SaaSをめぐる空気は厳しくなっている。投資家はAIエージェントがコードを書き、スタートアップが数日で社内ツールを作り、経営者がなぜまた別のユーザー数ベースの購読料を払うのかと問う場面を見ている。従来のソフトウェアの約束は圧力を受けている。モデルが文章を書き、データを分析し、インターフェースを作り、サポートを自動化できるなら、多くの既存アプリは業務フローを包む高価な外側に見え始める。
その不安は現実的だが、より大きな機会も示している。Figmaの見方が役に立つのは、Figmaが常にデザインキャンバス以上のものを売ってきたからだ。Figmaは共有された文脈を売っている。デザイナー、プロダクトマネージャー、エンジニア、マーケター、創業者は同じ対象を囲み、視覚的に判断し、仕事を前へ進める。AIはこの共有対象の価値を高める。専門家が仕上げる前に、より多くの人が下書き、プロトタイプ、画面、図、仕様を作れるからだ。
だからSaaSの終わりという見方は狭すぎる。弱くなる層は反復的なインターフェース作業だ。強くなる層はチームを理解し、意思決定を保存し、権限を管理し、既存ツールとつながり、粗い出力を編集可能で信頼できる成果物へ変えるシステムだ。AIは小さなツールを安くしながら、本格的なプラットフォームを日々の仕事の中心へ近づける。
Figmaはこの流れをよく示している。製品戦略が、アイデアが共有成果物になる瞬間へ向かっているからだ。プロンプトは画面を生み出せる。粗いスケッチはプロトタイプになれる。マーケティングチームは素材を作れる。プロダクトチームは流れを試せる。エンジニアは論理と実装の細部を確認できる。価値は生成、フィードバック、修正、提供が連続するところから生まれる。この循環の中で、SaaSは人間の判断とモデルの出力が出会う場所になる。
第一のサインは創作の広がりだ。以前のSaaS時代では、ソフトウェアは固定された部門に対応することが多かった。営業チームは一つのシステムを使い、財務チームは別のシステムを使い、デザインチームはさらに別のシステムを使った。AIは参加の形を変える。創業者は完全なプロダクトチームを採用する前にプロトタイプを作れる。サポート責任者はナレッジベースの流れを下書きできる。研究者はグラフのアイデアを公開可能な図へ変えられる。最初の下書きに長い受け渡しの連鎖が不要になるため、専門ツールを使い始める負担も下がる。
第二のサインは文脈だ。汎用チャットボットは役に立つ断片を出せるが、実際の仕事にはブランドルール、過去の意思決定、顧客データ、承認履歴、ファイルの版、チーム内の役割が必要になる。この文脈を持つSaaS企業は、AIの出力を組織に合う形へ整えられる。チームが重視するものを記憶できる。素材がルールに沿うよう管理できる。製品が過去の多くの決定をすでに知っているため、次の下書きは賢くなる。
第三のサインは編集可能性だ。AIの出力は速く現れる時に印象的だ。人が最初からやり直さずに修正できる時、価値が大きくなる。だから技術作業と創造作業のためのツールが重要になる。研究チームはChatGPTで実験案をまとめ、Geminiで推論を比べ、Miss Formulaで画像内の数式を編集可能な記法へ移し、Editable FigureでAI生成の論文図を編集可能なベクターグラフィックへ変換できる。勝つワークフローは、人が結果を自分のものとして扱えるようにする。
ビジネスモデルの問いも変わる。AIがより多くのクリックを担うほど、ユーザー数ベースの価格は圧力を受ける。SaaSは成果、利用量、共同作業、ガバナンス、完成した資産の価値に沿って価格を設計できる。散らかったファイル、途切れた受け渡し、法的リスク、繰り返しの手作業整理を減らす製品は、なお価格決定力を持つ。価値はアクセスから速度と信頼性へ移る。
次の時代の優れたSaaS製品は、スタジオ、記憶システム、作業レイヤーを同時に感じさせるものになる。人に素早く作る方法、安全に磨く方法、他者と確実に出す方法を与える。Figmaがこの流れを鮮明に見ている理由は、その製品が常に仕事を可視化する空間だったからだ。AIの世界では生成が速くなり、調整が希少な資源になるため、その空間はいっそう重要になる。
教訓は単純だ。AIは項目を保存してクリックを待つSaaS製品に圧力をかける。文脈、共同作業、権限、記憶、ガバナンス、最終的に編集可能な成果物を持つ製品はAIによって強くなる。SaaSはより厳しい市場へ入っているが、より想像力のある市場へも入っている。AIの出力を共有可能で編集可能で信頼できる仕事へ変えられる企業にとって、今はソフトウェア史上最高の時代になり得る。