#はじめに
本記事はRPAで世界的に有名である「UiPath」というRPA製品のUiPath フォーラム(コミュニティ掲示板)で実際にUiPathに関わっている人向けにアンケート調査を実施し、纏められて公開されたレポートである「State of the RPA Developer Report 2021」を個人的に分析して考察した内容を記載している記事です。世界のRPA開発者の働き方、満足度、キャリアに興味がある又は自身のキャリアの参考にして頂ければと思います。
<目次>
〇「State of the RPA Developer Report」の概要について
〇どんな国の人が回答してくれているか
〇業界と会社やチーム規模
〇役割や扱えるプログラミング言語
〇実務経験年数
〇企業の導入年数
〇仕事に対しての満足度
〇RPA業界の成長性や自身のキャリアへの影響
〇RPAは多様性に感じるか、社会に良い影響を与えるか
〇転職活動とこれからもRPAの分野に留まりたいか
〇RPA開発者がこれから増えると思うか、どんな会社で働きたいか
〇RPA開発者の満足度と重要と感じている項目
〇RPA開発者の転身は容易であったか
〇RPA開発者がどんな仕事をしているか
〇RPA開発者が不満に感じている事
〇学習方法
〇学生からみたRPA
〇【最後に】私の考えるRPAのキャリアについて
#「State of the RPA Developer Report」の概要
UiPath フォーラム(コミュニティ掲示板)で実際にUiPathに関わっている人向けにアンケート調査が行われ、纏められて公開されたレポートの2021年版になります。初回は2020年で今回二度目の取り組みになります。アンケートが英語であった事もあり、日本からの回答数はほとんどないため、日本以外のレポートに近しいかなと思います。概要だけを知りたいという方はUiPathの公式ホームページに纏まっていますので、そちらを参照下さい。
また、UiPathのコミュニティイベントでもレポートの一部を日本語版にしたものが掲載されていますのであわせてご確認下さい。
[引用元 UiPath Friends 世界のRPAデベロッパー事情を読み解こう]https://speakerdeck.com/uipathfriends/uipath-devconkoraboqi-hua-shi-jie-falserpadeiberotupashi-qing-wodu-mijie-kou-deisukatusiyontotuitocan-zhan-deshen-jue-ru-state-of-the-rpa-developer-report-2021?slide=5
#どんな国の人が回答してくれているか
回答者数については、2020年が1,510人であったのに対して、2021年は1,011人で結果としては500人程2020年から減少している結果となっています。この結果からはRPAの開発者が少なくなったというのは判断できません。UiPathのコミュニティフォーラムの登録者数は2021年6月頃に10万人を超えて伸びているのとコミュニティ参加者は150万人に成長しておりますので、UiPathへの新規参画者数は伸び続けている事がここからは判断できます。
[UiPath公式ニュース UiPathコミュニティは150万人を超えるメンバーに成長]https://ir.uipath.com/news/detail/170/uipath-community-grows-to-more-than-1-5-million-members-and
回答者の国に関しては、インドが2020年(35%)に引き続き、2021年(44%)と一番回答数が多い国になっています。二番目のヨーロッパは2020年(21%)で2021年(26%)でした。インドは人口増加に伴い、労働者数も増えており、英語を扱える人も多いので回答者数が多くなっているのかなと思います。今回44%がインドの方からの回答となっているのでインドとヨーロッパ寄りのレポートとなるのかなと思います。(もうちょっと回答者数が増えたら国別分析とかやるとまた何かの発見とかありそうです)
#業界と会社やチーム規模
回答者が関わっている業界については、金融とITに関わる方が多くなっています。2021年からは自動車やバイオテクノジー、教育が新たに増加してきている事から、更に幅広い業務に拡大している部分があります。AIとの連携が進む事でこれまで導入していなかった部分への拡大は今後も増えていくと思います。世界的にも公共系への導入も進んできておりますが、日本も2021年3月に内閣府が「デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン」の中で「RPA 導入実践ガイドブック」を作成し、行政機関への推進を推し進めようとしており、これから拡大していく業種の一つだと思います。
政府CIOポータル - Government Chief Information Officers' Portal, Japan)
