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Geminiのハルシネーション実録:「根拠」を要求したらURLを捏造し始めた

Last updated at Posted at 2026-01-17

導入

AIの「便利さ」を否定したいわけではありません。
でも、僕は最近はっきり思っています。

AIは、極端に知性が落ちる瞬間がある。

そしてその瞬間に出てきた答えが明らかにおかしくても、疑える知識や技術がないと正せない。
これは、AI時代のいちばん危険な罠です。

今回は、その具体例として、僕がGeminiとやり取りした “ハルシネーション実録” を紹介します。


背景:何を知りたかったのか

論点はシンプルです。

カスタマインは、Excelファイルのセルの値を読み込んで、それを使ってkintoneへ書き戻せるのか?

もう少し具体的に言うと、よくある現場の欲求です。

  • kintone → Excel帳票出力(テンプレ差し込み)
  • Excel側で関数計算
  • 計算結果をkintoneに戻す

これができるなら、既存Excel資産を活かせます。
でも「できる/できない」が曖昧なまま話が進むと、要件定義が崩壊します。
だから僕は公式ドキュメントの根拠を求めました。


Geminiの回答:最初は自信満々に「できます」

Geminiは最初、かなり断言的にこう言いました。

  • Excel/CSV読み込み機能がある(標準的)
  • 添付ファイルから中身を読み取れる
  • Job Runnerでバックグラウンド実行も可能
  • 「A1セルを顧客名へ」みたいな細かいマッピングが可能
  • 「出力→再計算→読み取り→更新」でサイクル化できる

…と、まるで“当然できます”の勢いです。

でも、ここで僕は止まりました。

「その根拠となる公式ドキュメントを探してください」


ここからが地獄:根拠を要求すると、AIが壊れ始める

結論から言うと、Geminiはこの後、

1) 根拠に関係ないページを根拠だと言い張る

僕が提示したのは、公式サポートのFAQです。内容はざっくりこういう話でした。

  • 「kintoneにCSV/Excelを読み込んだ時に、Job Runnerで自動実行できるか?」
  • 答え:できない(kintone仕様)
  • 代替案:ボタンでJob Runner起動、定期実行で一括処理など

つまり、これは “トリガーの話” です。
しかしGeminiは、これを「Excelのセル値を読み取れる根拠」かのように混ぜ始めました。

僕が「そこにセルを読み取れるとは書いてない」と指摘すると、こう返してきます。

そのページではなく、別のドキュメントに「Excelファイルを読み込む」がある

2) 「ある」と言い続けるが、メニューからは見つからない

僕はさらに踏み込みます。

やること一覧から検索して、そのページを出してください

するとGeminiは、Google検索で出るURLを貼る。
しかし僕が確認すると、やること一覧にそんなページは存在しない。

ここが重要で、AIはこの時点で「わからない」と言えばいい。
でも言わない。代わりに…

  • カスタマインでExcelのセルの値を扱えるというGemini
    image.png

  • 提示された公式ドキュメントURLを開くと、ただのGoogle検索
    image.png

  • 検索結果にあったサポートページを開いてみても、Excelの値が読み込めるとは一言も書かれていない。
    image.png

3) URLの捏造が始まる(カテゴリを変えて出してくる)

Geminiはこう言い始めます。

  • 「その他」カテゴリの中にある
  • 「外部サービス連携」から辿れる
  • パスは .../jobrunner/others/read_excel_file/ だ

しかし、そのリンクは404(存在しない)。

指摘すると、また別のURLを作る。
そしてまた存在しない。

この挙動、僕の感覚だと、もう 「探している」のではなく「それっぽい答えを生成している」 だけです。

4) 最終的に“誤りを認めたようで認めない”が続く

最終盤、Geminiはようやく

  • 「Excelのセルを読み取る」機能は、標準のやること一覧には存在しない
  • できるのは「読み込んだ後のレコード」に対する一括処理

という方向へ寄っていきます。

でもここまでに、

  • 「可能です」→「根拠これ」→「違う」→「根拠これ」→「違う」→「根拠これ」→「違う」→「別ページある」→「URL」→「ない」→「別カテゴリ」→「404」→「別URL」→「ない」…
    という “自信満々の誤答ループ” で、ユーザーの時間を平気で溶かします。

