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本日の微分方程式(2日目)

Last updated at Posted at 2023-05-06

なんとなく脳トレがてら1日1問解説しようと思っただけです.飽きたらやめます.

問題

y^{\prime} = y(1-y).

を変数分離形として解け.

ポイント

  • $\displaystyle\frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}=P(x)Q(y)~$ の変数分離形です.
    • 変数分離形についてはヨビノリさんの動画などが参考になります(自分スポンサーをしているので宣伝です).

  • 両辺を $Q(y)$ で割って $x$ で積分したくなるのですが, $Q(y)\neq 0$ に注意しましょう.
    • つまり,$Q(y)\neq 0$ と $Q(y)=0$ で場合分けが必要です.
  • 積分計算がちょっと厄介です.部分分数分解をマスターしましょう.

解説

$P(x)=1, Q(y)=y(1-y)$ の変数分離形です.左辺に $y$ の式,右辺に $x$ の式を持っていき,それぞれ積分しましょう. なお,変数分離を行う前に,$Q(y)$ が恒等的に0になる関数 $y(x)$ がないかチェックしておきましょう.今回は,$Q(y) = y(1-y)=0$ より, $y=0$ および $y=1$ が地雷です. 場合分けして解いていきましょう.

① $y(1-y)\neq 0$ のとき.

両辺を $y(1-y)$ で割って,両辺を $x$ で積分します(形式的には左辺を $y$,右辺を $x$ で積分することになります).

\begin{align}
    y^{\prime} &= y(1-y), \\
    \frac{1}{y(1-y)}\frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}&=1,\\
    \int\frac{1}{y(1-y)}\frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}\mathrm{d}x&=\int 1\mathrm{d}x,\\
    \int\frac{1}{y(1-y)}\mathrm{d}y&=\int 1\mathrm{d}x.\\
\end{align}

ここで,$\displaystyle\frac{1}{y(1-y)}=\frac{1}{y}+\frac{1}{1-y}=\frac{1}{y}-\frac{1}{y-1}$ と部分分数分解できるから(本文末尾で過程を補足),

\begin{align}
\int\left(\frac{1}{y}-\frac{1}{y-1}\right)\mathrm{d}y&=\int 1\mathrm{d}x.
\end{align}

後は,$\log A-\log B = \log\dfrac{A}{B}$ に注意してそれぞれ積分・変形を行おう.過程は次の通りです.

\begin{align}
    \log{|~y~|}-\log{|~y-1~|}&=x+C_1~~~(C_1:任意定数),\\
\log{\frac{|~y~|}{|~y-1~|}}&=x+C_1,\\
\log{\left|~\frac{y}{y-1}~\right|}&=x+C_1,\\
\left|~\frac{y}{y-1}~\right|&=e^{x+C_1}~~~(\because 両辺の指数をとった),\\
\left|~\frac{y}{y-1}~\right|&=e^{C_1}e^{x},\\
\therefore\frac{y}{y-1}&=\pm e^{C_1}e^{x}.\\
\end{align}

ここで,1日目の問題 同様, $C_1$ が任意の実数値を取るとき, $\pm e^{C_1}$ は0以外のすべての値をとるので,上記は

\frac{y}{y-1}=Ce^{x}~~~(C\neq 0),

と書き換えることができます.あとはこれを $y$ について解くだけです.両辺に $(y-1)$ をかけて,

\begin{align}
y &= (y-1)Ce^x,\\
y &= yCe^x-Ce^x,\\
y(1-Ce^x)&=-Ce^x,\\
y&=\frac{-Ce^x}{1-Ce^x},\\
\therefore y&=\frac{Ce^x}{Ce^x-1}~~~(C\neq 0).
\end{align}

② $y(1-y)=0$ のとき.

$y=0$ または $y=1$ のとき,いずれも $y^\prime = 0$ であるから,関数 $y=0$,$y=1$ は方程式 $y^{\prime} = y(1-y)$ を満たします.よって $y=0, y=1$ も解です.