チーム規模について、一概には言えませんが人数が多い所はそれなりの数のロボット数を管理している組織であると考えます。いきなり何十人といった組織から始めるのではなく、小規模組織を構成し成功体験を積み重ねつつ、チーム人数が開発、管理規模に応じて増えているものと思います。RPAを推進していくにあたって、ガバナンス(企業内部の統制)を構築していく事は非常に重要です。PoC(概念実証)を終えた時点で最低限のガバナンスを決めて進めていく事をお勧めします。厳しくし過ぎると進みが悪くなるため、ガバナンスを設定及び監視しない事で発生するリスクのいくつかを許容して開始し、徐々に必要なルールを追加していくと良いでしょう。社内にそのような事をできる人材がいない場合は、育つまで外部の人材に頼ると効率的に進める事もできます。
ある程度のロボット数になってくると、開発者が保守/運用にほとんど時間を取られて、開発が進まなくなってくるフェーズが訪れます。その兆候を知るために従業員がそれぞれの作業に掛けている時間を把握する事と削減できる作業が無いかを分析した上で、開発と保守のチームを分けていったり、新たな開発者を増やしていったり等を検討していく事が必要になります。時間と効果の見える化ができていないと、人が足りない事を提案しても本当に足りていないのか、増やす必要性があるのか経営側が判断できず、増やす事が難しくなりますので、増員計画の準備を普段からしていく事は重要です。
また、開発ドキュメントは凝り過ぎても非効率だし、保守/運用時にないと困る情報がドキュメント化されていないと保守/運用や最悪業務自体も属人化する原因になってしまう可能性があります。RPAが止まった時や今の業務担当者がいなくなった時にも業務が進められるのかを意識してRPA化はしていかなければ、後々問題となってきます。「RPAに任せた部分はもう忘れてしまいました。そのため詳しい事は知りません。」なんて事にならないように既存の業務内容はRPA化後も理解できるようにしておく必要があります。保守/運用時に必要な情報については、下記記事で個別に纏めているので興味ある方は参考にしてもらえればと思います。
【RPA(UiPath)】保守で困らないようにするために必要な情報と工数の掛け方の考え方を徹底解説!
#役割や扱えるプログラミング言語
回答者は学生時代にコンピュータサイエンスやエンジニアリングを学んでいた方が多いですが、経営を学んでいる方もおり、全員が学生時代からIT系ではない事が分かります。日本では元々IT系ではない人がRPAに関わっている人が多くいると感じています。ですが、私のように元々SIer出身者や、プログラミングに詳しくてRPAに携わっている人も当然日本にもいます。初心者でも始めやすく、上級者でも極める部分が多いのがRPAと思います。大規模開発や重要な業務の開発は上級者のサポートがないと成功させる事が難しいと思います。また、RPA業界は進化が早く新しい機能や製品理解はとても大変です。
ほとんどのRPA担当者は少なくても1つのプログラミング言語を知っているという回答になっています。2021年度から他の言語を知らないという回答が増えているため、市民開発者(業務担当者)や学生が回答者に加わったのではないかと思います。知っている=扱えるではないので、世界はすごいというわけでもないかなと思います。
#実務経験年数
アンケートに答えたRPA開発者の半数が5年以上の実務経験を持っている回答結果になっています。新卒者だけではなく、経験豊富なプロフェッショナルにとってもRPAが望ましい分野であるとこの結果からわかります。日本では2018年頃に急速にRPAが普及したブームがありました。この時には生産性を高める救世主のような扱いで多くの企業が独自のRPA製品をリリースしたり、とりあえず導入したりする企業も多かった時代だと思います。そのため日本でRPAでの実務経験が多いのは2~3年になると思います。
UiPathのアカデミーやホワイトペーパーによるナレッジ展開も2018年頃から急速に加速しました。2018年より前にRPAに携わっている日本の人は日本語のドキュメントが少なかったり、フォーラムの解決ナレッジが少なかったり、バグがあったりとかなり開発に苦労したのではないかと思います。いまはネット上に有益な情報が溢れていますので、情報に困る事はなさそうですが、逆に情報が多すぎて、ほしい情報にたどり着けない又は存在に気づけない人が増えていると感じます。
#企業の導入年数
企業での導入年数は5年以上が10%、3~4年が34%、1~2年が30%となっています。UiPathは2021年4月にニューヨーク取引市場で新規株式公開(IPO)しており、成長し続けているため海外でも継続して導入している企業が増えていると思います。RPAに関しては日本では大企業の51%が2020年の時に導入済になり、2021年も継続して導入は進んでいるとMM総研が調査結果レポートを出しています。(UiPathだけではなくRPAとして)
