まず初めに
本記事は LaTeXを導入することで、どれだけの時間が短縮されるかを布教する目的で書きました。 一般的にLaTeXは「コードを書くのが難しい」「とっつきにくい」と思われがちです。しかし、生成AIが普及した今、WordからLaTeXへの切り替えは「楽をしたい人」にこそ推奨される最強の選択肢です。
本記事を読んで、理系大学生のレポート作りが少しでも楽になれば幸いです。 (特に、効率よくサボりたい理系学生向けです)
LaTeXとは
LaTeX(ラテフ)をご存知でしょうか。簡単に説明すると、理系大学生がレポートや論文を作成するための「組版システム」です。 Wordのように見たまま編集するのではなく、コードを書いてコンパイル(変換)することでPDFを作成します。
TeX は Donald Ervin Knuth によって開発された,フリーの「組版システム」です。 すなわち,活版印刷のような「文字や図版などの要素を紙面に配置する」という作業をコンピュータで行います。
LaTeX は TeX の上に構築されたフリーの文書処理システムです。 Leslie Lamport によって開発されました。 TeX は「組版のために開発された言語」でもあり,そのままでは使いにくい点もあるので,LaTeX によって一般的な文書作成に便利な機能拡張がなされています。(TeX wikiより)
コードを書く必要があるため、食わず嫌いする人も多いですが、実は今の時代、自分でコードを書く必要はほとんどありません。
なぜWordじゃダメなのか?
おそらく多くの理系大学生が実験レポートや、演習の課題でWordを使用していると思います。ならWordでは何が不便なのでしょうか??
簡単に言うと、GeminiやChatGPTとの相性が悪いことです(他にも不便な点は数多くあるが、ここでは脱線するため割愛させていただく)。
具体例として、自分が実際に授業で課された課題を見ていきましょう。
例題:量子力学のレポート
エルミート演算子$\hat{H}$を用いた固有方程式$\hat{H}\psi_n = \varepsilon_n \psi_n$について、
(1) 固有値$\varepsilon_n$が実数であることを示せ。
(2) $n \neq m$ であるとき、
\int_{-\infty}^{\infty} \psi_n^*(x)\psi_m(x) dx = 0
であることを示せ。
一般的なアプローチ
上のような課題が与えられたとき、自分は真面目に解きたくないので、なんとかして楽したいです(量子力学なんて将来使わないし)。
近年では、生成AIも発展しているので、ChatGPTやGeminiに投げると、代わりに解いてくれるでしょう。
しかしながら、PDFで提出が必要なとき、
・AIの解答を手書きして、これをスキャンしてPDFにする
・AIの解答を参考にWordで文字と数式をタイピングする
のどちらかの工程は必要になります。まあこれでもAIを使うことで、生成AIのない時代よりは各段に楽にはなっているんですが、、、
LaTeXを用いたアプローチ
ここでLaTeXの登場です。LaTeXは簡単に言ってしまえばプログラムです(だからといって、プログラム苦手なのでLaTeX無理!となる必要はないです)。 そのため、AIに「○○の問題を解いて、LaTeX形式で出力して」と頼めば、AIが書いたコードをコピペするだけでレポートが完成します。
このようにAIの解答を、紙やWordに再現する時間が全くなくなります。実際に例題の問題の解答をLaTeX形式にして送ってもらったのがこちらになります(参考のためとってだしを貼っています)。
実際にGeminiに書かせたコード(クリックで展開)
\documentclass[a4paper,12pt]{jsarticle}
\usepackage{amsmath}
\usepackage{amssymb}
\usepackage[dvipdfmx]{graphicx}
% 演算子のハットを見やすくする定義
\newcommand{\op}[1]{\hat{#1}}
% ブラケット記法の定義
\newcommand{\bra}[1]{\langle #1 |}
\newcommand{\ket}[1]{| #1 \rangle}
\newcommand{\braket}[2]{\langle #1 | #2 \rangle}
\newcommand{\expectation}[1]{\langle #1 \rangle}
\begin{document}
\title{量子力学演習 解答例}
\author{}
\date{}
\maketitle
\subsubsection*{(1) 固有値が実数であることの証明}
エルミート演算子 $\op{H}$ の固有方程式を以下とする。
\begin{equation}
\op{H}\psi_n = \varepsilon_n \psi_n \label{eq:eigen}
\end{equation}
この式のエルミート共役をとると、$\op{H}$ はエルミート($\op{H}^\dagger = \op{H}$)であるから、
