PythonのPandasとMatplotlibを使って、長期投資のメリットについて考えてみます。
背景
「敗者のゲーム」という投資の有名な本において、以下のような内容が書かれています。
- 株式市場には「稲妻が輝く瞬間」があり、この瞬間に市場に居合わせるためには長期投資が必要
- 短期トレードにおいて、この「稲妻が輝く瞬間」に居合わせることは確率的に不可能
これらを根拠に長期投資が勧められています。このことをPythonでデータを見ながら確かめてみます。
データの読み込み
データは何でもよいですが、上場インデックスファンドTOPIX(1308)の2011/7/22~2021/7/21のデータを使用します。
# データ読み込み
import os
import pandas as pd
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
import japanize_matplotlib
file = 'data/FTOPIX.xlsx'
df = pd.read_excel(file)
df.head()
データの加工
最初の時点を1として、現在の株価が何倍になっているかを計算します。まずは前日比率を計算し、.cumprodを使って、その累積を求めています。
# 前日比率の累積を計算
df["終値(前日)"] = df["終値"].shift(1)
df['前日比率'] = df['終値'] / df['終値(前日)']
df['前日比率累積'] = df['前日比率'].cumprod()
# 必要な列のみ抽出
df = df[['日付', '終値', '前日比率', '前日比率累積']]
df.head()
時系列データの可視化
株価の時系列データを可視化します。
plt.figure(figsize = (15, 3))
plt.plot(df['日付'], df['終値'])
plt.title('終値の推移')
plt.show()
最も良い5日を逃すとどうなるか検証
株式市場には「稲妻が輝く瞬間」があるとのことなので、これを最も前日比率が高い5日間とする。そして、最も前日比率が高い5日間を逃してしまうと、リターンがどのように変化するかを検証する。
# df2において、前日比率のベスト5を1に置換
df2 = df.copy()
df2 = df2.sort_values(by = '前日比率', ascending = False)
# 先頭5行の2列目を1に変更
df2.iloc[:5 ,2] = 1
df2.head(7)
再度日付で並べ替えて、前日比率の累積を計算しなおします。これで準備完了です。
# 日付で並べ替える
df2 = df2.sort_values(by='日付')
# 前日比率の累積を計算しなおす
df2['前日比率累積'] = df2['前日比率'].cumprod()
df2.head()
比較
元のデータと、ベスト5日を逃した場合のリターンを比較します。.tailを使うだけで確認できます。
# 元データ
df.tail()
# ベスト5を逃した場合
df2.tail()
ずっと保有していれば、2.26倍になっていたのに、ベスト5日を逃してしまうだけで1.66倍までリターンが下がってしまうことが分かります。
結果のグラフ化
計算した結果をグラフ化します。「稲妻が輝く瞬間」は暴落の後にくる傾向があります。つまり暴落時に手放してしまうと、「稲妻が輝く瞬間」を逃してしまい、リターンが下がってしまいます。
# ベスト5のみのデータを抽出
df3 = df.iloc[df.sort_values(by = '前日比率', ascending = False).index[:5], :]
# 前日比率累積をグラフ化
plt.figure(figsize = (15, 3))
plt.plot(df['日付'], df['前日比率累積'], alpha = 0.8)
plt.plot(df2['日付'], df2['前日比率累積'], label = '最も良い5日を逃した場合', alpha=0.8)
# ベスト5の点をプロット
plt.scatter(df3['日付'], df3['前日比率累積'], c = 'black', label = '最も良い5日')
plt.title('終値の推移')
plt.legend()
plt.show()
まとめ
- 2447日中ベストな5日を逃すだけで、リターンが2.26倍から1.66倍まで下がってしまう
- このベストな5日は暴落の後にくるので、暴落して手放してしまうと逃してしまう
以上より、ベストな5日を当てることは難しいので、ベストな5日を享受できるように、長期で保有することは有効である。
参考
株を長期保有することのメリットについては、以下の分析でもふれています。