はじめに
PSM(Professional Scrum Master)とはなにか、他のスクラムマスター資格とどう違うのか、受験方法、合格の秘訣をまとめます。
なぜこの記事を書いたか
理由は3つ。
第1に、スクラムマスター資格として知名度が低いため。
CSM(Certified Scrum Master®)は知っているけど、PSMは知らないという方が多いかと思います。
認知度を底上げして資格としての価値も底上げしたいです。
第2に、知名度が低いが故に情報が少ないため。
PSMを丁寧に解説してくださっている記事に「Scrum.org プロフェッショナルスクラムマスター(PSM)になったので紹介してみる」(2020/7/26 公開)を発見しましたが、日本語の記事はこれだけのように思えます。
2020年11月にスクラムガイドがアップデートされたという経緯もあるので、さらに最新の情報がほしいですね。
第3に、PSMに合格したため。
私自身がPSMに合格することができたので、その嬉しさをモチベーションに2021年最新の情報を発信します。
この記事の対象
- スクラムの知識を身につけたい方
- スクラムマスターの資格を低コストで取得したい方
- スクラムマスターになりたい / なる予定の方
- 現任のスクラムマスター
Professional Scrum Master™とは
スクラムガイドを執筆するKen Schwaberが設立したScrum.orgが認定するスクラムマスター資格です。
PSMの種類
PSMにはレベルごとに次の3つの種類があります。
PSM I Assessment
中級者レベルです。
80の多肢選択問題を60分で行い、85%以上の得点で合格となります。
PSM II Assessment
上級者レベルです。
30の多肢選択問題を90分で行い、85%以上の得点で合格となります。
PSM III Assessment
エキスパートレベルです。
30の多肢選択問題と小論文を120分で行い、85%以上の得点で合格となります。
この記事ではPSM I Assessmentを中心に紹介します。
他のスクラムマスター資格との比較
他にスクラムマスターの資格として有名なものに、Certified Scrum Master®とLicensed Scrum Masterがあります。特に、前述の通りCSM®はよく知られているかと思います。
PSM | CSM | LSM | |
---|---|---|---|
認定団体 | Scrum.org | Scrum Alliance® | Scrum Inc. |
研修 | 推奨 | 必須 | 必須 |
時間・問題数 | 60分・80問 | 60分・50問 | 時間制限なし・30問 |
合格基準 | 85%以上 | 75%以上 | 75%以上 |
言語 | 英語のみ | 日本語対応 | 日本語対応 |
費用 | $150 | 300,000円(税込) | 200,000円(税抜) |
有効期限 | なし | 2年(更新$100) | 1年(更新$50) |
表からも分かる通り、
研修が必須ではないため受験費用は抑え目な一方で、
試験が英語のみで問題数が多く合格基準もかなりシビア
ということが特徴として言えそうです。
有効期限はありませんが、スクラムガイド更新毎に試験内容もアップデートされるので、その都度再受験するのがよいかもしれません。
受験までの流れ
受験チケットを購入し、受験画面にチケットに記載されたパスワードを入力することで受験が可能です。
受験チケットはPSM I Assessmentページより購入できます。
ページ下部「BUY PSM I ASSESSMENT」をクリックします。
カートに受験チケットが追加されます。
「1回の受験につき$150かかります。試験は英語のみであることに注意してください。受験チケットに有効期限はありません。受験のためのパスワードは1営業日以内にメールで通知されます。試験は60分です。」的な注意書きがされています。
問題なければ、「Continue」で購入手続きに進みましょう。
必要情報を入力します。いずれも英語での入力が必要ですので、ご注意ください。
入力完了後、「Continue to payment」から購入手続きを進めましょう。
購入が完了すると上のような画面が表示されます。
「請求情報はメール経由で送信されるます。購入から60日を超えてのキャンセルや返金には応じかねるから予めご了承ください。もしなにか質問があれば、Order IDを添えて support@scrum.org までメールしてください。」的なことが書かれています。
案内があった通り、1営業日以内に請求情報と共に受験チケットがメール送付されます。(私の場合は、購入直後に届きました。)
上の画像でマスクしているのが、受験のためのパスワードです。
その後の実際の受験までの流れはメールの文面に書いている通りです。まずは、Scrum.orgアカウントにログインします。
その際、簡単な登録情報を入力します。ここで入力した氏名が資格認定証の氏名として使用されます。
次に、PSM I Start Assessment pageページより受験画面に進みます。
この画面で書かれていることが結構重要ですね。
「試験に合格した場合、資格認定証にはShun Miura(アカウント登録氏名)と印字されます。もし印字したい氏名と異なる場合には、プロファイルから氏名を更新してください。技術的な注意としては、もし会社組織のネットワークを使っている場合にはプライバシーやFWの設定、ブラウザのバージョンが最新であることをそれぞれ確認してください。英語ネイティブでない方は、Google Translate Pluginを使っても構いません。」的なことが書かれています。