\begin{equation}
(\op{H}\psi_n)^* = \varepsilon_n^* \psi_n^* \quad \Longrightarrow \quad \psi_n^* \op{H}^\dagger = \varepsilon_n^* \psi_n^* \quad \Longrightarrow \quad \psi_n^* \op{H} = \varepsilon_n^* \psi_n^* \label{eq:eigen_conj}
\end{equation}
式(\ref{eq:eigen})の両辺に左から $\psi_n^*$ を掛けて全空間で積分すると、
\begin{equation}
\int_{-\infty}^{\infty} \psi_n^* \op{H} \psi_n dx = \varepsilon_n \int_{-\infty}^{\infty} \psi_n^* \psi_n dx \label{eq:int1}
\end{equation}
一方、式(\ref{eq:eigen_conj})の両辺に右から $\psi_n$ を掛けて全空間で積分すると、
\begin{equation}
\int_{-\infty}^{\infty} (\op{H}\psi_n)^* \psi_n dx = \int_{-\infty}^{\infty} \psi_n^* \op{H} \psi_n dx = \varepsilon_n^* \int_{-\infty}^{\infty} \psi_n^* \psi_n dx \label{eq:int2}
\end{equation}
式(\ref{eq:int1})と式(\ref{eq:int2})の左辺は、エルミート演算子の定義 $\int \psi^* (\op{H}\psi) dx = \int (\op{H}\psi)^* \psi dx$ により等しい。
したがって、右辺同士も等しくなる。
\[
\varepsilon_n \int_{-\infty}^{\infty} |\psi_n|^2 dx = \varepsilon_n^* \int_{-\infty}^{\infty} |\psi_n|^2 dx
\]
波動関数は規格化可能($\int |\psi_n|^2 dx \neq 0$)であるため、
\[
\varepsilon_n = \varepsilon_n^*
\]
となり、固有値 $\varepsilon_n$ は実数である。 \hfill (証明終)
\subsubsection*{(2) 固有関数の直交性 ($n \neq m$)}
異なる固有値を持つ2つの固有方程式を考える。
\begin{align}
\op{H}\psi_n &= \varepsilon_n \psi_n \label{eq:ortho1} \\
\op{H}\psi_m &= \varepsilon_m \psi_m \label{eq:ortho2}
\end{align}
式(\ref{eq:ortho1})に左から $\psi_m^*$ を掛けて積分する。
\begin{equation}
\int \psi_m^* \op{H} \psi_n dx = \varepsilon_n \int \psi_m^* \psi_n dx \label{eq:ortho_a}
\end{equation}
次に、式(\ref{eq:ortho2})の複素共役をとる。$\op{H}$ はエルミート、$\varepsilon_m$ は実数であることに注意すると、
\[
(\op{H}\psi_m)^* = \varepsilon_m \psi_m^*
\]
これに右から $\psi_n$ を掛けて積分する。
\begin{equation}
\int (\op{H}\psi_m)^* \psi_n dx = \varepsilon_m \int \psi_m^* \psi_n dx \label{eq:ortho_b}
\end{equation}
エルミート演算子の性質より、式(\ref{eq:ortho_a})の左辺と式(\ref{eq:ortho_b})の左辺は等しい。
\[
\int \psi_m^* \op{H} \psi_n dx = \int (\op{H}\psi_m)^* \psi_n dx
\]
したがって、右辺同士の差をとると、
\[
(\varepsilon_n - \varepsilon_m) \int_{-\infty}^{\infty} \psi_m^*(x) \psi_n(x) dx = 0
\]
仮定より $n \neq m$ であり $\varepsilon_n \neq \varepsilon_m$ とすると、
\[
\int_{-\infty}^{\infty} \psi_m^*(x) \psi_n(x) dx = 0
\]
となり、固有関数は直交する。 \hfill (証明終)
\end{document}
このコードをコンパイル(実行)するだけで、以下のようなPDFが一瞬で生成されます。
