と概念:

   ・ジョン・ロールズ:格差原理(最も不利な人々の利益を最大化する)は、
    デジタルデバイドの是正戦略に応用されます。

   ・アマルティア・セン:潜在能力アプローチ。AIは単なるモノではなく、
    人間の「生きる能力」を拡張するために使われるべきという視点を提供します。

  ・関連キーワード: デジタルデバイド、格差原理、潜在能力。

 2. 人間の非合理性と認知バイアス
  ・目的: AIが人間の心(認知)と選択(意思決定)にどう作用するかを、
      科学的に理解します。みなさんが「理性の保護」の防御壁を築く上で最も重要
     です。

  ・重要な学者と概念:

   ・リチャード・セイラー、ダニエル・カーネマン:行動経済学の二大巨匠。
    不合理(非合理)な意思決定のメカニズム、バイアス、
    そしてAIによる行動誘導(ナッジ)の限界を理解します。
    彼らの書籍から入るのが、最も具体的で分かりやすいでしょう。

   ・スティーブン・ピンカー:人間の理性の本質と認知の仕組みを理解する基礎と
    なります。

  ・関連キーワード: 不合理(非合理)、バイアス、プロスペクト理論、ナッジ、
   注意の経済。

 3. 技術と責任の根源
  ・目的: 技術進歩の倫理的限界と、未来世代に対する長期的責任という、
      哲学的土台を固めます。

  ・重要な学者と概念:

   ・ハンス・ヨナス:予防原則、生存責任。AI開発の「強制停止レッドライン」の
    哲学的根拠を提供します。

   ・ノーバート・ウィーナー:サイバネティクスと技術哲学。AIがもたらす不可逆的な
    危険(制御喪失)を早くから警告しました。

  ・関連キーワード: 技術哲学、予防原則、時間論。

🌐 ステップ 2:構造と権力の分析(経済学とガバナンス)
この段階では、AIがもたらす巨大な経済力と**政治的な統治(ガバナンス)**の構造的問題に焦点を当てます。

 1. 巨大技術と市場の構造
  ・目的: AI時代の資本主義、労働の未来、そして巨大IT企業の権力を分析します。

  ・重要な学者と概念:

   ・カール・ポランニー:市場の自己調整機能の限界。AIによる市場への過度な
    介入が、社会の存続基盤を脅かす可能性を理解します。

   ・ジョン・ケネス・ガルブレイス:巨大組織の権力。AI時代の巨大IT企業と
    技術官僚機構の力に対抗する戦略を考えます。

   ・ダニエル・サスキンド:AIによる労働の未来。AI時代の分配とベーシックインカム
    などの制度設計を論じます。

   ・ショシャナ・ズボフ:監視資本主義。AIがデータを資源として人間の行動を予測・
    制御するメカニズムを理解します。

 ・関連キーワード: 監視資本主義、プラットフォーム経済、巨大IT企業、独占、
  デグロース(脱成長)。

 2. デジタル・ガバナンスとコモンズ
  ・目的: AIが利用するデジタル資源を、公正に管理するための統治の仕組みを
      設計します。

  ・重要な学者と概念:

   ・エリノア・オストロム:コモンズのガバナンス。AI時代のデータやアルゴリズムを
    共有資源として、ローカルなコミュニティがいかに管理すべきかという具体的指針
    を提供します。

   ・キャス・サンスティーン:熟慮する民主主義とナッジの倫理。プラットフォームの
    設計が民主的な議論にどう影響するかを論じます。

  ・関連キーワード: デジタル・ガバナンス、デジタルコモンズ。

🌍 ステップ 3:対立と未来の思想(国際関係とポストモダン)
この段階は、西洋中心の価値観から脱却し、グローバルな普遍性を持つ**「AIの聖典」**へと議論を深めます。

 1. 他者への責任と普遍的な倫理
  ・目的: 倫理の根源を深め、AIによる人間(他者)の道具化を根本的に禁止する哲学を
      確立します。

  ・重要な学者と概念:

   ・エマニュエル・レヴィナス:顔(他者)への無限の責任。AIに倫理的な義務を
    組み込むための、計算を超えた動機を提供します。

   ・ニール・ウィルソン(Nell Watson):AIの倫理的実装と技術者の責任。
    (※翻訳本は少ないため、動画や講演で情報を補完)。

 2. 構造的不正義と解放の思想
  ・目的: グローバル・サウスの視点を取り入れ、AIがもたらすデジタル植民地主義を
      防ぐための戦略を設計します。

  ・重要な学者と概念:

   ・トマス・ポッゲ:構造的不正義。国際的なシステムが生み出す格差に対し、
    補償的な責任を巨大テック企業に負わせる根拠となります。

   ・アミルカル・カブラル:文化的主権。AIによるローカル言語や知識の消滅を
    防ぐための**「文化の解放」**の思想。

   ・ポスト構造主義:「権力」「真理」といった既存の枠組みを批判的に解体し、
    AI時代の新たな倫理的枠組みを構築する視点を提供します。

このロードマップを参考に、みなさんの学習がより豊かで実りのあるものとなることを願っています。

私のブログでさらに詳しく議論しています。興味のある方はぜひこちらもご覧ください

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