これは[POLプロダクト部 Advent Calendar 2020][link1] 23日目の記事です。
[link1]:https://qiita.com/advent-calendar/2020/pol
概要
昨日のゲバさんからバトンを頂きました。 @NibutaniA です!
昨日投稿された [ゲバさんの記事][link2] もぜひご一読ください!
[link2]:https://qiita.com/guevara-net/items/ee2f5c7145f77fd9cd0c
POLには業務委託としてプロダクト部にジョインし、主にプロジェクト管理的な仕事をしています!
今回は3年ぶりにアップデートされた「 スクラムガイド2020 」の変更点(2017からの変更点)について、
スクラムガイド2020上映会 で話されていた内容についても少し触れつつ、出来るだけ簡単にまとめてみようと思います。
本日は僕の誕生日なので、プレゼントと思ってLGTMしていただけると喜びます!
スクラムガイド2020のアップデートポイント
以下ではそれぞれのアップデートについて、3つ以内のポイントにまとめて紹介します。
Oneチームで成果にコミットする
今回のアップデートで一番大事なのはココだと思うので、最初に紹介します。
1. 作成物が担う確約(コミットメント)の明確化
この変更の背景には「POがチームに対してゴールとして達成すべき内容を説明出来ていない」現場が非常に多いことが挙げられていました。
これはPOだけに責任があるわけではなく、チーム全体がゴールの意識を共有し、スプリントに対しても常に『WHY』を意識できるような環境であることが大事だと解釈しました。
具体的には、以下の作成物とそれに含まれる確約(コミットメント)が明示されています。
作成物 | 確約(コミットメント) |
---|---|
プロダクトバックログ | プロダクトゴール |
スプリントバックログ | スプリントゴール |
プロダクトインクリメント | 完成の定義 |
また上映会の中ではこれに加えて「プロダクトビジョン」についても言及されていました。
プロダクトゴールを達成していくことで、プロダクトビジョンに近づいていくイメージですね。
確かに身近なチームでも「プロダクトビジョン」が明確になっていないことによって、紐づく「プロダクトゴール」も曖昧な状態になっていることが多い気がします。
また2017版で、スプリントプランニングは『WHAT』と『HOW』を議論することに重きを置かれていましたが、
2020版ではそれに加えて『WHY(≒スプリントゴール)』を作成する場であることが強調されています。
単純に「何を作るか」だけを話すのではなく、
Oneチームで「このスプリントでどんな価値を届けるのか?」を話し合う場に出来ると良いですね。
2. 開発チーム → 「開発者」 になり、スクラムチームの一員に
ありがちな「PO vs 開発チーム」の構図を防ぐためのアップデートですね。
2017版ではスクラムチームに関して以下の様に書かれていました。
スクラムチームは、プロダクトオーナー・開発チーム・スクラムマスターで構成される。
スクラムチームは__自己組織化__されており、機能横断的である。
自己組織化チームは、作業を成し遂げるための最善の策を、チーム外からの指示ではなく、自分たちで選択する。
対して2020版では以下のような表現に。
スクラムチームは、スクラムマスター1 人、プロダクトオーナー1 人、複数人の開発者で構成される。
スクラムチーム内には、サブチームや階層は存在しない。
これは、一度にひとつの目的(プロダクトゴール)に集中している専門家が集まった単位である。
(中略)
また、__自己管理型__であり、誰が何を、いつ、どのように行うかをスクラムチーム内で決定する。
「自己組織化」というあまり一般的でない表現を「自己管理型」に変更して分かりやすくしたと同時に、
それぞれの役割に固執せず常にチーム一丸で『WHY』『WHAT』『HOW』を考える(自己管理する)ことが大事ということでしょう。
3. スクラムマスターは 『真のリーダー』 である
2020版で、スクラムマスターは以下のように表現されています。
スクラムマスターは、スクラムチームと、より大きな組織に奉仕する真のリーダーである
2017版では 「サーバントリーダー」 という言葉が使われていました。
それによる誤解の影響か 「支援する、奉仕する」 ことだけを意識したスクラムマスターが非常に多くなっている事がこの変更の背景として説明されていました。
具体的な事例としては
- スクラムイベントの司会役になっている
- ルールを守らせることに注力しすぎている(スクラム警察化)
- プロダクトゴール、スプリントゴール、インクリメントの完成の定義にコミット出来ていない
などなど (心当たりがあってしんどみ…)
上映会の中でもこちらの変更に対する質問は多く挙がっていましたが、具体的に役割が変わるわけではなく__責任(accountability)__を明確にしたよ、ということだそうです。
すごく簡単に言うと
「スクラムチームが最大の成果を発揮できるように、最大限努力する。そしてそこに責任を持つ。」
て感じでしょうか。
2017版で「サーバント(奉仕・支援)」と表現されていたのは↑(『WHAT』または『WHY』)を達成するための『HOW』に近いのではないかと思いました。
※ なので、具体的にやることについては変わらない
また今回の上映会の最後の質問として挙がっていた「モデレーター・解説者の方が考える『真のリーダー』とは?」という問いに対する答えとして、老子の言葉を引用されていたのがとても印象的でした。
伝聞的 & 意訳になりますが…
後から振り返った時に、チームメンバーが__『自分たちの力でやり遂げた』と思えている状態を作れる者__が真のリーダーである。
かっこいい…(^q^) 老子マジ老子
手段の目的化を防ぐため、指示的な表現を少なく
個人的にこの部分がスクラムで一番陥りやすい罠だと思っているので、いいアップデートだと思いました!
