この記事は、Supershipグループ Advent Calendar 2023の20日目の記事になります。
概要
- 確率過程の簡単な例であるランダムウォークを紹介。
- 吸収壁というものがあるランダムウォークを紹介して、ギャンブルはあんまり良くないということを実感。
はじめに
最近なんとなくで確率過程を勉強しています。
最終的な目標は伊藤の補題やブラックショールズ方程式を理解することなのですが、何事も下積みが大切ということで離散版のランダムウォークから勉強していきます。
せっかくアドベントカレンダーで記事を書いているのでこれを機に勉強を続けてアウトプットを出し続けられたらいいなあという気持ちです。
ランダムウォーク
まず確率過程の例としてランダムウォークから始めます。
$X_i$ という自然数で添字付けられた互いに独立な確率変数を持ってきます。
ここで $X_i$ は $X_i = 1$ を確率 $p$ で、 $X_i = -1$を確率 $(1-p)$ で取るとします。
確率変数ってなんだっけとなる方は、確率によって出てくる数字程度に認識してください。
例えばサイコロの出目1~6は確率で出てくる数字なので、サイコロの出目は確率変数です。
また、互いに独立というのは確率が影響しないということです。
「10回連続で表が出たから次は裏が出やすい」とかはなく、常に他の出目などに影響を受けずにランダムだよってことです。
さて、この確率変数に従って原点から動き回るのがランダムウォークです。
$S_n = X_1 + \cdots + X_n$ と定義すると $S_n$ が原点をスタートしてから $n$ 番目の位置になります。
この $S_n$ の期待値は $E(S_n) = n(p - (1-p))$ となります。例えば $p = 1/2$ の時は期待値が0になります。
等確率で行ったり来たりすると思えば期待値が0になるのは直感通りですね。
ここではこんな感じで確率によって数字が決まる数列を(離散)確率過程ととりあえず定義しておきます。
確率論をちゃんとやったことがないので大体で話は進めます。
期待値を計算したのでついでに分散も計算してみましょう。
$V(S_n) = V(X_1 + \cdots + X_n) = V(X_1) + \cdots + V(X_n)$ なので各分散を求めます。
$E(X_i^2) = p \times 1^2 + (1-p) \times(-1)^2 = 1$ と簡単になるので、
$V(X_i) = E(X_i^2) - E(X_i)^2 = \cdots = 4p(1-p)$ と計算可能です。
以上をまとめると、
$E(S_n) = n(p-(1-p))$, $V(S_n) = 4np(1-p)$ と計算できたことになります。
ついでですが、中心極限定理より $S_n$ は $n$ が十分大きい時に正規分布 $N(E(S_n), V(S_n))$ に近づきます。
例えば $p=1/2$ の時であれば $N(0, n)$ という正規分布に近づくので、それっぽい感じがしますね。
吸収壁のあるランダムウォーク
今までやってたランダムウォークに少し条件を付け加えたものが吸収壁のあるランダムウォークです。
これは結構単純で、ランダムで移動するものが壁にぶつかると終わるというものです。
「物の位置が動いてどこかに当たると止まる」と考えるとあんまり大したことがないですが、「確率によって数値が変動し、それがどこかの閾値で止まる」と考えると少しファイナンスっぽくなってきます。
AさんとBさんが$a$円と$b$円を持っていて、確率 $p$ でAさんが1円をBさんからゲットするというゲームを繰り返すという状況を考えます。
この時にAさんが勝つ確率は?というのがちょっとしたランダムウォークの応用になります。
この時はスタート位置が $a$ から始まり、 Aさんの所持金は $0$ から$a+b$ の間を動きます。
所持金が0になるとAさんの破産、所持金が $a+b$ になるとAさんがBさんの全額を奪うのでBさんの破産というわけですね。
Aさんの所持金が $a$ 円の時にAさんが勝つ確率を $u_a$ とします。
すると $$ u_a = pu_{a+1} + (1-p)u_{a-1}$$ が成立します。
これを日本語で言うと、 $a$ 円持っている時に勝つ確率 = 「確率$p$ で $a+1$に行き、そこから勝つ確率」 + 「確率$1-p$ で $a-1$に行き、そこから勝つ確率」 という感じです。
あとはこの漸化式を解くだけなので解いてみると
$$u_a = \frac{1-(\frac{1-p}{p})^a }{ 1- (\frac{1-p}{p})^{a+b} }$$
となります。
ここで一つやばいことがあって、 $p=1/2$ のときです。
この時 $u_a$ の分母は0になって話が破綻します。
ただここはちょっと計算を省略してしまったので、アレですが、 $p=1/2$ の時は $u_a = a/(a+b)$ となることも計算できます。
ちょっとこの式の意味を見ていきましょう。
等確率で勝敗がつく場合は、所持金が多い方が勝ちやすいということがまずわかります。
1000万円持っている人と10円持っている人が等確率のコインの裏表で1円のやりとりを行うと10円側が負ける感じがしますよね。
この辺の計算を行うと、一定の確率で金銭のやり取りを行うとはいえ、お金を持っている方が相手を破産に追い込めて勝ちやすいということがわかります。
しかし現実はここまで分かりやすいモデルではなく、結構色々あるものです。
そういうわけで僕は有馬記念はジャスティンパレスで行こうと思いました。
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