この記事はC3 Advent Calendar 2025 7日目の記事です。
前書き
まずは自己紹介から。Prokumaです。九工大を2022年3月に卒業し、今はNAISTで博士課程に在籍しながら、スタートアップのCTOをやっている者です。専門はコンピュータ・アーキテクチャという、かなり低レイヤーを取り扱う部分です。
タイトルからして、「なんで司法試験?」と首を傾げるかもしれません。実は、外国籍で日本に在留している立場上、日本での居住には「許可」が必要です。そのため、入管法を熟知し、居留権をどう確保するかは、生存問題でもありました。
しかし、生存に必要だから勉強した入管法ですが、そこから横に拡張していって、その基礎となる憲法、民法、行政法、刑法、訴訟法など、だんだん興味が拡張していきました。
条文を読めば読むほど、プログラミングとかなり似ているなと感じたのも、興味が湧いたポイントだと思います。例えば民法だと
(基本原則)
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。
(解釈の基準)
第二条 この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。
第三条 私権の享有は、出生に始まる。
2 外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。
第三条の二 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
(成年)
第四条 年齢十八歳をもって、成年とする。
....
(定義)
第八十五条 この法律において「物」とは、有体物をいう。
(不動産及び動産)
第八十六条 土地及びその定着物は、不動産とする。
2 不動産以外の物は、すべて動産とする。
のような書き方をしますが、先に定義を書いて、その定義の上で他の縛りを設けていく感じ、ある種の「プログラミング言語」のように感じたのが、私の興味が湧いたポイントが湧いたポイントです。
また、仕事でも法務を片手間かじっていたので、「じゃこの状態で司法試験予備試験を受けてみたらどれくらい点取れるだろうか?」と思いました。
受験方法
来年からはCBTに変わるらしいですが、私が受けた2024年の予備試験では、ネット出願という概念すらなく、願書を返送用封筒で請求する昔ながらの方法で、請求し、収入印紙を貼付し、慎重にOCRで読み取れるように字を書き、霞ヶ関の法務省に送付することで、受験していました。
受験会場
私は「大阪市またはその周辺」を選択しました。その試験会場は、まさかの「関西学院大学西宮上ヶ原キャンパス」。周辺に泊まるほどではないが、かといって奈良の自宅から行くには遠い距離。
受験した感触
受験結果を受け取りましたが、ちょっと今手元も持っていなくて記憶を辿ることにはなりますが、、、
民法・商法・民事訴訟法
商法(特に会社法)は、小さな会社の取締役でも関係深いところですので、自分が持っている知識をベースに、答えていきました。もちろん取締役非設置会社の取締役しか経験しかないので、他は経験知ではなく、私個人が勉強した範囲内で答えました。
30点満点の14点でした。
民法は、初めて登場する制限能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人など)の権利能力と、法定代理人の法律行為の効果に関する問題は解けましたが、ほぼノー勉で行ったので不動産関連から躓いた気がします。
30点満点の10点でした。
民訴報は、試験直前にテキストを読み通しただけですので、こちらもほぼノー勉で感触はあまり良くありませんでした、私なりにロジックを考えて答えました。
こちらは確か8点は取れていたのかな、、、
憲法・行政法
九工大でも日本国憲法を教養科目で履修したはずですが、その時は確か良(70点台)だった気がします。あまりいい成績を取ったわけではありませんが、こちらのサイトを直前に読み通しました。
教養レベルでも面白いし、わかりやすいので、試験を受けないにせよ一度読んでみるのは個人的にお勧めします。
行政法は、直前にこれらの構成があることを頭に入れ、ChatGPTなどと壁打ちしながら対策していた覚えがあります。
- 行政法における許可・取消・撤回の枠組みが存在すること
- 主な救済手段(行政不服申立、行政事件訴訟)
- 違法な行政行為の効力
- 国の不法行為に関する賠償手段(国家賠償法等)
それぞれ30点満点の10点・8点ずつ取れていました。
刑法・刑事訴訟法
大きな枠組みは一通り把握していましたが、穴埋めにとにかく時間がかかった気がします。どちらも30点満点の2点した取れませんでした。
一般教養
まだ九工大の皆さんがノー勉で挑んでもそこそこ点取れそうなところな気がします。文系だけでなく、数学、物理、化学、生物の高校-大学1-2年生レベルの問題が主に出題されます。確か60点満点の27点だった気がします(化学と生物の知識を入れておけばもっと点取れたとは思っていますね)。
基本的に全問題に答える必要はなく、与えられた問題で自分が解ける問題を選択する形式になっています。工学部で、かつ生物もある程度高校時代に勉強していた方なら、対策なしでも受験者平均以上は取れると思っても良いでしょう。
最後に
仕事で忙しく、まともに勉強もできず、結局敗戦として終わりましたが、刑法・刑訴法以外では3割以上は取れたのと、商法では半分近くは取れていたので、可能性は感じました。
また、法律その他類似形式の規定類も、「組織のプログラミング言語」として、非常に興味深かったので、これからも勉強していきたいと考えています。
情報とは結構距離があるように見えて、法律もソフトウェア開発における「仕様書」的側面を持っているので、皆さんも、司法試験予備試験は受けないにせよ、六法全書や解説書を手にして、「新しいプログラミング言語」を覚える楽しさを、感じてみませんか?

