はじめに
この記事をご覧いただきましてありがとうございます。
2022年10月9日(令和4年度秋期)の応用情報処理技術者試験を受験し、合格することができました。その際の自身の経験を、忘れないうちに文章として残すことにしました1。100人いれば100通りの取り組み方があるはずですし、自身が受験するときもネット上のさまざまな体験談を参考にさせていただきましたので、私の個人的な体験談などであっても残す価値があるかもしれないと思いました。誰かのお役に立つことがあればうれしいです。
試験の出題範囲・分野、日程、形式などの基本的な情報は、IPAの公式サイトや、他の解説記事・サイトなどにも詳しく書かれていますので、説明はそれらに譲ることとし、本記事では話の流れで必要な情報以外は解説しないつもりです。そのため、応用情報技術者試験についてほとんど知らない状態よりも、他の媒体で試験の概要を把握されたうえで本記事をお読みいただいたほうがよいかと思います。
なお、Qiitaで記事を投稿するのは初めてでして、見づらい・読みづらいことがあるかもしれませんが、どうかご容赦ください。
おことわり
本記事はあくまで筆者の個人的な体験談を記したものです。「誰でもこの方法で点数が上がる・合格できる」等の効果を保証するものではありません。また、同じ方法や考え方を強要する意図もありません。
本記事の情報が誤っていたり、投稿から時間が経って情報が古くなっていたりする可能性がありますので、IPAの公式サイト等で最新かつ正確な情報を確認してください。本記事を閲覧したことにより生じた問題、トラブル等に対しては責任を負いかねます。
筆者の経歴
- 1年前にいきなりシステム部へ異動を命じられ、サーバーやネットワークなどのインフラを担当することに。とはいえ自分でコード書いたり機器を触ったりするわけではなく、基本はベンダーや保守員が運用保守をやってくれていて、彼らからの報告を受けて指示を出すような仕事。
- 異動前の仕事は、システムやITなどとは無関係。
- 大学・大学院は、非情報系の理系。
- プログラミングの経験は、大学の演習でCのコードを書いたこともあったが、凝ったことはやっていないし、卒業以降まったく使っていないので忘れた。Excel VBAをたまに書くくらい。
- 2022年4月に基本情報技術者試験、2022年7月にG検定を受験し、いずれも合格。応用情報技術者試験は今回が初めて。
思いつくまま並べてみたのですが、かじった程度の知識があるだけで、IT系の実務経験はほぼ皆無・素人レベルとお考えください。
試験結果
使用した教材・サービス
応用情報の対策のなかで、メインで使用したものを以下に列挙します。具体的な使用方法などは後述します。
STUDYing 応用情報技術者講座
オンライン講座として、STUDYingの講座「応用情報技術者 合格コース」を受講しました。主に、試験全般に必要な知識をインプットするため、午前対策の講義動画とスマート問題集を利用しました。 午後対策の動画・問題や直前対策模試はほとんど利用しませんでした。
以下、「STUDYing」と略記することがあります。
なお、基本情報技術者試験の学習も、同じくSTUDYingの講座を受講しました。基本情報・応用情報ともに、市販の参考書やWebサイトなどで独学すれば十分合格できるといわれていますが、私の場合は、講義スタイルで解説を聴いた方が記憶に残ることや、講義が時間で区切られているためスケジュール管理がしやすいことなどから、オンライン講座を選びました。
通信講座は参考書などの教材と比べるとたしかに割高です。でも、お金やコストをかけることで、「絶対合格しなければ」とやる気が出ました。また、他社の通信講座と比べてもSTUDYingは値段が安く、定期的に実施されるキャンペーンや合格祝いのAmazonギフト券などを合わせれば、定価より実質1万円くらい安く購入できます。
応用情報技術者試験ドットコム
言わずと知れた定番の対策サイトです。過去問を演習する際に、過去問道場(午前)や過去試験解説(午後)を利用しました。 各問の解説は丁寧なうえ、問題pdfや試験講評のリンクもあってワンストップで入手できるなど非常に使いやすく、応用情報の試験に関する情報も大変参考になりました。このようなすばらしいサイトが無料で利用できていいのでしょうか。他の(IT系以外の)資格についてもこんな対策サイトがあればいいのにと強く思います。
以下、「ドットコム」と略記することがあります。
応用情報技術者 午後問題の重点対策
午後試験対策の参考書・問題集として有名なものです。午後試験の過去問を演習する際、まずはこの本に載っている問題から解き始めました。 午後試験の長文問題の読み方や解き方について詳細に解説されていて、午後試験の虎の巻ともいうべきテキストです。過去問題集として購入したのはこの1冊だけです。
以下、「重点対策」と略記することがあります。
なお、年度ごとに改訂版が出版されています。上記リンクは、筆者が受験した2022年度のものである点にご注意ください。また、試験当日が近づくにつれ、本書の当年度版が品薄になり入手しづらくなるとの噂も見かけました。ただし、試験傾向やシラバスに劇的な変化がないかぎりは、前の年度のものを入手して使用してもあまり問題ないと思います。
「分かりそう」で「分からない」でも「分かった」気になれるIT用語辞典
対策サイトや他の体験談などを拝見しましたが、このWebサイトを挙げておられたものはあまり見かけませんでした。タイトルのとおり、膨大な数のIT用語について「「分かった」気になれる」ようなイメージを重視した解説が掲載されており、素人の私は大変参考にさせていただきました。
講座を受講したり過去問を解いたりするなかで、見たことのない用語に出会い、説明を読んでも全然わからない場合、まずはこのサイトの解説を見て、用語のざっくりとしたイメージを掴みました。 そのうえで参考書や各種Webサイトなどのお堅い説明に進むことで、スムーズに理解できたと思います。
ニュースペックテキスト 応用情報技術者
定番の参考書のうちの1つ。他にはいわゆる「キタミ式」や「合格教本」などがありますが、このTACのテキストを購入しました。カラーで見やすいです。
STUDYingの講座受講時や過去問演習のなかでわからない単語や概念があった場合に開く、辞書的な使い方を想定していました。しかし、講座よりも踏み込んだ解説はそれほど掲載されておらず、ググって出てきた情報の方がわかりやすいことが多かったので、結局あまり使いませんでした。辞書的に使用するなら「合格教本」がよく、本書や「キタミ式」などは、通信講座などを利用しない場合の独学のテキストとして使うのに向いているのではと思います2。
なお、年度ごとに改訂版が出版されています。上記リンクは、筆者が受験した2022年度のものである点にご注意ください。ただし、試験傾向やシラバスに劇的な変化がないかぎりは、前の年度のものを入手して使用してもあまり問題ないと思います。
学習スケジュール
応用情報の勉強を始めてから試験までの大まかな学習記録・スケジュール感を以下に記します。
- 4月中旬
- 基本情報技術者試験を受験し、終了後すぐメールが届いて合格がわかりました。ここから応用情報までの半年で合格ラインに到達できるか不安でしたが、基本情報の知識を忘れないうちに勉強を続けて受かってしまう方が効率的と考え、応用情報に関する情報を集めたり、教材を入手したりしました。
- 5月GW
- STUDYingの受講を開始しました。午前対策講座の受講を進めていきました。
- 6月中旬
- 午前対策講座を全て受講し終えました(76講座 合計約28時間分)。7/2にG検定があったためそちらの対策にシフトし、応用情報の方はインプットした知識を忘れないよう、STUDYingのスマート問題集をたまに解くようにしました。
- 7月下旬
- 過去問演習を始めました。まずは午前問題を数回分解いてみたところ8割以上の点数が取れたため、午後もいけると判断して午後問題も解き進めました。午前問題にはドットコムの過去問道場を、午後問題には重点対策を利用しました。
- 8月
- 仕事が忙しかったり夏休みで帰省したり、おまけに下旬には家族共々コロナに感染したりと、色々あってほとんど勉強をしませんでした。。。
- 9月~試験
- 過去問演習を続けました。ブランクが空いてしまったものの、それ以前と比べて点数が大幅に下がるようなことはありませんでした。午後問題は、重点対策に載っている問題をすべて解き終えたらドットコムを利用しました。
最終的に午前試験は14回分、午後試験は11回分を解きました(詳細は後述します。)。
ふり返ってみると、まともに勉強していなかった期間(6月中旬~7月中旬、8月)を除外すれば、正味の学習期間は約4か月です。ただし、基本情報の学習期間も加味するとすれば、基本情報は1月中旬から勉強を始めて4月中旬に試験だったので、そのぶんの3か月を加え、合計で約7か月ということになります。
応用情報の合格にどれほどの学習期間が必要なのか相場がわかりませんが、2か月ほどの短期で合格に至ったという体験談も見つかりますし、試験の2週間前から過去問を8回分くらい解いただけで合格できたという同僚もいたので、そのような方と比べると時間やコストをかけているのではと思います。一方、理系だったことや職歴などから、あまり苦労せず理解できたり、問題が解けるようになったりした分野もありました。どのくらいの勉強が必要なのかは、各人のバックグラウンドによるところが大きく、一概には言えないと思います。
午前試験対策について
以降しばらく、午前試験・午後試験それぞれにフォーカスし、私が行った勉強方法などについて述べていきます。なかには当たり前のようなことも多いかと思いますが、そうした事柄でもあえて文章化して残すことに意味があると考えています3。
また、何をやりましたというだけでなく、なぜそうしたのか・そう考えたのかをなるべく記すようにしました。その結果、長ったらしくなってしまい申し訳ありません4。太字の部分だけお読みいただいても概要は把握いただけるかと思います。
過去問演習までのインプット
試験対策として、当然最後には過去問を演習したのですが、いきなり過去問に挑んでも玉砕してやる気をなくすだけで、まともに太刀打ちできるようになるには知識のインプットが必要と考えました。
インプットのための勉強は、午前・午後ともSTUDYingのオンライン講座の受講だけでほぼ十分でした。ここでは、筆者が、STUDYingの講座を利用しながらどのように勉強を進めていったか記します。
STUDYingの利用方法
STUDYingの講座は以下のように構成されています。詳細は、上でリンクを掲載したSTUDYingの公式サイトをご参照ください。私が申し込んだ時点では無料体験もありました。
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午前試験対策
- 講義動画;「アルゴリズム設計」や「メモリの高速化」などのように、出題範囲の各分野のテーマに関し、講師がスライドを投影しながら解説する動画です。各回は10~40分くらいで、そのなかも内容の区切りで細かく分割されています。動画だけでなく、解説の内容をまとめたWEBテキストも利用できます。なお、倍速再生したり、音声や動画をダウンロードしてオフライン視聴もできます。
- スマート問題集;上記の講義動画それぞれに対応するWEBテストで、講義の理解度を確認できます。講義に出てきた用語や概念に関する○×問題が4~10問くらい出題されます。
- セレクト過去問題集;「ネットワーク」や「セキュリティ」など、各分野の午前試験の過去問を集めたWEBテストです。分野により出題数に差があり、少ない分野で10問くらい、多い分野では50問近く出題されます。
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午後試験対策
- 分野概観動画;午後の各大問(各分野)の出題形式、文章の分量、解答などの傾向を解説する動画です。
- 過去問解説動画;午後問題の特定の過去問について解説する動画です。分野により2~5回分の動画が用意されています。扱われる問題を学習者があらかじめ解いておき、答案を作ったうえで視聴することが想定されているようです。
- セレクト過去問題集;特定分野の過去問を3回分くらいまとめて解くWEBテストです。出題のされ方が特殊で、設問ごとに正解・不正解の判定とその部分の解説が出ます(設問1の(1)(2)(3)がひとまとまり、設問2の(1)(2)が次のひとまとまり…というように)。記述解答の採点はしてくれません。
- 直前対策模試;午前・午後とも1つずつあり、午後は各大問が1つずつ用意されています。
これらの教材のなかで主に使用したのは、午前試験対策の「講義動画」「スマート問題集」「セレクト過去問題集」 です。午後試験対策や直前対策模試は、もったいないのですがほとんど使いませんでした。
ストラテジ→マネジメント→テクノロジの順に学習
STUDYingに限らず言えることですが、基本情報・応用情報の勉強を始めるときに戸惑ったのは、多くの教材が「2進数・16進数・基数変換」から始まっていることでした5。いきなり大量の数字が並んでいて面食らったと思ったら、それで終わりではなく、その後も「集合演算」や「確率統計」など、高校数学のようなトピックが続きます。おまけに、ようやく数学ゾーンを乗り切ると今度はアルゴリズムが始まり、抽象概念が立て続けに襲ってきます。
このせいで心が折れかかっていたところ、私が資格取得済みの同僚からおすすめされたのが、テクノロジはいったん飛ばして、まずはストラテジから学習を始めることです。経営戦略や企業活動など、人によってはテクノロジよりも身近で、イメージの掴める用語が多く出てきて学習を進めやすいと思います。
ストラテジが終わったら、次はマネジメントに進みました。スケジュールやコストの管理などは仕事でも縁のある方が多いのではないでしょうか。そして、ストラテジとマネジメントが終わってからテクノロジの学習を始めました。いわば、テキストの後ろから順に学習していくイメージです。
さらに、テクノロジのなかでも、まずはマネジメントとの関連が強い「システム開発技術」「ソフトウェア開発管理技術」を学習し、それ以降は最初の「基礎理論」へ戻って順番通りに学習を進めました。ただ、振り返ってみると、他にも「ヒューマンインターフェイス」「マルチメディア」などは、普段からWEBサイトや動画サービスを利用しているので学習しやすかったと思います。「基礎理論」のなかでは、2進数は「ネットワーク」のIPアドレスの計算に必要で、論理演算・論理回路もほぼ確実に出題されるので、これらを優先するのも一案でしょう。逆に、「セキュリティ」は他の分野の知識が前提になっていることが多く、いきなり学習して理解するのは難しいかもしれません。
講義動画は机で視聴・ノートをとる
上述のように、STUDYingの講義動画は1本あたりが短めで、さらにその中身も細分化されています。そのため、STUDYing公式では、移動中などのスキマ時間を活用して動画を視聴することが推奨されているようです。
私は、スキマ時間に視聴することはあまりせず、基本的に動画は机の上でノートを手書きしながら視聴しました。 ノートには、講義動画やWEBテキストで解説される重要なキーワードとその説明などをメモしました。動画の視聴と並行して全て書き切るのは難しいので、まずは動画を倍速再生しながら解説を聴き、内容の区切りがきたら動画を止めてノートを書きました。そのため、1つの動画を視聴するにあたり、動画の約1.5~2倍の時間がかかりました。効率の悪い方法なのかもしれませんが、私の場合はこの方法をとったおかげで必要な知識が習得できたと思います。
手間がかかってもノートをとった理由の1つは、自分の手で書くことで理解が促進されるためです。解説がちゃんと呑み込めていないと書いている途中でペンが止まりますし、逆に書けたということは理解しているのだと安心できます。また、講義の内容は1回の視聴ですべて理解しきることを目指し、同じ講義を2回以上視聴したことはほぼありませんでした。何度も再生して「意自ら通ず」を期待するよりは、1回だけちゃんと見て理解し、あとはノートを見れば大丈夫、というほうが結果的に近道なのではと思います。
もう1つの理由は、ノートの余白にどんどん追記していけるためです。過去問演習で初見の単語が出てきたり、既存のメモよりわかりやすい解説があった場合、それらを書くようにしました。参考書を用意してその余白にメモすることも考えましたが、メモしたい箇所に必ず十分なスペースがあるとは限りませんし、市販の参考書には分厚いものが多いので書き込みづらいとも思います。
学習期間中は、出勤日でも帰宅して夕食・入浴後に少なくとも1本は見る、たまにあるテレワークの日や休日は3~5本見ることを目標としました。とはいえ、やはり出勤して夜遅くなると疲れているので、そのような日になるべく短い・負担の少ない講義を視聴できるように進度を調整したりもしました。
