はじめに
10年以上前から稼働しているレガシーシステムを通じて得られた実践的な教訓をまとめました。新規システムの設計時や、既存システム改善時の参考になれば幸いです。
設計・アーキテクチャ面での教訓
1. シンプルな設計は長く生きる
「かっこいい」アーキテクチャよりも「シンプル」な設計のほうが、長期的には保守性が高くなります。当時最新だった複雑なデザインパターンを採用したコードよりも、素直なCRUD処理のほうが10年後も問題なく動いているケースが多いです。
2. モジュール間の依存関係は最小に
密結合なモジュールは、小さな変更が思わぬ箇所に影響を及ぼします。特に、古いシステムでは依存関係を完全に把握できている人がいないことも。疎結合を心がけることで、変更の影響範囲を制御しやすくなります。
3. データ構造の変更は慎重に
テーブル設計やデータ構造の変更は、システムの寿命が長くなるほど大きな影響を及ぼします。特にマスターデータの構造は、開発初期の段階で十分な検討が必要です。
運用面での教訓
4. 運用手順の自動化は優先度高め
手作業による運用は、必ずヒューマンエラーを引き起こします。特に定期的なバッチ処理やデータメンテナンス作業は、可能な限り自動化することでリスクを低減できます。
5. ログ設計は運用を見据えて
「とりあえずログを出力しておけば大丈夫」は危険です。エラー発生時に原因特定できるログ、パフォーマンス分析に使えるログなど、運用フェーズでの使用目的を考慮したログ設計が重要です。
6. 定期的なメンテナンス時間の確保
システムが安定稼働していても、定期的なメンテナンス時間は必要です。パッチ適用、データクリーンアップ、パフォーマンスチューニングなど、システムの健全性を保つための作業時間を確保しましょう。
技術的負債への向き合い方
7. 小さな改善を継続的に
大規模なリファクタリングは、リスクとコストが高くなります。日々の保守開発の中で、少しずつ技術的負債を返していく方針のほうが現実的です。
8. テストコードは資産
テストコードがないレガシーシステムでは、ちょっとした修正も危険を伴います。新規開発時のテストコード整備は、将来の保守性を大きく左右します。
ドキュメント管理の教訓
9. システムの全体像を示す図は更新必須
システム構成図、ER図、処理フロー図など、システム全体を示す重要な図は、変更の都度更新する習慣をつけましょう。数年後の保守開発で大きな価値を発揮します。
10. トラブルシューティングガイドの整備
過去に発生した重要な障害事例は、原因と対策を文書化しておきましょう。似たような障害が発生した際に、解決時間を大幅に短縮できます。
まとめ
レガシーシステムは「負の遺産」ではなく「学びの宝庫」です。過去の意思決定から学び、より良いシステム作りに活かしていきましょう。
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