「Assessment Password」に受験チケットに記載されたパスワードを入力すれば試験開始です。とはいっても、すぐに開始するわけではないのでご安心を。
試験前の確認画面になります。「Continue」で次に進みましょう。
試験前の最終確認画面です。「Start」をクリックすれば試験が開始し、60分のカウントダウンが始まります。
設問毎にブックマークが用意されており、ブックマークした問題は「See all questions」から確認することができます。試験ページの(回答方法やブックマーク機能などの)形式は、後述するOpen Assessmentとほぼ同じなので、こちらで慣れておくとよいかもしれません。
全問回答後「Finish now」を選択する、もしくは試験時間リミットに達すると即座に試験が終了し、結果が表示されます。同時にメールでも結果が通知されます。
合格体験記
受験の経緯
スクラムのロールやイベントの意味づけ、役割などを体系的に学びたいと考えたため受験しました。普段の業務では開発者のひとりにすぎませんが、ゆくゆくはスクラムマスターとしてチームを支援したいと考えており、知識の裏付けをできればと考えたのも理由のひとつです。
スクラムマスター資格の中でPSMを選択した理由は、単純に受験コストが低いためです。
当然ながら研修を受けたいとも思いましたが、コロナ禍の現状も鑑みて、まずは知識ベースで証明ができるPSMにしました。
勉強方法
まずは、スクラムガイド(日本語と英語)とSCRUM BOOT CAMP THE BOOKを熟読しました。
あくまでスクラムの基礎知識を身に着けるためです。
次に、実際の試験対策としてオンラインのプレテストを2、3回受験しました。
有料の講座もありますが、無料のプレテストだけで十分にこと足りる印象です。ただし、スクラムガイド2020年11月のアップデートを反映できていないものが多い印象です。2017年と2020年版の差異の部分は、スクラムガイドを読み込むなどして対策する必要があります。
- Scrum.org(公式) - Open Assessment
- Mikhail Lapshin - PSM I™ Preparation Quiz – Learning Mode
- Mikhail Lapshin - Scrum Questions
- ITExams - Professional Scrum Master I v1.0 (PSM I)
- VCEguide - PSM I Exam
- QUIZFORM - Professional Scrum Master I - v1
最後に、Scrum.orgが提唱するスクラムのスケーリング手法である**Nexusのガイドに目を通します**。
試験はあくまでスクラムガイドをベースにしていますが、一部大規模チームでのスクラムに関する問題が出題されます。そのため、Scrum.orgのエッセンスを取り込んでおく必要があります。こちらはガイドを数回読むだけで十分かと思います。
ここまで、私の場合は約1か月ほど学習をしました。平日朝と休日が中心だったので、時間にして50時間ぐらいだと思います。
合格の秘訣
オンラインのプリテストを何度も受けることが大切です。
そして、プリテストはいずれも受験後に結果と簡単な解説を表示してくれるので、その内容をもとになぜこの選択肢が正しいのか、ほかの選択肢はなぜ間違えているのかをロジカルに整理することが合格の秘訣です。
例えば、次のような問題があったとします。
What does Product Backlog management include? Select three most applicable items.
(A) Optimizing the value of the work the Development Team performs
(B) Ensuring that the Product Backlog is visible, transparent, and clear to all, and shows what the Scrum Team will work on next
(C) Ordering the items in the Product Backlog to best achieve goals and missions
(D) Presenting Product Backlog items to the Key Stakeholders
(E) Moving Product Backlog items into the Sprint Backlog Moving Product Backlog items into the Sprint Backlog
プロダクトバックログは、プロダクトの改善に必要なすべてのものが順番に一覧化されたものであり、プロダクトオーナーがアイテムの作成や並び替え、透明性を担保することに責任を持ちます。なので、A、B、Cが正しそうです。
利害関係者にプロダクトバックログを示すことがあったも、それは管理とは言わないからDは不可です。
プロダクトバックログからスプリントバックログアイテムとして移動するという行為もスプリントプランニング時にやるアクションなので管理とは言わなさそうだからEも不可です。
というような感じです。
これにより、理解の整理と回答への自信が同時につくと感じました。
おわりに
今回は、PSMとはなにか、他のスクラムマスター資格とどう違うのか、受験方法、合格の秘訣をまとめました。
PSMの学習と合格を通じ、それまで曖昧な理解だった各スクラムイベントの役割やロールの範囲などが整理できたと感じています。また、現在所属しているスクラムチームをよりよくしていくために、自分になにができるのかを考えるよい機会になりました。