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NFSを使用したOLVMデプロイ検証記

Last updated at Posted at 2025-02-06

みなさん、こんにちは!
今回のテーマは「 NFSを使用したOLVMデプロイ検証記 」ということで、本編から外れた番外編となります。
Oracle KVM,OLVMに関する本編は"Oracle KVMとOLVMについて"をご覧ください。

NFSを選択した背景

今回はタイトルにもある通り、セルフホステッドエンジン方式でOLVMデプロイ時に選択できる4つのストレージタイプのうち、NFSを使用したデプロイ検証を行いました。

NFSを選択した背景として、お客様から
「共有ストレージのないサーバ1台の構成で、OracleKVM環境を構築したい」
「KVMサーバのディレクトリをNFS共有することで共有ストレージとして扱い、そこをストレージドメインとしOLVMを構成したい」
といったご要望があったため、NFS使用したOLVMデプロイ検証を行いました。

環境

検証で使用したバージョンは以下の通りとなります。

製品 バージョン
Oracle Linux 8.8
Oracle Linux KVM 6.1.1 - 8.module+el8.8.0+21161+70fb2747
Oracle Linux Virtulaization Manager/ovirt 4.4.10.7-1.0.25.el8

構成図

まずは、今回の検証の簡単な構成図をご覧ください。
セルフホステッドエンジン方式では、OLVMの仮想マシンはハイパーバイザー化したKVMホスト上に展開させます。その際必要となる仮想マシンのディスク領域を、KVMホストの内蔵ストレージ上に作成し、NFSでOLVMに見せてあげるというイメージになります。
image.png

構築手順

早速ですが、ここからは構築手順に入っていきます!

事前準備

まずは、Oracle Linuxのインストールや設定、Oracle KVMとしてのセットアップを行います。
ここまでの手順は"Oracle KVM 要件と構築について"を参照してください。

NFSストレージの準備

インストール

NFSストレージの構築に必要なパッケージは、事前準備の段階でovirt-hosted-engine-setupと一緒にインストールされるため、別途インストールする必要はありません。

確認事項

NFSストレージを準備する前に2点確認を行います。

確認1.パーティション
今回の環境では、NFSストレージ用のパーティション(/data)を作成しています。
※システムで使用するパーティション(/など)とは別に、NFSストレージ用に独立したパーティションを作成する要件は、Oracleドキュメントに記載されていませんでした。しかし、管理上の利便性や、他パーティションへの容量圧迫抑制、OLVMデプロイ後にNFSストレージ用ディレクトリのファイルシステムタイプがNFSに変更される、といったことを考慮するとパーティションは切り分けておいた方が良いかと思います。
image.png

確認2.ユーザーとグループ
ovirt-hosted-engine-setupをインストールすると、自動的にvdsmユーザ(UID:36)とkvmグループ(GID:36)が作成されます。
image.png
確認事項は以上となります。

NFSの準備

それでは、NFSストレージの準備に移ります。

1.ストレージドメインとするディレクトリの作成
#mkdir /data

※今回の例では、Oracle Linuxインストール時にNFSストレージ用パーティション(/data)を作成し、/dataをマウントポイントとしています。
そのため、Oracleドキュメントに記載されているNFSストレージ用のディレクトリ作成はスキップしています。"NFS記憶域の準備"
image.png

続いて、 NFS準備で重要となるポイント です。
vdsmユーザーおよびKVMグループには、ディレクトリに対する読取り、書込みおよび実行権限が必要となります。(実行権限を付与せずOLVMデプロイを実行し、デプロイに失敗して1時間ほど時間を無駄にしました...)

2.ディレクトリの所有権をvdsmユーザ(UID:36)とkvmグループ(GID:36)に変更します。
#chown 36:36 /data

3.読取り/書込み権限をvdsmユーザ(UID:36)とkvmグループ(GID:36)に付与します。
#chmod 755 /data
image.png

4./etc/exportsを編集し、作成したディレクトリを追加します。
#vi /etc/exports

[書式]
パス名 ホスト オプション
image.png

設定項目 設定値 設定内容
パス名 /data NFS領域とするディレクトリをフルパスで記載
ホスト すべてのサーバーに対してストレージドメイン共有を許可※共有したいホストを指定する場合は、パスの後ろに「ホスト名」または「IPアドレス」を記載

今回使用したオプションです。

オプション オプション内容
rw クライアントからの読み出し、書き込みを許可
sync クライアントから書き込まれたデータをディスクに書き込むまで次の要求に応じない(同期型での共有)
no_subtree_check sub_tree_checkオプション機能を無効化
all_squash クライアント側のすべてのユーザーからの読み出し/書き込み要求を、匿名ユーザーからの要求として扱う
anonuid=36 匿名ユーザーをvdsmユーザー(uid:36)に指定する
anongid=36 匿名グループをkvmグループ(gid:36)に指定する

