AI利用促進サイトを立ち上げて見えてきたこと
~社内のAI活用を広げるための情報発信とコミュニティ運営の取り組み~
はじめに
はじめまして。
株式会社NTTデータ九州 コーポレート・ガバナンス室 IT戦略担当の安部です。
私は社内システムの問い合わせ対応やAI利用促進を支援する業務に携わっています。
AI利用促進を進める中で、
- AIに興味があり、さらに効果的な活用方法を知りたい
- 有用性は感じており、自身の業務への活用イメージを広げたい
といった声を耳にすることが増えました。
社内でもAIサービスの利用が広がる一方で、活用ノウハウが個人やチーム内に留まり、全社的な展開につながりにくいという課題がありました。
そこで私たちは、社員が気軽にAIの情報を収集し、学び、相談できる場として「AI利用促進サイト」を立ち上げました。
本記事では、サイト構築の背景や運営内容、利用状況、運営を通じて見えてきた課題と今後の展望についてご紹介します。
なぜAI利用促進サイトを作ったのか
私が社内システム担当として配属されてから3か月ほど経った頃、AI利用促進を担当することになりました。
当時はAI活用が拡大途上にあり、周囲でも次のような声が多く聞かれていました。
- AIの活用可能性をもっと広げたい
- 他のメンバーがどのようにAIを活用しているのか知りたい
実は、私自身も同じ悩みを抱えていました。AIを使ってみようと思っても、何を入力すればよいのか分からず、活用事例を探そうとしても、自分の業務に近い事例を見つけることが難しい状況でした。
また、AIの使い方を知りたくても、毎回先輩へ
- 「この聞き方で合っていますか?」
- 「どのような場面で使っていますか?」
と確認するのも現実的ではありませんでした。
そんな中で、先輩方と会話を重ねるうちに、業務で活用しているプロンプトや活用事例、利用時の注意点などを一か所に集約できれば、多くの人が同じ悩みを解決できるのではないかと考えるようになりました。
分からないことがあればまずサイトを見て、利用方法や活用事例を確認して試してみる。それでも分からなければ相談する。
そのような「AI活用の入口」となる場所が必要だと感じたことが、AI利用促進サイトを立ち上げるきっかけでした。
AI利用を促進する中で見えてきた課題
- AIの情報が複数の場所に分散している
- 活用事例が個人やチーム内に閉じている
- AI初心者が何から学べばよいか分からない
- 利用ルールやセキュリティへの不安がある
- 気軽に相談できる場所がない
これらを解決するため、
AIに関する情報を一元化し、誰でも学び・相談できる環境を作る
ことを目的にサイトを構築しました。
サイトで発信している内容
AI利用促進サイトでは、単にAIの説明を掲載するだけではなく、社員が日々の業務でAIを活用できるようになることを目的として、さまざまな情報を発信しています。
掲示板(AI活用事例・ナレッジ共有)
サイトの中心となるのが掲示板です。
掲示板では、業務で試したAI活用事例や業務改善のアイデア、利用する中で得られた気づきなどを共有しています。
単に成功事例だけではなく、
- 試したがうまくいかなかったこと
- 使ってみて分かった注意点
なども共有することで、他の社員が同じ失敗を繰り返さずに済むようにしています。
外部・社内リソースへのリンク集
AI活用に必要な情報へすぐアクセスできるよう、関連サイトへのリンクも集約しています。
利用者が複数のサイトを探し回ることなく、必要な情報に素早くたどり着けるようにしています。
AIガバナンスと利用ルール
AIを安心して利用してもらうため、AI利用時のルールや禁止事項、セキュリティ上の注意事項を確認できるようにしています。
利便性だけでなく、安全に利用できる環境整備も重要な役割の一つです。
FAQ
生成AIの利用時によく寄せられる質問をまとめています。
利用方法や困りごとを自己解決できるようにすることで、利用時の不安軽減や問い合わせ削減にもつなげています。
利用状況から見えたこと
サイト運営では、掲載して終わりではなく、アクセスログを確認しながら、どの程度利用されているかを定期的に把握しています。
過去90日の利用状況を確認すると、月を追うごとに利用者数・閲覧数ともに増加していることが分かりました。
特に7月はAI活用事例や新機能紹介の記事を継続的に掲載したこともあり、利用者の関心が高まり、多くの記事が閲覧されるようになりました。
また、アクセス状況を分析すると、実際の業務に近い活用事例を掲載した記事は高い関心を集める傾向が見られました。
一方で、利用ルールや技術的な解説のみを扱った記事は閲覧が限定的であり、利用者は「AIそのものの説明」よりも「自分の業務でどのように活用できるか」に関心を持っていることが分かりました。
これらの結果から、サイトは作るだけでは利用され続けるわけではなく、継続的な情報発信と利用者目線のコンテンツ作りが重要であることが分かりました。
特に、業務に直結する具体的な活用事例を定期的に発信することが、AI活用の裾野を広げる上で重要だと考えています。
AI利用促進担当として感じたこと
サイトを立ち上げた当初は、AIの機能紹介や利用ルールなどの情報を中心に発信していました。
しかし実際に運営してみると、継続的な閲覧につなげるためさらなる工夫が必要でした。
