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誰がロボットの首に鈴をつけるか

Last updated at Posted at 2022-12-11

こんにちは、新山某です!
またお会いできましたね ^-^

こちらはRPACommunity Advent Calendar 2022アドベントカレンダーの11日の記事です。

新山は2018年からRPAのお仕事をさせていただいております。
様々な環境で、現場のお仕事の助けとなるロボットを作成してきました。
その経験から、少しお話をさせていただきますね。

■ What's ロボット?

「ロボット」と聞いて何を思い浮かべますか? 人間は、仮想体験を含めて自分が見聞きしたものと体験した知識しかありません。 言ってみれば、それぞれが自分の頭の中に専用の辞書を持っているようなものです。 その辞書のロボットの項目に何が書かれているか?もちろん各自が知り得るものですね。

それでは、知り得る限りにおける「ロボット」とは何でしょうか。

それはカレルチャペックの戯曲に出てくる、ロッサム万能ロボット製作所のロボット? 映画「メトロボリス」のマリア? 「禁断の惑星」のロビー? 漫画に出てくるアトム? アラレちゃん? ドラえもん? 動画の28号?マジンガー? ガンダム? イングラム?  sonyのアイボ? Hondaのアシモ? ボストン・ダイナミクスのアトラス? 

様々なカテゴリに散らばる、それらいずれもが「ロボット」ですね。 そして、全く違うように思えて、ひとつの共通項を持っている。 それは、十分な動力と操縦者あるいは操作プログラムを与えられている場合に「自立して動き、刺激に適切な反応をかえすもの」であることです。(なお人造人間は除く)

ロボット=「自立して動き、きちんと反応する」ものであると、我々は様々なメディアで繰り返し教えられてきました。アシモフのロボット三原則のように人間を守ってくれる存在であり、人間の命令には従い、害するものではないと、私たちは無意識化でそうイメージしているのではないでしょうか。(なお、アシモフ以前は、ロボット=人間に攻撃するもの、のイメージが強いです。なんといいますが、フランケンシュタインみたいな怪物扱いかな。)

ですが、RPAで扱うロボットは、「自立して動き、きちんと反応する」ものではありません。 イメージとしてのロボットと、RPAで作成するロボットには落差があります。 その無意識下の「自立して動き、きちんと反応するロボット」のイメージとの落差が導入企業や作成者、運用者をして「こんなはずではなかった」と思わしめている節があると私は考えています。

■ How much is that shop window robot ?

実際のところ、複数の現場でお仕事をしていると、RPAツールを変更する場面に度々出くわします。2019年のRPA BANKの記事では、某RPAロボットが導入された翌年には70%以上の確率で別のロボットに買い替えらえていました。

「このロボットツールを買ったのは失敗だった。RPAは簡単に良いロボットが作れるはずなのに作れなかった。」
「もっと良いロボットツールがどこかに売っているハズだから、それに買い替えよう。教育も入れてもらおう。」
「有名なものや高いものならまちがいないだろうから、それを買おう。」
「いや、性能が同じなら、最安値のほうにしよう。」
等など、現場の改善やRPAのロボット作成、運用への考え方を変えずに、単純にブランドを変更して、どこかに売っているはずの「より良いロボット作成ツール」を買う方向に舵を切る場合があるのです。きちんとRPA環境を育てずに、育てる術を現場で模索せずに、よそから買ってきてすませようとする。これは無意識下のロボットのイメージが少なからず悪影響を与えていると思えてならないのです。

誰かが、私たちの無意識下に潜む「ロボット」という概念の首に「これはRPAで作成されるロボットではない」という名の鈴をつけない限り、現状の打破は難しいのではないかとすら考えることもあります。

企業側が陥っている「どこかで売っている我々のイメージ通りのロボットを買えば、そこがほぼゴールだ。あとは調整するだけだ。」という誤解から抜け出せないのではないでしょうか。

「時間はかけられない。買い代えて交換すればいい」という考え方の環境では、それでもRPAは根付かないかもしれませんね。

対象を理解すること、折り合いをつけること、そのために必要な努力は何か、どのようにしたら活用できるのか、現状はどうなっているのか等はそれぞれの現場で異なっており、一番道筋がわかっている現場の人間でなければ正解はつかめない。外側の人間から「買って済ませる」ことはできませんから。現場にたっぷりの時間を注いであげないと、RPAは花開かない。

■ ゴールはどっちだ

無理がないといえば無理もないのですよ、買ってすまそうとするのも。
なぜならば、「大きな機械を入れて人を減らす」というやり方で産業革命以降、危機を乗り越えてきましたよね。家内制手工業から工場制機械工業へ、近代化は進んできました。

オフィスコンピュータからパーソナルコンピュータへ、社員一人に1台専用コンピューターを、というのもありましたね。買い物をして現場で調整させて、そこがゴールという方法です。ですが、お買い忘れのものが実はございましたよ、多くの企業で。

それは何か、何を買い忘れたのかといいますと、アプリケーションとその活用です。WordありますExcelあります、これまでの仕事を乗せ換えました、これで終了です。もうだいじょうぶ、これで成功という考え方でこれまで来ていますが、実はそこが終了ではありませんでした。

工場の機械はスイッチを入れれば規定の動きをしますでしょう?
あれは動き方を指定したものが内臓されていて、それによってハードが動く。
同じバージョンのものであれば、どの機械も同じ性能で動きます。

しかし、WordやExcelは扱える操作に個人差があり、社内の全員が同質のアウトプットができるわけではない。そこでアプリケーションが持つ本来の性能を生かすための教育が欠けていたし、その教育が必要という視点もかけていた。それがRPAを導入する段になって、大きな壁になっている。

実は、RPAのお仕事でロボットを作成する際に、既存のExcel、ロボットが扱う表の作成方法によって、同じRPAツールで作成したロボットであっても、所要時間であったりエラー発生率であったり、性能に差が出てくる場合が多いです。アプリケーションの習熟度がロボットの習熟度に直結します。

(「みんな、Office TANAKAのyoutube動画を見ようよ、そしてExcelを作り直そうよ」と、現場でRPAロボットを作成しながら、何度、心の中で叫んだかわかりません。きちんと基本にのっとって機能を生かすように作成すれば、RPA側でこねくり回して何とかする必要がないのですよ、Excelは。ええ、本当に。)

本当のゴールに向けて、RPAが目指し、もたらすことのできるゴール、すなわちロボットとの協働による労働環境の改善と効率化を実現するために、私たちはこれまで教えられてきたロボットという概念と、そして産業革命以降の手法の見直し、この両方の成功体験に向いあうべきかもしれません。その上で、それぞれの現場で業務を担当している方々、正解を知る方々に、RPAツールを使ってロボットを作成していただけるように企業側で育成に力を注いでいただくことが、とてもとても重要だと考えます。

どうか企業側の偉い人がRPAの本当のゴールを目指してくれますように。
私の作ったロボットが末永く、現場の人と一緒に働いてくれますように。

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