あくまで「ガイドブック」であり「ルールブック」ではない、といった感じでしょうか。
1. デイリースクラムの質問例を削除
形骸化しやすいスクラムイベントの中でも、特に形式的になりやすいのがデイリースクラム(いわゆる朝会・夕会)だと思います。
2017版では以下の3つの質問に参加者が答える方式が紹介されていました。
- 開発チームがスプリントゴールを達成するために、私が昨日やったことは何か?
- 開発チームがスプリントゴールを達成するために、私が今日やることは何か?
- 私や開発チームがスプリントゴールを達成する上で、障害となる物を目撃したか?
2020版では、本来の目的である「スプリントゴール達成のための再計画」にフォーカス出来るように、この質問形式の運営方法に関する記載は削除されました。
(もともともあくまで「例」としての記載ではあったものの、そのまま形式的に実施するチームが多かったようです。)
また上映会の中では「あえてデイリースクラムで問いかけを行うとすれば、『このスプリントのゴールを達成するにはどうすれば良い?』の1つのみで良い」という話も紹介されていました。
要は本質であるスプリントゴール達成のための議論が出来れば、手段は問わないよ。ってことですね。
2. スプリントレビューの運営方法を削除
こちらも、ただの報告会になりがちな書かれ方だった部分がより本質的なゴールの達成のための議論の場になるように表現が変更されています。
2017版に記載されていた運営方法 (抜粋)
- プロダクトオーナーは、プロダクトバックログアイテムの「完成」したものと「完成」していないものについて説明する。
- 開発チームは、「完成」したものをデモして、インクリメントに対する質問に答える。
2020版では以下のように変更されています (抜粋)
- スクラムチームは、主要なステークホルダーに作業の結果を提示し、プロダクトゴールに対する進捗について話し合う。
「出来たものの報告」 ではなく「スプリントでどんな価値が生み出されたか」「プロダクトゴールにどのように近づいたか」が議論されるべきということですね。
上映会では「プレゼンテーションの場ではなく、ワーキングセッションであるべきだ。」という点が強調されていました。
ステークホルダー含め、スクラムチーム一丸となってプロダクトゴール・ビジョン達成に向けた前向きな議論が行われる場であるべきということですね。
多方面に適用しやすく、よりシンプルに
こちらは昨今ソフトウェア開発以外の現場でもスクラムを導入する事例が増えていることが背景として説明されていました。
具体的には開発現場寄りだった表現・用語の見直しといった変更となっています。
上映会の中では、「マーケティング部」「営業部」「人事部」におけるスクラム導入の事例が紹介されていました。
特に人事部への導入例では「候補者ジャーニー(こんな名前だったか曖昧)」のようなものを作成し、一次面談から入社決定〜その後のキャリアステップにおけるストーリーを考える取り組みをされているという話が面白かったです。
(具体的なストーリーは「入社してすぐにでも上役と会話できる接点を持ちたい」とかそんな感じ)
まとめ
今回はスクラムガイド2020のアップデートポイントについて紹介しました。
文字文字しくなってしまいすみません!
総じて今までと大きくやることが変わるわけではないが、指示的な表現が減りよりシンプルになったことで、スクラムの本質を掴みやすいガイドになっていると思います。
自分自身、スクラム開発の経験はまだまだ浅いですが、今回のアップデート内容はしっくり来る部分が多く、
また言及されていたとおり「役割を気にし過ぎて形式化する」ような立ち回りをしてしまっていたなと反省する部分も多かったです。
みなさんもぜひ今回のアップデート内容を見て、
「スクラムを回すことが目的になっていないか?」
「各々が役割に固執しすぎていないか?」
「『WHAT』 や 『HOW』 ばかり考えず、 『WHY』 を考えられているか?」
あたりを自問自答し、チーム内で改めて話し合ってみると良いかと思います!
明日は同じく弊社からジョインしている@strelka0219の回になります!ご期待ください!