背景
E2Eのテストを構築する中でテストの品質を左右する一要因がテストデータです。
一方でTosca Cloudを含む自動化ツールでテストを作っていると、最初は固定値で進めても、すぐに「データ管理に労力がかかる」という問題に直面します。
よくある問題としては以下のようなものがあります。
- テストケースごとに値を直書きしてしまう
- データの変更時に複数ケースを一気に修正する必要がある
- チームで同じデータを安全に使い回せない
この記事では、Tosca CloudのTDM機能を使って、データセット作成からテストケース連携までの処理を整理します。
固定値直書き運用からTDMへ移すと、データ関連の仕様変更時の修正箇所を「テストケース単位」から「データセット単位」に寄せられるのが最大のメリットです。
この記事の範囲
以下の流れで進めます。
- テストデータをTosca Cloudに登録する
- 必要に応じてSubsetを作る
- テストケースのValueにデータをリンクする
- 実行時の「消費済みデータ」と再利用の考え方を押さえる
前提
- Tosca CloudでTestCaseを作成済み
-
Prepare > Test dataにアクセスできる - 入力用データ(CSV / JSON / Excel)がある、または手入力で小規模データを作る
Step 1: Test dataを追加する
Prepare > Test data からデータを登録します。
アップロード時の主なポイントは次のとおりです。
- 対応形式は
CSV / JSON / Excel (.xlsx) - 1ファイルあたり最大
2 GBまたは100万行 - 同時アップロードは最大
100ファイル
小規模な検証なら Add manually で手入力データセットを作る事も可能です。
補足(形式ごとのハマりどころ)
- JSONはフラットなオブジェクト構造を想定しており、ネストJSONは列として展開されない
- Excelは複数シートがあると「シート単位で別データセット」になる
- 空セルは
NULLとして取り込まれる
TDMでは自動でデータフォーマット判別が行われ書式設定されます。
前ゼロ処理など数値や日付をテキストで認識させたいときには
該当の列にダミーのテキスト値をセットして登録して自動判別を回避可能です。
アップロードファイル例
実際のデータ
Step 2: Subsetを作成する(Option)
大きいデータセットをそのまま使うと、意図しない行が選ばれてテスト意図がブレることがあります。
その場合は、クエリでSubsetを作って用途ごとに分けます。
- 例:
Country = 'JP'の行だけ - 例:
Status = 'Full-time' AND (Office = 'Tokyo' OR Office = 'Osaka') - 例:
LastName != '' AND IsActive = true
クエリは2つの作り方があります。
- Search bar: クエリ構文を直接書く
- Subset builder: GUIで条件ツリーを組む
複雑な条件はSubset builderのほうがレビューしやすく、チーム運用向きです。
例:自動車一覧から日本車のみ抽出するクエリ
画面上部のSearch barへの直接編集もしくは画面PopUpのBuilderから作成

Step 3: TestCaseにテストデータをリンクする
テストケース側で、データを入れたいステップのValue列からリンクします。
基本手順は以下です。
- 対象ステップのValue列でリンクアイコンを選択
-
Prefill expression valuesを選択 - データセット(またはSubset)と列を指定
-
Applyで確定
これで実行時にTosca Cloudがデータを供給します。
Syntax SearchでTDMを選択
Prefill expression valuesのPopUpを入力
Step 4: データ消費と再利用の考え方
Tosca Cloudでは、実行で使われた行は Used 扱いになります。
デフォルトでは再利用がブロックされるため、連続実行時の挙動を先に決めておくのが重要です。
主な対応は2つです。
- デバッグ中: 実行後に手動で
Reuse dataして戻す - 本番運用: 標準モジュール
Test data - Update itemで運用ルールを組み込む
Test data - Update item では、更新対象のデータ行を特定する条件と、更新内容を設定します。
どの属性を使って行を特定するかは、チームで「主キー相当の列」を先に決めておくと運用が安定します。
夜間バッチ後に再利用可能へ戻す運用を作っておくと、データ枯渇で朝の回帰が止まる事故を避けやすくなります。
「毎回手動リセット」は簡単ですが、件数が増えると運用負荷が高くなります。
例:Update itemの処理例
実務での設計Tips
- まずデータセットを「業務意味」で分割する(顧客種別、契約種別など)
- テストケース側には業務条件を書き、具体値はなるべく持たせない
- Subset名は目的が分かる命名にする(例:
login_valid_jp,order_cancelable) - 再利用ポリシーをチームで統一する
トラブルシュート
データがうまく入らない
- 対象ステップが空のテストケース行になっていないか確認
- リンク先の列名ミス、データ型不一致を確認
想定外の行が使われる
- SubsetクエリのAND/ORと括弧を見直す
- まずFilter viewでヒット行を目視確認してから保存する
すぐデータ不足になる
-
Used行の増え方を確認 - デバッグ用途と本番用途でデータセットを分ける
まとめ
Tosca CloudでTDMを使うと、テストケースから固定値を減らせるので、保守性と拡張性が大きく上がります。
最短で始めるなら次の順番が実践的です。
- まず小さなデータセットを作って1ケースにリンク
- Subsetで絞り込みを導入
-
Usedと再利用ポリシーをチーム運用に乗せる
「テストのロジック」と「テストデータ」を分離できると、ケース追加や仕様変更への追従がかなり楽になります。
参考リンク(公式ドキュメント)
- Use test data
- Add test data to Tosca Cloud
- Create data subsets
- Use test data in test cases
テストデータを利用した処理サンプル
本記事は 2026-02 時点の公開ドキュメントをもとに作成しています。