空き時間にはスマート問題集
午前対策講座の講義動画1つにつき、確認テストとしてスマート問題集が1つ付いています。このスマート問題集こそ、STUDYingの講座のなかで(そして、おそらく応用情報の試験対策すべてのなかで)私がもっともお世話になった機能です。
上述のように、スマート問題集では、講義に出てきた用語や概念に関し、「■■とは~~~である。○か×か?」のような短文の正誤問題が4~10問くらい出題されます(分野によっては、講義で扱われた計算の類題なども出題されます。)。1問解答するごとに、正解・不正解の判定と、WEBテキストの関連箇所などの解説が表示されます。あくまで理解度の確認という位置づけなので問題は難しいものではなく、講義が頭に入っていれば5~10秒で即答でき、操作の時間を含めてもトータル1〜2分で解答が終了します。ようするに、講義動画1本の内容を数分で復習できる優れものです。
講義の視聴後にスマート問題集を解くのはもちろんですが、スキマ時間にもひたすらスマート問題集をくり返すようにしました。 仕事の休憩時間、食事後や風呂上がり、トイレに入ったときや寝る前など、スマホがあればタイミングを選ばず手軽に解くことができます。また、私は電車に往復1.5時間くらい乗って通勤していますが、ストラテジの問題集が16個、マネジメントは6個あり、多少時間がかかったとしても全部解くのに30〜40分と見積もれますから、通勤時間中にストラテジとマネジメントを丸ごと余裕で復習できる計算になります。
STUDYingには、同じ講座を受講するユーザの学習履歴がわかる「勉強仲間」という機能があるのですが、覗いてみたところ、スマート問題集は講義後に1回だけ受けてそれっきり、というユーザが多かったです。STUDYing公式が推奨するように、スマート問題集は何度も解いてアウトプットを増やすことで知識の定着を図るものであり、そのための習慣付けが重要と感じました。
午前の全動画を見終え、過去問演習に入ってからも、苦手と感じた分野は問題集を解くようにしました。最終的に、全問題集について、少ないものでも10回くらい、多いものでは30回は繰り返し解きました。
ただし、講義の内容が10問くらいにまとまっているとはいえ、それで100%網羅できるわけではないので、定期的にノートやテキストを見返すなどの復習も行いました。また、問題をろくに理解せず「この問題文は×だ!」のように答えだけ覚えてしまう「過学習状態」にも陥らないよう注意しました。
セレクト過去問は1回だけ(やらなくてよかったかも)
各分野の講義・スマート問題集の最後には、その分野の実際の午前問題を集めたセレクト過去問題集が付いています。結論から述べますと、セレクト過去問は各分野につき1回だけ解きました。
そもそも、過去問は講義動画をひと通り視聴し終えてから改めて演習する想定でしたので、この段階でまとめて解く必要はないと考えていました。後述しますが、過去問演習には基本的にSTUDYingでなくドットコムを利用しています。
また、上述したように、分野によっては問題数がやたら多く、データベースは48問、セキュリティはなんと72問も一度に出題され、集中が続きません。「セレクト」と称しながら「とりあえず過去問ゴッソリ持ってきました」という大味で、知識のおぼつかないインプット段階でくり返し解くのもやや無理があります6。問題数の少ない分野でも、わりと計算問題が豊富に取り上げられていて、スマホで気軽に受けられるものではない印象でした。
一応それぞれ1回は理解度・定着度の確認の意味合いで解いたのですが、別に解かなくてもよかったかなと思います。ただ、解いたおかげで過去問演習にスムーズに接続する効用があったのかもしれませんし、これを解かないと、STUDYingで利用したのが午前の講義動画とスマート問題集だけになり、さすがにお金がもったいなかった気もします。
過去問演習(午前)
STUDYingの午前対策講座をひと通り受講し終えたところで、過去問演習に入りました。何度か触れたように、午前試験の過去問演習には、応用情報技術者試験ドットコムを利用しました。
ここでは、午前試験の演習をどう進めたか、ドットコムの具体的な利用方法などを記します。
演習の方針(午前)
演習1回やるなら80問すべて解く
午前試験の過去問は、実際のレベルでどれほど得点できるか試す模擬試験であるとともに、試験範囲の知識事項について網羅的に復習する確認テストでもあると考えています。そのため、前者だけにフォーカスして得点を最大化することを目指すのではなく、後者の目的を意識して全80問ちゃんと解くようにしました。特定分野の正解率が悪い場合は、その分野の知識や理解度が怪しいといえるため、ノートを見直したりスマート問題集で補強したりしました。
さらに、有名な事実として、応用情報では過去の設問がそのまま流用されることがあります。過去問演習は、本番にそのまま出るかもしれない問題に触れる貴重な機会でもあるわけで、1回分を解くなら80問すべて理解・納得するようにしました。
計算は紙で・電卓はNG
応用情報では午前・午後とも計算問題が必ず出題されますが、電卓の持込は許可されていません。ドットコムには電卓の機能があるのですが、過去問を解く際は使うのを我慢し、紙に書いて計算するようにしました。電卓に頼っていると、いざ手計算したときに手間取りますし、午前試験をすべて手計算で解いた場合にどのくらい時間がかかるか把握していなければ、本番で時間切れになりかねないと思います。解いて計算ミスが多かった場合も、それはそれで、計算ミスが多いことを自覚できるので重要です(でも当然落ち込みます。)。
また、持ち物のことでいえば、定規の持込は許可されていますが、午前・午後とも定規が必須であったり、定規の使用が有利に働いたりする設問がまずないと考えられること、定規を使った作図に時間がかかることから、電卓と同様に使用しませんでした。
スコアは記録する
当然のこととして、過去問を解いてスコアが出たら、どの回で何点だったのか記録しておきました。自身の平均点や、何回分か解いたときにどのように点数が推移しているのか把握できます。
ドットコムの過去問道場で演習する場合、アカウントを作成しておけば、スコア、問題ごとの正誤、各分野の正解率などが自動で記録されるので便利です。ただし、例えば、後述する模擬試験形式で80問を解いた後、間違えた10問を復習機能で解いた場合、計90問分のスコアに上書きされてしまう点には注意が必要です。私は、スコアを記録するためのExcelファイルを作成し、全問終了の直後に記入するようにしました。Excelだと平均を算出したり、点数の変化をグラフで可視化したりしやすいです。
以下は、ドットコムの過去問道場の利用履歴をスクリーンショットしたものです。達成度は本記事の投稿直前にスクショしたもの、段級位は2022年10月9日17時時点のものです(試験直後にたまたまスクショしていました。)。
[応用情報技術者試験.com「応用情報技術者過去問道場」(達成度は2023.1.11に参照。段級位は2022.10.9に参照)から]
その回の難易度をどう把握するか
上述のようにスコアを記入していくと、例えば点数が前回より上がっている場合、それは自分の実力がついたためなのか、それとも実は前回より問題が簡単だったためなのか、わからないことがあります。
IPAは応用情報の平均点を午前・午後とも公表していないようです(調べてみても出てきませんでした、、)。ただし、「得点分布」に載っている度数分布表を使えば仮の平均点を算出できます。例えば、以下の参考サイトなどに算出の方法が説明されています。なお、午後については、度数分布表のほかに「講評」が公表され、各大問につき「全体として正答率はやや高かった」などと何となく難易度がわかるようになっています。
[参考:Qikeru「度数分布表からの平均値の求め方がわかる5ステップ」(参照 2023.1.11)]
ここで、筆者の午前試験の過去問演習の記録を以下に掲載します。#は、各回次を解いた順番です(以降でも同じ意味です。)。正解率仮平均は、上記の方法で各回次の得点分布から算出したものです。注意深く計算したつもりですが、もし値が間違っていたら申し訳ありません。回次によっては2回解いたものもありますが、下表ではいずれも初めて解いたとき正解率を記しています。
# | 試験回次 | 正解率仮平均 | 正解率 |
---|---|---|---|
1 | R3春 | 60.88% | 85.00% |
2 | R2秋 | 61.15% | 88.75% |
3 | R1秋 | 57.30% | 85.00% |
4 | H31春 | 58.36% | 86.25% |
5 | H30秋 | 58.34% | 96.25% |
6 | H30春 | 59.29% | 91.25% |
7 | H29秋 | 58.69% | 91.25% |
8 | H29春 | 58.79% | 88.75% |
9 | H28秋 | 54.92% | 91.25% |
10 | H28春 | 60.85% | 88.75% |
11 | H27秋 | 58.04% | 90.00% |
12 | H27春 | 56.87% | 86.25% |
13 | H26秋 | 60.80% | 96.25% |
14 | H26春 | 58.00% | 90.00% |
平均 | 58.73% | 89.64% |
正解率仮平均がどの回も概ねボーダーの60%前後に集まることから、午前試験は非常に洗練された試験だと個人的には思います。解いたなかで最も正解率仮平均の低いH28秋は、他の回次より計算問題が多めに出題されていたようです。また、難易度を勘案した出来具合を把握するには、各回について例えば 正解率-仮平均
のような値をとるとバロメーターになると思います。
私の場合、STUDYingを利用したインプットのおかげなのか、正解率が80~90%で安定し、午前試験で苦戦することはあまりありませんでした。ただし、特定分野の正解率が悪い場合もあり、その分野についてノートを見返したりスマート問題集を解いたりして知識を補強しました。ドットコムの記録を見ると、とくに、「開発技術」「プロジェクトマネジメント」「サービスマネジメント」などの正解率が相対的に低かったです。
午前の直近2回分は演習不要
ドットコムの「応用情報技術者の合格率&その他統計資料」のページには、次のように記載されていました。
また、全試験回を通じて直近2回の過去問題から流用されたことがないという事実が認められます。このデータから、午前問題作成のルールとして直近2回分からは流用をしない取り決めが存在していることがわかります。
[応用情報技術者試験.com「応用情報技術者の合格率&その他統計情報」(参照 2023.1.11)から。ただし、太字の強調は筆者によります)]
これに従えば、過去問のうち直近2回に含まれる問題を覚えても、得点には直結しないといえます。直近2回分は本番直前の模試として使うとよい旨のアドバイスも見かけたことがありますが、私の場合は上記の理由から、直近2回分(R4春、R3秋)の80問丸ごと演習はしませんでした(ただし、後述しますが、特定分野について全回次からランダムに出題する形式で問題を解くことはしました。)。初見の問題への対応力を試したいのであれば、新しいものでも古いものでも趣旨は同じですし、せっかく解くなら本番に流用される可能性のある回次に取り組んだ方がお得だと考えました。ただし、古い過去問だと、最近の開発やビジネスのトレンドを汲んだ問題を演習できないなどの多少のデメリットはあると思います。
なお、午後試験については、少なくとも過去とまったく同じ問題が出題されることはないので、このような回次の縛りは設けませんでした。
ドットコムの利用方法
過去問道場「模擬試験形式」を利用
上述したように、午前試験の過去問を演習するときは、基本的に80問すべてを解くようにしました。そのため、ドットコムで過去問を演習するにはさまざまな出題モードがありますが、私は過去問道場の「模擬試験形式」を利用し、各回次の設問が順番通りに80問出題されるようにして演習しました。この形式では「選択肢をランダムで並び替える」オプションは使用しませんでした。過去の問題が流用される場合、選択肢の並び順まで同じケースが多いからです。また、「半分の問題数で出題する」オプションも、どの問題を解いたかの管理が難しくなると思ったため使いませんでした。
また、問題は1問解答するごとに正解・不正解と解説が表示されますが、80問解き終えた後でまとめて見直すのではなく、1問解いては解説を見るようにしました。その問題を解くにはどんな知識が必要だったのか、なぜそのように解いたのか、どこが間違いの原因なのか、新鮮な記憶が残っているうちに、思考過程を辿ったりノートで知識を整理したりしました。ただ、解説やノートなどを読む際、後の設問のヒントとなる情報が目に入ってしまわないよう注意しました。
なお、本番どおりの形式にこだわるのであれば、究極には問題を紙に印刷し、マークシートに解答を記入すべきなのかもしれませんが、午前の演習ではそこまではしませんでした。採点が面倒ですし、ドットコム上で解答すれば採点もデータの蓄積も自動です。午後試験のように単語や文章を手書きするわけでもなく選択式問題なので、CBTで十分と思いました7。
チェックボックスを活用
過去問道場で問題を解く際、各設問のページの左下に、3つのチェックボックスが表示されています。クリックすると各設問について緑・黄・赤のいずれかのチェックを付けることができます。複数付けることも可能です。
私は、各設問を解くタイミングで、次のような条件に当てはまる設問にチェックを入れました(以下、例えば緑のチェックボックスや、それをチェックすることなどを、「緑チェック」のように適宜略記します。)。
- 緑チェック
- 正解でき、概ね理解もしているが、折に触れて復習すべきと考えた問題。計算問題やBNF記法などの紙に書いて考えるような問題に多めに緑チェックが入りました。ただ、振り返ってみると、この緑チェックの条件がやや曖昧で、有効活用できていなかったかもしれません。
- 黄チェック
- 「○○の説明として適切なものはどれか」のような、用語の定義や概念を知っていれば即答できるが、あまり見かけず忘れそう・忘れていた、または初めて見たので知らなかった問題。大雑把にいえば、暗記していればなんとかなった問題です。
- 赤チェック
- 講義で見たりノートに書いたりして一度は理解しているはずなのに、誤答した問題(誤答しかけた場合も)。または、何度も同じような間違いをしてしまう問題。持っている知識で正答できたにもかかわらず間違えた問題ということで、3つのチェックのうち最も罪が重いものです。
過去問1回分を解いてから、80問のうちどれだけチェックが入ったかを見返すことで、自分が本番レベルの問題にどの程度太刀打ちできているのかがわかります。 あまりにもチェックが多いようなら、いったん過去問演習は止めてインプットに戻るべきと判断できます。
私が演習した午前試験の過去問は14回分(+後述する方法で解いた問題)ですが、そのうちチェックを付けた問題は、試験当日の時点で、緑チェック38問、黄チェック146問、赤チェック58問になっていました。ただし、緑チェックや赤チェックは、何度も解いて自信のついた問題からは外すようにしたため、黄チェックが相対的に多く残っています。また、1つの問題に複数チェックしたものもあります。例えば「是正保守・適応保守・完全化保守・予防保守」の定義がなかなか正確に覚えられず、これらの組合せを答える問題に黄チェックと赤チェックの2つを付けました。
そして、ドットコムには、指定した色のチェックの入った問題だけをランダムに出題する機能があります。これを利用し、新しい回次の過去問を解くのに先立ち、各チェックの問題を全問少なくとも1回は解いて復習するようにしました。何度も解けばほとんどの問題は即答できるようになるため、全部解いてもさほど時間はかかりませんでした。
空き時間に黄チェック問題を復習
上記のように各設問にチェックすると、黄チェックには用語の定義や説明に関する問題が揃ってきます。そうすると、黄チェックのみの出題がいわば用語の確認テストのようになるわけです。そこで、黄チェックのみの出題を上記のスマート問題集のように扱い、移動中などのスキマ時間に黄チェック問題をくり返し解くようにしました。
なお、応用情報の勉強期間中は、スマホのホーム画面の一番下の固定部分に、STUDYingのアプリとドットコムのショートカットを表示するようにしておきました。学習にスマホを利用する場合、SNSや動画サイト、ゲームなどの誘惑に負けない工夫が必要と思います。
セキュリティ・午後選択分野は多めに解く(あまり意味なかったかも)
これは午前対策ではなく、午後対策を意図して行ったものです。