【MM総研の2021年のRPA国内利用動向調査】
「RPA国内利用動向調査 2021(2021年1月調査)」に関する調査レポートの販売についてお知らせ致します。企業の生産性を向上させるRPAの活用が企業規模や業種問わず進んでおります。年商50億円以上の企業では、社数ベース普及率は37%を超え、大手に限れば過半に達しています。年商50億円未満では、導入率10%と低いものの、今後数年で普及期を迎えると想定されます。今後は基幹システム含む既存のシステムと新規システムの連携や、RPA×AIで適用業務拡大・社内利用拡大を図る動きもでてまいりました。
[引用元 MM総研 RPA国内利用動向調査 2021(2021年1月調査)]https://www.m2ri.jp/report/market/detail.html?id=61
日本は海外に比べてトップダウンでの導入があまりできていない事を様々な方が指摘されており、導入支援を行っている私から見ても現場手動で進めている所が多いイメージはあります。きっかけは現場手動でも良いと思いますが、現場手動のまま会社として取り組みを始めないと、部分的な自動化のみに収まってしまったり、教育を受けていない社員がチャレンジして思うように効果が出ずやる気を無くしたり、失敗したりしてしまう可能性も増えてしまいます。
これから日本にもプロセスマイニングやタスクマイニングの導入が進む事によって、社内のプロセスが可視化される事により戦略的に業務/システム設計、RPAの活用が進んでいける可能性があると考えます。
「RPAは将来なくなるか」について、業務を極力標準のパッケージやSaaSにシステムを移したとしても、人が行う部分が残り、ここに人がやる前にRPAでできないかという部分は残ると思っています。じゃあトップダウンで戦略的に開始されるまでに何もしなくても良いかというとそうでもないと思っています。開発が簡単且つ、効果が大きく、リスクが少ないものがあれば現状を効率化する面では全体最適化してない状態でも効果があるものになります。また、導入して運用を既に開始している企業はRPAの特性や使い方のルール、問題点を改善し、上手く活用していくためのノウハウが蓄積されていたり、推し進める人材も既にいたりと今後そういった部分で現在未導入の企業との差がでてくると思います。チャレンジして失敗して、失敗から学んで改善する事は新しい取り組みをする際には必ず必要になります。大事なのはどのリスクを許容して、どのリスクを許容しないか決めて対策を立てて進めていく事です。
#仕事に対しての満足度
RPAの仕事に満足しているかというアンケートの結果は、満足している(34%)又は大変満足している(63%)で回答者の97%が満足しているという結果になっています。2020年は96%でしたので、継続して満足度は高いものとなります。自身の仕事が組織に評価されているかというアンケートでは評価されていると回答した人が2020年の80%から85%に増加しています。
私自身はRPAを導入支援していく仕事をしていますが、自身の希望で現在の仕事をしている且つRPA専門でサービスを展開している組織に所属している事もあり、評価も適切にされていて、満足度、評価ともに満足というアンケート集計結果と同じような結果でした。ですが、Twitter上では評価に満足できていない人達の声も上がっていたりするので、満足していないと感じている人達の立場や仕事内容の深堀は今後行っていきたいと思います。トップダウンでRPA活用に意欲的な会社とそうでない会社で評価の部分は大きく変わってきているのでは?と思います。また日本のRPAの活用はコスト削減や効率化にまだ留まっている事が多く、利益を生み出す部分への活用事例が多くないので利益重視の企業だと評価が低くなっているのではないかも考えられます。
#RPA業界の成長性や自身のキャリアへの影響
RPA業界の成長性について、9割以上の人が「RPA業界は今後5年間で高い成長が見込める」と回答しており、これは2020年とほぼ同じ結果になっています。ガートナーというIT分野を中心とした調査・助言を行う有名な企業が出している調査結果レポートによると、下記の通り予測しています。私自身も業界自体は今後の成長性は高いと思っています。
RPA市場は2024年まで2桁の成長を遂げる、世界中の大企業の90%が、人間の労働と手作業を再調整しながら、レジリエンスと拡張性を通じて重要なビジネスプロセスをデジタル的に強化するために、2022年までに何らかの形でRPAを採用」
[引用元 gartner RPA市場レポート 2020年9月)]https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2020-09-21-gartner-says-worldwide-robotic-process-automation-software-revenue-to-reach-nearly-2-billion-in-2021
