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はじめに

Reactを使っていると、useStateで状態を変えるだけで画面が更新されます。document.getElementByIdのようなDOM操作を自分で書くことはほとんどありません。

では、Reactは裏側でどうやってDOMを書き換えているのでしょうか?

この記事では以下を解説します。

  • そもそもDOMとは何か
  • 素朴なDOM操作の何が問題なのか
  • 仮想DOM(Virtual DOM)の正体
  • 差分検出(Reconciliation)の仕組み
  • keyが重要な理由
  • 再レンダリングが起きるタイミング

対象読者は「Reactは使えるが、内部でDOMがどう更新されるかは曖昧」という方です。

DOMとは何か

**DOM(Document Object Model)**とは、ブラウザがHTMLをツリー構造のオブジェクトとして表現したものです。

例えば次のHTMLは、

<div id="app">
  <h1>Hello</h1>
  <p>World</p>
</div>

ブラウザ内部では次のようなツリーになります。

JavaScriptはこのツリーを操作することで、画面の表示を書き換えられます。

document.getElementById("app").querySelector("p").textContent = "React";

素朴なDOM操作の問題点

DOMを直接操作する方法は、UIが複雑になるほど扱いづらくなります。

1. 手続き的でコードが追いにくい

「どこを」「どう変えるか」を一つひとつ手で書く必要があります。状態と表示の対応関係がコードに散らばり、全体像が把握しづらくなります。

2. DOM操作はコストが高い

DOMの更新は、ブラウザのレイアウト計算や再描画(リフロー: reflow、リペイント: repaint)を引き起こします。頻繁に直接操作すると、パフォーマンスの低下につながります。

特に「ループの中で何度もDOMを書き換える」ような処理は、そのたびに再描画が走り、重くなりがちです。

Reactのアプローチ:宣言的UI

Reactはこの問題を宣言的UIで解決します。

「DOMをどう操作するか(手続き)」ではなく、「状態がこのときUIはこうなる(結果)」を書きます。

function Counter() {
  const [count, setCount] = useState(0);
  return <button onClick={() => setCount(count + 1)}>{count}</button>;
}

開発者はcountという状態を更新するだけです。実際のDOM更新はReactが担当します。

この「状態からUIへの変換」を効率的に行うための仕組みが、仮想DOMです。

仮想DOM(Virtual DOM)とは

仮想DOMとは、実際のDOMを模した軽量なJavaScriptオブジェクトです。

JSXはビルド時に要素を生成する関数呼び出しへ変換され、最終的に次のようなオブジェクトになります。

// <h1 className="title">Hello</h1> は、おおよそ次のオブジェクトになる
{
  type: "h1",
  props: { className: "title", children: "Hello" }
}

React 16までは、JSXはReact.createElement()の呼び出しへ変換されていました。React 17以降はデフォルトがreact/jsx-runtimejsx関数に変わっていますが、生成される要素オブジェクトの考え方は同じです。

これはただのJavaScriptオブジェクトなので、生成や比較が軽量です。Reactはこの仮想DOMツリーをメモリ上に保持します。

仮想DOMは「実DOMの軽量なコピー」とよく説明されます。ただし、仮想DOMは「直接DOMを触るより必ず速い」わけではありません。本質は、宣言的に書きつつ実DOMへの操作回数を最小限に抑えられる点にあります。

差分検出(Reconciliation)の仕組み

状態が変わると、Reactは次の流れでDOMを更新します。

  1. 新しい仮想DOMツリーを生成する
  2. 前回の仮想DOMツリーと**比較(diff)**する
  3. 変わった部分だけを実DOMに反映する

この一連の処理を**Reconciliation(再調整)**と呼びます。

ポイントは、実DOMへ触る回数を最小限に抑えることです。画面全体を作り直すのではなく、変化した箇所のみをピンポイントで更新します。

差分検出を高速にする工夫

本来、2つのツリーを厳密に比較する計算は重い処理です。Reactは現実的な速度を出すため、いくつかの前提を置いています。

  • 要素のtypeが違えば、その先は作り直すdivspanなら中身ごと再生成)
  • 同じ階層の比較に限定する(離れた場所への移動は追わない)
  • リストはkeyで対応関係を判断する

keyが重要な理由

リストを描画するとき、Reactはkeyを使って「前回のどの要素と同じか」を判断します。

{items.map((item) => (
  <li key={item.id}>{item.name}</li>
))}

keyが安定していれば、要素の追加・削除・並べ替えを正しく検出できます。

indexをkeyにしてはいけない理由

配列のindexをkeyにすると、並べ替えや要素の挿入で対応関係がずれます。

// アンチパターン:並べ替えると挙動がおかしくなることがある
{items.map((item, index) => (
  <li key={index}>{item.name}</li>
))}

