2026年6月、コンテナまわりで大きな発表が2つ続きました。
AppleとMicrosoftが、それぞれ自社のOSだけでLinuxコンテナを動かせる公式の仕組みを出してきたのです。
Appleのapple/container(1.0に到達)と、MicrosoftのWSL Containers(公開プレビュー)です。
専用のツールが用意されるなら、「もうLinuxやDockerをわざわざ勉強しなくてもいいのでは」と考える人もいるのではないでしょうか。
先に結論から言ってしまうと、どちらもDocker Desktopを丸ごと置き換えるものではありません。
そして、これらが動かしているのは、結局のところLinuxコンテナです。
だからこそ、Linuxそのものの知識は、むしろこれまで以上に重要です。
以下では、2つが何をするものなのかを見たうえで、この問いに答えます。
そもそも何が登場したのか
ざっくり言うと、どちらも「macOSやWindowsの上で、Linuxのコンテナをそのまま動かすための公式の仕組み」です。
まず、2つの違いを表で見比べてみましょう。
| 観点 | Apple container | WSL Containers |
|---|---|---|
| 対象OS | macOS | Windows |
| CLI | container |
wslc.exe |
| 実行基盤 | コンテナごとの軽量Linux VM | WSL2 |
| 状態 | 安定版1.0到達 | 公開プレビュー |
| Docker Desktopの代替 | 単体用途なら可 | まだ限定的 |
どちらも2026年6月の動きで、時期はほぼ重なっています。
以降のバージョンや状況は、いずれも2026年7月時点のものです。
Apple containerとは
Apple containerは、macOS上でLinuxコンテナを動かすためのオープンソースのCLIツールです。
正式な名前はGitHubのリポジトリ名そのままでapple/container、コマンド名はcontainerになります。この記事では読みやすさのため、Apple containerと呼びます。
特徴は、コンテナの動かし方にあります。
公式ドキュメント(Technical Overview)には、次のように書かれています。
Using the open source Containerization package, it runs a lightweight VM for each container that you create.
(オープンソースのContainerizationパッケージを使い、作成したコンテナごとに軽量な仮想マシンを1つずつ立てる、という意味です)
macOSで一般的な「大きなLinux VMを1台だけ立てて、その中に全コンテナを詰め込む」やり方とは違います。
コンテナごとにVMが分かれるぶん、セキュリティ面で有利になると公式は説明しています。
コンテナを乗っ取られても、VMから抜け出さないかぎり、ホスト(Mac本体)まで被害は及ばないからですね。
操作感はDockerによく似ています(以下は公式チュートリアルより)。
# Dockerfileからイメージをビルドする
container build --tag web-test --file Dockerfile .
# ビルドしたイメージをバックグラウンドで実行する
container run --name my-web-server --detach --rm web-test
docker buildやdocker runを触ったことがあれば、ほとんどそのまま読み替えられるはずです。
では、使う側にとって何がうれしいのでしょうか。
1つの大きなVMを共有せず、コンテナごとに境界を分ける設計なので、ローカルでもセキュリティの分離を意識したい用途とは相性がよさそうです。
一方で、Docker Compose前提のWeb開発環境をまるごと動かすような使い方では、まだDocker Desktopのほうが現実的だと言ってよいでしょう。
macOS 15でも動きますが、コンテナ同士の通信ができない、container networkコマンドが使えない、といった制限があります。
フルに使うなら、macOS 26以降を前提にしておくのが無難です。
WSL Containersとは
WSL Containersは、WindowsのWSL上で、Docker Desktopを使わずにLinuxコンテナを扱える機能です。
wslc.exeという1つのコマンドで、コンテナのビルドから実行、管理までを完結できます。
公式ドキュメントに載っている実行例は、次のようなものです。
# ubuntuイメージでコンテナを1回だけ実行する
wslc run --rm -it ubuntu:latest bash -c "echo Hello from WSL container!"
こちらもDockerの操作を知っていれば、そのまま読めますね。
Microsoftは、いくつかの技術的な改善があると説明しています。
たとえば、既定のファイルシステムがVirtIOFSになり、Windows側のファイルへのアクセスが速くなるとのことです。
現時点のWSL Containersは、Docker Desktopを完全に置き換えるものではありません。
Microsoftも公式ブログで、既存のツールを置き換えるというより、Windows上のコンテナ環境そのものを広げる位置づけだと説明しています。
正式提供は2026年秋が目標で、Docker Composeにあたる機能やGUIはまだ用意されていません。
公開プレビュー段階なので、コマンド名やオプションは今後変わる可能性もあります。
実際に試すときは、最新の公式ドキュメントを確認してください。
それで、LinuxとDockerは学ばなくてよくなるのか
答えはむしろ逆で、両方の基礎はこれまでより重要になります。
AppleもMicrosoftも独自規格を作ったわけではなく、どちらもLinuxコンテナとOCIイメージの上に成り立っています。
そのため、dockerコマンドやDockerfileの知識は、ツール名が変わっても使い回せます。
そして、実際にコンテナを動かしているのはLinuxです(Apple containerは軽量VM、WSL ContainersはWSL2)。
権限やネットワークを追う場面では、結局Linuxそのものの理解が問われます。
RareTECHがLinuxをWebやアプリより先に教えているのも、ツールが移り変わっても通用する基礎を身につけるためです。
まとめ
- Apple container(
apple/container)は、コンテナごとに軽量なLinux VMを立て、macOS上でLinuxコンテナを動かす仕組み。単体用途ならDocker Desktopは不要になる - WSL Containersは、
wslc.exeでWindows上のLinuxコンテナをDocker Desktopなしに扱える機能。まだ公開プレビューで、全面的な置き換えではない - どちらも独自規格ではなく、LinuxとOCIという共通の仕組みの上に作られている。表のツールが変わっても、動いているのはLinux。だからこそ、LinuxとDockerの基礎を理解している価値は、むしろ高まっている