これで私は授業で満点を貰いましたが、やった作業は「AIへの指示」と「コピペ」と「コンパイルボタンのクリック」だけです。このようにプロンプト(AIへの指示)以外で、タイピングをすることなく、課題を大量に処理することができます。
また、私の大学では実験レポートに「原理」という項目があり、実験テキストの内容をまとめて記述する必要があります。これまでは手入力で書き写していましたが、テキストを写真に撮り、「この内容をLaTeXで清書して」や「少し表現を変えてLaTeXで書いて」と指示するだけで、数式や説明を含めて自動的に文章化してくれます。そのため、タイピングの手間がほとんどなくなり,レポート作成の効率が大きく向上しました。
このようにLaTeXを使うことで、手書き・タイピングの時間を圧倒的に短くすることができます(しかも手書きで作るよりも見やすくてかっこいい)。
図形描画もAI任せ!TikZの活用
LaTeXのさらなる機能として「TikZ(ティクス)」という、コードで図を描く機能があります。人間が書くには少し面倒ですが、これもAIにとっては朝飯前です。 「○○のブロック線図をTikZで書いて」「こういう回路図を書いて」と頼めば、図の作成からも解放されます。あくまで簡単な図の作成にとどまりますが、それでもある程度の時短にはなります。
※2026年春現在では、生成AIに直接図を書いてもらうことはあまり実用的ではないですが、TikZはプログラムなので得意なようです
LaTeXの導入
それでは実際にLaTeXを使っていきたいところですが、ここで最初の壁としてLaTeXの環境構築・インストールならびに日本語への対応のとてつもない複雑さが立ちはだかります。
よほどプログラミングに自信がある人以外は挫折すること間違いなしです。自分も1週間かけても上手くいかず、非常に苦戦しました。そんな中出会ったのが下の記事です。
この記事を読めば、誰でも簡単にLaTeXのインストール・初期設定が完了します。数多のLaTeX導入記事を読んできましたが、これ以上初心者に分かりやすいものは無いと断言できます(逆にあったら教えて欲しい)。
正直、LaTeXを使っていく上で一番大変なのは環境構築なので、これさえ出来れば後は消化試合のようなものです。
LaTeXを実際に使ってみよう
先程紹介した記事からコンパイルの方法も理解したと思います。あとはAIにコードを書いてもらい、自身でコンパイルするだけです。
しかし、AIが作成したレポートに修正・加筆をしたい場合や、作成するレポートの一部のみをAIに代行する場合など、自身でLaTeXを使うタイミングもあります。そのため、LaTeXの文法をある程度は理解する必要があります。
正直、LaTeXの文法は非常に簡単(プログラミング言語ではなく、マークアップ言語なので)ですが、習得には2-4時間目安かかります。とはいえ、この2-4時間はレポートを作成していく中で確実に元が取れると思います。私はテキストを購入して勉強しましたが、ネットで調べたり、AIに聞いてもマスターできると思います。
最後に
LaTeXは一見すると難しそうですが、一度環境さえ作ってしまえば、あとはAIが勝手に綺麗なレポートを吐き出してくれる「魔法の杖」になります。
これからの時代、真面目に手入力で数式を打つ必要はありません。我々がやるべきは、AIに適切な指示(プロンプト)を出し、出力されたボタンを押すことだけです。空いた時間は、睡眠時間にするもよし、バイトに充てるもよし、趣味に没頭するもよし。
Wordでのレポート作成に消耗している全ての理系学生に、この「AI × LaTeX」の爆速環境が届くことを願っています。
さあ、今すぐWordを閉じて、LaTeXの世界へ足を踏み入れましょう!
(おまけ)プロンプトのこつ
自分は「○○をTeXで書け。ただし、そのまま貼れるようにして。また章立て・箇条書きしないで、文章で接続して。」とお願いしています。
また、授業資料がPDFで配布されていれば、これを添付することで授業内容に沿った解き方をしてくれる確率が高いです。
「章立て・箇条書きしないで、文章で接続して。」というのは、生成AI(特にGemini)は説明を分かりやすくしようとするあまり、段階に分けてレポートを書く傾向があるからです。実例を紹介します。
第1回レポート
(1) 波源$J$,$\rho$のあるマクスウェルの方程式から,$A$,$\phi$に関する波動方程式を導出せよ.
(2) $A$を用いた$E$と$H$の表現式を導出せよ
第1回レポートの解答
このように「また章立て・箇条書きしないで、文章で接続して。」とお願いしないと、非常にAI感が漂うレポートになってしまいます。
紹介した指示以外に、自身は
・下付き文字に \mathrm を使用すること(変数の下付き文字は自分で修正してます)。
・\Deltaを\varDeltaに置き換えて。
・\epsilonを\varepsilonに置き換えて。
・「、。」を「,.」に置き換えて.
・問題文は省略しないで清書すること。
・問題文の清書をscreen環境を用いて囲むこと。
などお願いしています。皆さんもお気に入りのプロンプトを探してみてください。