午前試験の過去問演習が「試験範囲の知識事項について網羅的に復習する確認テストでもある」ことは上述しましたが、一歩踏み込めば、午後試験のためのインプットであるとも言えます。よって、午後試験で必須の分野であるセキュリティと、選択するつもりの分野については、ドットコムの「分野を指定して出題」を利用し、当該分野の問題に多めに取り組むことにより、午後試験の対策としようと考えました。この対策は、午前試験の過去問を80問通しで解くのとは別に行い、回次の縛りも外して対象分野の全問題から出題されるようにしました。
ただし、結果からすると、この対策はあまり有効ではなかったようにも思われます。午前試験はその出題形式からして、広く・浅くの理解が求められていると感じられる一方、午後試験では特定のトピックについて掘り下げたような問題が多く、より深い理解が求められているようです。そのため、一問一答方式の午前問題をくり返し解くのではなく、各分野で登場する用語や概念について深く理解し、頭の中で整理しておくことがより有効な対策になると思います。
午後試験対策について
ここからは午後試験について述べます。午前試験とはまったく形式が異なり、鬼門と称されることもある午後試験ですが、筆者もそれほど自信が持てないまま本番に挑むこととなりました。その苦悩ぶりを感じ取っていただけますと幸いです。
なお、以下で、例えば「令和4年度 秋期 応用情報技術者試験 午後 問1」のことを「【R4秋問1】」のように適宜略記させていただくことがあります。
午後の選択問題対策
応用情報の午後試験では、分野ごとに分かれた問1~11の大問のうち5つに解答します。情報セキュリティ分野の問1は必須問題、他の問2~11が選択問題になっており、このうち4つの大問を選択します(試験形式についての詳細は、IPAの公式サイトなどをご参照ください。)。
そうすると、各分野(大問)からどの4つを選択するかが、点数を左右することになります。さらに、どの分野の問題が出るかは毎回固定されているので、本番でどのように大問を選択するか、事前に作戦を立てておくことが重要といえるでしょう。
選択しうる大問の分野に絞って対策
さまざまな情報サイトや体験談を参考にさせていただいたところ、この方針はそれらの多くで推奨されており、私もそうすべきと考えました。問2~11の選択問題は、すべての分野を対策しておいて当日にどれを選択するのか決めるのではなく、選択する可能性のある大問をあらかじめピックアップし、学習時はその大問に対応する分野へリソースを割くようにしたほうが、効率的に学習を進められます。午前の項でも触れましたが、午後試験では午前と比べ、より深い知識や応用力が求められていると感じます。もちろん、すべて対策するのが理想ではありますが、現実にはどうしても分野1つあたりが手薄になりますし、仮に対策しても選択問題10問のうち採点されるのは4問だけですから、苦手分野など本番で選択しないであろう分野にリソースを割いても、(試験の点を稼ぐという意味では)無駄になってしまいます。
私の場合は、以下で具体的に説明しますが、情報セキュリティ+選択するかもしれない6分野 の計7問に絞って対策しました。 本番で解くのは5問なので、2問分を予備としています。他の情報サイトなどでも、多くは5問+予備1~3問の学習を推奨していたと記憶しています。予備を入れるのは、同じ回に出題される選択問題10問について、やはり分野ごとに難易度のばらつきがありますので、選択しようと思っていた大問が難しかった場合、予備で対策した他の大問に切り替えられるようにするためです。ただし、あまり予備を多めにとっても、上述のように結局選択しない大問が増えるだけなので、予備は2問としました。
各分野(大問)の考え方・選び方
各種の情報サイトや体験談では、人によって異なる考え方で各分野を選択されたりおすすめされたりしていますので、ここでは私の考え方を紹介させていただきたいと思います。
まず、私が対策した・しなかった分野をそれぞれ記します。問1含め、本番で選択して解いたものには(★)印を付しています。
-
対策した分野
- 問1 情報セキュリティ(★)
- 問2 経営情報戦略
- 問4 システムアーキテクチャ
- 問7 組込みシステム開発(★)
- 問9 プロジェクトマネジメント(★)
- 問10 サービスマネジメント(★)
- 問11 システム監査(★)
-
対策しなかった分野
- 問3 プログラミング
- 問5 ネットワーク
- 問6 データベース
- 問8 情報システム開発
分野の選択においては、基本情報の午後問題を演習したときの感触をかなり参考にしています。 基本情報(2022年4月受験)の午後試験の選択問題は、どの分野が出題されるのかランダムでわからないという事情があったため、全分野の対策をしてから挑みました8。基本情報の過去問を解いていくにつれ、分野によって出来具合に差があることがわかり、これを踏まえて応用情報で対策する分野を前もって決めてから学習を進めました9。
そのため、対策しなかった4つの分野は過去問を一度も解きませんでした。しかし、これらの分野のなかに実はもっと解きやすいものがあったかもしれず、せめて1~2回分は全分野を解いてみてから外すか否か判断すべきだった、と反省しています。なお、このような理由から、以下の説明で例えば「他の分野と比べて」などと述べるとき、対策した7分野のみを射程に入れており、対策しなかった4分野のことは考慮していない点にご留意ください。
以下、それぞれの分野についてのイメージ、どのように選択する・しないに至ったのか、そして過去問演習のスコアなどを述べます。
問1 情報セキュリティ(★)
上述のとおり、問1の情報セキュリティは必須問題です。
他の分野と比べ、知識があれば解ける設問が多いように思います。例えば、サイバー攻撃やその特徴、それに対する防衛策について答える設問などは、問題文を読まずとも答えられることがあります。【H31春問1】や【H29春問1】などは、問題文の指定箇所を読むだけでも大半の設問に解答可能ではないでしょうか。
しかし、裏を返せば、知識がなければ手詰まりになりかねないともいえ、セキュリティ分野の各用語・トピックに関する幅広い知識を持つことが必要と感じました。そのことに思い至って以降、上述したように、セキュリティの午後の過去問は他よりも多めに取り組み、さらにドットコムで午前のセキュリティ分野に絞って出題する形式により午前の過去問も多めに解きました。
ここで、本分野の過去問演習の記録を以下に掲載します。講評は、各回の合格発表時にIPAから発表される採点講評のなかから、各大問についての「全体として正答率は高かった/平均的であった/低かった」の部分を抜粋しました。「平均的であった」と明記されているものは「中」、全体の正答率の言及がない10ものは「-」と表記します。スコアというのは、後述する「自己採点の方法」により算出した値であり、正解数÷問題数 ではない考え方で算出しています。
なお、#1~#6の回次の順がバラバラなのは、「応用情報技術者 午後問題の重点対策」に掲載されている問題をまず解いたためです。以降はそれ以外の過去問をR3春から過去に遡って解いていき、仕上げに最新2回分のR3秋とR4春を解くようにしました。他分野でも概ね同様です。
# | 回次・大問 | 講評 | スコア |
---|---|---|---|
1 | H21秋問9 | 高 | 75.00% |
2 | H29秋問1 | - | 92.31% |
3 | H26秋問1 | - | 100.00% |
4 | H25秋問8 | - | 60.00% |
5 | H29春問1 | 高 | 82.35% |
6 | R1秋問1 | - | 61.11% |
7 | R3春問1 | 中 | 92.31% |
8 | R2秋問1 | 中 | 68.75% |
9 | H31春問1 | - | 82.35% |
10 | H30秋問1 | - | 82.35% |
11 | H30春問1 | 低 | 66.67% |
12 | H28秋問1 | 高 | 92.86% |
13 | H28春問1 | 低 | 57.89% |
14 | R3秋問1 | 中 | 44.44% |
15 | R4秋問1 | 中 | 57.14% |
平均 | 74.37% |
振り返ってみると、10回くらい解いてもスコアがボーダーの60%を下回ることがなく、セキュリティは解きやすいかなと思っていたのですが、最後に解いた3回(とくに、本番前1週間で解いた直近2回分)で立て続けにボーダーを割ってしまい、心が折れかけの状態で本番に挑むこととなりました。
問2 経営情報戦略
これ以降は選択問題です。
基本情報の午後の過去問演習では、ストラテジ系の問題についてとくに苦手意識があったわけではなく、正答率も高めだったため、応用情報でも選択肢に入れました。
「文系問題」や「国語問題」などと称される大問の1つであり、知識で解くというよりも、問題文に書いてある情報をどう捉え、解答を組み立てるかという能力が重視されていると感じました。例えば、食品会社でのマーケティング(【R3秋問2】)やホテルチェーンのビジネスコンセプト(【H31春問2】)など、とっつきやすい話題だと問題文が読みやすかったです。
ただし、ビジネスやマーケティングの用語を答える設問など、完全に知識不要というわけではなく、そういう用語は膨大に存在するうえ、近年のトレンドも反映されたりするため、範囲が捉えづらく対策しづらかったです。過去問を解いていて、初めて見かける用語が最も多かったのは午前・午後ともストラテジ分野だったと思います。
なお、回次によっては会計・財務諸表に関して出題されることがあります。私の場合、財務諸表が載っているなど会計っぽい問題だった場合、問2は選択しないと決めていました。 そういう職歴があるわけではないですし、会計の知識は応用情報の片手間で身につくものでもない印象なので、出るかわからないトピックを本腰入れて(試験のために)学習するのはコスパが悪すぎると思ったためです。過去問演習でも、会計の問題の回次はスキップしています。
また、トレンドという観点では、試験の実施時期の世相が反映されているなと感じたこともあります。例えば、【H26春問2】設問2には、SNSの活用により期待できる効果を答える問題がある一方、7年半後の【R3秋問2】設問3には、SNSで想定される事態・リスクについて答える問題があります。これを別の角度から見ると、古めの過去問は「流行遅れ」になってしまっており、最新の問題傾向のシミュレーションとして適さない可能性があると思います。仮に私が出題者だとすると、SNSが日常に浸透している今、あえて前者を出題しようとはしないでしょう。私の場合、上述のように会計の問題も切ったため、実質的に使える過去問の数がかなり減ってしまい、1問1問が貴重でしたので丁寧に解いたり分析するように心がけました。
本分野の過去問演習の記録を以下に掲載します。#1~#4は、重点対策に掲載されている問題です。
# | 回次・大問 | 講評 | スコア |
---|---|---|---|
1 | H30秋問2 | 高 | 66.67% |
2 | H31春問2 | - | 80.00% |
3 | H30春問2 | - | 82.35% |
4 | H27春問2 | 低 | 70.59% |
5 | R3春問2 | 中 | 77.78% |
6 | R2秋問2 | 中 | 81.25% |
7 | R1秋問2 | - | 26.32% |
8 | H28秋問2 | 高 | 58.82% |
9 | H28春問2 | 低 | 43.75% |
10 | H26春問2 | - | 50.00% |
11 | R3秋問2 | 高 | 50.00% |
平均 | 62.50% |
#6を最後にボーダーを上回ることがなくなり、解けば解くほど苦手意識がついてしまった分野です。途中まではスコアもある程度安定しており、本番で選択しようと考えていましたが、最終的には予備に回しました。
問4 システムアーキテクチャ
基本情報の午後の過去問演習では、ソフトウェア・ハードウェアの問題の正答率が高く、本番でも選択したため、応用情報でも選択肢に入れました。
他の分野と比べて計算問題の色が強く、問題文から必要な条件や数値を読み取り、それを用いて計算した結果を解答やその根拠とする設問が多いです。 その性質上、数値を答える設問が多いことになりますが、数値が誤っていたら部分点は出ないだろうと思います11。これが、おそらく部分点があるであろう文章記述式問題との大きな違いで、わずかな計算ミスや条件の見落としなどが大きな失点を引き起こすことになります。計算は四則演算ではあるものの、電卓が使えず時間も十分にないなか、例えば「24×1280×720×30÷100」や「6.6×60×60×24×7÷8」を正確かつ短時間で計算する必要がある(【R1秋問4】設問1)など、決して一筋縄ではいきません。しかも、前の設問の結果を後の設問で使うようなパターンもみられ、この場合に前の設問で間違えてしまうと、後の設問まで共倒れになります。
なお、ドットコムの掲示板を参考にさせていただいたことがありますが、システムアーキテクチャは他の分野と比べ、「●●は考慮すべきなの?」など問題文の条件が曖昧だったり、出題者の意図が読み取れなかったりなど、物議を醸していることが多かったように思います。極めつけは、数値で答えるにもかかわらず、なぜか複数の別解が存在する(【H30秋問4】設問4)ものまであり、問題の品質を疑問視してしまいます。
本分野の過去問演習の記録を以下に掲載します。#1~#6は、重点対策に掲載されている問題です。
# | 回次・大問 | 講評 | スコア |
---|---|---|---|
1 | H29春問4 | 低 | 89.47% |
2 | H28春問4 | - | 80.00% |
3 | H26春問4 | - | 63.16% |
4 | H31春問4 | 低 | 44.44% |
5 | R2秋問4 | 中 | 70.59% |
6 | H27春問4 | 低 | 42.11% |
7 | R3春問4 | 中 | 84.62% |
8 | R1秋問4 | - | 75.00% |
9 | H30秋問4 | - | 61.11% |
10 | H30春問4 | 高 | 63.16% |
11 | R3秋問4 | 中 | 53.33% |
平均 | 66.09% |
最初ビギナーズラックで高スコアだったのもありますが、全体としてスコアは下降傾向でボーダー前後をうろついており、解けば解くほど苦手意識がついてしまった分野その2です。経営戦略と同様に、途中までは本番で選択しようと考えていましたが、最終的には予備に回しました12。
問7 組込みシステム開発(★)
組込みシステム開発は、参考にさせていただいた情報サイトや体験談の多くでおすすめの分野として挙げられていたため、選択肢に入れました。
ディジタル補聴器(【R3春問7】)やドライブレコーダ(【H29秋問7】)といった装置・機器の動作について、問題文で前提として説明されており、これに対応するように問題文、処理フロー図、状態遷移図などの空欄を埋める設問がメインで、他に問題の条件を用いた計算もほぼ毎回出題されます。問題文から機器がどう動作するのか把握できれば、その部分の記述を抜き出すだけで解答できてしまう設問が多く、計算もシステムアーキテクチャほど煩雑なものはほとんどありません。身近な機器であれば親しみが持ててイメージが湧きやすく、問題文も頭に入ってきやすかったです。
また、「こんな場合はどう動作する?」「こんなエラーが発生したのはなぜ?」のような設問も頻出です。処理フロー図などをすべて鵜呑みにすることなく、このままだと機器が意図どおりに動かない、という例外を見つけ出す粗探しの能力を鍛えることが必要と感じました。
本分野の過去問演習の記録を以下に掲載します。#1~#5は、重点対策に掲載されている問題です。
# | 回次・大問 | 講評 | スコア |
---|---|---|---|
1 | R3春問7 | 中 | 76.19% |
2 | H30秋問7 | 高 | 100.00% |
3 | H28秋問7 | 高 | 87.50% |
4 | H27春問7 | - | 89.47% |
5 | H25秋問6 | - | 76.19% |
6 | R2秋問7 | 中 | 85.00% |
7 | R1秋問7 | - | 89.47% |
8 | H31春問7 | - | 70.59% |
9 | H30春問7 | - | 87.50% |
10 | H29秋問7 | 高 | 88.24% |
11 | R3秋問7 | 中 | 76.47% |
平均 | 84.24% |
スコアにばらつきはあるものの、対策した分野のなかで唯一ボーダーを割ることがなく、平均スコアも最も高かった分野でした。上記の回次で「平均点は低かった」と評されたものが1つもないことからも、解きやすい分野であることが見て取れます。正直なところ、基本情報のソフトウェア設計やデータ構造及びアルゴリズムよりも簡単とすら感じた回次も多かったです。
