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ブラウザ戦争とWEBの歴史①

Last updated at Posted at 2026-01-14

第1回:すべての「戦争」のその先に

2025年8月15日、戦後80年の節目を迎え、平和の尊さを改めて噛み締めたばかりです。しかし、私たちの周りから争いが消えたわけではありません。

今日もSNSでは「きのこたけのこ戦争」が勃発し、推し活界隈では「解釈違い」による冷戦が続いています。私たちが平和にスマホをポチポチできるのも、実はある軍事技術のおかげなのですが、Wi-Fiが切れた瞬間以外にそれを意識することは滅多にありません。

そう、インターネットです。

特に弊社には、異業種からテック業界に飛び込んできたメンバーも多く在籍しています。「実は技術の歴史には詳しくない」「今さら聞けない」という方もいるのではないでしょうか。 平和のインフラのような顔をしているこの技術も、そのルーツを掘り下げれば 「冷戦下の核攻撃への恐怖」と「物理学者たちの事務作業への絶望」 という、極めてシリアスな動機に行き着きます。

毎日触れる最新技術だからこそ、あえて過去を振り返ってみる――つまり 「温故知新」 の精神で、たまにはどっぷりと歴史の勉強をしてみませんか?

これから語るのは、そうした軍事と科学の歴史から始まり、やがて世界を巻き込む「ブラウザ戦争」へと繋がる壮大な物語です。


1. インターネットの祖父「ARPANET」

きっかけは「スプートニク・ショック」

時計の針を1950年代後半に戻します。当時、アメリカはソビエト連邦と「どっちが先に宇宙行くか勝負」の真っ最中でした。1957年、ソ連が人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功すると、アメリカ全土に激震が走ります。「宇宙からいつでも核ミサイル落とせるぞ」と言われたも同然だったからです。

これにビビったアイゼンハワー大統領(当時)が設立したのが、ARPA(高等研究計画局)。「やられる前にやり返すための科学技術」を作る軍事組織です。

「核攻撃」か「移動がめんどくさい」か?

1960年代、このARPAのお財布で作られたネットワークが、ネットの直系のご先祖様 「ARPANET(アーパネット)」 です。ここで、歴史の教科書によく出てくる有名な「神話」があります。

教科書的な説明(建前):
「ARPANETは、核攻撃を受けて一部の回線が吹き飛んでも、生き残ったルートで通信を維持できる『分散型ネットワーク』として設計された(キリッ)」

これは非常にドラマチックでカッコいい説明ですが、現場の実態はもう少し「人間くさい」ものでした。

  • 軍の思惑: 「核戦争に耐えうる通信網が欲しい!(切実)」
  • 現場の研究者: 「あちこちの大学にある巨大コンピュータを使うために、いちいち飛行機や車で移動するのが死ぬほどめんどくさい。回線つないでリモートでやりたい」

つまり、 「スポンサー(軍)は国の存亡をかけていたが、現場(科学者)は出張をサボりたかった」 というのが真相に近いようです。「必要は発明の母」と言いますが、「怠惰は発明の父」かもしれません。

最初のメッセージは「LO」で落ちた

1969年10月、歴史的な最初の通信実験が行われました。送ろうとした文字は「LOGIN」。
しかし、「L」...送信成功。「O」...送信成功。「G」を送ろうとした瞬間、システムがクラッシュしました。

人類初のネット上のメッセージは 「LO」
ネットの歴史は「エラー落ち」から始まったのです。


2. CERNとティム・バーナーズ=リーの「整理整頓」

物理学の研究所でなぜ?

時代は飛んで1989年。舞台はスイスのCERN(欧州原子核研究機構)。 アニメ好きには『シュタインズ・ゲート』に登場する悪の組織(SERN)のモデルとして有名かもしれませんが、現実のそこは、 世界中から集まった天才物理学者たちが、互換性のないパソコンと格闘する「事務作業の戦場」 でもありました。 そこで働いていたティム・バーナーズ=リーは、深刻なストレスで胃に穴が空きそうになっていました。

日本のオフィスで言えば、 「最新の資料が、誰かのデスクトップにある『最新_最終_final_修正版.xls』の中にしかない」 みたいな状況です。
彼はこの地獄を打破するために、「すべての情報をリンクで結びつけ、クリック一つで飛べるシステム」を提案します。これが 「World Wide Web(WWW)」 です。

