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沖縄高専Advent Calendar 2022

Day 9

Fusion360のCAE機能を使って3Dプリント部品の強度シミュレーションをしてみた!

Last updated at Posted at 2022-12-09

背景

3Dプリンタのシャフトに塗られているグリスが乾燥してきたので、グリスを塗る専用の道具を作ってみることにしました。
そこで、せっかくなのでCAEを使ってシミュレーションをして設計に反映してみようと思います。

私が使っているAdventurer3という3Dプリンタのシャフトの径が8mmであり、これにグリスを塗るための道具を作ろうと思います。
イメージとしては、ピンセットのような構造で先端がシャフトを包むような感じにしたいです。

実践!

モデリング

結論が先になりますが、今回設計したモデルは下の写真のようになりました。
ピンセットのように持って挟むとちょうどシャフトを包み込むようになります。

シミュレーション(本記事のメイン)

①マテリアルの設定

今回3Dプリンタを使って製作し、フィラメントはABSを使います。
そのため、材料をABSに設定しますが、3Dプリンタを使って積層するので、積層方向によって強度が異なります。
今回は積層方向ではない方向に力をかけるので、それに合わせた物性値に編集します。

こちらの記事を参考に、引張強さのパラメータを編集しました。

②固定する部分とかける負荷を設定する

まず、固定する場所を指定します。
今回は下の画像のように青色の面を固定しています。

次に応力の設定を行います。
先ほど固定した面の反対側に押し付ける力(青い矢印)を追加します。

③メッシュを作成

部品をある程度分割します。
細かく分割すればするほどシミュレーションの精度が向上しますが、時間がかかります。

④シミュレーションの実行!

下の画像のシミュレーション結果は1N(約100g)で力をかけた時に応力が発生する部分を表示した結果です。
色が赤っぽくなっている部分に力がかかっています。
シミュレーションによると1Nの力を力をかけるとほとんど閉じるような形になるようです。

sim_2.jpg

次に下の画像は安全率の分布を表示した結果です。

安全率
安全率とは製品の安全性を保障するため、設計に用いられる指標です。
Fusion360のシミュレーションでは塑性変形(もとの形に戻らなくなる変形)が発生する値を1をとしています。

シミュレーションによると最も安全率が最も低くなる部分では約1.4になるという結果となりました。
安全率が1を下回る部分がないので、弾性変形の領域内で使用することができるということが分かります。

以上のシミュレーション結果からこの設計で問題なく利用できそうです!
今紹介した結果はいくつかの設計でシミュレーションを行ったうえで、設計した結果となっています。

次に設計を変えた場合や、負荷を大きくした場合のシミュレーションの結果も紹介します!

部品を分厚くした場合

部品の厚みを2倍にしてみました。

シミュレーション結果
同じ1Nをかけましたが、厚みを2倍にしたことで強度が増し、変形量が小さくなりました。
sim_3.jpg

負荷を増やした場合

設計はそのままで、先ほどまでは1Nの力をかけていましたが、3倍の3Nの力で押してみます。
sim_4.jpg

シミュレーション結果
安全率が1を下回る塑性変形が発生する赤色の領域が発生していることが見て取れます。
しかし現実には、画像のように変形する前に部品が干渉するため、赤色の領域が塑性変形するまで閉じることはできないですね。
image.png

プリント

完成品

プリントしたものを測りを使ってどのくらいの力で閉じるか試してみたところ、約130g(1.3N)でちょうど閉じることがわかりました。

そこで、負荷を1.3Nに設定してシミュレーションしてみました。

シミュレーション結果
1.3Nをかけるとちょうど閉じる結果となりました。
simulation_1.jpg

このことから、シミュレーション結果が妥当であると推測できます。

試してみる

完成したのでグリスを塗ります。

いい感じに塗れました!

まとめ

Fusion360のCAE機能を使って3Dプリント部品の強度シミュレーション行いました。
また実際に部品を3Dプリントし、シミュレーションの結果が妥当であることも確認できました。

今回行ったのは応力のシミュレーションですが、Fusion360に他にも熱解析などさまざまなシミュレーション機能があるので、他のシミュレーションも使いこなしていきたいですね!

参考資料

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