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PythonでMDことはじめ Vol. 3

Last updated at Posted at 2022-10-06

1. 概要

数値積分の手法の一つである蛙飛び(Leap-frog)法をPythonで実装します。

2. Leap-frog法とは

例のごとく、Wikipediaを信じきっている私です。:pray:
質量$m$の質点に加わる力$F$が位置$r$によってのみ決まる変数だとします。
加速度$a$は

a=\frac{F(r)}{m}

で決まります。あるステップ$i$の位置、速度、加速度を$r_i$, $v_i$, $a_i$と表すと、

\begin{align}
r_i&=r_{i-1}+v_{i-1/2}\Delta t\\
a_i&=\frac{F(r_i)}{m}\\
v_{i+1/2}&=v_{i-1/2}+a_i\Delta t
\end{align}

という流れで値を更新していくのがleap-frog法です。この手法は時間可逆性、エネルギーの保存性が優れているそうです。:thinking:
他にもたくさんの数値積分法がありますが、エネルギーの保存性に優れているというのが魅力的だったのと、ぱっと見シンプルだったので採用しました。

3. えっ、初期値ってどうするの?

前の値がわかっていれば次の値を決められるのはわかったけど・・・初期値はどう与えるのが正解なの??
と思ったあなたは頭がいいです。そうなんです。ここで妥協します。
数値積分の基本的な手法の一つにEuler法というものがあり、これを使って最初のステップだけ進めてあげる、というのが解決策です。初期値$r_0$, $v_0$は既知として、次のとおりになります。

\begin{align}
a_0&=\frac{F(r_0)}{m}\\
v_{1/2}&=v_0+\frac{1}{2}a_0\Delta t\\
r_1&=r_0+v_{1/2}\Delta t\\
\end{align}

$v_{1/2}$だけはEuler法で求めてあげれば、あとはleap-frogで進められます。

4. Pythonで実装

まずは数式の通りベタ打ちで書きます。後で綺麗にするので安心してください。:hugging:
原点にAr原子が固定されていて、もう一個のAr原子をある程度離れた場所に置いてあげるようなイメージです。

コード

NA = 6.022e23  # アボガドロ数
m = 39.948 / NA * 1e-3  # Arの原子量をアボガドロ数で割り、kgに単位を直す
dt = 1e-14  # 時間ステップ幅
r_0, v_0 = 5e-10, 0  # 初期値

# 最初の1ステップ
a = F(r_0) / m
v_half_after = v_0 + 0.5 * a * dt
r_after = r_0 + v_half_after * dt
# 値の更新
v_half_before = v_half_after
r_before = r_after

r_traj = []
for _ in range(1000):
    # ステップを進める
    r_after = r_before + v_half_before * dt
    a = F(r_after) / m
    v_half_after = v_half_before + a * dt
    # 値の更新
    r_before = r_after
    v_half_before = v_half_after

    r_traj.append(r_after)

plt.plot(r_traj)
plt.show()

出力
Figure_3.png
何やら振動していますね。前回のポテンシャルのグラフと照らし合わせてみましょう。
Figure_4.png
$r$の最大値と最小値に線を引いてみました。
初期値からスタートして、エネルギーが最小になるところに向かって進んで、ちょっと行き過ぎて、また帰ってくるという振動をしているのですね。

5. エネルギーの保存性

数値積分で気になってくるのはエネルギーの保存性です。
孤立系であれば、次の等式が成り立つはずです。

U_p + U_k = const.

$U_p$がポテンシャルエネルギー、$U_k$が運動エネルギーです。
実際に計算して保存されているか見てみます。運動エネルギーの計算に$v_i$が必要になるので、

v_i=\frac{v_{i-1/2}+v_{i+1/2}}{2}

とします。

コード

Up = []
Uk = []
Utotal = []
for _ in range(1000):
    # ステップを進める
    r_after = r_before + v_half_before * dt
    a = F(r_after) / m
    v_half_after = v_half_before + a * dt
    #エネルギーを計算
    up_tmp = U(r_after)
    v = (v_half_before + v_half_after) / 2
    uk_tmp = 0.5 * m * v ** 2
    Up.append(up_tmp)
    Uk.append(uk_tmp)
    Utotal.append(up_tmp + uk_tmp)
    # 値の更新
    r_before = r_after
    v_half_before = v_half_after

plt.plot(Up, color='r', label='Up')
plt.plot(Uk, color='b', label='Uk')
plt.plot(Utotal, color='k', label='Total')
plt.legend()
plt.show()

出力
Figure_5.png
面白い形をしていますが、合計すると真っ直ぐですね:hotdog:拡大すると合計の値も振動していますが、増えていったり減っていったりなどはしていません。エネルギー保存性は分子数が増えたときにまた確認します。

6. 次回予告

次回は分子数を増やしてみます。
リンクはこちら:point_right:https://qiita.com/PlusF/items/cef88e56bda7191af444
前回はこちら:point_right:https://qiita.com/PlusF/items/e356ce5ebcbad530c0d5

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