1つの分野で高得点が確保できるとなると、他での多少のミスをカバーできることも期待されるので、心の余裕が生まれました。本分野はいわば午後試験の心柱のような存在でした。ただし、裏を返せば、組込みシステム開発で失敗したら不合格も同然、と逆にプレッシャーにもなるため、できればもう1本の心柱を作っておきたかったと思います。
問9 プロジェクトマネジメント(★)
問9~11はマネジメント系の分野です。プロジェクトマネジメントについては基本情報の本番で選択したのですが、他に出題されたネットワークとソフトウェア設計を選びたくないという消極的な理由で選択したので、そこまで得意という意識はありませんでした。
プロジェクトのスケジュールやコストの管理などに関する問題の条件を把握し、設問に解答するものです。本分野も「国語問題」といわれますが、工数・人月の計算なども含まれるため、完全に文章問題というわけではありません。
問題文の条件は、プロジェクトを途中で見直したり、他者から指摘・要望を受けたりして、対策を検討するというパターンが典型的です。すなわち、スケジュールや工数が当初のプランからコロコロ変わっていくケースが多いため、問題文を一から順に正確に把握しておかないと解答に辿り着けない問題が多いと思います。 また、問4のシステムアーキテクチャのように、前の問題でミスをすると、後の問題も間違ってしまうというパターンもあり、失点のリスクが高い分野ともいえます。
また、記述式問題では、問題文中の表現をそのまま抜き出して解答になる設問は少なく、問題文には手がかりが書いてあるだけで、その手がかりと「プロジェクトでこんな場合はこう対処する」という知識を組み合わせて解答を作る、一ひねりした設問が多いように感じました。 ただし、ここで必要な知識というのは、マネジメントの午前問題を解くことで身につくか、あるいは常識的に考えればわかる程度の範囲に収まると思います(解答例を読んで、「そんなことわかるわけない」と驚いたことはほぼありませんでした。)。こういう問題が多いため、文章さえ読めれば解答できるわけではないことや、上述のように計算なども含まれることから、個人的には、本分野が「国語問題」と称されることには少し違和感を覚えました。
なお、各種情報サイトや体験談で、対策のためPMBOKなどを読んでおくべきというアドバイスを見かけたこともありますが、私はとくに読みませんでした。
本分野の過去問演習の記録を以下に掲載します。#1~#5は、重点対策に掲載されている問題です。
# | 回次・大問 | 講評 | スコア |
---|---|---|---|
1 | H31春問9 | 低 | 44.44% |
2 | R1秋問9 | - | 40.00% |
3 | H30秋問9 | - | 41.18% |
4 | H28秋問9 | - | 66.67% |
5 | H29秋問9 | 高 | 100.00% |
6 | R3春問9 | 中 | 66.67% |
7 | R2秋問9 | 中 | 66.67% |
8 | H30春問9 | 低 | 88.89% |
9 | H29春問9 | 低 | 64.71% |
10 | H28春問9 | 低 | 66.67% |
11 | R3秋問9 | 中 | 92.86% |
平均 | 67.16% |
点数のばらつきが激しく、ろくにわかってない/ボーダー付近/ほぼ完璧に理解 の3パターンに分かれてしまいました。とにかく、コロコロ変わったり追加されたりしていく条件を逐一把握するのが大変で、苦手意識もなかなか払拭できなかったです。しかし、経営情報戦略とシステムアーキテクチャの出来が不甲斐ないため本問を選ばざるを得なかったことや、一応スコアは上昇傾向で、途中からボーダーを割ることもなくなったので得意になっているだろうと信じたことにより、試験の直前でスタメンに入れました。
問10 サービスマネジメント(★)
前問のプロジェクトマネジメントはシステム開発や導入のフェーズ、本問のサービスマネジメントはサービス開始後のシステムの運用保守のフェーズ、のようにざっくり分けることができます。
プロジェクトマネジメントと同様に、現行サービスに対して状況の変化があったり、他者からの要望・指摘を受けたりして、対策を検討するパターンが多いです。他の分野と比べて、あまり典型的な設問のパターンを見出すことができず、問題文の情報を読んで理解できているかが問われているようです。ただし、記述式問題に関しては、プロジェクトマネジメントと比べると、問題文からそのまま抜き出して解答になるケースが多かったと思います。 そのような意味では、「国語問題」と称されることに納得できました。また、SLAの目標や可用性などに関する計算問題もありますが、出題数は少ないですし、そこまで複雑な計算も求められない場合がほとんどです。
なお、各種情報サイトや体験談で、対策のためITILなどを読んでおくべきというアドバイスを見かけたこともありますが、私はとくに読みませんでした。
本分野の過去問演習の記録を以下に掲載します。#1~#5は、重点対策に掲載されている問題です。
# | 回次・大問 | 講評 | スコア |
---|---|---|---|
1 | H28秋問10 | 低 | 43.75% |
2 | H30秋問10 | - | 53.85% |
3 | H26春問10 | 低 | 64.71% |
4 | H27秋問10 | 高 | 100.00% |
5 | H29秋問10 | 低 | 76.47% |
6 | R3春問10 | 中 | 81.25% |
7 | R2秋問10 | 中 | 86.67% |
8 | R1秋問10 | - | 80.00% |
9 | H31春問10 | 低 | 46.67% |
10 | H30春問10 | 低 | 80.00% |
11 | R3秋問10 | 中 | 82.35% |
平均 | 72.34% |
たまに事故は起こるものの、スコアが上昇して安定するまでが早かったため、マネジメント系の3分野のなかでは最も早くスタメンに入れました。講評をみるかぎり、平均点がどちらかといえば低めの分野であることが伺えますが、令和以降は「平均点が低かった」と称された回次はありませんし、また私の場合は本問との相性も良かったのだと思います。
問11 システム監査(★)
システムの運用保守やプロジェクト管理などに対する監査をトピックとした大問です。
他の分野と比べて記述式問題の割合が高い一方、問題文や図表の穴埋めの場合は、問題文から適切な語句・フレーズを抜き出してくるだけで解答となるケースが多いです。 解答用紙を見ると、問11の解答欄はすべて記述式問題のマス目になっている場合があり、最初は面食らったのですが、逆にその場合は抜き出しで答えられる問題が多いのではと予想でき、チャンスだと考えるようになりました(今回受験した【R4秋問11】も解答欄がすべてがマス目だったため、問題冊子を開く前からそのように予想できました。)。そのため、本問の記述式問題を検討する際、まずは問題文中にそのまま使えそうな語句がないかを探すようにしました。
また、監査結果の指摘事項や、監査手法の問題点などについて答える設問では、「その人ひとりだけですべてできてしまう」ことが根拠となるケースが多いと思います(【R3春問11】設問3、【R2秋問11】設問2など)。さらに、この場合の「その人」は、いわゆるヒラ社員ではなく管理職である場合が典型的です。ふつう管理職側には承認の権限がありますので、承認前の手続きまでも管理職側でできるようになっていると、先述の「その人(管理職)ひとりだけですべてできてしまう」状態が成立するためです。したがって、このタイプの設問では、まずは管理職や承認権限をもつ者が悪事を働けないか疑うようにしました。 本問も、問7の組込みシステム開発のエラー探しのように、現行の運用ルールなどに対して粗探しをする訓練が重要と感じました。
なお、各種情報サイトや体験談で、対策のためシステム監査基準などを読んでおくべきというアドバイスを見かけたこともありますが、私はとくに読みませんでした。
本分野の過去問演習の記録を以下に掲載します。#1~#5は、重点対策に掲載されている問題です。
# | 回次・大問 | 講評 | スコア |
---|---|---|---|
1 | H30秋問11 | - | 33.33% |
2 | H25春問12 | 低 | 88.89% |
3 | H26春問11 | - | 50.00% |
4 | H27春問11 | - | 71.43% |
5 | R3春問11 | 中 | 82.35% |
6 | R2秋問11 | 中 | 66.67% |
7 | R1秋問11 | - | 35.71% |
8 | H31春問11 | 高 | 100.00% |
9 | H30春問11 | 高 | 100.00% |
10 | H29秋問11 | 高 | 100.00% |
11 | R3秋問11 | 中 | 100.00% |
平均 | 75.31% |
最後4回分ではスコア100%をとれている一方、悪い回次ではボーダーを大きく下回り、対策した7分野のなかではスコアのばらつきが最も大きくなりました。6回目くらいまでは本番で選ぶつもりはなかったのですが、経営情報戦略やシステムアーキテクチャのスコアがどんどん下がっていき、逆に本問のスコアが上がって実力がついたのだろうと判断したため、本問をスタメンに入れました。
問3 プログラミング(対策せず)
これ以降は、応用情報の午後試験の対策はせず、過去問も解かなかった分野です。
基本情報において、データ構造及びアルゴリズムやソフトウェア開発(表計算を選択しました)は難関といわれる分野で、しかも必須で解かなければならず、過去問演習ではかなり苦戦しました。
応用情報の問3の講評では、「平均点は高かった」と評されている回次が多いのですが、問3を選択するのはプログラミングに習熟している受験者が多く、問題の難易度に比して平均点が上がっているのではないかと推測しています。また、各種情報サイトや体験談などには、基本情報をスキップしていきなり応用情報を受験してもよいという意見が見られ、それが可能な理由の1つに、基本情報のようにプログラミングやアルゴリズムが必須問題でなく回避できる点が挙げられていました。これらを踏まえ、日ごろからプログラミングしているわけでも、適性があるわけでもない自分にとって、問3を他より優先する理由がないと思い、選択肢から外しました。
問5 ネットワーク(対策せず)
基本情報の午後の過去問演習では、他の分野と比べてネットワークの正答率が低く、明確に苦手意識をもっていた分野だったため、応用情報でも当初から選択肢に入れませんでした13。
基本情報の問題を解いたところ、本文からもネットワーク構成図からも多くの情報を正確に把握せねばならないため、細かい部分の見落としが大きな失点につながりました。知識面でも通信プロトコルや各種装置の機能などさまざまな事項の暗記が必要で、IPアドレスや通信時間の計算もあるなど、かなり手広く対策をしておかないと満足に点数が取れない分野というイメージです。基本情報でも応用情報でも、実務経験のほぼない素人が付け焼き刃の知識で挑むのは危険だと考えました。
問6 データベース(対策せず)
基本情報の午後の過去問演習において、データベースは決して正答率が低かったわけではないのですが、問題の条件を理解して解答に辿り着くまでに時間がかかり、制限時間ギリギリで解き切るケースが多かったです。私の頭のワーキングメモリの性能が低いため、暗算などが苦手なのですが、基本情報のデータベースでも、問題に出てくる各テーブルやそれらの関係などを把握するために、それらを自分で改めて紙に書かねば十分理解できず、あれこれ書いているうちに時間が過ぎていってしまいました。また、仕事でSQL文を書く機会もまれにあるのですが、SELECT以外はまったく使わず、高度なクエリを組み立てるわけでもありません。
データベースも、実務経験が十分にないかぎり選択すべき分野ではないと考え、選択肢から外しました。
問8 情報システム開発(対策せず)
情報システム開発は、参考にさせていただいた情報サイトや体験談において、おすすめしない分野として挙げられていた場合が多かった印象で、当初から選択肢に入れませんでした。
応用情報の過去問をざっと眺めてみた感じ、クラス図やアクティビティ図などのUML図が目に入りますが、とくにそれらに馴染みはありませんし、午前問題のクラス図の多重度の設問を間違うことも多かったです。また、ソフトウェアの設計技法やオブジェクト指向などについては十分に理解できているわけではなく、あくまで付け焼き刃の知識しかありません。この分野も選ぶ理由はないと考えました。
本番での選択基準
以上を踏まえ、本番での各分野の選択基準は次のようにしました。上にある大問のほうが優先順位が高いです。
- 問1 情報セキュリティ;必須で解く
- 問7 組込みシステム開発;原則解く
- 問10 サービスマネジメント;原則解く
- 問11 システム監査;原則解く
- 問9 プロジェクトマネジメント;原則解くが、面倒なスケジュール・コスト管理の問題なら選ばないかも
- 問2 経営情報戦略;上4つのいずれかが難しければ解くが、会計の問題なら選ばない
- 問4 システムアーキテクチャ;上5つのいずれかが本当にどうしようもない場合の最終手段
- 上記以外は対策していないので選ばない
本番では、問2の経営情報戦略の表1から会計の問題と判断したこと、問4のコンテナ型仮想化についてほとんど馴染みがなかったことから、問2,4はすぐに選択肢から外し、上から並んでいる5つを解くこととしました。概ね想定通りだったといえます。
過去問演習(午後)
午前の項でも触れましたが、午前試験の過去問演習を数回解いたら8割以上の正答率だったため、午後試験の過去問も解き進めました。午後試験の過去問演習には、まずは「応用情報技術者 午後問題の重点対策」に掲載される回次の過去問を解いたのち、応用情報技術者試験ドットコムを利用して他の回次の過去問を解きました。
ここでは、午後試験の演習をどう進めたかを記します。
演習の方針(午後)
大問1つずつ解く
過去問は、1つの回次を本番のように150分かけて5問選択して解くのではなく、大問を1つずつ時間を計って解き、採点するようにしました。 本番を想定して演習する場合、スコアを最大化することを目指すのであれば、例えば大問を1つ捨てて残り4つになるべく時間を割くようなことも可能ですが、それでは各問を演習したことになりません。 そのように取り組んだのちに採点しても、捨てた問題はろくに解いていない状態で解答例を見ることになるので、貴重な演習の機会を1問分失ってしまいます。演習の段階では、まずは各大問に太刀打ちできるかを把握することのほうが重要で、そのためには1問ずつ取り組む必要があり、本番形式の演習は試験日の直前に必要に応じて実施すれば十分と考えました。結局、本番形式で150分かけて5問解く演習は一度もしていません。
各大問をどういう順番で解いたかという点ですが、分野ごとの順番は上述のとおり、重点対策に載っている回次→R3春から過去の回次に遡る→R3秋・R4春(直近2回分)のようにしました。そのうえで、解く分野や、午前・午後の偏りがなるべく発生しないよう、午前1回分→午後問1→午後問2→午後問4→午後問7→午後問9→午後問10→午後問11→最初に戻る… のようなローテーションで解いていきました。大問を7つも対策するとなると、バランスよく演習を進め、それぞれの分野の感覚を忘れないようにする工夫が必要と思います。なお、ある程度演習が進んでからは、情報セキュリティ分野を手厚く対策するべく、先述の順で最初に戻る前に、午後問1をもう1つ解くようにしました。そのため、問1は他の大問と比べ、4回分多く解いています。
1問あたり25分が目標
上述のように過去問を大問1つずつ演習するにあたり、解答の目標時間は25分としました。 午後試験の制限時間は150分で、そのなかで1+4=5問を選択して解くことになるので、単純計算では1問あたり30分です。ただし、試験中には解答用紙に受験番号と生年月日を記入する必要があります14し、どの大問を選択すべきかの見極めに費やす時間もかかることを考慮すると、30分ぴったりではなく、少し余裕をもって25分で解き切るようにするのが理想的と考えました。また、1問あたり25分の場合、単純計算では150÷25=6問を解く時間があることになり、ある大問を少し解いてみたけど難しかったので別の大問にチェンジ、ということも可能です。なお、7問分を解くようにするには、1問あたり150÷7=21.4分で解く必要がありますが、実際に解いてみると少し厳しかったですし、それなら正答率を上げる方に注力したほうがいいだろうと判断しました。そうすると、自分が制限時間の150分でちゃんと取り組めるのは、現実的には6問まで、運がよくても7問までが限界といえるため、対策した分野が7つだったことは理にかなっていた(8つ以上対策しても仕方なかった)と思います。
