はじめに
- 最近、Qwen3などローカルLLMが登場し、知識の扱いが注目されている。
- 一方、OracleやMicrosoftなどは「RAG(検索拡張生成)」という手法を推している。
- 本稿では、「ChatGPTとRAGはどう違うのか?」という視点から構造的に比較を行う。
思想の違い
✅ ChatGPTの知識構造:すべてを内包しようとするLLM
- メモリ(記憶)+巨大モデル
- 問題点:ハルシネーションの抑制が必要、最新性の欠如
- GPT-4oの試み:ブラウジングやファイル添付による補完
✅ RAG(Oracle・Azureなど)の設計思想:知識と生成の分離
- Retrieval(検索)→ Augmented(補完)→ Generation(生成)
- 例:Oracle Cloud + PDF検索 → LLMに渡して生成
- 強み:出典明示/誤情報防止/更新容易
方向性の違い
ChatGPTはRAGに「対抗」しているわけではないが、「別の方向性」から同じ問題に挑んでいる。
つまり両者は**同じ課題(LLMの知識限界)**に対して、異なる解法アプローチを採っている。
🔹 対象とする課題:LLMの「知識固定」と「誤情報」問題
問題 | ChatGPT | RAG(Oracleなど) |
---|---|---|
最新情報に弱い | ✅ 問題意識あり | ✅ 問題意識あり |
間違った情報を生成する | ✅ 頻発する | ✅ LLMに生成させない設計も可能 |
出典が不明 | ✅ よく指摘される | ✅ 検索結果を明示できる |
🔸ChatGPTが採る方向性:「LLMの中に全部入れる」派
◉ アプローチ
- 大規模LLM(GPT-4, 4-turbo, 4o)に世界の知識を押し込む
- そして記憶機能やカスタムGPTにより個人適応させる
- 最近では「ファイル添付」「ブラウジング」などで動的補完も強化
◉ メリット
- シームレスなUX(1つの会話内ですべて完結)
- エンジニアや非専門家でも「質問すれば何でも返ってくる」体験
◉ デメリット
- モデルの重さとトレーニングコストが爆発
- 「答えてほしいけど知らない情報」が来るとハルシネーションを起こす
- 埋め込みや明示的RAG構造がブラックボックス的に扱われる
🔸 RAGが採る方向性:「LLMは出力専用。知識は外部に置く」
◉ アプローチ
- 知識は全文検索(ベクトル検索)で取得し、LLMはそれを整形・要約するだけ
- RAGパイプラインを明示的に制御・設計できる
◉ メリット
- 情報の根拠(出典)を明示しやすい
- 法務・医療・研究など正確性が重要な領域で有利
- 企業のナレッジ資産を活かせる(Oracle, SAP, IBMなど)
◉ デメリット
- UXが分離的(検索と生成が分かれる)
- エンジニアによるRAGパイプライン設計が必要
- 知識ベースの品質・管理コストが高い
✅ 両者の思想的構造比較
項目 | ChatGPT | RAG(Oracle等) |
---|---|---|
設計思想 | 万能LLMによる知識内包 | LLMは出力装置、知識は外部 |
ユーザ体験 | シームレス、一貫 | 分離構造、設計者向け |
法的安全性 | △(誤情報の責任問題) | ◎(出典明示可能) |
導入容易性 | ◎ | △(設計スキル要) |
メンテナンス性 | △(全部再学習) | ◎(DB更新だけ) |
精度・出典明示 | △ | ◎ |
AIの「誤魔化し」防止 | △ | ◎ |
個人研究用途 | ◯(記憶あり) | ◯(自炊PDF活用) |
ChatGPTは「すべてをLLMで吸収」する巨大知能派だが、それだけでは限界がある。
公認会計士と弁護士と税理士をいっぺんにやれる人がいないように、餅は餅屋ということで、RAG的構造は不可避的に求められることは直感的に正しいことは理解できると思う。
軍の狙撃手がスポッター(観測手)と共に行動するというたとえがわかりやすいだろうか。
専門家はありがたいが、時に世の中四角四面でもどうしようもないので、とりあえず広く情報を収集し、ざっくりまとめるタイプの人間も必要だろう。それがChatGPTというわけだ。
✅ なぜ今、RAGが企業に選ばれるのか?