indexをkeyにすると、入力フォームの値が別の行に紐づくなどのバグが起きやすくなります。リストには一意で安定したIDを使いましょう。

たとえば、各行にテキスト入力を持つTODOリストを考えます。key={index}のまま先頭へ新しい項目を追加すると、既存の各行のindexが1つずつ後ろにずれます。Reactは「同じindex=同じ要素」とみなすため、入力中だった文字が一つ下の行に残ったように見えるといった不具合が起こります。keyitem.idのような安定した値を使えば要素の対応が正しく保たれ、この問題を防げます。

再レンダリングが起きるタイミング

Reactコンポーネントが再レンダリングされる主な条件は次の3つです。

トリガー 説明
stateの変更 useState / useReducer の更新関数を呼んだとき
propsの変更 親から渡される値が変わったとき
親の再レンダリング 親が再レンダリングされると、子も基本的に再レンダリングされる

ここで誤解しやすいのが、**「再レンダリング ≠ 実DOMの更新」**という点です。

再レンダリングとは「コンポーネント関数を再実行して新しい仮想DOMを作ること」です。その結果が前回と同じなら、実DOMは更新されません。

「再レンダリングされる=画面が描き直される」ではありません。差分がなければ実DOMは変化しないため、再レンダリング自体は必ずしも悪ではありません。

とはいえ、巨大なコンポーネントでの過剰な再レンダリングはコストになります。その場合はReact.memouseMemouseCallbackで、不要な再計算を抑えられます。

レンダリングフェーズとコミットフェーズ

ここで「仮想DOMを新しく作ること」と「実DOMを書き換えること」は、別のタイミングで行われる点を押さえておきましょう。Reactの更新は次の2つのフェーズに分かれています。

① レンダリングフェーズ(Render Phase)

コンポーネント関数を実行して新しい仮想DOMを生成し、前回のツリーと比較して「どこをどう変えるか」を計算します。この段階では実DOMには一切触りません。純粋な計算なので、React 18の並行レンダリングでは中断・再開もできます。

② コミットフェーズ(Commit Phase)

①で計算した差分を、まとめて実DOMへ反映します。ノードの追加・属性の変更・削除などはここで実行されます。このフェーズは同期的に一気に行われ、途中で中断されません。

setState 実行
   ↓
[レンダリングフェーズ]  新しい仮想DOMを生成 & 差分を計算(実DOMはまだ変わらない)
   ↓
[コミットフェーズ]      差分を実DOMへ反映 ★ここで画面が更新される
   ↓
ブラウザが再描画(paint)

「再レンダリングしても実DOMが変わらないことがある」のは、レンダリングフェーズの差分計算で変化がゼロなら、コミットフェーズで反映するものが無いからです。

副作用フックの実行タイミングも、この2フェーズで理解できます。

処理 タイミング
仮想DOM生成・差分計算 レンダリングフェーズ
実DOM更新 コミットフェーズ
useLayoutEffect コミット直後・ブラウザ描画(同期)
useEffect ブラウザ描画(非同期)

useLayoutEffectでDOMのサイズや位置を測れるのは、「実DOM更新済み・描画前」というこの隙間で動くからです。

発展:FiberとReact 18の並行レンダリング

React 16から、内部アーキテクチャはFiberと呼ばれる仕組みに刷新されました。

Fiberにより、レンダリング作業を小さな単位に分割し、途中で中断・再開できるようになりました。これがReact 18の**並行レンダリング(Concurrent Rendering)**の土台です。

これにより、重い更新の途中でもユーザー入力などの優先度が高い処理を先に反映できます。普段のReact利用で意識する必要はありません。ただ、「仮想DOMの比較を賢くスケジューリングしている」とイメージすると、理解が深まります。

まとめ

  • DOMはブラウザがHTMLをツリー構造で表現したもの
  • DOMの直接操作は手続き的になりやすく、再描画コストも高い
  • Reactは宣言的UIで「状態→UI」を記述する
  • 仮想DOMは実DOMを模した軽量なJavaScriptオブジェクト
  • 状態変化のたびに新旧の仮想DOMを比較し、差分だけを実DOMへ反映する(Reconciliation)
  • リストの差分検出には**安定したkey**が不可欠
  • 更新は**レンダリングフェーズ(仮想DOM生成・差分計算)→ コミットフェーズ(実DOM更新)**の2段階で進む
  • 再レンダリングは「関数の再実行」であり、必ずしも実DOM更新を意味しない
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