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番外編:開発技術のパラダイムシフト①

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番外編①:jQueryの天下統一

〜ブラウザの壁を壊した魔法の合言葉「$」〜

導入:JavaScriptは「嫌われ者」だった?

現在でこそ、JavaScriptはWeb開発になくてはならない「花形言語」です。しかし、2000年代中盤までの暗黒時代、JavaScriptは多くのWebデザイナーやプログラマーから 「できれば触りたくない、面倒くさい言語」 として忌み嫌われていました。

理由は明確です。 「ブラウザごとに方言(独自ルール)が多すぎた」 からです。

例えば「クリックしたら文字の色を変える」という単純な処理をひとつ書くにも、IE用とFirefox(Netscape)用で全く違う書き方をしなければなりませんでした。
エラーが出れば「これはIE6のバグか? それとも自分のコードが間違っているのか?」と疑心暗鬼になりながら徹夜する日々。生のJavaScript(Vanilla JS)を直接書くのは、まさに地雷原を歩くような苦行だったのです。

そんな疲弊した開発者たちの前に、2006年、一人の若き天才が「魔法の杖」をもたらしました。


1. 2006年、救世主「jQuery」誕生

ジョン・レシグ(John Resig)というエンジニアが発表したそのJavaScriptライブラリは、 「jQuery(ジェイクエリー)」 と名付けられました。

そのキャッチコピーは非常にシンプルで、力強いものでした。
「Write Less, Do More(より少なく書き、より多くを実行する)」

jQueryの最大の功績は、 「ブラウザ間の仕様の違い(クロスブラウザ問題)を、すべて裏側で吸収してくれたこと」 です。
開発者は「IEの場合はこう、Firefoxの場合はこう…」と長々とした分岐コードを書く必要がなくなり、jQueryが用意した共通の文法で書くだけで、どのブラウザでも同じように動くようになりました。

jQueryは、当時のバラバラだったブラウザたちの通訳となり、開発者たちを「地雷原」から救い出したのです。


2. 魔法の合言葉「$」と、感動のDOM操作

jQueryが世界中のWebデザイナーの心を鷲掴みにしたのは、その「圧倒的な書きやすさ(直感性)」でした。
当時の生のJavaScriptと、jQueryのコードを見比べてみてください。

例えば、「ページ内にあるすべての <p> タグ(段落)の背景を赤にする」という処理。

【昔の生のJavaScript(Vanilla JS)の場合】

var paragraphs = document.getElementsByTagName("p");
for (var i = 0; i < paragraphs.length; i++) {
    paragraphs[i].style.backgroundColor = "red";
}

「要素を取得して、ループを回して、一つずつ色を変える」という、非常にプログラマティックで面倒な書き方でした。

【jQueryの場合】

$("p").css("background-color", "red");

……短い!圧倒的に短い!!

この $(ダラー/ドルマーク)こそが、jQueryを呼び出す魔法の合言葉でした。
CSSをかじったことがあるデザイナーなら、$("要素") で対象を指定し、それに続けて命令を書くというスタイルは直感的に理解できました。

さらに「命令を数珠つなぎにできる(メソッドチェーン)」という機能により、
$("#box").hide().fadeIn().css("color", "blue");
(ボックスを隠して、ふわっと表示させて、文字を青にしてね)
といった複雑な処理が、まるで英語の文章を読むように1行で書けたのです。


3. Webデザインの「アニメーション民主化」

jQueryがもたらしたもう一つの大革命、それは 「アニメーションの民主化」 です。

当時のWebサイトで「画像をスライドさせる」「メニューをふわっと表示する(ドロップダウン)」といったリッチな表現をするには、重たいFlashを使うか、高度な数学の知識を使って複雑なJavaScriptを組むしかありませんでした。

しかしjQueryを使えば、
$("#menu").slideDown();
たったこれだけです。この1行を書くだけで、メニューが滑らかにスライドして降りてきました。

「俺でも、動くサイトが作れる!」
この感動は、プログラマーではない世界中の「Webデザイナー(コーダー)」たちを熱狂させました。
Lightbox(画像が画面中央にふわっと浮かび上がるヤツ)や、bxSlider(トップページの画像が自動で切り替わるスライダー)など、jQueryを利用した便利な「プラグイン」が世界中で爆発的に作られ、無料で共有されました。

「とりあえず <head> タグにjQueryを読み込ませておけ。話はそれからだ」
そんな時代が10年以上も続いたのです。


4. なぜjQueryは(徐々に)使われなくなったのか?