また、例えばセキュリティは20分、システムアーキテクチャは40分のように、分野によって異なる目標時間を設定することはしませんでした。 たしかに、得意分野はサッと終わらせ、苦手分野に時間をかけるようなことも可能ではありますが、試験前からそれを前提としてスケジュールを組んで対策するのは危険だと考えました。同じ分野であっても試験の回次によって難易度に差がありますので、得意分野が例年より難化していたらそこで時間を使ってしまい、苦手分野も得意分野も共倒れという大誤算になりかねません。 試験本番において、ある大問がすぐに解き終わった場合に状況に応じてそうすればよく、演習の段階ではあくまで各大問を均等な目標時間内で解き切ることを目指そうと思いました。
印刷して解く・解答用紙も作る
午前についての項でも述べたように、午前試験の過去問演習では試験問題を紙に印刷しての演習はしなかった一方、午後試験の過去問は、大問を1つずつ紙に印刷して解くようにしました。 文章を読んで解答するという問題の性質上、問題文に下線などの書き込みをしながら解く練習をするためです。さらには、問題用紙が冊子であることも踏まえ、異なる紙の問題ページを同時に見ないようにして取り組みました。 なお、本番では、問題用紙は開くとB4サイズですが、自宅のプリンターのトレーにはA4用紙しかセットできず、両面印刷も手間がかかるため、A4用紙に2 in 1で片面印刷としました。重点対策に載っている問題であっても、本に直接書き込むことはせず、別に印刷したものを使用しました。
また、問題とは別のA4用紙に簡易的な解答欄を作り、解答も紙に書き込むようにしました15。 多くの情報サイトや体験談などでもアドバイスされているように、記述式問題で文字を書いて解答する練習は必要と思います。問題用紙の表紙の注意事項5.(5)に、「解答は,丁寧な字ではっきりと書いてください。読みにくい場合は,減点の対象になります」と明記されています。 そのため、文字を手書きすることに抵抗をなくし、判読可能な程度の字を書きつつ制限時間内に収める訓練として、紙に書くようにしました16。 さらに、記述式問題の字数調整は、紙に書かないと練習にならないと思いました。 PCのように、文字を即時に書いては消したり、問題文をコピペしたりということは、本番ではできません。いったん解答欄に書いてしまうと、字数が収まらなかった場合などに、消しゴムで消してから書き直すにはそれなりの時間がかかります。なるべく書き直さず済むよう、細かく字数を考えながら注意深く解答欄を埋めていくことになりますが、これはPCで文字をタイプするのとはまったく勝手が違うと思います。
結果として、かなりの枚数のA4用紙やプリンターのインクを消費しました17が、必要な投資だと割り切りました。また、解き終えた問題・解答用紙は基本的に捨てずにとっておいたので、だんだん紙が増えてきて「自分がんばってるな」とやる気の維持につながりました。
自己採点の方法
午後試験の過去問演習をするうえで最も悩ましい点は、記述式問題の自己採点でした。IPAは、午後試験の解答例を公表しているものの、平均点、採点基準、設問ごとの配点などは公表していません(これも調べても出てきませんでした、、)。したがって、過去問を解いたとしても、どのくらい得点できたのかは自ら判断するしかなく、この点も午後試験の対策を困難にしている原因の1つでしょう。
解答速報によっては予想配点が掲載されていますし、各種情報サイトや体験談などでもさまざまな採点方法が提案されているようですので、ここでは私が過去問演習で実際に行った採点方法を紹介させていただきます。
スコアのつけ方
まずは考え方です。基本情報ではすべての設問が一律に、選択肢のなかから当てはまるものを解答する選択式問題になっていますが、応用情報ではそうではなく、選択式問題と記述式問題が混在しています。そして、おそらくほとんどの受験者にとって、ア~エの記号の1つを答えれば点がもらえるような選択式問題よりも、選択肢がなく何十字も解答欄を埋めないと点がもらえない記述式問題のほうが、得点のためにかかる手間・コストは大きいでしょう。すなわち、設問ごとに解答にかかるコストは異なるので、それに応じた重みで配点が設定されていると考えるのが自然かと思います18。
また、何十字かの文章を組み立てて解答する記述式問題については、文章の長さを考慮すれば、解答に必要なキーワードやポイントが複数含まれていると考えられます。さらに、文章の表現は受験者によってバラバラで、模範解答と完全に一致することは稀でしょうから、キーワードがすべて含まれており、かつニュアンスが模範解答とそろっていることが、試験官が採点するときに正答と判断されるための条件だろうと予想されます。そうすると、キーワードが入っているのにニュアンスが違う、あるいは方向性は悪くないのにキーワードが抜けている、のような惜しい解答も多く発生するはずです。そして、受験者の実力や理解度をなるべく忠実に点数に反映することを考慮しているのであれば、模範解答との“近さ”に応じて、惜しい解答にも一定の部分点を与えているのではないかと思いました。
以上を踏まえ、
- 設問の解答コストによって配点が異なる・解答コストが大きい設問ほど配点も大きい
- 文章記述式問題には部分点が与えられる
という2点を前提としたうえで、自己採点においては、以下に説明するスコアをつけることにより、各大問の出来や理解の度合いを判断することとしました。
スコアをつける際は、以下のやり方にしたがい、各設問の配点を1~3点のいずれかに振り分けました。
1点の問題
選択肢や解答の候補が明示的に与えられており、そのいずれかを解答する形式の問題を1点としました。以下に一例を示します。
なお、以下の説明で問題文や設問文を引用した部分のうち、太字や下線による強調やマーク、カッコ内の点数やコメントなどは、とくに断りがないかぎり筆者によるものです(言うまでもなく、カッコ内の点数は公式の配点ではありません。)。
【R3秋問1】設問1:
本文中のa~cに入れる適切な字句を解答群の中から選び、記号で答えよ。(1点×3)
【R3春問2】設問3(4):
本文中の下線②について、該当する機能を表2中の項番で答えよ。(1点)
【R1秋問1】設問1(3):
本文中のaに入れる適切な字句を、図1中の構成機器の名称で答えよ。 (1点)
【H29春問1】設問5:
本文中の下線④の対応体制について、適切なものを解答群の中から二つ選び、記号で答えよ。(1点×2)
このような問題を採点する場合、間違っていれば部分点はつけませんでした。ただし、最後に示した【H29春問1】設問5のような、「二つ選び、記号で答えよ」といった形式であれば、2つとも合っていれば2点、いずれか片方のみ合っていれば1点、いずれも間違いなら0点としました。
2点の問題
選択肢や解答の候補が明示的に与えられていないが正解がほぼ一意に定められるような問題、文字数が限られていたり指定がなかったりする記述式問題などを2点としました。ちょっと基準が曖昧だと思いますが、ざっくり言うと、記述式ではあるが部分点の出なさそうな問題です。また、選択肢をすべて正確に答える必要のある問題も2点としました。以下に一例を示します。
【R4春問1】設問2:
本文及び表1、2中のbに入れる適切な字句をアルファベット3字で答えよ。(2点・答は「WAF」)
【H28春問4】設問2(1):
本文中のaに入れる適切な数値を答えよ。答えは、小数第2位を四捨五入して小数第1位まで求めよ。(2点)
【H30秋問7】設問1:
〔制御部とサーバ間の通信〕について、本文中のa、bに入れる適切な字句を、本文中の字句を用いて答えよ。(2点×2)
【R2秋問11】設問5:
本文中のdに入れる適切な字句は何か。本文中から選び、10字以内で答えよ。(2点)
【R4春問1】設問3:
本文中の下線①で管理するべき内容を解答群の中から全て選び、記号で答えよ。(2点・答は「イウ」)
このような問題を採点する場合も、原則的に間違っていれば部分点はつけませんでした。最後に記した【R4春問1】設問3は、上で1点×2とした【H29春問1】設問5とは異なり、「全て選び、記号で答えよ」という形式であるため、正解の組合せで答えられた場合のみ2点、そうでない場合はすべて0点としました。ただし、誤字脱字があれば、その数ごとに1点減点としました。
3点の問題
一定以上の字数で解答するために、ある程度の作文が必要になる文章記述式問題を3点としました。2点の問題との対比でいうと、中途半端な解答であっても部分点が出そうな問題です。字数について具体的に何文字以上と決めるのは難しく、どうせ自己採点に過ぎませんので、このへんはフィーリングで長めなら3点としました(だいたい20字くらいを目安にしていたように思います。)。また、以下の例の最後に記すような、形式が特殊で解答に手間のかかりそうな問題も3点としました。
【R3秋問1】設問3(2):
本文中の下線②について、具体的な対策内容を、25字以内で述べよ。(3点)
【R3秋問9】設問2(1):
本文中の下線②の狙いは何か。顧客の特性を考慮し、30字以内で述べよ。(3点)
【H27秋問10】設問2(2):
次の表3に、全ての仮想サーバが稼働可能となるように、VM11、12を物理サーバに配置する組合せ案を漏れなく整理したい。物理サーバ名を記入し、表を完成させよ。(後略)(3点)
3点の文章記述式問題を採点する際は、解答例との近さに応じた部分点を与えました。統一的な基準を示すのは困難ですが、上述したように、キーワードが入っているのにニュアンスが違う、あるいは方向性は悪くないのにキーワードが抜けているような場合、その程度に応じて減点することとしました。また、誤字脱字があれば、その数ごとに1点減点としました。以下に一例を示します。
【R3春問2】設問2(1):
表1中のcに入れるC社の強みを、その理由を含めて40字以内で述べよ。(3点)
[IPAの解答例]顧客の工場の近くに自社の工場があるので、配送時間が短くて済む
- 答案1:顧客の工場の近くに自社の工場があり、競合他社より配送コストがかからない
→3点(配送時間が短いなら、コストも少ない。表現の幅の範囲内。) - 答案2:顧客の工場の近くに自社の工場があるので、納品しやすい
→2点(「配送時間が短い」という点に踏み込んでいない。) - 答案3:顧客と自社の工場の位置関係により、配送時間が短くて済む
→2点(「顧客の工場の近くに自社の工場」という点に踏み込んでいない。) - 答案4:自社の工場の位置が競合他社よりも物流において有利である
→1点(具体的なことを述べていないが、工場の位置には言及している。) - 答案5:C社の工場が国内外に分布するため、配送時間が短くて済む
→1点(前半の理由はダメだが、後半の強みの部分は合っている。) - 答案6:競合他社より戦略的に有利な位置に自社の工場があるから
→0点(末尾が「~から」は不適切。具体的な説明もない。) - 答案7:顧客の工場の近くに自社の工場が位置しており、競合他社よりも配送時間が短くて済む強み
→0点(内容は合っているが、字数オーバー。)
繰り返しになりますが、しょせんは自己採点ですし、あくまで自分の出来を大まかに把握する目的でつけたスコアですので、必要以上に細かくこだわりはしませんでした。
そもそも、個人的にはIPAが公表する解答例には、突っ込み始めると色々と言いたくなるものが多かったです。例えば、上記の解答例には 「配送時間が短くて済む」 とありますが、「短い」といっているにもかかわらず、何と比べて短いのか?という比較対象が明示されておらず、例えば「競合他社よりも」なのか、「従来よりも」なのか、「他の業種よりも」なのか、不明瞭です。「競合他社よりも」 というキーワードがどこかに入っていなければ不完全な解答のように思います。今回受験した令和4年度秋期の解答例にも、疑問符をつけたくなるようなものがありました。
以下は余談であり、かつ個人的な推測に過ぎませんが、IPAによる文章記述式問題の採点では、ある程度の表現やニュアンスの幅を許容しつつ正答か否かを判断しているのではないかと考えています。 解答例とガチガチに合っていなければ0点、のような採点をしていると仮定すると、以下のように不自然な点がいくつかあります。
その大きな理由の1つが、IPAが公表しているのは「正解」や「模範解答」などではなく「解答例」 であることです。自己採点では解答例と一致しているかを厳しく判断すべきとのアドバイスも見かけましたが、文字どおり「例」なのであれば、これとピタッとそろっていなければ得点できないわけではなく、あくまで解答の目安やガイドラインとして捉える程度でもよさそうだと考えました。
また、午前試験の解答例は試験の直後に公表される一方、午後試験の解答例は数か月後の合格発表の直前まで公表されません。 試験の正解を決めないまま作問することはまずありえませんし、試験を実施する時点で模範解答は用意しているはずです。しかも、午前はすぐに公表するにもかかわらず、午後は公表されるまでにかなりのラグがあるとなれば、IPAが意図的に午後だけ遅らせていると考えるのが自然です。そして、それはおそらく、採点時に受験者のさまざまな答案を検討するなかで、模範解答を少しずつ修正(調整)しながら採点を進めているためではないかと思います。例えば、当初の模範解答と比較して、多くの受験者の答案が似たようなズレ方をしている場合、「実は問題文や設問に不明瞭な箇所があったのでは」などと見直され、その結果、「模範解答のこのキーワードは不要」のような修正が入ることもあるのではないでしょうか。【H30春問1】や【H30秋問4】などで、趣旨の異なる別解が複数認められていることも、模範解答が修正されていることを裏付けているように思われます。最終的に複数の別解の公表にまで至るケースは稀であるとしても、受験者に見えない水面下では模範解答の調整が数多く行われていると推測できます。
さらに、文章記述式問題の解答例の字数と、指定された字数との間に差があることが多い点も気になります。すべてがそうではないにしろ、解答例が指定字数から10文字以上少ないこともザラにあります。そもそも作問側にしてみれば、受験者を惑わすような意図でもないかぎり、あえて字数が余るように字数指定をする必要はないはずです。逆に受験者側としても、正解が一意に決まるような記述問題を除き、字数指定があれば、なるべく字数を余さずに答えたくなりますし、その字数ぶんだけのキーワードを解答に含めねばならないと考えたくもなります。にもかかわらず、字数が余るような解答例を公表しているとなれば、これもあえてそうしているのだと思われます19。その理由としては、例えば、多少冗長で無駄に字数の増えてしまった答案でも、ちゃんと解答欄に収まるように親切に設定しているのではと推測できますが、これはまさに表現の幅を認めていることにほかなりません。また、仮にも応用情報は国家試験ですし、いまの世の中、多くの受験者を抱える資格試験で誤った解答例を出そうものなら、下手すると大炎上し、試験や資格、ひいては実施団体の信頼度が失墜する事態にもなりかねません。それを防ぐため、上述したように受験者のさまざまな答案を検討するなかで、もともと想定していた模範解答から外れず、かつ正答と判断される答案をなるべく多く包含できる(いわば、“最大公約数”となる)ような形で解答例を作成しており、その結果として解答例が指定字数よりも短くなっているのでは、とも思います20。
大きく脇道に逸れてしまいましたが、大問内の各設問に1~3点の配点を割り当て、それに応じて自己採点をしたところで、合計得点÷合計配点を百分率(%)で表した値をスコアとしました。 上述した午後試験の各大問のスコアは、このような手順で算出したものです。この方法だと、ほとんどの大問はぴったり20点満点にならないのですが、スコア×20 で大まかにその大問の点数を推定することもできます。
この方法の良かった点は、この問題とこの問題で得点できればだいたいボーダーラインかな、などと目安を定めてから過去問を解き始められたことです。 もちろん、これはあくまで我流の方法に過ぎず、実際の配点や採点基準と合っているとはまったく考えていません。ですが、一応の目安を設けておくことにより、文章記述式問題はなにか書いて部分点を狙う、配点の低そうな問題に固執して時間をかけない、というような時間の使い方のシミュレーションもできたと思います。
長文読解問題について
午後試験の長文読解問題は、その性質上、一定の解法を覚えておいて当てはめる、ということはできません。裏を返すと、受験者の数だけ解き方が無数に存在することでもあります。そのためか、各種情報サイトや体験談などを探すと、午後試験の解き方について、まさに千差万別のアドバイスを見かけることができます。以下で述べるコメントは、それらのうちの1つと捉えていただけますと幸いです。
「問題文に書いてあることはすべて重要」?
