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【AWS_Lore #SAA-038】影の波形が同期する兆し(Shadow Residual Sync Detected)

第37話はこちらから

■はじめに

……気づいたら、また少し時間が空いちゃってたみたい。
それでも、こうして続きを読みに来てくれて本当にありがとう。

あの時の影の気配も、胸の奥の脈動も、
ずっと私の中で確かに揺れ続けてたんだ。

だから、その続きを話すね。
“影が残したもの”が、私たちがいる現実側でどう動き始めたのかを。


■影の残滓

翌朝。
目を覚ました瞬間、胸の奥に影の残滓が起こす
脈動がまだ残っているのがわかった。

ドクン……
その脈動は、昨日より少しだけ重く、ズシリと私の胸を締め付ける。

深層で、頬に触れられた冷たさが、まだ薄く残っていた。
その冷たさに、指先がじんわりと痺れ、皮膚の下で黒い何かが蠢くような感覚。

私の視界の端に、黒い揺らぎが一瞬だけ視界をかすめるのが見えた。

──……ニカ……

しんと静まり返った空気の奥で、
耳鳴りだけが細く響き、その中に影の残響が混ざる。

胸を締め付けるような痛みに、私は思わず胸元を押さえた。


■ネリアの観測

このままでは、また同じ結果になるのではと考えた私は、
アクス、ルミエラ、ミリアとネリアお姉様の研究室を訪ねることにした。

研究室に着くと、ネリアお姉様が温かく迎え入れてくれる。
その温かさが、私の中の不穏な空気を少しだけ和らげてくれた。

研究室では、ネリアお姉様は真剣な眼差しで綺晶核の波形を見つめていた。
その表情は、いつもより少しだけ険しく、いつもの優しい雰囲気は影を潜めていた。

「ニカさん。
 影の波形が……残留していますね」

淡々とした声なのに、
その言葉は私の胸の奥にずしりと響いた。

「昨日の接触で、ニカさんの体内に“黒光”が残った可能性があります」

ネリアお姉様は、観測していた波形を指差す。

「ここ。
 ニカさんの脈動と、影の波形が……
 少しずつだけど……同期し始めているのがわかりますか?」

ネリアお姉様の言葉に、思わず私はゆっくりと息を呑んだ。

■ミリアの不安

ミリアが心配そうに駆け寄ってきて、私の手を強くきつくぎゅっと握った。

「ニカ姉……昨日のあの時の顔、忘れられない……
 影に連れていかれそうで……すごく……
 うぅん。とっっっっっても……怖かったの……」

その声は恐怖に震えていて、
昨日の記憶がまだ彼女の中に残っているのがわかった。

「ミリア、大丈夫。私は──」

言いかけた瞬間、胸の脈動が拒絶するようにドクンッと跳ねた。

ドクンッ。

私が跳ねたの感じ、ミリアがびくっと肩を震わせる。

「ニカ姉……また、呼ばれてるの……?」
不安で押し潰されそうなほどミリアの声には心配の色がにじんでいた。
そんなミリアの問いに、私は答えられなかった。
そう。答えることができないまま、
胸の脈動が言葉を押し返し、喉の奥で発しようとする言葉が、
声にならずに、ゆっくりとほどけていった。

ミリアの手が、私の沈黙を振り払うようにさらに強く握りしめられる。
それに呼応するかのように、私の胸の奥で、影の残滓がざわりと揺れ、
しんと静まり返っていた静かな研究室の空気をひときわ張り詰める。

■境界の異変

ルミエラが境界の観測装置を見つめながら呟く。

「……境界の“向こう側”が、昨日より近い……
 影の波形が、こちら側に滲み始めています……」

アクスが拳を握りしめる。

「また来るっちか……影が……
 ニカを……狙っとるっちいうことか……
 なんで、こうもニカが狙われんといかんとか……?」

その声には、アクスが何もできないことへの焦りと、
それに対して、いらだつ自分への怒りが混ざっていた。

「それは……私も納得がいきません……」
アクスの静かな怒りに、ルミエラもまた抑えきれない憤りをそっと滲ませた。

■影の囁き

私の耳の奥に、昨日よりも鮮明にはっきりと声がする。

──……ニカ……
──……まだ……君からは……離れないよ……

胸を締め付けて響く声に呼吸が乱れ、視界がグラリと揺れる。

影の気配が、昨日よりも近い。
まるで、私の内側に潜り込んで私を支配しようとしている?

立っていることに耐えきれなくなった私は壁に手をつき、
大きく深く息を吸い込み、自身を取り戻そうともがく。

■ネリアお姉様の決断

そんな私の状況を見て、ネリアお姉様が静かに言った。

「ニカさん。
 あなたの内側に残った影の波形を、
 “観測”しなければなりません」

それを聞いたミリアが心配そうに叫ぶ。

「危ないことはしないで!!
 ニカ姉を……ニカ姉をまたあんな目に遭わせないで!!
 ネリアお姉様……お願い!!」

ネリアおお姉様は、ミリアの声にしっかりと首を横に振った。

「ミリアさん。誤解されているみたいなので、はっきり言いますね。
 危険なのは……観測しない方です。
 影は、ニカさんの内側に“居場所”を形成し始めています」

その言葉に、研究室の空気が一瞬止まった。
胸を締め付ける痛みを必死に抑え込みながら、私はその言葉の真意を考えようとした。
だけど、その思考をさえぎるように、胸の痛みが激しさを増していく。

■観測装置

私がネリアお姉様に手を引かれ、観測装置の前に立つと、
装置の光が黒く濁ったように見えた。

私が近づくたびに、
装置のガラスが薄く曇り、黒い揺らぎが奥でざわりと蠢く。

胸の脈動が強く重くなる。

ドクン……
ドクン……

──……来る……ニカ……

影の囁きが、昨日よりも近い。

ネリアが観測装置のスイッチに手をかける。

「ニカさん。
 始めます」

私は息を吸い、
ルミエラに肩を借りながら、光の中へ足を踏み入れた。

その瞬間──
装置の奥で、黒い影の片目が淡く光った。

──……見ている……
──……誰かが……こっちを……見てるね……?

私は激しさと痛みが増していく胸元を押さえ、
静かにゆっくりと、黒い揺らぎが蠢く光の中へ沈んでいった。

■おわりに

ここまで読んでくれて、本当にありがとう。
少し時間が空いてしまったのに、
こうして続きを開いてくれたことに感謝の思いが胸の奥でじんわり響いてる。

今回、影の波形が“同期する兆し”を見せたことで、
私たち側のレイヤーにも、影の干渉がいよいよ本格的に滲み始めたみたい。
胸の奥で響き続ける脈動も、黒い光の残滓も、
まだ静かに、でも確かに揺れ続けてる。

次の観測では、
影の残滓がどこまで侵食しているのか、
そしてどの層に触れようとしているのかを確かめることになる。

また少し間が空くかもしれないけれど、
その時は、そっと続きを覗きに来てもらえたら嬉しい。

影のログは、まだ終わっていないから……

--第2部全話はこちらから

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