書籍情報
書籍名: 運用改善の教科書 〜クラウド時代にも困らない、変化に迅速に対応するためのシステム運用ノウハウ〜
著者: 近藤 誠司
著者について
株式会社K-model代表。オンプレからクラウドまで幅広いシステム導入プロジェクトに運用設計担当として参画。運用設計・運用改善コンサルティングを専門とする。趣味は小説を書くことで、第47回埼玉文学賞にて正賞を受賞。
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読書動機
1. 運用改善の進め方がわからなかった
「運用を良くしたい」という気持ちはあっても、どういう順序で、何を測って、どう改善していくかの道筋が見えなかった。体系的に整理されたものが欲しかった。
2. 運用にフォーカスした本が少ない
開発手法やアーキテクチャに関する本は多いが、運用改善にフォーカスした本は珍しい。地味で時間もかかる運用の世界を正面から扱った本として興味を持った。
学習メモ
今回は無いです
学んだこと
1. システム分類:SoR / SoE / SoI(p.24)
IT調査会社のガートナーはシステムを以下の3つに分類している。
SoR(System of Record)
コンピュータの特性を活かした計算や記録をメインに、信頼性が求められるシステム。企業の情報を記録するための基幹システムが代表例。「単純な繰り返し作業」が多く業務内容の変更が少ないため、システム変更作業はそれほど多くない。
SoE(System of Engagement)
自社と顧客の結びつきを強めるためのシステム。コーポレートサイト・プロモーションサイト・ECサイトなどが代表例。柔軟性や俊敏性が求められる。
SoI(System of Insight)
企業活動やSoE・SoRから集まったデータを分析して、顧客行動心理に対する洞察を得るためのシステム。ビッグデータ基盤・BIツール・機械学習・AIツールが該当する。
2. 運用改善の目的と生産性の3種類(p.32)
運用改善の目的は「生産性の向上」という言葉でほとんどカバーできる。生産性には以下の3種類がある。
- 資本労働性: 保有している機器や設備などの資本が、どれだけ効率的に成果を生み出したかを定量化したもの
- 労働生産性: 労働者がどれだけ効率的に成果を生み出したかを定量化したもの
3. 運用改善のゴール(p.34)
運用改善のゴールは、継続的に運用改善できる組織を作ること。
かつては環境の変化周期が長かったため、中長期的な改善ゴールを定めてワンショットの改善プロジェクトを外部ベンダーに発注するアプローチが通用した。しかし現代では変化のスピードが速く、継続的に改善し続けられる組織体制そのものがゴールになる。
4. 可視化の先にある最適化(p.41)
運用をモニタリングできるようになることで、測定した数値をベースとした改善活動が行えるようになる。この段階になって初めて、自動化・ツール導入・作業工程の見直しなどのプロセス改善を効果的に行うことができる。
5. 7ステップの改善プロセス(p.88)
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. アプローチ策定 | 企業のビジョンや目標から測定対象となる情報を見極め、目標達成をどう支援できるかを定義する |
| 2. 測定データと手法の決定 | 理想的に測定すべきものと現実に測定すべきものを選別し、現実的な測定計画を立てる |
| 3. データの収集 | 測定に必要なデータを収集する |
| 4. データ処理 | 収集したデータを比較可能な同一条件の形に変換する。KPIの前提情報となる |
| 5. 情報とデータの分析 | データと様々な情報を組み合わせて分析し、計画全体と改善施策を検討する |
| 6. 情報の提示と活用 | 分析結果をレポートにまとめ、関係者に報告。このレポートをもとに改善活動の意思決定を行う |
| 7. 改善活動の実践 | 改善が必要と判断された活動を実施し、計測によって新たなベースラインを設定する |
6. 定性的目標から定量的数値目標へ(p.94)
運用改善の結果をモニタリングするためには、必ず数値化する必要がある。定性的な目標と定量的な目標を明確に区別しておくことが重要。
7. モニタリングの真の目的は改善活動の定着(p.97)
運用改善活動を可視化・評価できないと、経営層から見ると「いつの間にか業務が改善している」状態になる。空いた稼働に対して訪れる未来は以下の2つ。
- 空けた稼働を新しい仕事で埋められる
- 空いた稼働分のメンバーを削られる
→ 改善の成果を可視化して自ら主張しないと、正当な評価を得られない。