たしかに、問題文は既存の文章を引用しているわけではなく、作問者が問題文そのものも作成しているようですので、設問と関係ない情報が問題文に含まれていることはないはずと考えることに一応納得はできます。しかし、解答の直接の根拠となるのは、ふつう問題文の一部分だけであり、設問数や解答欄の大きさを考慮すれば、問題文のすべての文や単語を抜き出して記入するようなことはまずありえません。この点において、解答の直接の根拠とならない箇所については、少なくとも根拠箇所よりも相対的に重要度は低いといえます。
具体例を挙げると、今回受験した令和4年度秋期問1の問題文の第1文には、「P社は、従業員数400名のIT関連製品の卸売会社であり、300社の販売代理店をもっている。」とありますが、この文の情報はどの設問にも(少なくとも直接は)関与しておらず、解答するうえで必要なかったと考えています。問1の冒頭からいきなり設問に無関係な文が出てくるわけで、これに続く文も設問に関係するかどうかは簡単にはわからないはずです21。さらには、上述のように、問1の情報セキュリティなど、問題文を読まなくても知識があれば答えられる設問が多い場合においては、むしろ問題文を読んで時間を使ってしまうことのデメリットの方が大きいでしょう。
試験においては、問題文を完読したり、ましてや問題文に納得・共感したりしても1点にもならず、あくまで解答欄を埋めることが得点するための条件です。そうであるならば、ただでさえ時間に余裕がない試験なのですから、解答の根拠箇所をなるべく早く見つけるように読むことが、とりうる最適な戦略と考えました。
「問題文の重要な箇所に線を引く」?
上述したように、問題文のなかの重要な箇所、言い換えれば解答の根拠となる箇所をすぐに発見できるような読み方が理想的といえます。そして、読解したのちに設問に解答するため、解答に使用する根拠箇所に下線を引くなどマーキングしておくことは、合理的な戦略ではあると思います。
とはいうものの、それが簡単にできるなら苦労しないのです。もっと突っ込んで言うと、問題文の情報が重要なのか・解答に関係するかどうかを試験中に判断できないかぎり、よい戦略であっても絵に描いた餅でしかないと考えました。 そこは問題文や設問によって臨機応変にやるんだよと片付けてしまってもいいのですが、それは裏を返すと、場当たり的にやるしかない、偶然に祈るしかないと半ば諦めているようなものです。
一般的な長文読解問題の解き方にしたがい、読解のなかで問題文中に下線を引くなどのマーキングそのものを否定するつもりはありません。しかし、どういう箇所にマークを書くのか、という基準がブレていると、見当違いな箇所ばかりマーキングしたり、あるいは問題文が無駄にマークだらけになったりして、恩恵が得られないと思います。
また、「問題文中の数字の情報は重要なのでチェック」という趣旨のアドバイスも見かけたことがありますが、上に挙げた【R4秋問1】の第1文にも、従業員数や店舗数などの数字が書いてあるにもかかわらず、解答には関係ありません。それどころか、システムアーキテクチャなど計算問題がメインの分野では、問題文に数字の情報が大量に書いてあっても、実際に解答で使うのはごく一部のみ、というケースがよくありました(例えば【H30秋問4】などが顕著です。)。 数字だから、という理由だけで一律にマーキングしてしまうと、むしろ問題文が汚れて解きづらくなるのではと思います。
教材の解説は「後出しジャンケン」で作られている
過去問を解き終えてから、IPAの解答例や各種教材の解説を参照しながら自己採点し、なぜこの解説のとおりに解けなかったのだろうと落ち込んだことは数えきれないほどありました。とくに、よく言われるように、解答例が「これでよかったの?」と言いたくなるくらいにシンプルなケースが多々あり、こんな単純なものすら答えられないと自己嫌悪に陥ったことも少なくありません。
一方、過去問演習を進めるうちに、なんでもかんでも落ち込んだり反省したりすればよいわけではないとも考えるようになりました。というのも、各種教材の解説はおそらく、IPAの公表する解答例を把握したうえで、その解答例にほぼ最短でたどり着くように辻褄を合わせて作成されている「後出しジャンケン」 だと考えたためです。別の例え方をすると、推理小説や刑事ドラマなどの内容について、すでに犯人を知っている友人が、あたかも自分で推理しているかのように口を挟んでくるようなものです。その友人と一緒に刑事ドラマを観ながら、「俺はこの場面が犯人につながる伏線だと思う」と言われても、「犯人知ってるんだったら、ここが伏線だとわかるのは当然だろう」 と突っ込みたくなるはずです。各種教材の過去問の解説についても同じことがいえます。
過去問を自己採点したのちに、間違えた問題を振り返るうえでもっとも重視したのは、たんにドットコムや重点対策の解説を読んで理解するだけでは終わらず、「解答例を知らない状態で、問題文・設問と持っている知識だけで、この解答例にたどり着くことができたのか」という点を徹底して分析することです22。推理小説でいうと、「犯人を知らない状態で読み、自力で伏線に気づいて、犯人を当てることができたのか」と例えられるでしょう。そうすることで、ただ自己嫌悪に陥るのではなく、その後の演習に向けてより具体的な対策を立てることができました。
なお、推理小説でいうと、「実は犯人はこれまでの場面に登場していなかった宇宙人だった」のような、意表を突かれた設問も少なからずありました23。例えば、【H30春問10】設問3(2)では、問題文の最後の2文で初めて出てきた「障害対策訓練」について答える問題で、解答例もそれまでの問題文の流れとあまり関係がなかったため、解説を読んでもいまいち腑に落ちませんでした。このような設問について、たとえ教材の解説が筋の通ったものであったとしても、その解説どおりのことを試験中に自力で実践できるとは限らないと思います。できなくて落ち込むよりも、スパッと悪問だと切り捨てて24 、むしろ自分の知識と正確な読解によって得点できる問題の対策に少しでもリソースを割く方が建設的だと考えました。 しかも、こういう設問は講評では「正答率が低かった」と評されているか、あるいは評価すら記載されていないことが多かったです25。
そのうえで、解答までどう辿り着くか
問題文を読んで解答の根拠となる箇所を探すことが、言うほど簡単ではないのではないか、教材の解説どおりにはいかないのではないか、という点は以上で問題提起したとおりです。一方で、いくら長文読解問題とはいえ、行き当たりばったりになることなく、なるべく一定の方法で解いてスコアを安定させられないだろうかとも思いました。
そこで、私が午後問題に取り組む際は、まずは可能なかぎり以下のような方針に基づいて解答することとしました。
- 問題文よりも前に設問・下線部に目を通し、特徴的なキーワードをチェックする
- その後問題文を読み進め、チェックしたキーワードを探す
これらをどのように実践したのか、以下でいくつかの過去問を取り上げて解説します。
ただし、言うまでもなく、この方法をとればあらゆる問題に正解できるわけではありません(記事冒頭の「おことわり」もお読みください。)。上述した過去問のスコアがそうではないことを物語っていますし、こうすれば解ける問題もあるかもという程度です。さらに、以下の解説も、あくまでIPAの解答例を知ったうえでの「後出しジャンケン」にならざるを得ないことはご承知おきください。
なお、以下の説明で問題文や設問文を引用した部分のうち、太字による強調や、設問の指定箇所以外の下線は、とくに断りがないかぎり筆者が付したものです。
例1:【R3秋問9】
設問2(1):本文中の下線②の狙いは何か。顧客の特性を考慮し,30字以内で述べよ。
設問を見ると、「顧客」というキーワードがみつかりました。このようなキーワードを丸や四角で囲む26、下線を引くなどしておきます。本設問に解答するにあたっては、問題文のなかで「顧客」というキーワードを含む箇所を探せばよいのではないかと目処が立ちます。
「顧客」を含む箇所ではなく、「顧客」を含まない箇所のほうが解答の根拠となる可能性はおそらく低いはずです。なぜなら、後者を根拠にしようとしても、「顧客の特性を考慮し」という設問の要件を満たさないためです(ただし、後述する例のように、キーワードとまったく同じではないが関連する語句を含む箇所が根拠になることはあり得ます。)。
この点に注意し、改めて問題文を読みながら「顧客」というキーワードを探すと、以下に示す4か所にしか記載されていません。
[問題文から「顧客」を含む文のみ抜粋]
・そこで,P社は,ビジネスモデルを,家電量販店を通じた間接販売から,顧客となる消費者へ直接販売するインターネット販売へ転換する戦略を打ち出した。
・インターネット販売は競合相手が多く,インターネット販売システムへの要求が満たされないと顧客は簡単に競合相手に移ってしまうので,P社として,顧客からの要求に対して,競合相手と比べてより迅速に対応できるようにする。
・試行開発を経て,本格的なスクラム開発の人材を確保し,顧客からの要求に迅速に対応できるようにする。
そこで、上記箇所のいずれかを根拠として解答を組み立てることを方針とします。
4か所のうち、2か所目を含む下線部が「顧客の特性」のことだとわかります。本設問では「狙い」を答える必要がありますので、その直後にある3か所目を含む下線部を指定字数に合わせてアレンジすれば、ほぼ解答例どおりになります。
問題文を通読してから各設問に解答する場合、上記のように問題文にマークや下線などを付しておけば、すぐに見つけられます。
同じ大問からもう1つ設問を取り上げます。
設問1(2):本文中の下線①の体制とした狙いは何か。本プロジェクトの方針に沿った人材育成の観点から,40字以内で述べよ。
設問から、「人材育成」というキーワードがみつかりました。
そこで、上記と同様に、問題文を読みながら「人材」や「育成」が含まれる箇所を探すと、ご丁寧にも「(2)本プロジェクトの方針」の項に記載されています27。「人材育成の観点から」答えよと問われているのですから、「人材」や「育成」について言及している箇所を解答の根拠とするのが自然なアプローチだと思います。
[問題文から「人材」または「育成」を含む文のみ抜粋]
・P社にはスクラムの経験者が少ない。そこで試行開発の段階を設けて,スクラム開発の理解を深め,スクラムの開発要員を育成し,プロセスを確立しながら本プロジェクトを遂行する。
・試行開発を経て,本格的なスクラム開発の人材を確保し,顧客からの要求に迅速に対応できるようにする。
上記下線部をつないで文章にすれば、だいたい35字前後になって解答欄を埋めることができます。
例2:【H30春問2】
設問3(1):本文中の下線①について,品ぞろえを充実させる方法を25字以内で述べよ。
[問題文の下線①]①顧客がブランド物の酒類を購入する際に,範囲の経済性の効果をもたらすように,品ぞろえを充実させる。
次は下線部も含めて検討してみます。下線①から「酒類」というキーワードがみつかりましたので、問題文のうち「酒類」を含むような箇所を探すと、以下の2か所だけです。
[問題文から「酒類」を含む文のみ抜粋]
・通勤者には,価格の高さにもかかわらず,海外から仕入れたブランド物の酒類などの高付加価値食品の人気が高まっている。
・ブランド物の酒類に合う高級なおつまみ類にこだわる顧客が増えている。
このうち1か所目は「ブランド物の酒類」そのものの話をしているので、ここを答えてもさすがに下線①そのまますぎます。また、下線①の「範囲の経済性」の意味がよくわからないとしても、「経済性」という単語から、要は顧客にもっと買わせたいのだろうという雰囲気は感じられます。したがって、2か所目を根拠とし、「品ぞろえを充実させる」というニュアンスの文章を構成すれば、「高級なおつまみ類」を増やす、というように答えることができます28。
以上の例1,2で示したように、ざっくりいえば、「設問を先に読んでキーワードを問題文から探せ」という手法でまず各問を検討するようにしました。雲をつかむような長文読解問題ですが、これくらい簡潔かつ具体的な手法まで落とし込めば、現実的に実践できると思われます。
ただし、当然ながら、設問のキーワードがそっくりそのまま書いてあり根拠が見つかるような設問ばかりではなく、以下の例3でそれを示します。
例3:【H31春問2】
設問4(1):本文中の下線③について,提供できる新たな感情的価値を,25字以内で述ベよ。
[問題文の下線③]③所有企業の従業員に対しては,値段,サービスなどの機能的価値とは異なる,新たな感情的価値を提供できる。
設問と下線③から「感情的価値」という怪しいキーワードがみつかりました。
残念ながら、問題文には「感情的価値」や「感情」といったキーワードは直接出てきません。とはいえ、なんらかの「感情」が書いてある箇所が解答の根拠になりそうだなと推測できます。そこで「感情」に関連する語句を探すと、問題文のなかには以下の1か所しかありません。
[問題文から抜粋]
・所有企業の従業員は,現行の保養所の料金のまま一般宿泊客よりも優先的に予約できる。さらに,他社の魅力的な保養所も他社の保養所の料金で利用でき,楽しみが増える。
上記下線部の「楽しみ」がまさに「感情」です。下線③によれば「値段,サービスなどの機能的価値とは異なる」ものを答える必要があるので、下線部のうち値段のことを述べている「他社の保養所の料金で利用でき」という部分を除けば、ほぼ解答例どおりになります。
このように、設問・下線部のキーワードが問題文に直接出てこない場合には、多少融通を利かせ、キーワードの範囲を広げて語句を探す必要が生じます。今回は「感情」というキーワードを具体化した「楽しみ」が根拠箇所に含まれていました。これを踏まえ、上述した2つの方針に次のものを追加できます。
- キーワードが直接出てこなくても、関連語、抽象・具体、言い換えまで範囲を広げる
例4:【R1秋問10】
設問2(1):本文中の下線③について,S主任に期待している役割は何か。25字以内で述べよ。
[問題文の下線③]③S主任をサービス部から運用部に異動させた。
これまでの方針に従うと、本問は「S主任」がキーワードになりそうなものです。しかし、問題文をチラっと見ると「S主任」がたくさん出てくるので、「S主任」だけを手がかりに根拠を探すのは筋が悪そうです。
そこで、問題文を読解する際、たんにキーワードがないかを探すだけではなく、下線部の前後についても注目してみます。