Webの世界を文字通り「天下統一」したjQueryですが、現在(2020年代以降)のモダンなWeb開発の現場からは、徐々にその姿を消しつつあります。
あんなに便利だった魔法の杖が、なぜ使われなくなってきたのでしょうか?

理由は2つあります。

① ブラウザ自身が賢くなった(標準化の勝利)
かつてjQueryが吸収してくれていた「ブラウザごとの方言の違い」は、HTML5の普及とブラウザの進化(標準化)によって、ほぼ消滅しました。
また、生のJavaScript(ES6と呼ばれる新規格)が劇的に書きやすくなり、わざわざ外部ファイルであるjQueryを読み込まなくても、短いコードで目的の処理が書けるようになったのです。

② 「画面の書き換え」から「状態の管理」へ
Webが「ページ」から「アプリ(SPA)」へと進化する中で、DOM(HTMLの要素)を直接こねくり回すjQueryのやり方は、複雑なアプリを作ると「コードがスパゲッティのように絡まってバグの温床になる」という限界を迎えました。
そして、その役割は「React」や「Vue.js」といった、より高度な次世代のフレームワークへとバトンタッチされていきました。

おわりに:魔法の杖の功績

「jQueryはもう古い(オワコンだ)」と語る人もいます。
しかし、Webの歴史において、これほどまでに多くの初心者に「プログラミングでモノを動かす楽しさ」を教え、長きにわたって世界のWebサイトを支え続けたライブラリは他にありません。現在でも、世界の何千万というWebサイトの裏側では、あの $ マークが静かに動き続けています。

JavaScriptを嫌われ者から英雄へと押し上げた最大の功労者。それがjQueryなのです。


📚 参考文献・出典

本記事で紹介したエピソードやキャッチコピーは、以下の公式情報や資料に基づいています。

  1. jQuery公式サイトとキャッチコピー
    • jQuery Official Website:
      • 現在でも公式サイトのトップに掲げられている「Write less, do more.」という有名なキャッチコピーと、その基本理念を確認できます
      • jQuery - Write less, do more.
  2. jQuery 1.0のリリース発表
    • Official jQuery Blog (August 2006):
      • 2006年8月、作者であるジョン・レシグ氏が「jQuery 1.0」の正式リリースを宣言した当時のブログ記事。「A lot of work has gone into this release...」という初期の熱量が記録されています
      • jQuery 1.0 - Official jQuery Blog
  3. ジョン・レシグ氏による10周年の振り返り
    • John Resig's Blog (January 2016):
      • 2016年にjQueryの誕生10周年を記念して書かれた記事。2006年のBarCamp NYCで発表したことや、「クロスブラウザ問題を減らす」「シンプルなAPIを提供する」という開発の原動力が語られています
      • 10th Anniversary of jQuery - John Resig

🤖 執筆協力
本記事の構成案作成および推敲には、生成AIのアシストを活用しています。


次回予告(番外編②)

フロントエンド(画面側)でjQueryが魔法を見せていた頃、バックエンド(サーバー側)でも、これまでの常識を覆す大革命が起きていました。

「設定より規約」「同じことを繰り返さない」
日本の天才プログラマーが生み出した言語「Ruby」の上に構築された、爆速でWebサービスを作れる夢のフレームワーク。

次回、番外編②。
「Ruby on Railsの衝撃 〜世界中が恋に落ちた『15分で作るブログ』〜」

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