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進化する生成AIと退化する人間

Last updated at Posted at 2025-09-04

はじめに

生成AI、使ってますか?

ChatGPTが世に出てから3年が経とうとしています。
今や多くの人がコードレビューから文章作成、アイデア出しまで、日常的に生成AIを使うようになりました。

チャットツールやIDE、ブラウザなど、気がつけば私たちの周りは生成AIで満ち溢れています。

そして確かに、生成AIは私たちの作業を効率化し、新たな可能性を切り開いてくれました。
でも、ふと立ち止まって考えてみませんか?

生成AIが進化し続ける中で、私たち人間はその進化についていけているのでしょうか。

進化し続ける生成AI

振り返ってみれば、生成AIの進歩は目を見張るものがあります。

2022年11月のChatGPT登場以来、この分野は爆発的な進化を遂げました。
OpenAIのGPT-5、AnthropicのClaudeCode、GoogleのGemini、AmazonWebServiceのKiro。
そして数え切れないほどのオープンソースモデルが次々と登場し、コード生成能力の向上、推論能力の飛躍的向上。

今では、複雑な数学問題を解き、文章を書き、プログラムを書き、画像を生成し、音声で会話し、私たちの要求に応えてくれます。そのスピードは人間の学習能力をはるかに凌駕しています。

一方人間は

しかし、生成AIがこれほど進化している中で、私たち人間はどうでしょうか?

実は最近、この問いに対する興味深い研究結果が発表されました。

MIT Media Labの研究チームが行った実験では、18歳から39歳の54人を3つのグループに分けて、SAT形式のエッセイを書いてもらいました。

  • ChatGPTを使用するグループ
  • Google検索を使用するグループ
  • 何も使わないグループ

結果は衝撃的でした。

ChatGPTを使用したグループは、脳の活動レベルが最も低く、神経、言語、行動のすべてのレベルで一貫してパフォーマンスが劣っていたのです

さらに恐ろしいことに、ChatGPT使用者は回数を重ねるにつれ怠惰になり、最終的には単純なコピー&ペーストに頼るようになりました。

まるで筋肉を使わなければ萎縮するように、脳の「考える筋肉」が衰えているかのようでした。
一方、何も使わずに書いたグループは最も高い神経接続性を示し、創造性、記憶処理、意味理解に関連する脳波が活発でした。

彼らは自分の作品により満足し、より強い当事者意識を持っていました。

興味深いのは、Google検索を使ったグループも高い満足度と活発な脳機能を示したことです。これは、情報を検索し、自分で咀嚼し、統合するプロセスが重要だということを示唆しています。

私たちは退化しているのか?

この研究結果を見て、どう感じましたか?

生成AIに 「効率」 を求めるあまり、自分の思考能力を手放してしまっている人もいるのではないでしょうか。

ChatGPTに質問をポンと投げて、返ってきた答えをそのまま使う。
ClaudeCodeが生成したコードをそのまま使って爆走で開発する。

この行為を繰り返すうちに、私たちの脳は考えることを放棄し始めているかもしれません。

研究者のNataliya Kosmyna氏は以下のように述べています。

タスクは実行されたし、効率的で便利だったと言えるかもしれない。
しかし論文で示したように、基本的にそれを記憶ネットワークに統合することは全くなかった

つまり、生成AIを使って 作業を「こなす」ことはできても、そこから学習し、成長することができていない のです。

作業は完了するが、私たち自身は何も成長していない。
これでは本末転倒なのではないでしょうか?

どう生成AIと向き合っていくか

では、生成AIとどのように向き合っていくべきなのでしょうか?

MITの実験で興味深いのは、 最初に何も使わずにエッセイを書いたグループが、その後ChatGPTを使った時には優秀なパフォーマンスを示したこと です。

つまり、まず自分の頭で考える基盤があれば、生成AIは学習を促進するツールになり得るということです。

私が考える健全な生成AIとの向き合い方は以下のようなものです。

1. まず自分で考える

生成AIに質問を投げる前に、まず自分なりの答えや仮説を持つ。
そうすることで、AIの回答を批判的に評価できます。

2. AIを思考のパートナーにする

答えを求めるのではなく、議論相手として使う。
「この考えについてどう思う?」「他の観点はある?」という具合に。

3. プロセスを大切にする

結果だけでなく、そこに至る思考プロセスを意識する。
AIの回答をそのまま使うのではなく、自分なりに咀嚼し、統合する。

4. 定期的な「AI断ち」

筋トレのように、定期的にあえて自分の頭だけで考える時間を作る。
脳の「考える筋肉」を維持する。

5. 学習の目的を見失わない

効率化は手段であって目的ではない。
私たちの目的は成長し、学び続けることです。

6. 責任は人間にあるということを忘れない

「生成AIが書いたコードなので」というようなPRのやりとりが発生している。という投稿を最近SNSで見かけます。
あくまで生成AIはツールであり、使用しているのは人間なので、使用者であるあなたに責任があるということを忘れないようにしましょう。

おわりに

生成AIは確かに素晴らしいツールです。
しかし、それに依存しすぎることで、私たちが最も人間らしい能力である、 創造性、批判的思考、深い理解 を失ってしまっては本末転倒です。

技術が進歩するからこそ、私たち人間も進歩し続けなければならない。
生成AIに使われるのではなく、生成AIを使いこなす。

そのためには、時には不便で非効率でも、自分の頭で考え抜く時間を大切にする必要があります。

あなたの生成AIとの付き合い方は、果たして健全でしょうか?

生成AIに頼る前に、まず5分間、自分の頭で考えてみる。
その小さな習慣が、私たちの思考能力を守り、真の意味での人間の進歩を支えるのかもしれません。

この記事が生成AIとの向き合い方を考え直すきっかけになると嬉しいです。

この記事で取り上げた論文

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