はじめに
Python IDE の Spyder には Spyder notebook というプラグインがあります.
Spyder notebook は Spyder 内で Jupyter Notebook の編集が可能になるプラグインです.Notebook の編集に限らず,Spyder のコンソールと接続することで,Jupyter Notebook に記述したメソッドの実行,変数の確認・書き換え,また,変数エクスプローラーでの変数の確認などが可能になります.
私は Jupytext を使用して,Jupyter Notebook を py ファイル形式で普段保存したい派なのですが,現時点(2020/7/19)では Spyder Notebook 上で Jupytext を有効にすると,エラーが発生し保存・更新がうまくできない状態です.Spyder notebook の Issue には取り上げられており,将来的には対応するのではないかと思います.
本記事では,現在の環境のまま上述のエラー回避をする方法を備忘録として掲載します.いずれは本体で対応されると思いますので,この記事は用無しになるかと思います.
本記事の目的
Jupytext を有効化した状態で Jupyter Notebook のカーネルを Spyder のコンソールに接続し,変数エクスプローラー等を有効にする.
確認した環境
- OS: Windows 10 Pro 64bit 2004
- Python: 3.7.3
- Spyder: 4.1.3, 4.1.4
- Spyder notebook: 0.1.4.dev1,0.2.3
- Jupyter: 1.0.0
- Jupytext: 1.5.1
※Spyder notebook 0.3.0 以降では動作しません.
手順
1. 編集したい Notebook を Spyder Notebook で開く
1) Notebook ペインを開きます.
※通常は Spyder notebook をインストールすると,Spyder のエディタタブの隣に Notebook タブが自動で追加されます.タブが表示されていない場合,「ツールバー > 表示 > ペイン > Notebook」で表示できる可能性があります.ツールバーのメニューにも存在しない場合,インストールが正常にできていない可能性があります.
2a) 既存の Notebook を開いて編集を行う場合
以下の手順で Notebook を開きます.
- Notebook の空白部分で右クリック → Open... を選択
または,ペイン右上のハンバーガーメニューから Open... を選択 - ファイル選択ダイアログで ipynb ファイルを選択して開く
2b) 新規の Notebook で編集を行う場合
初期状態で開いている Untitled0.ipynb
を以下の手順で任意の場所に保存します.
-
Untitled0.ipynb
の空白部分で右クリック → Save as... を 選択
または,ペイン右上のハンバーガーメニューから Save as... を選択 - ファイル選択ダイアログでファイルの保存先を指定して保存
2. Jupytext の設定
(初めてJupytextを使用する場合の設定,既に設定してある場合は不要)
1) パーセントフォーマットでのファイル保存を有効化
Spyder Notebook の「File > Jupytext > Pair Notebook with percent Script」にチェックを入れ,パーセントフォーマットでのファイル保存を有効化します.
保存をすると,同一フォルダ内に .ipynb と同じファイル名の .py ファイルが作成されます.
- 例
test_spyder_notebook.ipynb
test_spyder_notebook.py
3. Spyder Notebook の URL の確認
1) 起動中の Jupyter Notebook サーバーの確認
Anaconda prompt
を起動して以下のコマンドを入力し,現在起動している Jupyter Notebook サーバーを確認します.
jupyter notebook list
コマンドを実行すると,以下のように出力されます.
Currently running servers:
http://localhost:8888/?token=52a00d3ac13d903245ea6a85611667c45f19ea7d902d6e3d :: C:\Users\<user name>
http://localhost:8889/?token=d1e551f8c2627bccfd18f9e56a08035c800cd4ccb7f4097b :: C:\test
2) ブラウザで Notebook を開く
各URLの行末に表示されている初期ディレクトリと,Notebook の保存されているディレクトリが同一である URL(例では2行目)が,現在 Spyder notebook で開いている Notebook のサーバーの URL です.該当の URL を token まで全てコピーしてブラウザで開きます.
3) Notebook の確認
ブラウザ上の Jupyter Notebook のリストに対象の Notebook (例: test_spyder_notebook.ipynb
)が存在するか確認します.対象の Notebook が確認できない場合,URL が誤っている可能性があります.その場合は先程コンソールで確認した URL リストから別の URL を選択し,再度ブラウザで確認します.
4) Spyder Notebook 上の Notebook を閉じる
対象の Notebook が確認できたら,Spyder Notebook 上の Notebook は閉じます.
(Spyder Notebook のデフォルト画面が表示されているだけの状態になります)
4. パーセントフォーマット py ファイルを Jupyter Notebook で開く
1) .pyファイルをブラウザ上の Jupyter Notebook で開く
- 補足
- .py ファイルを開くと,ステータスが
Running
となり,ファイル名が緑色になります. - .ipynbファイルは先程 spyder 上で閉じたので,グレーの文字になっているはずです.
- .py ファイルを開くと,ステータスが
5. Jupyter Notebook のカーネルを Spyder のコンソールへ接続
1) 既存のカーネルに接続
Spyder コンソールのハンバーガーメニューから,「既存のカーネルに接続」を選択します.
ダイアログが開いたら,接続情報ファイルの「表示」ボタンを押します.
ファイル選択ダイアログが開くので,更新日順でファイルを並び替え,最も更新日の新しいJSONファイルを選択します.
- 補足
- このJSONファイルが先程 Jupyter Notebook で開いた
test_spyder_notebook.py
ファイルのカーネル接続情報です - 規定の接続情報ファイル(jsonファイル)の保存先は
C:\Users\<user name>\AppData\Roaming\jupyter\runtime
です
- このJSONファイルが先程 Jupyter Notebook で開いた
{
"shell_port": 49552,
"iopub_port": 49553,
"stdin_port": 49554,
"control_port": 49555,
"hb_port": 49556,
"ip": "127.0.0.1",
"key": "591c2e22-fc725f42989c69108b68f974",
"transport": "tcp",
"signature_scheme": "hmac-sha256",
"kernel_name": ""
}
2) 接続後の状態
コンソールが追加されていることが確認出来ます.
(ここではコンソール名は「コンソール 2/A」)
コンソールへの接続前に Notebook を編集していた場合,変数エクスプローラには変数が表示されます.
6. 実行例
1) Jupyter Notebook への入力
2) 変数エクスプローラーの確認
Jupyter Notebook の内容がリアルタイムでは反映されないため,
初期状態では変数エクスプローラーには変数が何も表示されていません.
この状態で Spyder のコンソールで空行のまま Enter キーを押し実行すると,変更が反映されます.
変更が反映されると,普段 Spyder で使用している際と同様に,変数エクスプローラーで変数の確認ができるようになります.
3) Spyder上での py ファイルの編集
Jupytext を利用しているため,Jupyter Notebook 上での実行内容は随時 py ファイルに保存されていきます.py ファイルはスクリプトファイルなので Spyder のエディタでも開くことが可能であり,編集も可能です.
注意点
Jupyter Notebook 上で変更があると,Spyder のエディタが自動で py ファイルを再読み込みしますが,Spyder のエディタ上でpyファイルを変更しても Jupyter Notebook は自動で再読み込みしてくれません.Spyder のエディタ上で変更した内容を Jupyter Notebook に反映させる場合は,Jupyter Notebook のページを F5 キーなどで再読込する必要があります.
(設定で対応できそうですが私は判っていません.)