「//」への懺悔(ざんげ)と人類の損失

Webの父である彼は、後年、URLの http:// にある 「//(ダブルスラッシュ)」 について、こう懺悔しています。

「あれは当時のプログラミングの慣習で入れたものだけど、実は不要だった。あんなに世界中の人が毎日手入力することになるなら、省けばよかった。紙とインク、そしてみんなの時間を無駄にしてごめん

少し計算してみましょう。
世界中の人々が30年間で費やした「//」と打つ0.5秒間を合計すると、たぶん 「日本のサグラダ・ファミリア」こと横浜駅の工事がついに完工するくらいの時間 が失われています。


3. 「画像」という魔法とMosaicの衝撃

初期のWebは、文字だけの世界でした。今のWikipediaから画像とデザインをすべて剥ぎ取り、愛想をゼロにしたような画面です。そこに「色」と「画像」を持ち込み、革命を起こしたのが、1993年に登場した 「NCSA Mosaic」 です。

学生寮から生まれた革命

開発したのは、イリノイ大学の学生だったマーク・アンドリーセンら。彼らは 「文字と一緒に画像を表示できる(imgタグ)」 という、今では当たり前すぎてあくびが出る機能を実装しました。
しかし当時としては魔法でした。これにより、インターネットは「むさ苦しい学者の道具」から「一般人が楽しめるメディア」へと変貌します。「ネットサーフィン」という死語が、当時は最先端のトレンドワードとして爆誕したのです。


4. Netscapeの野望と巨大な死亡フラグ

「ゴジラ」の誕生

大学卒業後、マーク・アンドリーセンはジム・クラーク(シリコンバレーの伝説的起業家)と共に、Mosaicの開発チームをごっそり引き抜いて新会社を設立します。それが Netscape Communications です。

彼らが作ったブラウザ「Netscape Navigator」は、社内コードネームで 「Mozilla」 と呼ばれていました。「Mosaic Killa(Mosaicを殺すもの)」と「Godzilla(ゴジラ)」を足した造語です。日本の怪獣の名を冠するあたり、彼らの「世界を壊してやるぜ」という中二病的な野心が透けて見えます。その名の通り、彼らは瞬く間に市場の90%を支配しました。

伝説の死亡フラグ

1995年、Netscapeは株式公開(IPO)を果たし、空前の「ドットコム・バブル」が始まります。若くして億万長者となったアンドリーセンは、ある時こんな発言をしてしまいます。

「我々は、Windowsを『デバッグが不十分なデバイスドライバの寄せ集め』に変えてやるつもりだ」 (We will reduce Windows to a poorly debugged set of device drivers.)

これは、ドラゴンボールで言えば 「『おまえたちがおもっているほどこの化物たちは強くなかったようだな』と勝ち誇った直後、栽培マンの自爆でクレーターの底に沈むヤムチャ」 レベルの巨大な死亡フラグでした。 (ヤムチャしやがって…

この言葉が、眠れる巨人・Microsoftのビル・ゲイツを本気で怒らせてしまいました。当時、Windows 95の発売を控えていたゲイツにとって、OSの価値を否定されることは「喧嘩売ってんのか?」と同義だったからです。

平和な情報共有ツールだったWebは、ここから血で血を洗うビジネス戦争、泥沼のプロレス会場へと変わります。


📚 参考文献・出典

  1. インターネットの起源と「LO」の逸話

  2. WWWの誕生と「//」への謝罪

  3. Netscapeの歴史とアンドリーセンの発言

    • WIRED(米国版・原文):
      • 創業者マーク・アンドリーセンへの長編インタビュー(2012年)。「デバイスドライバ発言」の真意や、Microsoftとの攻防について本人が語っています。
      • The Man Who Makes the Future - WIRED
    • 米国司法省(Department of Justice):
      • 1999年のMicrosoft裁判における、裁判所の「事実認定(Findings of Fact)」の公式アーカイブです。MicrosoftがNetscapeを排除しようとした事実が記録されています。
      • U.S. v. Microsoft: Court's Findings of Fact

🤖 執筆協力
本記事の構成案作成および推敲には、生成AIのアシストを活用しています。

次回予告

圧倒的なシェアと資金力を手にしたNetscape。しかし、Microsoftは静かに、しかし確実に「デスマーチ」の準備を進めていました。次回、Microsoftが繰り出した禁断の必殺技「タダより怖いものはない戦略」と、第一次ブラウザ戦争の凄惨な結末を描きます。

第2回:「第一次ブラウザ戦争 〜巨人の目覚めと『0円』の焦土作戦〜」

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