試行錯誤を重ねる中で効果的だったのは、機能説明よりも「実際の業務でどのように活用できるか」を具体的に紹介することでした。
メール作成や議事録作成、資料作成など身近な業務に直結する活用事例の記事は特に閲覧が多く、AI活用への第一歩を後押しするきっかけになったと感じています。
また、一度サイトを公開して終わりではなく、アクセス状況を確認しながら利用者の関心が高いテーマを継続的に発信することも重要だと分かりました。
AI利用促進担当として運営を続ける中で、
利用者ニーズに応じた情報発信を継続すること
がAI利用促進には欠かせないと実感しています。
運営して分かった課題
多様な利用者ニーズへの対応
AI利用促進サイトは、利用者の所属部署や担当業務、AIへの理解度によって求められる情報が大きく異なります。
そのため、
- 初心者向けの基礎的な内容
- 業務活用を深めたい社員向けの実践的な内容
をバランスよく発信していく必要があります。
情報の鮮度を維持することの難しさ
生成AIの世界は変化が非常に速く、機能追加や仕様変更、新たな活用方法が次々と登場します。
一度掲載した情報も時間の経過とともに古くなってしまうため、定期的な見直しや更新が欠かせません。
サイトの利用価値を維持するためには、継続的に最新情報を収集し、コンテンツへ反映し続ける必要があります。
利用者の興味・関心を把握する難しさ
サイトを運営していると、
- 利用者が今何に興味を持っているのか
- どのような情報を求めているのか
を把握することの難しさも感じます。
アクセス数や閲覧状況から一定の傾向は把握できますが、本当に知りたい情報や業務上の悩みまですべてを把握することは容易ではありません。
そのため、アクセス分析や利用者の声を参考にしながらコンテンツ改善を続けています。
活用事例を共有する文化づくり
最も大きな課題は、社員一人ひとりがAIを積極的に活用し、自ら事例を共有する文化を醸成することです。
AI活用事例は多くの部署で生まれていますが、忙しさから共有まで至らないケースも少なくありません。
サイト運営を通じて感じたのは、AI活用を組織全体へ広げるためには、情報を発信する場を作るだけでは不十分であり、
「活用したことを共有することが当たり前」
という意識づけが重要だということでした。
今後の展望
サイト運営を通じて、情報を発信する場を作るだけではAI活用は広がらず、人と人とのつながりや継続的なコミュニケーションが重要であることを実感しました。
そのため今後は、情報発信サイトから一歩進み、社員同士が気軽に相談し、活用事例を共有できる仕組みづくりを目指しています。
AI相談チャネルの開設
AI相談チャネルを開設し、
- この業務にはどのようなプロンプトが使えるか
- この回答をもっと良くしたい
といった相談を気軽に行える環境を整備することで、AI活用のハードルを下げることを目指します。
社員主体の情報発信への移行
現在は社内システム担当を中心に情報発信を行っていますが、今後は実際に業務でAIを活用している社員自身が事例やノウハウを投稿できる環境を整備する予定です。
現場で生まれた活用事例を社員同士で共有することで、より実践的で価値のあるナレッジが蓄積されることを期待しています。
事例共有ワークショップの開催
サイト上での情報共有だけではなく、実際に顔を合わせて活用事例を紹介し合うワークショップの開催も検討しています。
成功事例だけでなく、失敗事例や試行錯誤の過程を共有することで、他の社員が新たな活用方法を発見するきっかけを作ることを目指しています。
対面でのAI相談会
AIに興味はあるものの、まだ利用できていない社員向けに、対面で相談できる場の提供も検討しています。
操作方法や業務適用方法を直接相談できる環境を用意することで、AI活用の裾野を広げていくことを目指しています。
おわりに
今回、AI利用促進サイトを立ち上げて運営してきた中で感じたのは、AI活用を広げるために本当に重要なのはツールそのものではなく、
「最初の一歩を踏み出しやすい環境」
を作ることだということです。
私自身、AI利用促進を担当することになった当初は、AIをどのように活用すればよいのか分からず、誰に聞けばよいのかも分からない状態でした。
しかし、実際に活用方法を学び、業務に取り入れていく中で、少しのきっかけや参考事例があるだけでも活用の幅が大きく広がることを実感しました。
そのため、このサイトは単なる情報掲載の場ではなく、
「AIを使ってみようと思えるきっかけを作る場所」
でありたいと考えています。
また、AI活用は一部の詳しい人だけが行うものではなく、日々の業務の中で誰もが活用できるものであるべきだと思っています。
そのためには、活用事例を共有し、お互いに学び合いながら活用の輪を広げていくことが重要です。
今後も利用者の声を取り入れながらサイトを改善し、AI活用に関する情報発信やコミュニティづくりを通じて、社員一人ひとりがAIを身近なツールとして活用できる環境づくりに取り組んでいきたいと思います。
AI活用の裾野を広げるためには、一人ひとりの小さな実践と共有の積み重ねが欠かせません。今後もAI利用促進サイトを通じて、そのきっかけづくりに取り組んでいきます。
執筆日・免責事項
執筆日:2026年8月
前提条件:本記事は執筆時点の情報に基づいています。内容は将来変更される可能性があります。