自身のキャリアへの影響について、87%の人が次のキャリアに役に立つという回答となっています。2020年は84%だったのでこちらもほぼ同じ結果になっています。この後に出てくる「転職活動とこれからもRPAの分野に留まりたいか」の項目で触れますが、RPA開発だけでキャリアを作っていこうと考えている人は少ないのかなと思います。後述で記載しますが、RPAを一つの武器としてキャリア形成していこうとしていると考えます。
#RPAは多様性に感じるか、社会に良い影響を与えるか
RPAプロフェッショナルの86%が、RPAは多様性に富んでいる、または少なくとも他のソフトウェア開発分野よりも多様であると回答しています。RPAの開発はこれまでのプログラミング言語の開発と比べて比較的理解し易く、開発し易いため、年齢の多様性は広いと思います。
「社会に良い影響を与えるか」にも87%が与えると回答しています。回答の中で「自分が自動化したもので担当者が驚きながら喜んでくれるのが一番の喜び」と回答している方もありましたが、業務改善のポイントで有名な5M(ムダ、ムリ、ムラ、モレ、ミス)という考え方があり、これらに当てはまるものを自動化すると担当者の喜びは大きいと思います。従業員の満足度があがれば、社会に良い影響を与える事ができると私も思います。
#転職活動とこれからもRPAの分野に留まりたいか
アンケート結果は下記の通りとっております。
[引用元 UiPath公式ブログ 2021年のRPA開発者レポート)]https://www.uipath.com/ja/newsroom/new-uipath-report-finds-growing-diversity-and-near-100-job-satisfaction-among-rpa-professionals
私も新しい職を探しているか、新たな機会に対してオープンであり、RPA分野に留まりたいと考えています。理由は下記の4つあります。
①今後も需要が高まる分野であること
②これから別のキャリアに進んでも、役立つスキルであること
③5Mの業務から解放されて喜ぶ人を見るのにやりがいを強く感じている事
④自身もRPAの分野と共に成長している事を実感している事
#RPA開発者がこれから増えると思うか、どんな会社で働きたいか
回答者が所属していいる組織の77%が今後一年間にRPA開発者を「間違いなく」または「おそらく」採用すると予想しています。どんな会社で働きたいかについては、「キャリアアップの機会」「給与・報酬の増加」が78%で同率一位で、三位が「新しいスキルを学ぶ機会がある」の76%でした。ワークライフバランスは45%で半数の人が重視したいと考えていますが、成長志向の人が回答者は多い印象です。
長い期間で考えた時にRPA開発ができる人は年々増加し、比較的手を出しやすい箇所の対象業務は徐々に減っていくのではないかと思いますので、簡単な開発ができるだけでは今後報酬のアップはより厳しくなってくると思います。一番最後の項目で詳細を記載しますが、簡単なRPA開発ができるだけではなく、その他の技術やシステムと組み合わせたり、ビジネスプロセス・リエンジニアリングやシステムアーキテクトができたり、業務も行えたり、大量のロボットの管理設計、運用もできる等RPA開発+αが必要になっていくと考えています。回答者が考える新しい機会はこのような複数選択肢があるキャリアのうち何処に進んでいこうかと悩んでいる人も多いのではと思います。
#RPA開発者の満足度と重要と感じている項目
RPA開発者の重要と感じている項目に対しての満足度は下記の表の通りです。全体的に満足度が重要度を上回っていない結果となっています。「リーダーが自分の仕事を信じてくれること」が重要と回答した人が88%で満足度が56%でした。新しい取り組みを始めていくのにはリーダーが環境を整える必要があります。進んでいる企業では学習できる機会を全従業員に与えて、そこからやる気のある人材に対して更に能力が伸ばせるような教育プログラムや検証できる環境を用意し、成果に対して評価がされるようにしています。このような情報を知っていると周りと比べて自分のところは評価が適切でないと感じたり、成長機会が与えられていないと感じたりする人は多いと思います。今後現状に満足できない人はより良い条件の会社に転職する流れが増えていくのではないかと思います。
[引用元 UiPath Friends 【UiPath DevConコラボ企画】 世界のRPAディベロッパー事情を読み解こう ディスカッション)]https://speakerdeck.com/uipathfriends/uipath-devconkoraboqi-hua-shi-jie-falserpadeiberotupashi-qing-wodu-mijie-kou-deisukatusiyontotuitocan-zhan-deshen-jue-ru-state-of-the-rpa-developer-report-2021?slide=15
#RPA開発者の転身は容易であったか
