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Address Sanitizerで独自Frameworkのメモリエラーを検出する

Last updated at Posted at 2016-10-19

はじめに

Xcode7より、AddressSanitizer(aka ASan)という、強力なメモリエラー検知ツールが追加されたことは、ご存知の方も多いかもしれません[0]

お仕事で、ASanで、独自Framework内のメモリエラーを調査する機会があったので、その際に、学んだ、使い方やTipsについて書き留めます。

もし何か不備等ありましたら、気軽にコメントください :)

Address Sanitizerとは?

AddressSanitizer(aka ASan)は、メモリエラー検出ツールです。

ASanは、不正なメモリ操作を検出するコードをコンパイル時に挿入します

ここがポイントですね。

ASanのコードは、メモリエラーを検知するとアプリをクラッシュさせるとともに、詳細なログをコンソールに出力します。

このあたりは、WWDC15のSession413[0]が詳しいです。

そのため、Valgrindなどとは違い、よりオーバーヘッドが少なく、2x程度に抑えられるそうです。

ASanは、Clang/LLVMの機能です。なので、iOSアプリに限らず、C/C++言語であれば、利用できます[1]。また、Android NDKでも利用できるそうです[2]。

検出項目としては以下が上げられています。

  • Use-after-free
  • Heap buffer overflow
  • Stack buffer overflow
  • Global variable overflow
  • Overflows in C++ containers
  • Use after return

例えば、以下のようなStack/Heap-buffer-overflowを検出してくれます。

  char buff[10];
  buff[10] = 'a';
  char *ptr  = (char*) malloc(10);
  ptr[10] = 'c';

How To Use

Run an app with Xcode

Xcodeからアプリを実行し、アプリコードのメモリエラーを検出するだけであれば、Schemeに設定するだけ。

Edit Scheme > Run > Diagnostics > Address Sanitizer

にチェック✔を入れます。

Build an IPA with xcodebuild

App only

xcodebuildでipaを作成したい場合は、Build Settingsに、-fsanitize=addressを追加します。

  • OTHER_CFLAGS
  • OTHER_CXXFLAGS
    • $(OTHER_CFLAGS)となっていれば必要ありません

⚠️ Xcode 9では、xcodebuild archive時に以下が必要なようです。
(xcodebuild buildでは、-enableAddressSanitizerYESにすればよい)

  1. "Link Binary With Libraries"に、libclang_rt.asan_ios_dynamic.dylibを追加
  2. ENABLE_BITCODEを"NO"にする
  3. 後述のTips 2にあるように、Appバンドルにlibclang_rt.asan_ios_dynamic.dylibをコピーする

App + Frameworks

さらに、アプリにリンクさせる独自Frameworkを調査するときは、別の設定が必要です。
※今回私が検証したFrameworkは、Static libraryから生成したFrameworkバンドルです。

Framework project: Build Settingsに、-fsanitize=addressを追加します。

  • OTHER_CFLAGS
  • OTHER_CXXFLAGS
    • $(OTHER_CFLAGS)となっていれば必要ありません

App project: 加えてOTHER_LDFLAGSにも、-fsanitize=addressを追加します。

  • OTHER_CFLAGS
  • OTHER_CXXFLAGS
  • OTHER_LDFLAGS

これで、Address Sanitizerが有効化されて、ソースコードがコンパイルされます[3]。

また、-fno-omit-frame-pointerを追加すると、StacktraceがよりわかりやすくなるとGithubのWikiには書いてありますが、Xcode 8では、付けなくてもよさそうです[4]。

設定は以上です。簡単ですね。

しかし、実際利用する際は、以下の3点に注意が必要です。

Tips 1: Xcodeのバージョンを一致させる

Frameworkとアプリは、同じXcodeバージョンで、ビルドしなければなりません。

でないと、Undefined symbols for architectureというエラーが発生します。

これは、Clang/LLVMによって、コンパイル時に挿入されるASanの関数は、Xcodeのバージョンによって、シンボル名が異なる(Clang/LLVMのバージョンが異なる)ためです。

Tips 2: IPAには、Run Scriptで、ASanのdylibをバンドルする

Run with Xcodeと違い、xcodebuildでは、ASanのdylibが、AppBundleにコピーされません。よって、単にIPAを生成するだけだとrpathエラーでクラッシュします。

dyld: Library not loaded: @rpath...

これを防ぐためには、Xcode.appから、libclang_rt.asan_ios_dynamic.dylibを取り出し、Projectに追加後、Run ScriptのCopy Filesで、コピーさせる必要があります。

Screen Shot 2016-10-14 at 5.29.20 PM.png

Xcode 8では以下の場所にあります。

Xcode.app/Contents/Developer/Toolchains/XcodeDefault.xctoolchain/usr/lib/clang/8.0.0/lib/darwin/libclang_rt.asan_ios_dynamic.dylib

※これよりもrsync?などを使ったスマートな方法があったら教えてください!

Tips 3: コンソールログを取得する

ipaファイルをインストールして、アプリを起動した場合、コンソールログを必ず記録しましょう。

メモリエラーが発生するとASanにより、アプリはEXC_CORPSE_NOTIFYでクラッシュし、クラッシュログが残りますが、なんと、その内容に、ASanログは記録されません。

コンソールログに出力されます。

そのため、テスト時は、クラッシュ後、必ず、Xcodeでコンソールログの取得を行ってください。そうしないと、ASanの真骨頂である、有用な情報が得られません。

最後に

ASanは、簡単な設定で、メモリエラー検出し、エラーの状況を詳細にレポートしてくれる、バグ修正には非常有用なツールです。

正直、無料のツール[5]で、ここまで詳細な調査が出来ることに驚きました。

EXC_CORPSE_NOTIFYクラッシュに遭遇したら、一度試してみるをオススメします。

なお、今回、CocoaPodsを利用しなかったので、試していません。おそらく、以下のように、設定をすればいいのではないかなと思いますがどうでしょうか。

post_install do |installer|
  installer.pods_project.targets.each do |target|
    target.build_configurations.each do |config|
      config.build_settings['OTHER_LDFLAGS'] += '-fsanitize=address'
      config.build_settings['OTHER_CFLAGS'] += '-fsanitize=address'
    end
  end
end

References

[0] Advanced Debugging and the Address Sanitizer
https://developer.apple.com/videos/play/wwdc2015/413/

[1] 以下のサイトが参考になります。

Clang: Address Sanitizer
http://clang.llvm.org/docs/AddressSanitizer.html

GitHub: google/sanitizers
https://github.com/google/sanitizers
https://github.com/google/sanitizers/wiki/AddressSanitizer

実際のコードはここかな?
https://github.com/llvm-mirror/llvm/blob/master/lib/Transforms/Instrumentation/AddressSanitizer.cpp

[2] https://source.android.com/devices/tech/debug/asan.html

[3] 逆に言えば、たとえ、Schemeで、Address Sanitizerが有効化し、アプリをビルドしても、Framework/Static Libraryなどの既にコンパイル済みのバイナリには適用できない。

[4] 上記に示した簡単なメモリエラーを起こしたところ、差分は確認できませんでした。オプションを設定せずとも十分に記録は残っていたので、設定しなくてもよいかと思います。

確認したclangのバージョンはこちら。
Apple LLVM version 8.0.0 (clang-800.0.38)
Target: x86_64-apple-darwin15.6.0

なお、-fno-omit-frame-pointer以外にも、ここを読むと、-O1-fno-optimize-sibling-callsもあるとより詳しく表示されると書いてあります。

[5] 有料では、Coverityなどがありますね。
http://www.coverity.com/html_ja/products/code-advisor/index.html

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