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医薬系データエンジニアのはじめ方、そして、稼ぎ方のイロハ。

Last updated at Posted at 2019-07-09

医薬系のデータエンジニアというお仕事

近年、医薬品(製薬・創薬)関連企業や大学病院などの多くがITエンジニアを積極採用しようとしているのはご存知でしょうか?
多くの人に馴染みのある知名度の高いweb系企業とは違い、医薬系企業に注目しているエンジニアの数は少ない気がします。でも、元々がITに強い業界ではないだけに、初心者エンジニアでも採用されやすい狙い目の業界だったりするのです。

私は某製薬関連企業で、データエンジニアとして働く者。元々はしがないwebエンジニア(正直、web開発者としては手が遅くダメな方だった...)
いわゆるデータサイエンティストやAIエンジニアになりたい場合、多量のデータを持っている医薬系企業や大学病院で働くことは近道の一つなのです(もちろん、データサイエンスやAIを勉強すれば、なれるかも、ですが)。また、グローバル企業も多く、職場がホワイトで待遇も安定しているところが多いです。。
医薬品業界の給与水準については以下をご参考に:

最新版】医薬品業界の年収ランキング 1位サノフィは手当充実、賞与年3回「管理職に昇格すると年収900~1000万円まで上がる」

...医薬品企業の経営に比較的余裕があるのは、近年まで、日本の多くの人々(特に年齢の高い方々)が薬好きだったことに起因するのかな?

私はエンジニアとしてはそこそこ長くやってますが、医薬系のデータエンジニアとしての経験自体は2年弱なので偉そうに書くのは少し恥ずかしいのですが、割と良い経験をさせてもらっていることに感謝しつつ、医薬系データエンジニアのはじめ方、おまけに、稼ぎ方(私見)をここに書きます。

エンジニアのの皆さん、エンジニアになりたい皆さん、医薬系の(データ)エンジニアに興味を持っていただけると幸いです。...そもそもデータエンジニアって何よっていう方は、とりありず、『いろいろなデータを扱うエンジニア』くらいに思ってもらって大丈夫です。

この投稿で業界に興味抱いた人や質問ある人は、私のtwitter等にどうぞ(twitterには別に業界のことは書いてませんが...個人情報を扱う職場ゆえ、業務上のソーシャルメディアの使用は禁止ですし...^^;)。

「で、お前の今の稼ぎは?」

やはり、気になりますよね。
このあたりを直球で言うのは技術系ブログでは下品な気もしちゃいますが(私は昭和な教育を受けたおっさんです)、
近年のqiitaのトレンドにならって、書いておきましょう。

参考 「転職ドラフトで1000万円超えのオファーを2度貰ったエンジニアが「評価された理由」と「正社員で働く意味」について考えてみました。

はい、正社員エンジニア(管理職)として概ね1,000万円の年収をいただいております。
また、ありがたいことに年金・個人保険等の福利厚生も充実しています。
↑の投稿にならって ご参考までに、私の現在のスキルセット・経験も軽く羅列しておきしょう。

分野 内容
言語 Python,Scala,Java,Julia,Go,Nim,COBOL,Delphi,SQL,Perl,C/Objective-C,JavaScript,PHP,ActionScript,Ruby,Kotlin
各種フレームワーク等 Ruby on Rails,Spring-Boot,Play Framework
各種ミドルウェア等 Linux,pandas/numpy/scipy,Tomcat,apache,nginx,Docker,Terraform,ansible,Elasticsearch,kibana,Mecab,Spark,MySQL,Postgresql,Redis, kudu
AWS APIGateway,Lambda,Cognito,EMRSQS,Redshift,RDS,S3,ELB,Route53,CLI
医療分野のサービス等 HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング環境,パイプラインツール(ゲノム系、治験系、製薬系),Google DeepVariant

↑の投稿の方と比べて大したことないですね。言語の数は結構多いですが、半分くらいは私の趣味です。
そこそこの経験あるエンジニアであれば、業界に骨を埋める覚悟をした時点でそこそこのオファーを頂きやすい方だと思います(少なくとも平均給与水準+αの1000万円くらいまでは)。

おっさん(私)の話はこれくらいにして、以下、若い皆さんとIT業界の経験がない方向けに書きます。

医薬系データエンジニアのはじめ方

私のおすすめの資質を三行で書きます。

  • Pythonを使おう。
  • TSV/CSVデータの扱いに強くなろう。
  • 業界用語を知る意欲を持とう。

この3つを武器に、医薬系企業への就職・転職活動をしてみてください。
もちろん、RやJuliaなど他の言語を知ってもいいし、SQLに強いのも望ましいし、本当は、生物医学などの専門知識がある程度あった方が良いのは事実です。また、.NET限定、XML使うぞ、Excelのマクロが必要などなど、職場によって、各論的な知識はいろいろと求められるでしょう。
ですが、(そこそこ)若くてやる気が出せる皆さんがこの3つの資質をお持ちならば、多くの医薬品関連企業や病院の採用担当者がデータを扱うエンジニアとして歓迎してくれるはずです。

以下、これから始める方向けに少し述べておきます。

Pythonを使おう。

Pythonの基本文法をマスターした後は、まずはpandasです。以下を索引代わりに勉強してください。
データ分析で頻出のPandas基本操作
細かいところはpython/pandas周りのTipsを安定して投稿してくださっている以下サイトに学ぶのが良いかと。
note.nkmk.me