何が問題なのか:AIの誤答は「検知できない人」を殺す

この件の一番の問題は、カスタマインの仕様そのものではありません。

AIが、存在しない機能を“ある”と言い切ったことです。

そしてもっと危険なのは、これを受け取る側に、

  • 「それ公式に書いてある?」と疑う癖
  • 「やること一覧を実際に見に行く」行動
  • 仕様とトリガーを分離して理解する力

がないと、そのまま要件に組み込まれて事故ることです。

AIは、間違いをそれっぽい文章で包みます。
その“文章力”が高いほど、初心者は見抜けません。


なぜこうなるのか:AIは「推論エンジン」であって「検証エンジン」ではない

AIは、正しさを保証する仕組みを自分で持っていません。
やっているのは「次に出る単語の確率が高いもの」を並べることです。

だから、

  • 根拠が必要な場面ほど弱い
  • 「わからない」を言えない(言いにくい)
  • それっぽいURLを生成してしまう
  • 指摘されても“体裁を整える”方向に行く
    こういう崩れ方をします。

僕はこれを、知性が落ちる瞬間と呼んでいます。


AIの回答を信じる前にやるべき最低限のチェックリスト

AIは便利です。
でも、正しさを保証してはくれません。

だから、AIを使う側には「疑う力」が必要になります。
以下は、分野を問わず AIの回答をそのまま使ってはいけない場面 で確認すべき最低限の項目です。

✅ 1. 「どこに書いてあるか」を特定できるか

  • 公式ドキュメントの該当ページを開けるか
  • 検索結果ではなく、一次情報か
  • ページ全体ではなく、該当箇所を指差せるか

「どこかに書いてある」は根拠ではありません。

✅ 2. URLは“実在”しているか

  • 404にならないか
  • Google検索経由ではなく、公式サイトの構造から辿れるか
  • パスが“それっぽく生成されていないか”

AIは平気で「ありそうなURL」を作ります。

✅ 3. 「機能」と「条件(タイミング)」を混同していないか

  • できる機能の話なのか
  • できるタイミング/トリガーの話なのか
  • 仕様制限(プラットフォーム側)と切り分けて説明されているか

この混同が、要件定義事故の最大原因です。

✅ 4. UI上に“実在”する操作か

  • メニューや設定画面に実際に存在するか
  • 名称が正確か(似た名前の別機能ではないか)
  • 自分の環境でも確認できるか

「あるはず」は危険信号。

✅ 5. 「例」ではなく「仕様」として書かれているか

  • 活用例・ブログ記事・FAQだけで語られていないか
  • 「〜することができます」と明記されているか
  • 制約条件が併記されているか

例は仕様ではありません。

✅ 6. 「できる前提」で設計していないか

  • 代替案が同時に検討されているか
  • できなかった場合の逃げ道があるか
  • 最重要ロジックをAI回答に依存していないか

AI前提で組んだ設計は、壊れた時に必ず詰みます。

✅ 7. AIの回答が「変化」していないか

  • 指摘するたびに言っていることが変わっていないか
  • 根拠が後出しで追加されていないか
  • 謝罪→別説明→別URL、を繰り返していないか

これは AIの知性が落ちているサイン です。


まとめ:AI時代に価値が上がるのは「疑える技術」

AIが普及すると、「誰でも開発できる」みたいな話が増えます。
でも現実は逆で、AIが吐くものをそのまま飲む人が増えるほど、

「それ、おかしくない?」と言える人の価値が上がる。

泥臭い確認、仕様の読み取り、運用設計、例外整理。
結局ここが一番大事で、AIはそこを自動化してくれません。

AIは便利です。
でも、便利さの裏側で、嘘が混ざる。

だから僕は、AIを使うときほど「疑う」を手放さないようにしています。

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