5.nfs-server.serviceを起動し、自動起動に設定します。
#systemctl start nfs-server.service
#systemctl enable nfs-server.service
#systemctl status nfs-server.service

6.共有ディレクトリをエクスポートします。
#exportfs -arv
image.png

7.firewallを有効にしている場合は、許可するサービスにnfsを追加します。
#firewall-cmd --permanent --add-service nfs
#firewall-cmd --reload

デプロイ設定手順

NFSの準備が出来たら、次はいよいよデプロイです!
下記コマンドで、OLVMのデプロイを開始します。
#hosted-engine --deploy

デプロイが始まると、対話式で設定値を入力しますが、後半のストレージドメインの設定をする部分でNFSを選択していきます。
ストレージドメイン設定前までの内容については"OLVM構築 - セルフホステッドエンジン方式"をご覧ください。

回答手順

以下、NFSを選択する場合の設定項目と設定値です。

No. 項目 内容 設定値
1 Please specify the storage you would like to use (glusterfs, iscsi, fc, nfs)[nfs]: OLVMのディスク配置先となるストレージドメイン"hosted_storage"のストレージタイプ nfs
2 Please specify the nfs version you would like to use (auto, v3, v4, v4_0, v4_1, v4_2)[auto]: NFSバージョン auto
3 Please specify the full shared storage connection path to use (example: host:/path): 参照するNFS領域の情報(IPアドレス:/パス) XXX.XXX.XXX.XXX:/data
4 If needed, specify additional mount options for the connection to the hosted-engine storagedomain (example: rsize=32768,wsize=32768) []: 追加のマウントオプション(任意) なし

「2.NFSバージョン」では「auto」を選択していますが、実際には「v4_2」が採用されています。(OSのデフォルト)
image.png

上記の通り回答し、ストレージドメインの設定を進めていきます。
image.png
回答が終了すると下記が表示され、ストレージドメインの作成が始まります。
[ INFO ] Creating Storage Domain

しばらく待つと下記が表示され、ストレージドメインが起動してきます。
[ INFO ] TASK [ovirt.ovirt.hosted_engine_setup : Activate storage domain]

最後に、 Please specify the size of the VM disk in GiB: [38]:
と聞かれるので、OLVMに割り当てるディスクサイズを入力します。

そして、下記出力がされると、NFSでのOLVMデプロイが完了となります。
[ INFO ] Hosted Engine successfully deployed

OLVMログイン

早速OLVMにログインし、[ストレージ]>[ストレージドメイン]を確認してみます。
image.png

ストレージタイプがNFSとなっていますね。KVMホストからも/dataを確認してみます。
image.png

無事、NFSを使用したOLVMデプロイができました!

注意点

今回検証した構成を業務システムの実運用で採用する場合には、いくつか注意点があります。

①Oracleで明示されている構成・手順ではない
セルフホステッドエンジン方式でOLVMを構築する際に、NFS領域をデプロイ用ストレージとすること自体は、Oracleのドキュメントに記載されている公式な方法です。"コマンドラインを使用したデプロイ"
しかし、今回の構成のような方法はOracleから明示的に提供されているものではありません。

②サポートが限定的になる可能性がある
上記①の理由で、この構成でOLVM環境を構築した場合、Oracleから提供されるサポート内容が限定的なものになる可能性があります。

上記の注意点より、今回の構成を採用する場合は 検証用、検証環境など非恒常的な環境 での利用にとどめることをお勧めします。
注意点についてご理解いただいた上で、もし恒常的な業務運用での利用を検討する場合は、メーカーサポートへのサポート範囲の確認や、顧客へ提供する場合は注意点を共有すること等をご留意ください。

おわりに

今回は、Oracle KVMシリーズの番外編として、新人2人でNFSを使用したOLVMデプロイに挑戦しました。
かなりニッチな内容ではありますが、基本的にはKVMサーバ上にNFSサーバを構築するだけなので、新人2人でも比較的簡単に構築することができました。
Oracle KVMやOLVMはLinuxがベースなので、製品を扱っていると今回のNFSのようにLinuxの勉強もできて一石二鳥だなと感じます。

この記事は番外編という位置づけのため、OLVMに関する詳しい情報は割愛しています。もっと知りたいと思った方は、ぜひ本編の"Oracle KVMとOLVMについて"やそれ以降の記事もご覧ください!

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