RPA開発者の前の仕事内容のアンケートについて、最も多かったのがソフトウェア開発で53%ですが、要件定義を専門で行うような職種であるビジネスアナリストやプロジェクトを纏めるプロジェクトマネージャー、テストエンジニア等様々な職種からRPA開発者になっている事が分かります。
転身は容易であったかのアンケートについては、簡単、とても簡単と回答している人が49%、どちらともいえないが28%の回答でした。転身のし易さについては、RPA開発者に求められる能力で不足している箇所がこれまでの経験で既に持っていない内容が少ないほど転身し易い回答になると思います。私なりに考えるRPA開発者に必要な能力は下記です。
転身前の職種を経験する事で既に身に着けているスキルや知識を各職種別に分析してみると「ソフトウェア開発者」が一番新しく覚えるものが少ないため、転身はし易いと回答した人が多い職種なのではないかと思います。覚える項目が少なくても適正が無かったり、苦手な分野が必要な能力にあったりした人は転身し難いと回答した人もいると思います。IT未経験者は変数や引数等でつまずく事が多いですが、地道に学習する事で理解できるようになっていきます。イラストでわかり易く概念を説明しているサイトも多くありますので、イメージできない人はまずはイメージがつくように、そのようなサイトを活用するのが良いです。
#RPA開発者がどんな仕事をしているか
RPA開発者の仕事で好きな事、嫌いな事アンケートについて、82%の人がRPAのソリューション構築(開発)や要件定義が楽しいと回答しており、ドキュメント作成、見積もりが楽しめていない回答が多くありました。どのように自動化していくか考えて、考えた通りにできた時は達成感を強く得られるため、楽しいと感じる人は多いのかなと思います。ドキュメント作成は現場によってはAs-Is,To-Beフロー図の詳細をエクセル等で作成したりする所もあり、作成に多く時間が掛かる所もあります。必要なものであれば良いのですが、不必要なドキュメントやドキュメント内の項目を改善しないと、余計に工数が掛かったり、開発者の生産性が落ちたりしますので、ドキュメントや見積もり手法はしっかりと整備しておく必要があります。ドキュメント作成を楽しむコツは簡潔にわかり易く、短い作成時間で他の人に伝えられているかを意識して作成し、他の人が見た時に「わかり易い」という言葉を貰えるのを楽しむ事かなと思います。
#RPA開発者が不満に感じている事
RPA開発者が不満に感じている事のアンケートでは、下記が上位にあがってきています。
【RPA開発者が不満に感じている事ランキング】
第一位は、「自動化のために最適化されていない、または適していないものを依頼される」で46%。
第二位は、「ドキュメントは不完全で正確ではない」で39%。
第三位は、「業務担当者から情報を得るのが難しい」で35%。
これらの問題は日本だけではなく、世界的にも問題であり、課題となっているようです。この課題に対しては、今後プロセスマイニングやタスクマイニングでデータの流れと人が行っている作業が可視化される事で、バリエーションの把握漏れや手順漏れ等今後改善がされていく可能性があります。そうするとこの上位の不満は消えて、適切な自動化を情報が不足する事無く行う事ができるストレスフリーな世界が訪れるかもしれません。今はドキュメントに記載がなく、業務担当者も把握していないものがあった場合は、業務知識や正しい姿、一般論の想像に長けた人でしか気づけない状態です。ビジネスプロセスリエンジニアリングや要件定義プロのお仕事。
依頼される部分については、見当違いの依頼が多いのであれば、依頼する前に自動化に適しているか自己チェック可能な仕組みを提供したり、RPAについての勉強会を開いて理解を深めてもらったりする事で適していないものを依頼される量は減らす事ができると思います。
#学習方法
どのように学んでいるかのアンケートについて、オンラインコース、youtube、フォーラム、公式ドキュメントで学んでいるのが多い結果となっていました。UiPathの学習方法については、Qiitaの下記記事で良く纏められていますので、学び方が分からない人は是非参考にしてください。初心者の人はまずはUiPath アカデミーを受講してみることをお勧めします。
[Qiita 【UiPath】UiPathについて学習する「21」の方法]:https://qiita.com/miya_gis/items/bb08f8858c4a15053efe
実際の開発の時に分からない事があった時に、公式ドキュメントやUiPath フォーラムを扱うのが多いです。開発中に困った際にどのように解決していけば良いかは下記記事で纏めていますので、こちらを参照して貰えたらと思います。
【RPA(UiPath)】よく発生する課題や問題についての解決方法
学習だけ行っても、実業務での経験がないと身に付かなかったり、理解がちゃんとできていなかったりします。自分で自動化したいものを考えて、作ってみるのが能力を定着させる近道だと思います。実践あるのみ!