また, $y=0$ は,①の解 $y =\dfrac{Ce^x}{Ce^x-1}$ において,$C=0$ としたものと一致します.
これに対して, $y=1$ は, $y = \dfrac{Ce^x}{Ce^x-1}$ において,$C$ をどのように選んでも作ることが出来ません(このような解を特異解といいます).

よって,①と②の解を合わせれば,

y =\dfrac{Ce^x}{Ce^x-1}~~~(C: 任意定数),~y=1,

が微分方程式 $y^{\prime} = y(1-y) x$ の解.

【補足1】 部分分数分解

$\dfrac{y}{1-y}$ の部分分数分解のやり方を簡単に詳解します.

まず,$\dfrac{1}{y(1-y)} = \dfrac{A}{y}+\dfrac{B}{1-y}$ とおきます.

方法① 数値代入法

両辺に $y(1-y)$ をかけると,

1 = A(1-y) + By,

という $y$ についての恒等式ができます.後は,$y$ に任意の実数を代入して $A$ と $B$ に関する連立方程式を得ます.

$y=0$ を代入して,

1 = A,

$y=1$ を代入して,

1 = B,

よって $\dfrac{1}{y(1-y)} = \dfrac{1}{y}+\dfrac{1}{1-y}$.

方法② 係数比較法

右辺を通分すると,

\frac{1}{y(1-y)} = \frac{(-A+B)y+A}{y(1-y)},

と変形できるから,分子に着目し $y$ の多項式についての係数の比較を行いましょう.左辺は1であるから,右辺の $y$ の係数は0, 定数項の値が1になります.よって,得られる連立方程式は次の通りです.

\begin{align}
\left\{ \,
\begin{aligned}
    0 & = -A+B, \\
    1 & = A. \\
\end{aligned}
\right.
\end{align}

よって $A=B=1$ であるから $\dfrac{1}{y(1-y)} = \dfrac{1}{y}+\dfrac{1}{1-y}$.

方法③ 暗算1

やっていることはほとんど方法②の係数比較法です.頭の中を書き出してみると,

  1. $\dfrac{1}{y(1-y)}$ の分子に $y$ の項がない
  2. $y$ と $1-y$ における $y$の係数は 1 と -1 で異符号

という条件から,

\frac{1}{y(1-y)} = \frac{1}{a}\left(\dfrac{1}{y}+\dfrac{1}{1-y}\right)

であることがぱっと見わかります.$a$ は,実際に右辺の括弧()内を通分して計算したときの定数項の値です.今回はたまたま1なので即完了です.

方法④ 暗算2

やっていることは数値代入法です.連立方程式すら書きたくない人向けです.証明はクドいだけなので省略しますが,$A$ および $B$ は以下のような暗算レベルの計算で求めることができます.

\begin{align}
A &= \left.\frac{1}{y}\right|_{y=1}=1,\\
B &= \left.\frac{1}{1-y}\right|_{y=0}=1.\\
\end{align}

イメージはクラメルの公式です.$A$ を求めるときは,第1項の $A$ を左辺の分子に置き換えて,$y$ には第2項の分母が 0 になる $y$ (ここでは $y=1$ ) を代入します.同様に,$B$ を求めるときは,第2項の$B$を左辺の分子に置き換えて,$y$ には第1項の分母が 0 になる $y$ (ここでは $y=0$ ) を代入します.

詳細はこちらのサイトがわかりやすいです.

【補足2】

部分分数分解後の変形によっては,解が,

y =\dfrac{Ce^x}{Ce^x+1}~~~(C: 任意定数),~y=1,

や,

y =\dfrac{e^x}{e^x+C}~~~(C: 任意定数),~y=1,

のようになるかもしれないですが,どれも本質的には同じなので正解です.

【補足3】

$y^{\prime} = y(1-y)$ は $y^{\prime} -y= y^2$ としたベルヌーイ型としても解けます.

こちらも,よろしければヨビノリさんの動画をご参照ください.

【参考】 Wolframalpha

非常に便利なので皆さん積極的に使っていきましょう.

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