前回までのあらすじ
Microsoft 365 Copilot のライセンスを持っていなくても、Microsoft 365 ライセンス(E3やE5など)を持っていれば「Microsoft 365 Copilot Chat」(以下、Copilot Chat)が利用できます。
今後いろいろな機能が利用可能になりますが、EDP(エンタープライズデータ保護)によって入力内容は保護されます。つまり、LLM(エンジン)の学習に入力した内容は利用されません。ジャンジャン Copilot Chat に質問してみましょう。
プロンプトの4要素
ところが、普段生成AIに利用していない人に聞くと、こんな会話になります。
私「生成AIってりようしたことは、ありますか?」
その人「はい、つかったことはあります。」
私「でも、今は使っていないんですよね、なんでですか?」
その人「期待した回答が得られなくてー…」
原因はいくつかあるのですが、一つは生成AIが話題になった時(GPT-3ぐらいのとき)、まだ精度がイマイチだったこと。ですが、今はGPT-5がCopilot Chatでも利用できるようになりましてだいぶ賢くなっています。噂によると博士課程レベルだとか・・・?
今回はもう一つの理由である「指示でちゃんと意図を伝えましょう」という点について深堀してみます。例えば「日本で一番高い山は?」と聞いたらもちろん「富士山です!」と返ってきます。ですが、それを聞いて何がしたいのか、写真を撮りたいのか、登りたいのか…といったところまで伝えれば期待した回答を得ることができます。
指示(プロンプト)に含めるべき要素のことを「プロンプトの4要素」といいます。これ自体の呼び方や、以下の4つの要素それぞれ違う言い方をする場合も多いですが、意味はだいたい同じです。
意味合い | 説明 | 例 |
---|---|---|
目的・ゴール | 何を達成したいのかを明確にする | 登山ルートを知りたい、美しくとれるスポットが知りたい |
コンテキスト・背景 | 必要な前提情報や条件の提示 | 私は初心者登山者です。海外の友人に写真を送りたい |
入力・制約条件・要件 | 利用するデータや制約を指定する | 一般的に知られているルートに限定する。一般人が立ち入れる場所に限定する |
出力形式 | どのようにこたえてほしいか | ルートの候補を表形式で、東京からの所要時間と交通機関を箇条書きで |
それぞれを細かく見ていきます。
目的やゴール
Copilot Chatから得た出力を何に使うのか、なんでそれが欲しいのかなどを説明します。Copilot Chatはそれに即した形で回答を生成してくれます。
コンテキスト
コンテキストというと難しく感じますが、背景(Background, Situation)ととらえるとよいでしょう。質問をする人(通常のチャットだとこれは自分自身になりますが、後述するエージェントを踏まえると「質問をする人(user)」と「回答する人(Copilot Chat)」と第三者目線で考えるとよいと思います。
質問者はどんな人なのか?だけでなく回答者もどんな人を想定するのか?を入れるとより良いです。
例えば、「質問者は登山初心者ですが、スーパーアルピニストの観点で~~」と「質問者は登山初心者ですが、山登りが趣味でエンジョイしている人の立場で~」では回答に差異が出ます。どちらを期待しているのかを踏まえるとよいでしょう。
入力・制限条件・要件
富士山に登ろうとするとき、崖になっている部分をガツガツ上ったとしても山頂まではたどり着けます。しかしながら、基本的には「ルート」という登山を想定した道をつかいます。解答に対してどんな要件や制約があるのかを踏まえるとよいでしょう。他には例えば「上級者向けルートは避けたい」とかですね。
出力形式
どんな出力形式だと有用化を考えて指定するとよいでしょう。例えば箇条書き、表形式、marmaid形式などがあります。また、レポート形式にしてほしい場合、マークダウン形式で詳細に指定する。例えばこんな感じにといった例示をするとよいでしょう。
これを踏まえてプロンプトを作る
上記を踏まえてプロンプトを作ります。基本的には思ったことをそのまま書けば動作するはずです。「#」や「-」を使ってマークダウン表記をすると見栄えが良くなり、また期待した結果を得られやすいですが(後述)。まずは思ったままに書いてみましょう。
今回はこんな感じにしてみました。
登山初心者です。富士山に登ろうと思います。登山ルートを「ルートの名前」「一般的な山頂までの所要時間」「難易度」「説明(50字程度)」を表形式でまとめてください。説明は初心者に寄り添った内容にしてくれると嬉しいです。
出力例
おおむね期待通りの回答が出てきました。
「プロンプトの4要素」は必ずしもすべてのプロンプトに対して要素を4つ入れなさい!というものではありませんが、少し考慮するだけで回答の精度が断然よくなりますので、ぜひ活用してみてください。
さて、最近の生成AIは上記の黄色部分のように「提案」をしてきますよね。
これについて次回は触れてみようと思います。