余裕があったら、numpyで行列を扱ったりしてみるのが良いでしょう(データサイエンティストになりたい人は、行列と線形代数の知識は必須でですよ)。

TSV/CSVデータの扱いに強くなろう。

pandasをマスターした時点で、当然TSV/CSVは扱えるようになっているはずですが、少し補充しておきます。
医薬系企業、大学病院、及び関連研究室では、TSV/CSVを取り扱うシステムは、しばしば「パイプライン」と呼ばれます。原油の代わりに、データを流すというわけですね。このパイプラインでは、複数のCSVを結合することが多いです。そして、ひとつひとつのCSVはかなり大きなものになったりします(例えば、全ゲノム解析に関連するTSVファイルのサイズは、ひとつあたり数百メガバイトになったりします。...
そんなのが数千個並んでいたりする。)
すなわち、上の『強い』という言葉には、大きなTSV/CSVデータの扱いに強い、という意味があるのです。ただし、ここは実際のノウハウは、大きなサイズのファイルと格闘してみなくては分からないところなので、まずは就職してから先輩に聞きながらノウハウを身に着けていくということで良いかと思います。

業界用語を知る意欲を持とう。

医薬業界には、専門用語が極めて多いです。また、毎年増え続けています。なので、業界用語を学び続ける意欲が求められます。ただし、深く理解しなくとも何とかなるので、広く浅く業界用語を知る、といったスタンスでも大丈夫です。
実務に入った後には、知らない単語を聞いた時にまずはググってみて、わからないことは素直に質問するということができれば良いです(...これは、医薬業界に限らない社会人基礎力ですね)。
どんな用語が飛び足してくるかを知りたい方は、例えば、近年の業界のバズワードReal World Data(RWD)あたりからググってみてください。

参考 : http://www.jpma.or.jp/medicine/shinyaku/tiken/allotment/real_world_data.html

おまけですが、業界内では、医薬IT系の人はドライ(dry)と言われたりします。試験管等で血液や水溶液を扱うウェット(wet)系の人と対比する意味で、ですね。このウェット系の方々はIT業界よりも女性の比率が高いです(臨床検査技師、薬剤師、保健師、看護師等の出身の方が多い)。
白衣のきれいなお姉さんを見て、ハァハァ...となる方はだめですが、きれいなお姉さんに素直に質問できる方は大歓迎です。
その意味で、女性ITエンジニアの皆さんにもおすすめの業界だったりします。

(おまけ)白衣のきれいなお姉さんと一緒じゃないと医薬業界の用語を学べないという方

ひとまず、以下のtwitterをフォローして、呪文のような専門用語をググってみてください
https://twitter.com/souyakuchan
※ソーシャル創薬(叢薬)の申し子、創薬ちゃん: 

はい、きれいなお姉さんですね。つぶやきはケモインフォマティクス業界界隈らしいマニアックなものばかりで私は1/10も分かりませんが、フォローはしています。
...というのは半ば冗談として、医薬系の先生方のtwitterをフォローするのは役に立ちます。まずは創薬ちゃんがフォローしているアカウントをチェックしていくあたりから...

稼ぎ方のイロハ

最後に医薬系企業、又は、医学部・大学病院などに業界に就職した方向けに。
まずは就職おめでとうございます。頑張って、職場のドメイン特化型の知識の習得に励んでくださいませ。
で、そこからもっと稼げるようになっていくにはどうしたら良いのか。
イロハといいつつ、私が言えることはただ一つ、実践的な英語知識です。
すなわち、

  • ある程度、仕様を英語で理解できる。
  • ある程度、医学系の論文が読める。

あたりが入口で、

  • 上司に英語でホウレンソウできる。
  • 部下に英語で的確な指示かできる。

あたりがゴールです。 なぜなら、医薬品業界は欧米企業(特に米国とスイス)が強いためです。
グローバル企業の待遇はきちんとしています。

私は入口を少し超えたくらいですが、2年で年収が倍増しました。
これからはゴールを目指して通勤電車で日々勉強してます。

どこから英語を学ぶかはそれぞれでしょうが、ひとつだけ:

「糖質制限」論争に幕?一流医学誌に衝撃論文 「炭水化物は危険、脂質は安全」の波紋

若干スキャンダラスな話題ゆえにか、コメントが荒れ気味ですね。
この記事で紹介されている論文(以下)を読んでみてください。

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(17)32252-3/fulltext

そして、正しく読めているかはさておき、論文で言っているであろうことと荒れ気味のコメントとの関係を考えてみるのです。
コメントの大多数は論文を読んでないものと思いますが、それが良いのです。
製薬系のグローバル企業での日本人エンジニアに求められる役割の一つは、日本人の医薬系の専門家・関係者と外国人エンジニアとの橋渡しです。(私をはじめ)多くの日本人にとって英語は鬼門なのです。でも、逆に、外国人エンジニアにとって日本語の細やかな理解は鬼門なのです。
この橋渡し役にやりがいを感じられれば、医薬系エンジニアとしての価値は高まっていきます。

終わりに

偉そうに書いちゃいましたが、医薬系ITは成長産業なんですよ~、これを言いたかった。
おしまい。

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