[問題文のうち、問題用紙p.51の13-18行目の文から。ただし、赤いマークや下線は筆者によります。]
まず、下線③を含む1文全体をみるかぎり、たぶん「運用部」になにかあったから異動なんだろうなと察しがつきますので、「運用部」をキーワードとして話の流れを検討することにします。さらに、この文の構造に注目すると、「このような状況を鑑みて」、S主任を運用部に異動させたとのことです。よって、この文の前には、運用部がどういう状況であったかが書いてあり、それこそが異動の原因だろうと推測できます。
[問題文のうち、問題用紙p.51の13-18行目の文から。ただし、赤いマークや下線は筆者によります。]
前の1文には、チームリーダたちが「改善活動の実施に踏み切れない」という運用部の状況が書いてあります。チームリーダは運用部の人です。上の検討と合わせると、「運用部が改善活動できない⇒⇒(から)S主任を運用部に異動」と整理できます。
したがって、「改善活動」が異動の原因にかかわっていることがわかりました。この「改善活動」もキーワードになりそうなので、注意して問題文を読みます。
でも、このままでは、なぜ他の人ではなくS主任を異動させるのかがわかりません。その理由が「しかし」より前の1文に書いてあります。
[問題文のうち、問題用紙p.51の13-18行目の文から。ただし、赤いマークや下線は筆者によります。]
さらに前の1文には、S主任が、運用部にも「自ら改善活動を実施してほしい旨を提案した」と書いてあります。上の検討と合わせると、「S主任は運用部自ら改善活動してほしかった▷◁(けど)運用部が改善活動できない⇒⇒(から)S主任を運用部に異動」と整理できます。
では、S主任がなぜそんな提案をしたのかというと、改善活動はもともとS主任がいた「サービス部が中心となり実施した」ものだったからとわかります。これを合わせ、「サービス部で改善活動したS主任は運用部自ら改善活動してほしかった▷◁(けど)運用部が改善活動できない⇒⇒(から)S主任を運用部に異動」と話の流れが整理できます。
ここまでくれば、設問の「S主任に期待している役割」があぶり出されます。サービス部で改善活動していたS主任を運用部に送り込んで、次は運用部で改善活動させようという意図があったと推測できます。指定字数を踏まえ、「運用部自ら改善活動を実施させる役割」などとまとめられます。
本問のような、いわゆる「国語問題」の要素が強い設問もたびたび見かけました。設問や下線部だけから有益な情報が抽出できない場合などには、問題文をちゃんと読解して、下線部の周辺の構造や、あるいは問題文全体の展開を踏まえて解答するケースもあるでしょう。したがって、次のような方針も追加できます。
- 下線部周辺や問題文全体の流れに注意しつつ、キーワードを追う
なお、解説内で示したように、問題用紙になにか書き込む場合には、だいたい以下のようなルールでマークを使いました。
- 設問のキーワード;○、□、△、▽などで囲うか、長い箇所には一重線、波線、二重線などの下線を引く。キーワードによって適宜使い分ける
- 順接や因果関係;⇒矢印をつける
- 逆説や対比;▷◁三角形を並べたマークをつける
細かい点ではあるものの、個人的にはマークをうまく使い分けることも重要だと思いました。 上記の説明では便宜上、文字を太くしたり、赤線でマークを付けて強調したりしましたが、本番では問題用紙に黒1色の鉛筆やペンで書き込むことしかできません。 私も、過去問演習を始めた当初は、どの語句も一緒くたに○で囲ったり一重線を引いたりしていたのですが、そうすると「この○は設問1のキーワード? 設問2のキーワード? それともただの接続詞?」のように混乱してしまい、かえって時間を食うはめになりました。問題用紙へのマークは、解答時に問題文を見直すとき、すぐに根拠を発見できるような手がかりとして付すものですから、時間を圧迫しない範囲でなるべく視覚的にわかりやすくマーキングして、解答に要するコストを削減できるよう訓練しました。
そして、このように問題用紙にマークを書き込む練習は、紙に印刷して演習しなければできません29し、ぶっつけ本番で実践しようとしても難しいのではないでしょうか。紙を用いることは、問題用紙へのマーキングの練習と、解答の手書きや字数調整の練習という2つの要素があると思います。
さて、以上で述べてきた、長文読解問題を解答するにあたっての4つの方針を再掲します。
- 問題文よりも前に設問・下線部に目を通し、特徴的なキーワードをチェックする
- その後問題文を読み進め、チェックしたキーワードを探す
- キーワードが直接出てこなくても、関連語、抽象・具体、言い換えまで範囲を広げる
- 下線部周辺や問題文全体の流れに注意しつつ、キーワードを追う
なお、問題を解くときのみならず、間違えた問題を振り返る際にも、これらの方針に従うことで解答例にたどり着くことができたのかを分析するようにしました。もちろん、各種教材の解説を読んで、問題文を正しく理解できていたのか、必要な知識の抜け漏れはなかったかなどを検証しましたが、上述のように模範的な解説は「後出しジャンケン」に過ぎず、必ずしも試験本番に実践できるとは限らないと思います。重要なのは、どんなルートをたどったとしても、点がもらえる解答まで自力で到達できることです。 上記の方針は、決して万能なものではないにしろ、正答へ自力でたどり着くためのコンパスとしてある程度は機能していたのではないかと思います。
例5:【R4秋問10】
以上の4つの方針とはやや毛色が違うのですが、
- お金の話は追いかけて、解答の根拠にならないか疑う
という点も心に留めておくようにしました。
例えば、問2の経営情報戦略や、問9のプロジェクトマネジメントなどでは、お金の話がメインで進んでいくケースが多いため当たり前なのですが、そうではない問題文でお金の話が唐突に始まることがあります。こういう場合に、問題文のここにお金の話が出てきたな、と頭の片隅に入れておくようにしました。
これは、上述した「数字だから、という理由だけでマーキングすべきではない」という意見と相反するようにも感じるのですが、解答の根拠が問題文のどこなのかを判断する際に、お金の話題が書いてある箇所を他よりも優先して検討してみよう、という心構えのようなものです。問題文中のお金に関する記載が解答の根拠になる設問は少なからずありましたし、一般論としても、プロジェクトや業務を遂行するなかで、「カネ」を理由としてさまざまな判断・決定を下すことも多いためです。
これがあてはまる問題の1つが、今回受験した令和4年度秋期の問10であるように思いましたので、最後に紹介させていただきます。
[問題文から抜粋]
業務サービス課にはE君を含む数名のITサービスマネージャがおり,E君は受注サービスを担当している。業務サービス課では,運用費用の予算は,各サービスの作業ごとの1か月当たりの平均作業工数の見積りを基に作成している。運用費用の実績は,各サービスの作業ごとの1か月当たりの作業工数の実績を基に算出し,作業ごとに毎月の実績が予算内に収まるように管理している。運用費用の予算はD社の会計年度単位で計画され,今年度は,各サービスの作業ごとに前年度の1か月当たりの平均作業工数の実績に対して10%の工数増加を想定して見積もった予算が確保されている。
問題文を前から読んでいくと、この部分で「予算」や「費用」といったお金に関する単語が突然現れたと思ったら、これ以降はお金の話がほぼ出てきません。
そして、この箇所を根拠として解答するのが、以下の設問です。
設問3(2):本文中の下線③について,問題点があると考えた作業は何か。表4の項番で答えよ。また,問題点の内容を15字以内,E君が1か月当たりの平均作業工数を算出した結果を見て問題点があると考えた根拠を30字以内で答えよ。
[問題文の下線③]③ある作業には問題点があると考えた。
設問には「予算」「費用」のような語句は直接出てきません。ですが、設問や表4の「工数」という単語を見て、「工数」とくれば「ヒト」か「カネ」につながるだろうと予想されます。さらに、設問文中の「1か月当たりの平均作業工数」という語句に見覚えがあると気づけば、先ほど抜粋した箇所が根拠になると判断でき、問題点とは「予算内に収まらない」ことだという解答にたどり着けます30。
試験当日
試験会場は、都内の私立大学の教室でした。大学は駅から歩いて5分ほどの場所で行きやすく、駅前にコンビニや飲食店も豊富にあったため昼食の確保にも困りませんでした。
統計情報などを見ると、毎回、試験の申込者の約7割しか受験しないそうで、実際に集合時刻になっても6割くらいしか教室の座席が埋まっていませんでした。少なからぬ申込者が敵前逃亡していたようです。応用情報は合格率が20%台の試験ですが、敵前逃亡のぶんだけ自分の順位が上がると考えれば、少し心の余裕ができます。
必要な持ち物や参考書のほか、体温調節のための予備の衣類を持っていきました。午前試験では暖かめのシャツを着ていたのですが、午後試験は昼食後であることや、苦戦すると頭や身体が火照ってくると予想したため、午後試験の前に涼しいシャツに着替えました。会場内の室温などの環境は当日までわかりませんし、春期・秋期いずれも季節の変わり目で試験が実施されますので、体温調節できるような工夫は必要になると思います。
午前試験
過去問演習の結果から、午前試験はボーダーラインを割ることはなさそうと思っていたので、自信をもって受験しました。
試験開始直後、まずは全ページをめくって各問を見渡し、そのなかで過去問どおりで正答を覚えている問題や、すぐわかる用語問題など即答できるものは、問題用紙に答えをチェックしました。 それが終わったら問1に戻って問題を解き進め、80分くらいで2問(問56,77)を残して他は解き終わりました。10分で残りの2問を解き、10分でマークミスなどの見直しをして、計100分程度で解答を終えました。
途中退室をして昼食をとりに行きました。退室できなかったとしたら、昼休憩が1時間しかない(午前終了時の答案回収や午後試験前の説明の時間があるため、実質さらに短い)のでちょっと辛かったと思います。
午後試験
鬼門の午後試験ですが、やはり午前試験ほどの自信は持てませんでした。
選択した大問は上述したとおりです。解き進めた順番とだいたいの時間は、「情報セキュリティ」25分→「組込みシステム開発」20分→「システム監査」20分→「サービスマネジメント」45分→「プロジェクトマネジメント」30分→「サービスマネジメント」10分 のようになりました。組込みシステム開発とシステム監査は想定より早く終わった一方、サービスマネジメントでかなり苦戦しました。
すべての解答欄を埋めたくらいのタイミングで終了時刻になりました。そのため途中退室はしていません。ただし、システム監査を解き終えたタイミングで、一度トイレに行っています。昼食後に紅茶とコーヒーを飲んだのは失敗でした。
試験後
ドットコムで午前試験の解答速報が載っていたので、帰宅後に自己採点をしてみたところ80問中66問正解と出ました。ボーダーラインはほぼ確実に超えているようでとりあえず安心しました。
午後試験については、SNSで「組込みシステム開発とシステム監査は簡単だった」との発言が多く出てきました。たしかに2つとも早く解き終えたものの、中には自信のもてない設問もいくつかあり、理解が足りなかったのではと不安になりました。いくつかの予備校で解答速報が出ていましたが、のちに公表されるIPAの解答例と違っていたり、そもそも予備校どうしで食い違うこともよくあるようですし、設問ごとの配点も公表されないので、こちらは結果発表を待つこととしました。
おわりに
結果を受けて
一発合格できたのはうれしいです。統計データによれば、今回受験した令和4年度秋期の試験は、平成21年以降で合格率が最も高かったようで、例年よりも簡単だったのだとしたらラッキーだったと思います。
ところで、午前試験の自己採点は80問中66問正解で、てっきりそうだと思っていたら、実際は70問正解でした。午後試験についても、解答速報とIPAの解答例とが違っている設問が少なからずありました。きちんと分析したわけではないですが、やはり解答速報はあくまで参考程度に留めるのがよいと思いました。 実際、試験会場の教室で、昼休み中に解答速報で自己採点している受験者を見かけましたが、結果によっては無駄に落ち込んでやる気をなくしたり、あるいはぬか喜びになったりしかねません31。
また、上述したSNS上の「組込みシステム開発とシステム監査は簡単だった」という意見について、確かに組込みシステム開発は感触どおりでしたが、システム監査は解答例の発表時にかなり驚きの声が挙がっており、私もシステム監査は半分くらい間違っていると思います32。一方で、ほとんど自信をもって解答できなかったセキュリティやサービスマネジメントはそれなりにできていたようです。試験は結果が出るまでわからない というのは今後の教訓になりそうです。
今後について
試験に合格できたとはいえ、失点も多く満点だったわけではない33ですし、冒頭で述べたように実務経験は素人同然ですので、本試験の学習で培った知識を生かして今後も研鑽を積んでいきたいです。
一方、資格試験への挑戦については、もともと、応用情報に合格したらIT系資格の受験は一区切りしようかと考えていましたので、今後どのような勉強を進めるかはノープランです。しかし、やはり、2年以内であれば高度試験の午前Ⅰ試験が免除になるメリットを生かさず終わるのはもったいないかなと思います。とくに、現在の仕事のことを考えると、例えばネットワークスペシャリスト試験やシステムアーキテクト試験などに合格できる実力を身につけることで、仕事のレベルをさらに上げることができるような予感はします。とはいえ、高度試験は合格率20%台の応用情報よりさらに合格率が低い34こと、特定の分野についての深い理解や実務経験が必要と予想されること、(情報処理安全確保支援士試験を除き)試験が年1回しか実施されないこと、近い将来にまた異動するかもしれないことなどから、高度試験に合格するまでコストを割いてがんばれるのか、今のところ自信を持てないでいます。
応用情報については、上で述べたような使いやすい教材・サービスがあって対策しやすかったことが、合格できた大きな要因の1つでした。 高度試験においても、それらに匹敵するものが存在していれば、目指してみようかなと思えるかもしれません。もしご存じでしたらお教えいただけますと大変ありがたいです35。
-
ちょうどこの記事の作成中に、合格証が届きました。 ↩
-