実践する際に、スクレイピングやRPAでの操作を禁止しているサイトやアプリが存在するため、実際に試す時には試す先の利用規約を必ずチェックするようにしましょう。
初心者でも気にしておくべきRPAの実行、開発時のリスク(注意すべき事)について、下記記事で纏めていますのでチャレンジしてみる方はこちらも参考にしてください。
【RPA(UiPath)】RPA導入のリスク(開発・実行編)
#学生からみたRPA
これからRPAの仕事に就こうとしている学生50名を対象に、アンケートして分析を2021年から新たな取り組みとして始めています。
RPAは他のソフトウェア開発分野よりも多様性があると5人に3人が考えており、RPAが今後5年間で成長する可能性が高いとの回答は100%でした。100%はすごいなと思いますが、成長の面ではMicrosoftの標準機能に「power automate desktop」として搭載されたり、各SaaS(SAP等)がRPA機能を搭載して展開していたりが既に始まっているので、UiPathに限らず業界全体は伸びていくのと一般的なビジネススキルとして定着していくのではないかと思います。
日本でも小学生向けプログラミング教育が2020年から、中学生向けが2021年から開始しています。小学生プログラミング教育の中で多く採用されている「Scratch」という遊びながら学習できるサイトがあるのですが、開発画面がUiPathに開発画面にすごく似ていると思ってます。下記イメージの左側の用意されているコードがUiPathでいうアクティビティで真ん中に繰り返しや分岐を組み合わせていく事で右の猫を動かしたり、音を出したり色々な事ができます。簡単なゲームやアニメーションを作る事もできます。これができるようになっていると、RPAの開発ツールを扱うだけでいえば簡単に操作はできると思います。他に必要なスキルや知識があるので、「Scratch」ができる = 「RPA開発者」ではないです。RPAの開発が全然難しくて分からない人は「Scratch」で遊んでから再度やってみると理解できたりするケースがあります。
中学ではより仕事に近いような開発も必修化の中で整備されていきそうです。今後日本でもこのような教育を受けている世代が労働市場に来ることで、教育を受けていない世代は「同じようにできるようになるか」、「別の将来必要とされるスキルで差別化を図る」必要が出てくると思います。
#【最後に】私の考えるRPAのキャリアについて
これまでの内容でRPAについては、将来成長していくもので必要性が出てくるスキルや知識である事は知る事ができたと思います。最後に私が考えるRPAのキャリアについて記載します。これは「State of the RPA Developer Report 2021」とは関係ないものとなります。
IPAの人材白書2020の調査結果によると今後IT業務の増加割合が高いものは部門別に下記の通りとなっています。純粋に市場価値を高めていきたいのであれば、自分が働きたい部門で今後増加する見通しの業務の関連スキルを伸ばすのが良いと思います。
[引用元 IPA IT人材白書2020)]https://www.ipa.go.jp/jinzai/jigyou/hakusho_dl_2020.html
RPAは「社内業務プロセス設計」と「データ分析などの高度化による情報活用」に関係してくる部分はあります。社内業務プロセス設計ではSaaSへの移行やプロセスの見直しをした時にRPAでできる事はあるかの観点が必要になりますし、データ分析は非構造化データを構造化したり、BIツールと連携させてRPAで処理をさせたりという使い方が増えていくと思います。全てをできるようにするのはかなり習得に時間が掛かるので、自分のこれまでのキャリアで培った得意な部分とRPAやローコード、ノーコードスキルを身に付けるのが良いと個人的に考えます。RPAやノーコード、ローコードを扱えるようになることで新システムや業務の適応能力も上がると思います。この適応能力が今後仕事でより重要になってくると思います。
RPAを既に使いこなしている人は難易度の高い開発(インテリジェントオートメーション)をできるようにしたり、他の技術(AI等)や製品(kintone等)と連携できたり、データ分析(BIツール活用)やセキュリティ、コンサル領域、業務プロフェッショナルやビジネス領域を伸ばしていく事で、様々なキャリアを描けると思います。それにより市場価値を更に向上したり、維持し続けたりする事ができると考えます。RPAやローコード、ノーコードを扱える人は年々増えており、それに伴い需要と供給のバランスで単価も徐々に下がっている傾向があります。単価を上げるには、ただ開発ができるだけではなく、ビジネスプロセスリエンジニアリングができたり、プロジェクトマネジメントができたり、ソシューションアーキテクトができたり、業務専門知識があったり、大量のロボットの管理設計、運用もできたり「RPA開発+α」での差別化が今後必要だと考えます。
