自作キーボードのタイピング練習は難しい
皆様、自作キーボードをご存じでしょうか。
自作キーボードとは、既製品のキーボードに不満を抱き、個人の趣味を極限まで詰め込んで制作されたキーボードの総称です。
その特徴はいくつかありますが、特にタイピング効率を重視したものだと、以下のような特殊な配列を採用しているものが多くあります。
※各画像の出典:遊舎工房
私もタイピング効率という言葉に目がくらんで惹かれてカラムスタッガードの自作キーボード購入をずっと検討していたのですが、タイピング練習が不安で1年以上も購入をためらっていました。
というのも、上記のようなキーボードは既製品と配置や使い方が全く変わるため、同じ感覚ではタイピングできず、タイピング練習が必須だからです。
しかも、一般的なタイピング練習サイトは(当然ですが)既製品のキーボードを前提に作られているため、こうした自作キーボードでは 画面に表示されるキー配列と実際のキーボードが一致しません。
タイピング練習では 「手元を見ずに画面のキー配列を見る」 ことで上達スピードが格段に上がるのですが、手元と画面でキー配列が異なっている状態ではまともに練習できないのです。
以下の画像は、1枚目がよくあるタイピング練習画面、2枚目が実際に私が購入したキーボードのキー配置です。見るからにキー配置・キーマップが異なっており、このままでは練習できないことがわかると思います。
仕方ないから自作した
世の中に無いなら作れば良い。ということで、キー配列とキーマップを完全再現した状態でタイピング練習ができるWebページを開発しました!
それがこちらのMyKeyboardTypingです!
このツールの特徴は以下の通りです。
- 自作キーボードのキー配置をそのまま表示
- カスタマイズされたキーマップも完全再現
- レイヤー切り替えにも対応
- 押したキーをリアルタイムでハイライト
- レイヤー切り替え中は、表示中のレイヤーの該当キーのみハイライト
上記のサンプル画像では、私が持っている自作キーボード「Ergo68」のキー配列を、ナナメになっている部分まで完全再現し、かつ独自に設定したキーマップも完全再現されています。押したキーはハイライトされるので、「どこを押し間違えたのか」「どれくらい指をズラせばいいのか」が直感的に分かります。
また、手動ではありますが、以下のようにレイヤーを切り替えた状態で練習することもできます。私はレイヤー2を数字や時刻系のレイヤーにしているので、数字練習をしたい時はこのレイヤーを表示したまま練習すれば良いというわけです。(レイヤーキー押下のリアルタイム取得は技術的なハードルが高くて諦めました)
早期習得のための、こだわり仕様
ここまで読んで、こう思った人もいるでしょう。「Remapのタイピング練習で良くない?」と。
ご存じない方のために説明すると、自作キーボードの多くはRemapというサイトでキーマッピングを設定することが出来るのですが、このRemapにもタイピング練習機能が備わっており、完璧なキー配列とキーマップを画面表示したままタイピング練習することができます。
以下はRemapのタイピング練習画面です。確かに、先ほど説明した問題はすべて解消されています。
しかし私の開発したタイピングツールは、以下の2点の工夫により、格段に練習しやすくなっています。
日本語タイピングの練習ができる
Remapのタイピング練習は英語のみの対応ですが、私のタイピング練習ツールでは日本語の練習ができます。
特にこだわった点は、問題の終わりにエンターキー入力を含めている点と、日本語練習素材限定で文章中に何度かスペースキー入力を含めている点です。
この二つは日本語タイピングにおける 変換 と 確定 の動作を想定しています。ある程度文章を打ったらスペースキーで変換し、文章の終わりにはエンターキーで入力を確定する、といった具合です。
通常のタイピングでは、スペースキーとエンターキーは非常に押しやすいのでそこまでの練習は不要かもしれませんが、自作キーボードではキーが小さかったり配置が変わったり、似たような配置であっても近くに別のキーがあってtypoしたりするので練習は必須です。
例えば私は、自作キーボード購入以前はスペースキーを右手で押すことが全くなく、右手親指を活用できていなかったため、親指でエンターキーを押せるようにキーマップを設定しました。しかし、練習開始直後はエンターを押そうとして全く別のキーを押してしまう誤タイプが頻発しました。こうした慣れを少しでも早く矯正するためにも、タイピング練習の中でスペースキーやエンターキーを頻繁に入力させることは、実用までの期間短縮にめちゃくちゃ効いてきます。
あとは日本語タイピング練習には必須の機能として、ちゃ(tya, cha)や あっと(atto, altuto)のように、入力方法が複数あるひらがな入力にも対応しています。
キーを押し間違えたら、正しいキーを押すまで先に進まない
Remapのタイピング練習では、キーを押し間違えてもそのまま次の文字に進みます。
これは「タイピング速度の練習」には適していますが、キー配置を覚えるための練習には不向きです。
そこで私の開発した練習ページでは 正しいキーを押すまで次に進まない 仕様にしました。
これにより、間違えたキーの位置と、正しいキーまでの指の移動量を、その場で確認しながら覚えることができます。
なお、Remapのタイピング練習が悪いというわけではなく、あちらはスピード向上むけ、私の練習ページは覚え直し向けという感じで、用途が異なるだけという点に注意が必要です。
とはいえ、変わったキー配置のキーボードを使う以上、タイピングの覚え直しは必須なので、私のタイピング練習も十分に需要があるのではないかと思っています。
対応キーボード
現時点でキーマップ表示に対応しているキーボードは8個のみです。
ただ、KLEファイルの登録は簡単なので、このキーボードの対応を追加してほしい!という要望を挙げてもらえれば対応するつもりです。GitHubのIssueから気軽にリクエストしてください。もちろん、ご自分で対応してプルリクを上げてもらってもOKです。
ちなみに、非対応キーボードであってもキーマップが表示できないだけで、タイピング練習は可能です。
余談:対応キーボード数が少ない理由
正確にキーマップを表示するには当然、何らかの方法でキー配置を知る必要があります。キー配置をキーボードから取得することはできない(そもそもキー配置情報をキーボード自体は持っていない)ため、別の何らかの方法でjson形式のキー配置(KLEファイル)を入手する必要があります。
Remapではキーボード開発者が自らKLEファイルを登録するのですが、私のページではもちろんそんな仕組みはありません。Remapから都度データを引っこ抜くことも出来なくは無さそうですが、人のデータベースを勝手に覗きに行くような行為なので避けた方が良いでしょう。
となると結局、キーボード開発者が公開しているKLEファイルを手作業で登録するしかありません。
ということで、ひとまず(開発当時)遊舎工房に在庫があり、かつキー配置が比較的特殊(カラムスタッガードや40%キーボードなど)のものから8種を抜粋して登録してみました。
現在対応しているキーボード
- Corne v4
- Cornelius v2
- Ergo68
- ErgoArrows
- Helix rev3 5rows
- Keyball39
- Keyball44
- Lily58
上記8つのキーボードも全て動作確認したわけではない(実機があるものしか動作確認できない)ので、正しく動かないものがあれば是非ご連絡ください。
自作キーボードに挑戦してほしい
おそらくこの記事を読んでくれている方の多くは、自作キーボードに興味はあるけど、様々なハードルを懸念して購入に踏み切れない方だと思います。
私も最初は自作キーボードに対してかなりのハードルを感じていましたが、実際に購入してみた結果、巻き肩の解消とタイピングの快適さの向上が叶い、金額やタイピング練習といった投資に見合うだけのリターンを得ることが出来ました。
私のタイピング練習ページだけですべてのハードルを払拭できるわけではありませんが、挑戦の一助になれば幸いです。