基本情報の勉強では「基本情報技術者 合格教本」を入手したのですが、非常に情報量が多いとはいえ、試験にほとんど出ないことまで説明がビッシリ埋まっており、個人的にはいまいち使いづらいと感じました。そのような経験があったせいで応用情報でも「合格教本」を選ばなかったのですが、冷静に振り返ってみると、辞書的に使うのが目的なのだから「合格教本」を買うべきでした。 ↩
-
例えば、誰かから引き継いだ仕事の資料やマニュアルがろくに存在しない場合、そう感じられるのではないでしょうか。私の経験上、たいてい前担当者は「自分の頭に入っていればマニュアルは必要ないから作らなかった」と決まり文句のように言ってきますが、そういう言い訳に対する怨嗟の声をSNSでよく見かけます。 ↩
-
「KISSの原則」なる標語もあるように、昨今では簡潔な説明が尊ばれる傾向にあるようですが、結論だけズバッと提示されたとしても、理由や背景がわかりにくくなり納得感が薄れてしまうデメリットも生じると思っています。 ↩
-
個人的には、このような構成のせいで、IPAや教材作成者が応用情報技術者試験の入口のハードルを不用意に上げてしまっているのではないかと思います。 公式の情報によれば、出題範囲は「基礎理論」「アルゴリズムとプログラミング」から始まっているため、教材の建付け上仕方ないのでしょうが、とくに未経験者や文系出身者、私を含め数学に苦手意識を持つ者などからすれば、最初から抽象概念のオンパレードだとやる気がそがれてしまいます。もちろん、2進数などが情報技術を理解するうえで重要なのは疑いようがなく、その習得が必須であることを否定するつもりは一切ありませんが、最初にそういう分野を配置しているせいで、教材の一部分だけを見て試験そのものを挫折する人がいるのだとしたら非常にもったいないと感じます。書店で応用情報の参考書を冒頭だけ立ち読みし、無理っぽいからいいや、とすぐ本棚に戻す人が少なからずいることは想像に難くなく、こういう形で、抽象概念を扱うのは現状苦手でもポテンシャルを秘めた人たちをすげなく門前払いしてしまっているかもしれません。 ↩
-
この点、基本情報のセレクト過去問題集は、どの分野も20問程度で、応用情報より取組みやすかったです。 ↩
-
そういう意味では、基本情報の方はドットコムで演習することにより、UIが本番と異なるとはいえ、より本番に近いシミュレーションができるといえます。 ↩
-
ただし、厳密にいえば、ソフトウェア開発は表計算のみ対策しました。 ↩
-
なお、以下のIPAの公式サイトでは、2023年4月以降、基本情報技術者試験の出題形式が変更されることが発表されています。 従来の午後試験に対応する科目B試験は、「これまで必須解答としていた「情報セキュリティ」と「データ構造及びアルゴリズム(擬似言語)」の二つの分野を中心にした構成に変更」され、出題数20問に対し解答数も20問とすべて必答問題になり、これ以外の分野の選択問題は廃止されるようです。したがって、本記事で紹介させていただいた、基本情報の感触を参考として応用情報の選択分野を検討するという方法は、出題形式の変更以後は参考にならないかもしれない点を、あらかじめご了承ください。
[IPA 独立行政法人 情報処理推進機構「情報処理技術者試験における出題範囲・シラバス等の変更内容の公表について(基本情報技術者試験、情報セキュリティマネジメント試験の通年試験化)」(参照 2023.1.11)] ↩ -
言及がない場合も、おそらく正答率は平均的だと思われます。「平均的であった」との講評が記載されるようになったのは令和に入って以降の回次で、平均的な場合になにも書いていないと不親切だからという理由で書くようになったのかもしれません。 ↩
-
例えば、100バイトと答えるべき問題を800ビットと答えてしまった場合なら、部分点は出るのでしょうか。採点基準が公表されていないので真相は藪の中です。 ↩
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上述のとおり、冷静に振り返ってみるとさまざまな意味で本問は失点のリスクがきわめて高いと考えられ、結果論ではありますが他の分野を選択肢に入れたほうがよかったと思いました。 いったん全分野を解いておかなかったことが悔やまれます。なんだかネガキャンのようになってしまい申し訳ありません。 ↩
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ふだんネットワークの運用保守に携わっている身として情けなく思うのですが、自分の仕事の経験がペーパーテストの点を取ることに必ずしも結び付くわけではないと割り切るほかありませんでした。 ↩
-
これは午前試験についても同様なのですが、なぜ貴重な制限時間のなかで解答用紙に形式的な記入・マークをせねばならないのか、個人的にはよくわかりません。 すべて記入するのに1~2分くらいで、長丁場の試験のなかでは無視できる程度とはいえ、解答用紙の配布後から試験開始までに記入する運用であってもデメリットはないように思いますし、他に受けたことのある検定・資格試験でも試験開始前に受験番号などを解答用紙に記入するケースがほとんどだったと記憶しています。 ↩
-
なお、ドットコムには本番の様式に近い解答用紙が提供されていますが、上述のように大問を1つずつ解いていますし、回次の順もバラバラなので、解答用紙を印刷して使用することはしませんでした。 ↩
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手書きについては、STUDYingの受講時にノートをとっていたことから、さほど抵抗はありませんでした。 ↩
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なお、問題・解答用紙の裏面は、午前問題の演習時の計算用紙に使ったり、試験後には私用のメモ用紙などとして再利用しています。 ↩
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仮に、すべての設問の配点が同じだとすれば、わざわざ選択式問題と記述式問題を混在させる意味があまり感じられず、基本情報と同様にすべてを選択式問題にしても差し支えないのではないかと思います。しかしながら、基本情報は2020年12月からCBT方式による試験に変更されたにもかかわらず、応用情報ではそうなっていないことから、あえて記述式問題を課して受験者の実力を測っていると考えることもできます。 ↩
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文章記述式問題について、「指定字数を考慮しつつ解答に入れるキーワードを選定すべし」との趣旨のアドバイスを見かけたこともありますが、このように指定字数と解答例の字数が乖離しているケースが少なくないと感じたため、個人的にはいまいち納得できませんでした。 ↩
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例えば、「家賃10万以内の物件」、「家賃10万以内で駅から徒歩5分以内の物件」、「家賃10万以内で駅から徒歩5分以内で風呂トイレ別の物件」であれば、より短い条件の方が多くの物件がヒットするはずです。これと同様に、なるべく多くの解答を包含しようとしたら、解答例は短くなる傾向にあると予想されます。ただし、不必要に解答の条件を限定してしまったら当然誤答になると思います。 ↩
-
また、そもそもなぜ午後試験では、ある程度の分量の問題文を与えて、設問に解答させるような問題形式を採用しているのか、という趣旨に立ち戻って考えてみます。午前試験では、せいぜい数行の問題文と解答の選択肢が与えられますが、与えられた情報は基本的にすべて使って解答を導くようになっています。ここで、仮に午後試験でも問題文で与えられた情報をすべて使うとするならば、午前と午後をあえて分ける理由があまりないので、午後試験の形式では午前とは異なる能力が問われていると想定されます。そしてそれは、問題文から解答に必要な情報を正確にピックアップする能力だと思います。 ↩
-
これに対し、午前試験の設問には4択の選択肢が与えられており、最初から正答が見えていますので、午前試験と午後試験(とくに文章記述式問題)とはまったく性質が異なる のであり、分析するうえでの考え方も変えねばならないことは明らかです。解答例と解説をよく読んで納得するというやり方は、正答がわかったうえで、それにどうアプローチするかを検討するという点において、午前試験とは親和性が高いと思いますが、性質の異なる午後試験でも同じ方法をとったとして、同様の効果があるとは限らないのではないでしょうか。
趣旨は変わりますが、各種教材の午前試験の解説は、説明がわかりやすくすばらしいクオリティのものが多かったため、いずれも大変参考にさせていただきました。一方で、カラフルかつ丁寧な図表などを利用して説明が展開されている解説が多かったのですが、「こんな丁寧な図表を試験本番で書けるのか?」 という点を追求するなど、試験本番でどうすれば解けたのだろうと振り返りのなかでシミュレーションするようにしました。教材の解説はあくまで、その設問の内容やそれに必要な知識を説明しているものであって、「本番でもできる解法」とイコールではない 点は注意を要すると思います。 ↩ -
念のため申し上げておくと、一連の推理小説などの例えはあくまで説明のために述べたものであり、こういうミステリー作品はつまらないなどと評価しているわけではありません。また、たとえ「犯人はいきなり出てきた宇宙人」のような突飛な内容であっても、書き手の技術によっておもしろい作品に仕上がるケースもあると理解しています。 ↩
-
主観に頼らざるを得ないようにも思われますが、各予備校やサービスの解答速報を参照して判断する方法があります。すなわち、各予備校の解答速報とIPAの解答例とが異なる設問や、予備校ごとに解答が異なるような設問は、ちょっと怪しいなと判断できる目安の1つだと思います。 各予備校やサービスの発表する解答速報は、資格試験と長く付き合ってきたエキスパートによる分析・議論を経由して作成されていると信じているのですが、それでもなお間違っていたり予備校ごとに判断が分かれてしまうような設問が、はたして適切といえるのかは疑問符がつくはずです。
ちなみに、今回の令和4年度秋期試験においても、解答速報とIPAの解答例が違っていたり、解答速報どうしでも違う設問がいくつかありました。各予備校やサービスには、解答速報のみならず、IPAの解答例や講評に対する分析やコメントも発表してほしいと思います。 ↩ -
ただでさえ設問や解答例が物議を醸しているものについて、講評で不用意にコメントを記載すると薮蛇になり、昨今では下手すると炎上しかねません。そのリスクを恐れて、あえて何もコメントしていないのではと邪推したくなります。そうでないとしても、講評でコメントされているのが一部の設問だけで歯抜け状態なのは困りましたし、中途半端なことをせずにきちんとすべての設問に対する評価を掲載してほしいです。 ↩
-
Qiitaで単語に囲み線を付す方法がわからなかったため、やむなく太字で表現しています。 ↩
-
したがって、キーワードを「本プロジェクトの方針」にして問題文を読んだとしても、以下と同じ結果になると思います。 ↩
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「品ぞろえを充実させる方法を25字以内で述べよ」という問いへの答えが「品ぞろえを増やす」なのはトートロジーではないのかと少し悩みました。ですが、例えば、顧客がほとんど買わない商品を減らしたり、品ぞろえの総数は変えずにバランスを調整したりしても、品ぞろえを充実させたといえますし、単純に「充実させる」=「増やす」ではないと考えられます。
なお、IPAの講評をみると、本問は「正答率は低かった」そうです。解答が「品ぞろえを増やす」では不十分ではないかと判断し、解答例のように答えなかった受験生が多かったのではないでしょうか。試験本番で、「充実させる」=「増やす」ではないと冷静に考えるのは難しいと思います。 ↩ -
ドットコムの過去問題解説では、問題文や設問のテキストを選択してハイライトを付すことができるものの、ハイライトが蛍光色で黒よりも目立ちますし、マークの使い分けなどもできませんので、やはり紙の問題用紙で解くのとは感覚が異なると思います。 ↩
-
ちなみに、後述のように、本番では問10に約55分もかかっており、かなり苦しみました。設問3(1)で、表4の各欄を埋める際に何度も計算ミスをしてしまい、計算をくり返したため不必要に時間を費やしてしまいました。結果的にb~dいずれも正解できたので良かったですが、やはり試験本番で冷静に解答するのは難しいと感じました。なお、講評では、「設問3(1)のdは,正答率が低かった」、「計算式自体は複雑ではないので,落ち着いて計算するよう心掛けてもらいたい」と述べられています(実際に計算ミスをくり返したのはcの算出時でした。)。(1)が済んだら、(2)の解答の根拠は予算じゃないかなとすぐに当たりをつけられ、(2)を解答したほぼ直後に試験時間が終わりました。 ↩
-
本当かどうかわかりませんが、SNS上で「午前試験の自己採点が60点を切ったので、午後試験は受けずに帰った」という投稿を見かけました。これがもし、解答速報が誤っていたせいで実際は60点を超えていたのだとしたら、あまりにもったいないです。 ↩
-
午後試験の文章記述式問題については、問題用紙に解答を正確にメモしておらず、また試験からだいぶ時間も経ってしまったため、記憶が曖昧です。 ↩
-
ちなみに、上で紹介した方法で、今回の令和4年度秋期試験の受験者の点数の仮平均を計算すると、午前試験が59.54点、午後試験が59.87点でした。合格者(60点以上の階級)のみに絞ると、仮平均は午前試験が70.78点、午後試験が69.39点でした。平均以上の点数が取れたようなのでうれしいです。 ↩
-
いきなり高度試験を受ける無謀な人はほぼいないでしょうから、高度試験の受験者は少なくとも応用情報は突破し、実務などの経験や自信のある「手練れ」だと思われます。そういう手練れたちが挑んでも合格率10%台となると、応用情報とは数字以上に難易度の差がある過酷な試験なのだろうと推測できます。 ↩
-
例えばネットワークスペシャリスト試験では、アイテックやTACのオンライン講座が存在しているようで、これらが気になっています。 ↩