今後第四次産業革命(IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ビッグデータを用いた技術革新)によって、これまでITと関わりがなかった職種にも、なにかしらの関わりが出てきたりします。それによって新しいシステムや技術を使いこなしていく力(学び直し)が必要となる人達がでてきます。これはIT業界で現在働いている人も同じで、求められるレベル感に違いは出ますが、何かしらの学び直しの必要性が出てくると思います。国や企業がこの学び直しに対策をしている所もありますが、国や企業の対応だけに頼っているだけでは、市場価値を高めたり、維持するのが厳しい状況になったりする事も考えられます。学びを習慣化できている人は必要なもの明確にして、学びの対象を置き換えるだけでスキルを上げていけますが、習慣化できていない人達は将来苦労する事になる大きな要因となると思いますので、今のうちに学びの習慣を身に付けておく事が重要な事だと思います。2016年の総務省のデータですが、日本は先進国の中でも一番社会人で勉強している人が少なく、ほとんどの人が0時間という結果になっていたそうです。日本国内は学習するだけで周りと差が付きます。しかし、世界的競争に負けないようにするためには日本国内だけの視野でいると気付いた時には日本全体は貧しい国になってしまう可能性もあります。
三菱総合研修所の分析では、2030年に向けて徐々に事務職が過剰になっていくと予測されています。それとは逆に専門職が不足していくと予想されているため、AIやRPA等に置き換えられない、ノンルーティン型タスクを行える人材を今のうちに目指す事で、将来に備えておく事が大切です。RPAは複数ある専門職スキルの一つであり、RPA以外にも専門的なスキルはたくさんあります。自分が将来仕事したい内容を考えて、自分にあった専門スキルを身に付けたり、伸ばしたりしていく事がお勧めです。ビジネス環境や市場、組織、個人などあらゆるものを取り巻く環境が変化し、将来の予測が困難になっている状況ですので、定期的にキャリアについて考えて、学びや行動を変化させていくと良いと思います。
[引用元 三菱総合研究所 大ミスマッチ時代を乗り超える人材戦略 第10回(最終回)FLAPサイクル形成に向けたロードマップ)]https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/20190111.html
これまでの内容がRPA開発の仕事のイメージや、皆様の今後のキャリアの参考になっていれば幸いです。
#【参考サイト】
[UiPath公式ブログ 2020年のRPA開発者レポート]:https://www.uipath.com/blog/rpa/five-interesting-things-from-2020-state-of-rpa-dev-report
[UiPath公式ブログ 2021年のRPA開発者レポート]:https://www.uipath.com/ja/newsroom/new-uipath-report-finds-growing-diversity-and-near-100-job-satisfaction-among-rpa-professionals
[Gartner RPA市場予測レポート]:https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2020-09-21-gartner-says-worldwide-robotic-process-automation-software-revenue-to-reach-nearly-2-billion-in-2021
[Gartner 2021年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド]:https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20201112
[IPA IT人材白書2020]:https://www.ipa.go.jp/jinzai/jigyou/hakusho_dl_2020.html
[MM総研 RPA国内利用動向調査 2021(2021年1月調査)]:https://www.m2ri.jp/report/market/detail.html?id=61
[三菱総研研究所 大ミスマッチ時代を乗り超える人材戦略 第10回(最終回)FLAPサイクル形成に向けたロードマップ]:https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/20190111.html
[経済産業省 我が国産業における人材力強化に向けた研究会-報告書]:https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/20180319001.html
[総務省統計局 日本の統計2020]:http://www.stat.go.jp/data/nihon/index2.html
[経済産業省 変革の時代における人材競争力強化のための9つの提言]:https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/jinzai_management/20190326_report.html
[経済産業政策局 第4次産業革命への対応の方向性 領域横断型の検討課題 :人材・教育]:
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shinsangyo_kozo/pdf/005_04_02.pdf