- ChatGPTが強いのは個人の探究・小規模業務
- RAGが強いのは法務・医療・契約など「誤りが許されない領域」
つまりゴルゴ13のように「ワンショット・ワンキル」の精度100%が求められる世界。
✅ Qwen3登場が意味する「ローカル×RAG」の未来
- ローカルLLMでもRAG構成は可能(例:llama-index)
- 「ChatGPT + 記憶」は便利だが、ナレッジ運用を構造化できない
- 知識を「問える」環境を自分で構築する必要が出てくる
結論:両者は対抗ではなくLLMという高山の登山ルートの違い
- ChatGPTはAGI的知能集中型
- RAGは分散ナレッジ協調型
- 両者は使い分けが可能であり、必要でもある
# ✅ RAG実装例(Qwen3 + llama-index + Markdown自炊)
以下は、Qwen3をローカルで実行し、Markdownなどの自作知識ベースから検索・応答させる構成の、最低限のRAGパイプライン例である
マシンの最低条件
✅ CUDA対応GPU搭載モデルを狙う場合(本命構成)
推奨構成 | 容量 | 実行性能 |
---|---|---|
GeForce RTX 3050 / 4060搭載ミニPC | VRAM 6GB〜8GB | Qwen3-14BやMixtral 8x7Bも可動 |
メモリ | 16GB | GPUメモリ圧縮を併用すればOK |
コスト目安 | 6.5万〜8.5万円台 | コスパ最強帯(AliExpressなども視野に) |
🛒 実機候補(2025年5月現在)※入手性と信頼性考慮
1. Beelink SER5 / SER6 / SER7
CPU: Ryzen 7 5700U / 7735HS
RAM: 16GB〜32GB
SSD: NVMe 500GB〜
価格:約49,800円〜64,800円
Qwen3-14BまでCPUで安定動作可能
2. MINISFORUM UM773 / UM790
CPU: Ryzen 7 7735HS〜7840HS
GPU: RDNA2 iGPU(Light GPU推論対応)
価格:約60,000〜80,000円
RAG + 軽GPU加速構成でQwen3+Streamlitでもサクサク
🧩 全体構成図(論理的パイプライン)
plaintext
[自炊Markdown/PDFなどの文書群]
↓(ベクトル化)
[llama-index or LangChain]
↓(検索)
[Qwen3ローカルモデル] ← [ユーザーからの質問]
↓(生成)
[構文整形された応答]
✅ 必須コンポーネント
役割 | 推奨ツール | 補足 |
---|---|---|
LLM本体 | Qwen3-14B-Chat-GGUF(Ollamaまたはllama.cpp) | 軽量で構文忠実。gguf推奨 |
知識ベース | 自炊Markdown / PDF / TXT | 評価基準や判例などに最適 |
ベクトルDB | Chroma / FAISS / llama-index内蔵 | 軽量運用ならChroma一択 |
インターフェース | Python + llama-index or LangChain | REST化・Streamlit化も可能 |
役割 | 推奨ツール | 補足 |
---|---|---|
LLM本体 | Qwen3-14B-Chat-GGUF(Ollamaまたはllama.cpp) | 軽量で構文忠実。gguf推奨 |
知識ベース | 自炊Markdown / PDF / TXT | 評価基準や判例などに最適 |
ベクトルDB | Chroma / FAISS / llama-index内蔵 | 軽量運用ならChroma一択 |
インターフェース | Python + llama-index or LangChain | REST化・Streamlit化も可能 |
✅ Qwen3 + llama-index + Markdown自炊RAG:フル構成一式
コンポーネント | 使用例 | 容量目安 |
---|---|---|
Qwen3モデル(GGUF形式) | Qwen3-14B-Chat-Q4_K_M.gguf |
8.6 GB |
推論エンジン |
llama.cpp (CUI)または Ollama
|
50 MB |
Python本体 | Python 3.10〜3.11(推奨) | 150 MB |
llama-index本体 | pipで導入 (llama-index , llama-cpp-python ) |
600 MB |
ベクトルDB | Chroma or FAISS(インメモリ可) | 100〜300 MB |
埋め込みモデル | intfloat/multilingual-e5-small |
400 MB |
自炊文書(Markdown / PDF) | 例:不動産評価基準、法令など | 50〜200 MB |
Streamlit GUI(任意) | チャットUI用 | 250 MB |
Jupyter Notebook(任意) | チュートリアル用UI | 200 MB |
CUDA環境(任意) | NVIDIA GPU活用時 | ~1.5 GB |
📊 合計概算:構成ごとの容量一覧
構成タイプ | 構成内容 | 合計容量(概算) |
---|---|---|
最小構成 | Qwen3-4B + CLI + Markdown50文書 | 3.0~4.0 GB |
標準構成 | Qwen3-14B + llama-index + Chroma + Markdown100文書 | 9~11 GB |
フル開発構成 | + Streamlit + Jupyter + GPU + 多言語埋め込み | 13~15 GB |
これ以外にVSCode Pythonのライブラリが必要である。学習するPDFまで視野に入れると、フルセットは100GBくらいあるといいということがわかる。
Qwen3モデル別サイズ
モデル名 | パラメータ | GGUF形式(Q4)容量 | 特徴 |
---|---|---|---|
Qwen3-1.5B | 1.5B | ~0.8 GB | 軽量、知識は限定的 |
Qwen3-4B | 4B | ~2.5 GB | 実用ライン入り口、構文安定 |
Qwen3-7B | 7B | ~4.8 GB | 構文・推論バランス良 |
Qwen3-14B | 14B | ~8.6 GB | GPT-3.5に匹敵、RAG最適級 |
from llama_index import VectorStoreIndex, SimpleDirectoryReader
from llama_index.llms import LlamaCpp
from llama_index.embeddings import HuggingFaceEmbedding
from llama_index.prompts import PromptTemplate
# ① Markdown自炊データを読み込む
documents = SimpleDirectoryReader("docs_markdown").load_data()
# ② 埋め込み(ベクトル)生成:軽量なモデルを選択
embed_model = HuggingFaceEmbedding(model_name="intfloat/multilingual-e5-small")
# ③ Qwen3ローカルモデルを呼び出す(llama.cpp経由)
llm = LlamaCpp(
model_path="Qwen3-14B-Chat.Q4_K_M.gguf",
temperature=0.1,
context_window=8192,
max_new_tokens=1024
)
# ④ RAG用のIndexを構築
index = VectorStoreIndex.from_documents(
documents,
llm=llm,
embed_model=embed_model
)
# ⑤ 質問を投げてみる
query_engine = index.as_query_engine()
response = query_engine.query("不動産鑑定評価基準の改正点について教えてください")
print(response)
🧩 構成図:処理フロー(技術構文視点)
[Markdown/PDF自炊文書群]
│
├──► llama-index (埋め込み生成 + ベクトル化)
│ └──► Chroma or FAISS (DB)
│
└──► [Query入力]
↓
Qwen3 ローカル実行
↓
└──► 応答整形(構文忠実)
↓
[ターミナル or Web UIに出力]