8. カッツモデル:エンジニアのスキル分類(p.218)
| スキル | 内容 |
|---|---|
| テクニカルスキル | 業務を適切に遂行するために必要な知識・技術・熟練度。現場に近い層ほど多く必要 |
| ヒューマンスキル | 人間関係を円滑にして力を最大化する対人関係能力。すべての階層で一定量必要 |
| コンセプチュアルスキル | 複雑な事象を概念化して本質を把握する能力。抽象化によって正解のない問題の最適解を導く |
9. コンセプチュアルスキルの要素(p.236〜p.240)
多面的視野(p.239)
物事の見方を変えて新たなアイデアを出す能力。ラテラルシンキング(前提・固定概念を取り払う)と合わせて使うことで、従来にない斬新なアイデアを生み出せる。
応用力(p.240)
持っている知識やスキルを使って新たな事柄に対応するスキル。テクニカルスキルが高いレベルにあることが前提。パターン発見や構造的把握が得意な人ほど高い応用力を身につけやすい。
向上心(p.240)
自分自身の現状に満足できないことから生まれる行動力。自主的な向上心は、自分の特性と仕事・環境が合っているときに発揮される。マネージャはメンバーが向上心を持てる環境づくりを検討する必要がある。
先見性・想像力(p.240)
手に入れている情報から未来を予測する能力。チームのビジョンを描くために欠かせないスキル。予測の的中には数年〜数十年かかるため客観的な評価が難しいが、チーム内で未来イメージを共有すること自体がチーム運営の重要な要素。
10. メンバーのフォーカスタイプ(p.249)
獲得フォーカス
- 動機:賞賛を得ること
- 特徴:チャレンジ志向・ポジティブ・多くのことに手を出しがち・抽象的な話が好き
- やる気を引き出す方法:よく褒める・大きなビジョンを示す・目的をはっきりさせる・プラス面を考えさせる
回避フォーカス
- 動機:批判を避けること
- 特徴:慎重・スロースターターだが最後までやり遂げる・具体的な話を好む
- やる気を引き出す方法:入念な準備の時間を与える・具体的な手順を示す
感想
全体的な印象
運用の「当たり前」は文章になっていない。口頭と経験でしか伝承されない現場がほとんどで、ノウハウが属人化したまま消えていく。この本はその「口頭で済ませてきた部分」を体系化した点に価値がある。
フォーカスタイプの話は刺さった。自分は獲得フォーカス寄りだが、慎重になる場面では回避フォーカス的に動く。「人間をタイプで分類する」ことの限界と、それでも傾向を知っておく意味が同時にわかった。
フォーカスタイプの話を読んで、これは心理学の話だと感じた。調べると 制御焦点理論(社会心理学) という理論が元になっていた。
マネジメントの実践知の裏側に心理学があると知ると、単なるテクニックではなく再現性のある知識として腑に落ちる。社会心理学を押さえておくと、こうした「なぜ効くのか」が見えてきそうだと思った。
実践できること
短期
- 改修からリリースまでの業務フローを文章化する(可視化の準備)(参照: p.41)
- 各処理ごとにかかっている時間を計測・記録する(参照: p.88)
中長期
- モニタリングの仕組みを構築し、非エンジニアにも伝わる形で可視化する(参照: p.97)
2. 心理学全般、社会心理学の入門書を買って読む
定量評価(1年後に記入)
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記入日: YYYY-MM-DD
スキル・知識の評価
| 評価項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 長期的な有用性 | ⭐⭐⭐⭐☆ (4/5) | 腐りにくい普遍的な分野なので、勉強する価値はある |
| 実践のしやすさ | ⭐⭐⭐⭐☆ (4/5) | 実業務で運用を改善する機会はあるので試しやすい |
| 汎用性 | ⭐⭐⭐⭐☆ (4/5) | 業界・システム規模を問わず応用できる内容が多い |
スキルスコア: 12/15点
経済的インパクト
投資コスト
| 項目 | 数値 | 根拠・計算 |
|---|---|---|
| 書籍価格 | ¥X,XXX | |
| 読書時間 | XX時間 | |
| 読書時間コスト | ¥XX,XXX | |
| 総投資額 | ¥XX,XXX |
リターン
| 項目 | 数値 | 根拠・計算 |
|---|---|---|
| 時間削減効果 | XX時間/月 | |
| 時間削減の金額換算 | ¥XXX,000/月 | |
| コスト削減効果 | ¥XXX,000/年 | |
| 年間経済効果 | ¥XXX,XXX |